少女の加護
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7部分:第七章
第七章
「これから艦載機による攻撃を仕掛ける。総員配置につけ」
「よしきた」
「遂にか」
「少佐、それでは」
「わかった」
エリザベートも乗り込む。まだ成人に達していない若い整備兵に応える。
「今度も。頑張って下さいね」
「出来ることをするさ」
エリザベートの返事はこうであった。
「私のな」
「頼みますよ、勝利の女神」
「勝利の女神か」
閉じられるエインヘリャルのコクピットの中で呟く。
「ジャンヌ=ダルクだけでは駄目なのかな」
ふとそう呟いた。そして彼女自身も銀河へと出た。
既に戦闘は接近戦になっていた。義勇軍の方も今空母から艦載機が発進していた。
「また派手に来てやがるぜ」
灰色の男がその艦載機の大軍を見て嬉しそうに笑う。
「戦闘機に攻撃機、そして爆撃機」
「電子戦機もいますね」
「用意のいいこった、毎度毎度な」
若い男にそう返す。
「いいか?」
口髭の男が他の者に指示を出す。
「我々は戦闘機を相手にする。まずは奴等を迎撃する」
「爆撃機とかはどうしますか?」
「そちらは他の艦の部隊が担当する。我々の担当は戦闘機だ」
「簡単に言ってくれるぜ」
灰色の男はそれを聞いてついつい悪態をつく。
「あの真っ黒な連中を相手にするのは中々骨が折れるんだぜ」
義勇軍はその兵器を漆黒に塗装していることで知られている。その為戦闘機のタイガーキャットもまた漆黒の姿をしているのである。
「普通のタイガーキャットとは違うからな」
「すぐにも敵からの先制攻撃が来るぞ」
口髭の男から注意が飛ぶ。
「ミサイルでな」
「お決まりの攻撃ってわけかい」
「まずはそれを乗り切らないと」
「絶えず動け」
まずはこう指示が飛んだ。
「そして電波妨害を仕掛けろ、いいな」
「もうやってますよ」
灰色の男はすぐに言い返した。
「さもないと死ぬのはこっちですからね」
言いながらエインヘリャルを動かす。同時に電波妨害装置のスイッチを入れる。
だがそれは上手くはいかなかった。それが上手く作動しないのだ。
「チッ、やっぱりな」
「敵の電子戦機ですね」
「何でもかんでも贅沢にやってくれる連中だぜ」
灰色の男は顔を顰めさせて悪態をついた。
「艦載機だけでも何種類あるってんだ、しかも鬱陶しいやつばかりよ」
「ロックオン、来ます」
「チッ」
機内に警報が鳴り響き画面が真っ赤になる。
「全機回避運動に移れ。いいな」
「了解」
「迎撃はそれからだ。卿等の健闘を祈る」
ジャンヌ=ダルクのエインヘリャル隊が散開するとすぐにタイガーキャットのミサイルが飛んで来た。それは一機辺り幾つという途方もない数で襲い掛かって来た。
「撒け!」
咄嗟に各機アンチミサイルを出す。それで敵のミサイルを防ごうとする。
これである程度は防がれた。だが全てを防ぐのは不可能だ。それでもかなりの数のミサイルが迫って来る。
「電波妨害は!」
「駄目だ、相変わらずだ!」
「チッ、艦艇は何やってるんだ!」
「その艦艇が次々にやられてるんだよ!連絡もとれねえ!」
「ここでもいつも通りかよ!」
いつものパターンでの敗北。それにパイロット達は苛立っていたのだ。周りではもう僚機、そして自軍の艦艇が激しい攻撃を受けていた。そして次々と炎となって銀河の中に消えていた。
「駄目です、避けられません!」
悲鳴が飛ぶ。
「脱出しろ!」
口髭の男が部下に叫ぶ。
「間に合うか!?いいな!」
「は、はい!うわああ!」
「どうした!」
そん言葉に一瞬ギクリとなる。戦死したのかと思った。
「いえ、何とか脱出出来ました」
「そうか、驚かせるな」
その言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろす。
「心臓に悪いだろうが」
「すいません」
「他の機体はどうなったか?」
そのパイロットが何とか生きているのを確認してから他の者達に問うた。
「生きているか?」
「撃墜されたのは二割ってとこです」
灰色の男から報告があがった。
「二割か」
「まあ生き残ってるのもいればそうでないのもいるでしょうね」
「わかった。ではまず残った機体は集結しろ」
「了解」
「わかりました」
若い男も何とか生き残っていた。そしてその中には当然のようにエリザベートもいた。
「相変わらずとんでもない攻撃ね」
タイガーキャットの攻撃をかわし終えて言う。
まずはミサイルの総攻撃で敵の数を大きく減らす。それが連合軍、そして義勇軍の戦闘機部隊の戦い方なのだ。彼等はまずそうしてから突入して来るのだ。
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