dark of exorcist ~穢れた聖職者~
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第27話「ヴィクトワールの悪魔狩り」
―――【フランス・パリ】
穏やかな昼下がりの街並み。人で溢れかえる大通り。
大通りの人ごみに紛れて、一組の少年と少女が歩いていた。
「アイさ~ん、歩くの速いですって~」
「クリス君遅いよ~、はやくはやく~、迷子になっちゃうよ~?」
アイリスとクリスのペアだ。
2人に与えられたアルバートからの任務は、今までとは少し違うものだった。
今回の任務は、「ヴィクトワールの悪魔狩りと合同で種別不明の悪魔の捜索」というものだ。
ここ数週間の間に、種別不明の悪魔の目撃情報が出始めた。
悪魔狩り達が持つリストにも載っていないため、下位の悪魔か上位の悪魔かの判別が出来ない。
また、危険性や能力についても一切が不明とされている。
そんな情報をフランスの悪魔狩り連盟「ヴィクトワール」から得たアルバートは、アイリスとクリスの
2人を先にフランスに向かわせ、現地でヴィクトワールの悪魔狩りと合流するよう指示した。
「ヴィクトワール……噂では度々活躍を聞きますけど、どんな人たちなんでしょうね?」
「パトリック君とフランちゃんが所属してたところだから、きっといい人たちだよ!」
”ヴィクトワール”とは、ヴァチカンの”ルークス・ソーリエ”の次に古い悪魔狩り連盟。
有能な人材も多く、所属する悪魔狩り達の生存率も高いことから、悪魔狩り連盟本部である
”ルークス・ソーリエ”からの信頼も厚い。
それ故か、ルークス・ソーリエの合同任務の相手はヴィクトワールの場合が多い。
「アイリス・エインズワースとクリストファー・クロスだな?」
人ごみの中から、2人を呼ぶ声が聞こえた。
2人が振り返ると、そこにはヴィクトワール特有の白いコートを着た茶髪の青年がいた。
「はい。名前を知っているということは、あなたはヴィクトワールの…」
「ヴィクトワール所属のシャルル=シモン・バラデュールだ。 ようこそ、フランスに」
「初めまして、ルークス・ソーリエ所属のクリストファー・クロスです。クリスと呼んでください」
「クリス君のパートナーのアイリス・エインズワースです! 気軽にアイリスって呼んでね」
「クリスにアイリスか…僕のことはシャルルと呼んでくれ」
お互いのあいさつも終わったところで、シャルルは2人に背を向け歩き始めた。
「早速任務の話をしたいところだが、人ごみの中では落ち着いて話が出来ない。静かに話が出来る
場所を知っている。付いてきてくれ」
シャルルの道案内に従い、たどり着いたのは、とても静かなオープンテラスのカフェだった。
「さぁ、座ってくれ。ここが一番落ち着く場所なんだ」
シャルルに促され席に着くと、さっきまでの人ごみの騒がしさが嘘のように消えていた。
人通りは相変わらず多いのに、不思議と不快な騒がしさを感じない。
「いい場所です……心が落ち着きます…」
「うん……本当いいところだね……」
「気に入ってもらえたようだな。だが、ティータイムを楽しむのは任務が終わってからだ」
そう言うと、シャルルは持っていたカバンからファイルを取り出した。
ファイルを開くと、そこには数枚の書類と写真が入っていた。
その中から1枚の写真を2人に見せた。
「……これに写ってるのが、種別不明の悪魔、なの?」
「…確かにこんな悪魔、実際にも資料でも見たことがないですね……」
写真に写っていたのは、巨大な鷲のような影。
撮影されたのが夜だったらしく、詳しい姿は分からない。
分かるのは、とにかく巨大であることと、鷲のような姿をしているということ。
「この写真が撮られたのは3日前のことだ。パリの上空で偶然発見された。似たようなものを見た
という目撃情報が、この1か月の間で4件はある」
「確かに正体は分かりませんけど……種別不明の”悪魔”と断定した理由はなんですか?」
クリスの質問に、シャルルはもう1枚写真を見せた。
そこには、さっきの写真と同じ鷲のような姿と、近くに何かの建物が一緒に写っていた。
「建物と比較すると、明らかに自然界に存在しないサイズであると分かるだろう? 全長は単純計算
でも約15m。どう考えても不自然すぎる。だから上は悪魔と断定した」
「なるほど…人前に不自然な巨体を晒すということは上位の悪魔ではないはずです……ってあれ?
アイさん? どうしたんですか? さっきからボンヤリして」
「えっ? あぁ、何でもないよ? 本当に大きな鷲だったら、背中に乗ってみたいなぁ、なんて」
アイリスの言葉に、クリスはフフッと笑い、シャルルはきょとんとした表情を浮かべる。
「アイリス……君は変わった悪魔狩りだな……」
「アイさんはいつもこんな感じなんです」
―――【パリ・どこかの建物の屋上】
「ははっ、愉快愉快。面白いことを言うな、あの銀髪の少女」
「なんだか……楽しそうです」
フード付きパーカーに半ズボンの少年と、Yシャツにスカート姿の少女が、アイリス達のいる方角を
見ながら笑っていた。
「さて、それはさておき……”フレースヴェルグ”が人間の前に姿を見せるようになるとは……面倒な
流れになってきたか…?」
「悪魔狩りさん達……大丈夫でしょうか?」
「苦戦はするだろうが、倒せない相手ではないだろう」
「倒せたのならその時は………あいさつに出向くとしよう」
少年は立ち上がり、その場から立ち去ろうとする。
去り際に、もう一度アイリス達がいる方角を一瞥した。
「なんだ、この感覚は? あの銀髪の少年の方は間違いなくフォールマン……」
「あの銀髪の少女の方は…………一体何だ?」
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