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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十四話 ウチナンチューその七

「あと狂犬とか危ない野生生物もいないです」
「狂犬は幾ら何でもいないでしょ」
「まあそうですけれど」
「狂犬病に罹った犬とか」
「何か言われるんですよ」
「誰から?」
「他の国から来た入居者の人に」
 このことは本当のことだ、ジューンさんにも水蓮さんにも聞かれた。
「そうした犬はいないかって」
「ああ、外国だと」
「まだ狂犬病がありますから」
 特にマルヤムさん達イスラム系の人達に聞かれる。何でも犬の唾液は狂犬病のせいで不浄とされているらしい。
「それでなんです」
「聞かれたのね」
「はい、ですから言いました」
「別に沖縄でもね」
「狂犬病はですね」
「もうないから」
 そうした病気に罹った犬はだ。
「昔の話よ」
「そうですか」
「そう、じゃあ今から散歩行って来るから」
 儀武さんはまた僕にこのことを言った。
「この辺りのね」
「わかりました」
「あと私ね」
 儀武さんは僕に今度は自分から言って来た。
「名前はもう下の名前でいいから」
「日菜子さんで、ですか」
「ええ、そう呼んで」 
 こうご自身から僕に言った。
「宜しくね」
「わかりました」
「それと八条学園だけれど」
 また日菜子さんの方から問うてきた。
「どういった学校かしら」
「どういった、ですか」
「そう、広くて色々な学部があるのよね」
「はい、そうです」
 そのことはその通りだとだ、僕は日菜子さんに答えた。
「保育園から大学院まであって高校も大学も学科多いです」
「そうよね」
「それで部活も」
「そうそう、それが本題なのよ」
 日菜子さんは指を指し示さんばかりにして僕に言って来る。
「空手部と水泳部あるかしら」
「どっちもありますよ」
「わかったわ、じゃあ両方入るわね」
「掛け持ちされるんですか」
「そうなの、前の学校でもそうしてたから」
「空手部と水泳部の掛け持ちだったんですか」
「空手は二段よ」 
 日菜子さんは左手でブイサインをしてみせて言った。
「凄いでしょ」
「そうですか、二段ですか」
「そう、それでね」
 それに加えてと言うのだった。
「水泳は五十メートルで大会で優勝したことがあるわ、小学生の時だけれど」
「クロールですか?平泳ぎですか?」
「平泳ぎよ」
 それで、というのだ。
「私はね」
「そうですか、平泳ぎですか」
「そうなの、凄いでしょ」
「運動神経あるんですね」
「大学は水産学部に進みたいし」
「それで水泳を励まれてるんですね」
「空手の方は習いごとでね」
 家のそれで、というのだ。
「身に着けてるのよ」
「二段ですか」
「他の武道はしてないけれどね」
「いや、空手だけでも充分ですよ」
 僕はしみじみとした口調で日菜子さんに返した。 
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