八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十三話 マレーシアという国その二
「ですから」
「はい、じゃあバスに乗って」
「登校されて下さい」
「わかりました」
こうしてだった、僕達は登校した。そして一限目までは普通の学園生活だったがここですぐに事情が変わるのが最近の僕の生活だ。
ここでだ、僕の席にクラスメイトが一人来てだった。
僕にだ、こんなことを言って来た。
「会いたい人がいるって」
「誰?」
「うん、生徒の娘だけれど」
「娘ってことは」
「そう、女の子だよ」
僕ににこりと笑ってこのことも話してくれた。
「黒髪でお肌の色も褐色で」
「黒髪で」
「うん、そうだよ」
「アフリカ系の人かな」
「いや、アジア系だったよ」
その娘だというのだ。
「タイとかあそこらへんの」
「東南アジアの」
「そう、君に会いたいってさ」
「その娘何処にいるのかな」
「クラスの前の扉の方に」
「そこなんだ」
「そうそれでどうするのかな」
僕にここまで話してからまた尋ねて来た。
「会うの?どうするの?」
「名前は聞いてるかな」
「あっ、御免」
それはとだ、クラスメイトは僕にこのことについては申し訳なさそうに答えた。
「それはね」
「聞いてなかったんだ」
「忘れてたよ、そのことは」
「そうなんだ、とにかく僕に会いたいんだね」
「そう言ってるよ」
「わかったよ」
僕は彼の言葉に頷いてだ、そうしてだった。
席を立ってそのうえでクラスの前の扉のところに向かった、そこに黒髪を背中の真ん中辺りまで伸ばして後ろで束ねた女の人がいた。
背は一五六位か、かろうじて小柄ではないといったところだ。お肌はクラスメイトの子が言った通り褐色で均整の取れたスタイルだ。
何処か身の動きが警戒している様な感じだ、赤のブレザーとベスト、それに赤を基調として黒と白のタートンチェックのミニスカートに黒ストッキングという格好だ。ネクタイは黒でブラウスは白だ。
その人がだ、こう名乗った。
「おはつにお目にかかる、大家殿」
「ええと、君もなんだ」
「左様、マルヤム=ハナザワーン」
こう名乗って来た。
「マレーシアのタイピンから来たでござる」
「ござるって」
「失礼、拙者は」
「拙者なんだ」
「時代劇を見て日本語を学び」
何か凄い話だった。
「そして侍と忍者に憧れ」
「それでなんだ」
「この喋り方でござる」
「ううん、そうなんだね」
「日本文化に憧れ」
それで、というのだ。
「こうして留学した次第」
「それで日本文化を勉強したいんだね」
「古今の日本文化を」
「古今なんだ」
「拙者の喋り方は確かに時代劇でござるが」
自分でもわかっているという返事だった。
「しかし」
「江戸時代だけじゃなくて」
「飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、安土桃山」
何か日本史の勉強めいてきた、話が。
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