少年と女神の物語
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第百六話
「アリガトね、アー姉。買い物に付き合ってくれて」
「買いに行くものは似たようなものだったんだし、気にしないで、立夏」
お互いに買ったののの入った袋を持って家へ向かいます。
今回の買い物は一人で行くのは少し味気なく、しかし家族みんなでいけるものでもないため私と立夏の二人で、学校が終わってから電車に乗ってデパートまで行きました。銀髪と金髪、と言う事があってかとても目立ってしまいましたが・・・もう馴れてしまったので少し気になる程度でしたね。
人の中で暮らしてもう二年ちょっと。一人でいても目立ちますし、神代家の誰と一緒にいても目立つ生活を続けていれば、さすがになれるというものですね。
「でも、私の方から誘ったのに元々の予定日より三日ずれちゃったし・・・」
「だから、気にしなくていいって。ちゃんとクリスマスには間に合ったんだから、ね?」
立夏と一緒に買いに来たのは、家族へのクリスマスプレゼント。毎年全員に買っているためあまり高いものは買えませんし、私が初めてクリスマスを体験した年には既にいた・・・立夏の様なパターンにもなると、何を買うか少し迷ってしまいますけど、今年もこれまでと被らないように選びました。あまり高いもの話し、と言う事になっていますし、アルバイトもしているので(普通にファミレスとかで、ですよ?)そっちも問題なし。一応、まだ定期的なアルバイトができず、たまにある正史編纂委員会からの依頼の様な事でもない限りおこずかいのみの妹達よりは高い物を買いましたけど。暗黙の了解、みたいになってますし。
・・・本当に私、人の中で暮らすことに慣れていますね。それでもまだ一つだけ慣れていないイベントがありますけど。
「・・・ありがとう、アー姉大好き!」
「ちょ・・・立夏」
少し考える様子を見せていた立夏は、その表情を笑顔に変えて抱きついてきました。
一応いまいるのは電車の中なので目立つのではないかと思いましたが・・・今更だと思って周りを見回すのはやめ、立夏の頭をなでます。で、撫でているとアナウンスが流れて・・・
「あ・・・ついたみたいだよ、立夏」
「うん。いこ、アー姉!」
走り出しそうになった立夏の手をつないで抑えてから、揃って改札を出て歩いて家へ向かいます。歩いていけない距離でもなく、バスも混んでいそうなので歩きで。
「そう言えばアー姉、髪伸びたよねぇ~。ウチに来た時からずっと伸ばしてるんだっけ?」
「うん・・・といっても、普通の人が伸ばす半分くらいしか伸びなかったんだけどね」
「だよねぇ・・・他のところもそこまで成長してないのかな?」
うぐっ・・・
「・・・一応、身長も伸びたし、胸も成長してるんだけど・・・」
「でも、アー姉は『年齢の割に幼い見た目なのに、蠱惑的な魅力のある謎の美少女』って感じで有名だし、いいんじゃない?」
「正直、他の人にそう思われてもなぁ・・・」
武双がどんな人が好きなのか分からない以上、後から対応できるように髪も伸ばしたのですけど・・・神性を抑えていても私の体はまつろわぬ神の物ですし、そもそも抑えるというよりは誤魔化すというのが正しいものでもあるために、基本的には人間の物とは違うわけで・・・何もしなければ私の身体は顕現した時のままですし、いくら工夫しても成長のスピードはとても遅い。武双は器用にやってカンピオーネになってからも普通の成長速度を保っていますけど。私も、まつろわぬ神でありながら少しは成長しているという奇跡に感謝するべきなのかもしれません。
せめてもの救いは、ギリシア神話では『女神と人との間に子を成す』と言う物語があるおかげでそういうことが可能であるという事でしょうか・・・
「・・・アー姉ってホント、ソウ兄のことが大好きだよね~」
「ちょ、立夏!?」
不意打ちで顔が赤くなっているのが分かります。本当に私・・・
「アー姉ってかなり乙女になってるよね~。たまに神様だってことを忘れちゃうくらい」
「それはまさに今思った。・・・それと、私が神だってことはたまに思い出すくらいでいいから」
「それにしたって、じゃない?アー姉ヒロイン度高すぎ」
・・・ヒロイン度ってどうやって計るんだろう?外見とか出会い方とか?
なんにしても、このまま妹にやられっぱなしと言うのも悔しいですし・・・
「・・・そう言う立夏は、武双のことをどう思ってるの?」
「ん?兄的な意味でも家族的な意味でも男性的な意味でも大好きだよ?」
・・・さも当然のことであるかのように言われ、逆にこっちがダメージを受けました。やっぱり、既に告白している組は強いですね・・・
「それにしても、ソウ兄は競争率が高すぎるんだよねぇ・・・」
「それは・・・ええ、たしかにそうですね・・・」
神代家だと御崎姉さんと狐鳥はベクトルが少し違いますし、ビアンカと桜、調はちょっと怪しい感じですけど、私を含めた他のメンバーは間違いないでしょう。
クラスメイトに聞いた話だと、生徒会でも会長さんと書記さんが怪しいようです。武双からたまに聞く話の限りでは(本人は気づいていないようですが)結構積極的な人の様ですし、三年もの間生徒会をやっていることから考えても強敵でしょう。夏休みの途中から武双の話し方が変わったことを考えても、何かしらの形で武双に気持ちを伝えたと考えていいでしょうし。朝倉梅先輩、侮れません。
書記さんは・・・たぶん大丈夫でしょう。綺麗な人ではありますがどこか残念ですし。名前は・・・何でしたっけ?
