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Bistro sin~神の名を持つ男~

作者:黒米
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初めての来店.3

.3
ある日の火曜日、その日の来客数はあまり多くはなかった。
普段から定休日の前の月曜や火曜は少ない方ではあったが、この日は特に少なかった。
皆、ネットに上がった動画を気にしているらしい。
例え襲われてるのが悪者だけであっても、人の心に根付いた恐怖心はなかなか払拭できるものではない。

賢太郎が平泉に言った。
「これじゃ、商売もあがったりですね…なんとかお客さんが来てくれればいいんですけど。」
「賢太郎くん、まだ営業時間はありますよ。見つめる鍋は煮えないものです。気長に待ちましょう。」
平泉の言った通り、その数分後に客がやって来た。
『カランカラン』

「いらっしゃいませ!」
賢太郎は有り余った元気で、ここぞとばかりに挨拶をした。
やって来たのは古田だった。
「浩平さん、いらっしゃいませ。」
「あれ?今日はお客さん少ないですね。」
「はい…そうなんですよ。今、ネットで話題の『咎人に断罪を』って動画でみんな外に出たがらないみたいぇ…」
賢太郎が残念そうに言うと、古田も少し同情する顔で「そうですか。」と言った。
賢太郎はハッとして、直ぐに古田を席へ案内した。

古田は席に着き、暫くメニューを見て言った。
「前に客のその時食べたい料理を用意してる、って言いましたよね?例えば、僕が食べたいものを言えば作れる?」
古田がそう言うと、平泉がやって来た。
「えぇ、ですが料理は事前に仕込みをしておいて美味しいものが作れます。ですから、仰って頂ければ次にはその料理をご用意させて頂きますよ。」
「そうなんですね。わかりました。」
その日、古田はお任せでパスタを頼み、デザートを食べて帰った。
会計の時に古田は、来週の月曜に来店するからある料理を作って欲しいと、注文をしていった。

結局、その日は古田しか店には現れなかった。 
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