ナバホ=ビル
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第一章
ナバホ=ビル
コンサートは盛況、そしてCDも売れる。女性四人組のバンドスクリューは成功していると言えた。
しかしだ、今は彼女達はどうにもだった。
マンネリズムを感じてだ、バーで飲みつつこんな話をしていた。
「最近のあたし達ね」
「ええ、ステージの演出がね」
「何かあれよね」
「マンネリじゃない」
こう四人で話していた、四人用の席でそれぞれが注文した酒を飲みソーセージやフライドポテトを食べながら。
どうにもという顔でだ、それで話していた。
「これじゃあ駄目よね」
「いい筈ないでしょ」
四人共アフリカ系だ、肌の色はそうした色だ。リーダーでドラムのオズマ=マクマホンはその大きな目でグループの中で一番長身のヴォーカルでありギターのドロシー=グラッハムに言った。
「絶対に」
「そうよね」
「音楽はね」
ベースで赤毛のベッツイ=ザクロイドが言った。
「いい感じだと思うのよ」
「ロックもやってポップスもジャズも取り入れてね」
キーボードで褐色の肌だが目の色は緑のトロット=はこう述べた。
「いいと思うのよ」
「つまりあれよ」
ここでオズマは言い切った、テキーラとオレンジをカクテルさせた自分の酒を飲みつつ。
「今のあたし達はステージの演出と衣装が問題なのよ」
「それね」
「それが最近ね」
「同じ様なのの繰り返しで」
「CDのジャケットにしても」
「何か同じ?」
「同じ感じになってるのよね」
三人もオズマに続いて言うのだった。
「こんなのじゃ今はよくてもね」
「止まるわよ、あたし達」
「実際マンネリってのは止まってるってことだしね」
「わかってると思うけれどここはアメリカよ」
オズマはこのことも言った、自分達が生まれ育ち活動しているこの国のことを。
「アメリカは立ち止まる国じゃないでしょ」
「常に動く」
「国も市民も」
「前にね」
「そうよ、アンクル=サムも立ち止まらないでしょ」
よくアメリカを擬人化した場合に描かれる星条旗模様のシルクハットを被った白い顎鬚を生やしたおじさんである。
「だからあたし達もよ」
「立ち止まらない」
「立ち止まったら負け」
「そういうことよね」
「そうよ、止まったら他のバンドに追い抜かされるわよ」
そうなる運命だというのだ。
「ここはそうした国だから」
「特にあたし達の世界はね」
「音楽なんてね」
「本当に次から次に出て来るから」
三人も言うのだった。
「立ち止まらない」
「そうしてはいけない」
「絶対に」
「だからよ、この状況は突破するわよ
オズマはメンバーに言い切った。
「いいわね」
「ええ、具体的にはどうするか」
「それが問題ね」
「演出とか衣装をどうしていくか」
三人も続く、四人で必死に話していた。
そしてだ、四人で話したがそれでもだった。
中々答えは出なかった、それで四人は今度は四人のマネージャーであるジュリア=ノーマンやはりアフリカ系の彼女にも相談した。
ジュリアは二つの大学で博士号を取った才媛だ、その知識は博士号のもので頭のキレは天性のものだった。事務所でも随一の頭脳派と言われている。四人にとっても頼りになる知恵袋であり相談役である。
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