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ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~

作者:C.D./hack
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ファントム・バレット編 ~守り人たち~
  疾走する本能 消える哀しみ

 
前書き
最後はちょっとキチガイだゾ!?
いや、マジで。哀しみさんまじかわいそう。
そしてKZMさま、申し訳ありませんでしたアァァァァァァッ!!!! 

 
 ラーテルオルフェノクはその拳をカイザへと叩きつけた。
 新人類の拳をその身に受け、カイザは一歩下がる。
 しかしカイザはそれで止まらなかった。アクセルモードを再び起動させた。

「舐めやがって!!」

 速度を持った重い一撃達がラーテルオルフェノクにすべて当たった。
 だが、ラーテルオルフェノクに()()()()()()()()効かない。

 ラーテルのその体は分厚い脂肪に覆われている。
 ラーテルオルフェノクはそれが束ねられており、スリムな体型を維持するとともに強靭な防御力を備える。

「なら…………」

 フォトンブラッドでできた光弾がラーテルの体に被弾する。フォトンブラッドがラーテルオルフェノクを侵食するが、それすらも無意味だった。

 ラーテルはキングコブラの毒を注入されても気絶するだけで数分後には立ち上がる。つまり猛毒に凄まじい耐性があるということ。
 リンはフォトンブラッド、ライトはオルフェノク。行く道は違えど、ライトは親友に追いついた。

「オオオオオオオオッ!!」

 その拳の乱舞、ダインスレーヴの斬撃。

「その怨念、切り裂かせてもらうッ!!」

 ダインスレーヴにインプットされた怪人のみ許された力。
 戦乱形態。

「喰い千切るッ!!!!!」

 ラーテルが動いた。それで終わった。草加の、カイザの体はバラバラになった。
 怪人態を解いたライトは、巧を担ぐとシノンたちがいる方へと向かった。




 ユキは菊岡から指定された病院へ足を伸ばしていた。全ては約束のGGOについて調べるため。どうやらキリトが金を掴まされていたことを知ると、すぐに止めにかかって口止料ですと菊岡を半分脅しで摂取したお金を渡して遠ざけた。だが、しかし。

「いやぁ、案外どの世界でもキリトってーのは変わんねぇんだなぁ」
「同意だな」
「なんでいるんですか、ライトさん、リンさん……」

 異世界からの二人が着いてきていた。本来この行いは良くない。別の世界同士が密接に関わりあうと、その世界同士で繋がりができてしまう。その繋がりは強靭で影響力が非常にある。もしこの世界が滅んだとすると、関わった世界に少なからず影響が出てしまう。それが特異点の物語に関わったならなおさらだ。こんなことをユキは考えたが、不意に気づいた。

(あれ?僕はどこでそんな事を知ったんだっけ?)

 次の瞬間だった。ユキの中からビキリ、と不可解な音がしたのは。何かを失ったような、そんな感覚。頭の中で意識が弾け、別の何かに引っ張られる。

(なんッ!?)

『……久しぶりだな、No.0。お前に殺されて以来か?』

 友に近い容姿の、茅場晶彦と対をなす、もう一人の研究者。

『桐ヶ谷……和希!?あんたは死んだはずじゃ……!?』
『その様子だと取り戻しているようだな。srrowが引き金を引いたあの三日間で』
『どうしてあんたがここにいる!?お前はあの時、彼女と……アキちゃんと共に殺したはずだ!』

 ユキの記憶はあの三日間で完全に戻っている。
 すこし、過去の話をしよう。アキの母が拳銃を向けた瞬間から桐ヶ谷和希は拳銃を取り出し、正確に心臓を撃ち抜くと、後ろにいた職員が怪人体に変異して父親を殺害、アキを人質としてこちらに来るようにと言った。が、しかし。

『まさかお前がダインスレーヴに選ばれるとは思ってなかったよ。あのショッカーの遺産に。オーバード・ウェポンに選ばれるとはな』

 そう、彼が研究資材として持ってきていたダインスレーヴが、ユキと適合したのだ。そして、ユキはそれを()()()()()()()()

『結果、血を求めたダインスレーヴが暴走、周辺をなぎ払うとともに人質ごと俺を殺害した』
()()()()

 途端にユキの目が鋭くなり、冷たい口調と化した。まるで何万回も何億回も殺戮を繰り返し、視線をくぐってきたそんな声で。
 
 そう、まるでただひとり戦った戦士のように。

『本郷か。お前も祈ったんだな。ま、それはこいつにとって呪いだと俺は思うがね?』
『茅場と俺の願った祈りは呪いでもある。そいつは選ばれずにsrrowが選ばれたようだがな』
『その祈りとお前の祈りは相性が悪いらしくてな。結局、やつを選んだよ』
『お前の贈り物よりも、哀しみの贖罪を選ぶとよ』

 その言葉を悲しく聞いた『本郷』は言った。

『……和希、お前は歪んでしまったな。花凛さんが死んでから』

 ユキの体、本郷の記憶、二人の自我。綿密に合わさったそれは、禁句を言ってしまった。

『……お前にわかるものかよ。ただ、それは言うな。次言ったら殺す。お前の自我ごと、この世界から全て消してやる』
『その時は、その時だ。俺はお前を全力で潰すよ、和希』

 背を向けて去ろうとする白衣の男は最後に言った。


『『The present day』と『Sunday of For giveness』。あいつに魅入られただけで、ここまで変わっちまうもんなんだな。さて、俺は行くよ。楽しみに待ってろよ、本郷、No.0。俺は全てを覆すぞ。この手に全て取り戻してやる。祈りを捻じ曲げて、他の最高傑作を捨てたとしても。あとおまけに情報やるよ。ハートとソロがGGO世界に入ったらしいぜ?

