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トールと従者

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2部分:第二章


第二章

 利発そうなだ。金髪に碧眼の二人の子供達が出て来た。一人は男の子でもう一人は女の子だ。二人はトール達の姿を見てこう言ったのだった。
「旅の方ですね」
「今夜一晩泊めて欲しいのですね」
「ああ、そうだよ」
 自分達から言ってきた彼等にだ。ロキが応えた。
「そうしてくれるかい?もてなしのものはあるし」
「そうですか。じゃあちょっと待って下さい」
「お父さんとお母さんにお話してきます」
「ああ、頼んだよ」
 二人と家に入れてからその奥に消えた子供達の背中を見ながらだ。ロキは思わせぶりな笑顔になった。そしてそのうえで部屋の奥から出て来た子供達の両親に応えたのだった。
「何と、貴方達はまさか」
「トール様とロキ様ですか」
「その通り」
 ロキがだ。微笑んで彼等の驚きの声に答えた。
「旅の途中だ。一晩頼めるか」
「馳走は持って来ている」
 トールはこう彼等に告げた。
「山羊を殺して振る舞う。それに蜜酒も一杯あるぞ」
「これが酒だ」
 ロキは皮の袋を二人に見せてきた。
「ここから幾らでも出る。この酒と山羊の肉でだ」
「泊めてもらう金にできるだろうか」
「は、はい。喜んで」
「お二人をお断りする筈がありません」
 神である二人をそうする筈もなかった。ましてやらだ。
 トールは彼等平民の守護者である。その彼の申し出を断ることなぞ考えられなかった。それでなのだった。
 彼等はトールとロキを一晩泊めることにした。すぐに宴の用意が為され山羊達が殺され肉になる。そして皮袋から蜜酒が盃に注がれていく。
 そうして樫の木のテーブルを囲んで神と人の宴が行われる。その中でだ。 
 トールは大酒を飲みながらだ。子供達の名前を聞いていた。
「そうか。シアルフィとスクヴァというのか」
「はい、それが僕達の名前です」
「お父さんにつけてもらいました」
 はきはきとしてだ。二人はトールに対して話す。
「とてもいい名前です」
「私達この名前が大好きです」
「自分の名前を愛することはいいことだ」
 トールは二人に対してだ。優しい笑みでこう述べた。
「それはそのまま美徳なのだ」
「そうなんですか」
「自分の名前を愛すること自体がですか」
「御前達の親につけてもらったのだな」
 トールはこのことから話す。
「ならばそれはだ」
「いいことですか」
「だからこそ」
「そうだ。御前達は親孝行だな」
 そのことからだ。トールは彼等のそうした美徳も察したのだった。
「しかも目の輝きもいい。二人共中々賢いな」
「はい、私達の自慢の子供達です」
「本当に賢くて優しいんですよ」
 両親達もトールに対して笑顔で話す。
「しかも足が速くて」
「手先も器用で」
「ふむ。それはいいことだ」
 トールはその彼等の言葉を聞いてさらに笑顔になる。そしてだ。
 ロキもだ。親達の話を聞いてこう言うのだった。
「それはいいことだ。賢い子供達はだ」
「はい、この子達はですね」
「いいというのですね」
「神から見てもいい」
 子供達とトールを交互に見てからだ。ロキはこう答えた。
「実にな」
「そうだな。全くだな」
 トールも笑顔で応える。しかしだ。
 ロキはその目に考える、企みとも思える目の光を宿らせたのだった。そしてだ。
 トールが用足しに席を外し親達が彼の案内に席を立った隙にだ。ロキは子供達にこう囁いたのだった。
「実はだ。山羊が美味いのは肉や内臓だけではないのだ」
「えっ、他にもですか?」
「食べられる場所があるんですか」
「実はそうなのだよ」
 含み笑いと共にだ。子供達の横の席に来て囁いていく。
 
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