 情報と最高傑作。否、アシムレイトロイド。その言葉にユキは、いや、二人は気づき、思わぬうちに叫んでいた。

『待て、和希!!お前はまさか、他のアシムレイトロイドたちを!?』
『もう一人獲得済みだ。楽しみに待ってろよ、クソども!!』


 そのまま狂気は去って行った。

(もうお前は戻れないんだな、和希……)

 そこから自我が引っ張られ、一気に覚醒した。

 目が覚めるとそこは病室だった。アミュスフィアが一つ用意され、ここから次元を超えて入っていく。

「なぁ、ユキ、お前大丈夫か?」

 突然のリンの言葉に何がですかというと、リンはすぐに答えた。

「お前、ここに来るまでずっとボーッとしてたけどよ。俺はそこは気にはならなかった。ただ少し変だなぁとは思ったけどさ。だけどさ、お前……帰ってくるまでに何があった?」

「……なにがですか?」

 正直なところ、本郷のことを話したくなかった。またそこで関わりを持ってしまう可能性があるから。一応ほんの少しだけ自我がユキの体内に入っているため、この世界で繋がりはできたが、他の世界とのつながりはないはず。

「一気に冷たい雰囲気になったしよ、一番気になったのはそこじゃなくてな。お前とこうやって話す少し前に、お前の姿が突然ブレたんだよ。カラーもネガみたいに一瞬なった。お前に一体何があった?」

「大丈夫ですよ。大丈夫。平気です。それより行くならいきましょう?できるだけ早く片付けたほうがいいですし……」

(できるだけ早くハートとソロは始末したほうがいいからな)

 心の中で思ったことは口にせず、次元を開けてユキたちはGGOにダイブした。






「っ……痛いなぁ……蒼藍め……あのクソガキ……ッ!!」

 憎悪の言葉を撒き散らしながら、一人息を吐くsrrowは、自身の家の壁に寄りかかっていた。その体から溢れ出る多量の血によって、床を汚した。

(ああいう子は嫌いなんだ。いつもいつも、僕の……俺の邪魔ばっかして……ッ!!)

 黒い心が哀しみを昇華させる中、哀しみは蒼藍の男との戦いで、新たな能力を覚醒させた。その能力は同質化の強化版。さらなる一体化の到達点。

 その名も《ありがとうはごめんねより残酷な言葉》。通称スペルミス。彼にとってのその言葉は、嫌い。

(誰も知ろうとしないくせに……何も知らないくせに……理解しようとも思わないくせに……みんな自分が正しいと言い張るように説教して……!!)

 憎悪が哀しみを振り切った。身を焦がす黒い炎。()()()()()()()()()()()()それは声色を次々とsrrowが知る人物に変えていった。

 ダーク、リン……次々と声色を変えていく声は、心をすり潰していった。その言葉は一貫して《嫌い》だった。

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!うるさいぃぃいいいっ!!!!黙れ!!死ねぇっ、死ね死ね!!死ネエェェーーーーーーーーーーーーッ!!!!ミンナ!!シネ!!!!」

 そうだ、彼女だけ残っていればいい。彼女さえ残っていれば世界などいらない登場人物などいらない死などいらないみんないらない。そうだ。彼女さえ。そう思った瞬間、また頭蓋に響く声が変わった。

「シネ」

 グチャリ。その場にあった一つの肉体が崩壊した音。即ちsrrowの体。その体はただの肉塊に成り下がったが瞬時に形を取り戻した。

 ……?あの声は?

 今現在、頭蓋で響いているその声は。自身の背後から、より鮮明に聞こえるその声は。
 なぜかsrrowはドアを開けてしまった。彼にとっては開けてはいけない禁忌の箱を。

「シネ。キライ。キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ…………!?!?!!」

 それまで歩けなかったはずの香が立っている。意識がなかったはずの香が。おかしい速度でケタケタと笑いながらsrrowに向かって言うのだ。キライと。

「あゝアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!?!」

「みんなで俺を否定するのかぁ…………っ」

 唐突に両者の叫び声が止んだ。先に止まったのは笑い声。響いたのは一発の銃声。
 それまで香として存在していた肉体は、ただの肉塊へと帰った。もう聞こえない。囁きも何も。

「は、ハハッ……アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハはははは母ははハハハh…………」

 笑い声というより叫び声だった。そして、それはsrrowという存在が壊れたという意味を持っていた。

 誰にも聞こえぬ笑い声。その姿を嬉しそうに眺めながら笑う何かは、一言だけ呟いた。

『あーア、お疲レ、お人形サン』 
 

 
後書き
というわけでKZM様すみませんでしたアァァァッァァァァァ!!!
いや、割と真面目にね、考えてたんですけど。かなりかわいそうなことになっちゃいましたうん。

感想ください!! 
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