「そう言う意味では、ソウ兄がカンピオーネになってくれてよかったな~」
「というと?」
「一言言えば日本の法律も憲法も変わるし、重婚だってしても何も言われないでしょ?」
「あぁ・・・」
納得してしまう辺り私もどうかとは思いますが・・・確かにそれは必要になってくるかもしれません。
そうなれば魔術や呪術関連に関わりのある、政治にもつながりのあるお偉いさんに『お願い』すればすぐにでも書き換わるでしょう。他の国が何か言ってきたとしても、カンピオーネの名前を出せばすぐですし。
・・・私の名前でも同じことができそうですね、そういえば。この間世界の境界を部分的に狂わせてアストラル界に行ってスサノオノミコト・・・この国の結構偉いところにいるらしい神たちにあいさつしてきましたけど、国を壊すほど大暴れ!とかしない限りは好きにしろと言われましたし。隠居ジジイは表のことには極力首を突っ込まないんだとか。いただいたお茶、美味しかったです。
「・・・そう考えると、正史編纂委員会からしたらウチって絶対に手を出せないところ、と言う事になるの?」
「元々神代家は基本的に世界中のどの組織も手を出さないような家だったんだけど・・・ソウ兄がカンピオーネになって家族にアー姉が・・・まつろわぬ神がいるってことが世界中に知られてからはそれがさらに減ったかな~。組織潰しとか最近してないし」
「逆らっちゃいけないものベスト2ですからね・・・ナーシャはナーシャで神祖ですし」
さっきあげた二つに比べれば脅威度は低いものの、人の域は超えています。
「そうじゃなくてもパパとママは神獣相手に出来ちゃうくらいに強いし、昔から神代家にいる人は色んなところに恩を売ってあるしで、どうせ何か言ったら断れないんだけど」
広く根回しがしてあります。私の戸籍を依林姉さんが持ってきたのも討った恩の一つなんだとか。
「・・・よくよく考えてみると、ウチってかなり発言力があったりする?」
「立場的な意味じゃなければ、かなりあるんじゃないかな?ほら、カンピオーネが所属してるような機関って少ないし」
その時点ですでに出あり、さらには家族という少数単位でトップクラスを集めたがゆえですか。確かにカンピオーネでどこかの組織に所属していると言えるのって黒王子に中国の教主、アニーくらいですし。その人たちもその人たちの領分に入らなければOKなはずですし。
・・・まあなんにしても、その辺りの細かいことは父さんと母さん、そして長男と次女に任せるとしましょう。
「そういえば、何で立夏は日にちをずらしてほしいって言ったの?」
と言うわけで、話題転換です。
「・・・それ聞いちゃう?」
「まずかった?」
「そうじゃないんだけど・・・ま、いっか!」
かなり悩んでいるような表情だったから心配したのですが、その必要もなかったようです。悩んでいた時間、約六秒。
「実は、ソウ兄に何をプレゼントしたらいいのか悩んじゃって」
「・・・そこそこ長い間一緒にいるのに?」
「むしろ、いるからこそ、かな―・・・いや、うん。正直に言うと二たくで悩んでた」
「何と何?」
「一つは、今日買ったやつ。日用品がいいかなー、って」
確かに、普段使うものはいいと思います。あって困ることはないですから。
「で、もう一つはこう・・・私の体をリボンでくるくる巻いて、私自身をプレゼント!みたいな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・へ?」
「私の体をリボンで・・・」
「いや、うん。大丈夫。聞こえてたから」
ただちょっと、理解の外側に飛んでいっただけで。
「えっと・・・それはやっぱり裸で?」
「うん。そっちのほうがそれっぽいでしょ?」
確かに、と言うよりもそっちのイメージしかないですけど・・・
「武双は、開けた瞬間に閉じると思うよ?」
「やっぱり?私もそう思ってやめたんだけど・・・ソウ兄って誘惑しても乗ってこないしなぁ・・・」
「そんなことしてるの!?」
同じ家にいながら、そんなこと知らなかった・・・けど、言われてみたらやってみそうな気も・・・
「・・・ちなみに、どんな?」
「誘惑してます、って言ったことはないけど・・・お風呂に直撃したり、下着で布団に忍び込んだり、添い寝したり?」
・・・私にできるのは最後の一個くらいでしょうか?もちろん、服は着たままですけど。
「ちなみに、他にもやってる人がいたり・・・?」
「んー・・・ビアンカちゃんは別の理由だから」
他の人と一緒じゃないと寝ることのできないビアンカは、最近ではローテーションで色んな人と一緒に寝ています。この時期はあったかいです。
「リズ姉・・・はソウ兄の入ってるお風呂に行くのをよく見るけど、たぶんあれ別の理由だし」
好意はあるんでしょうけど・・・そっちの関係ではなく、待つのが面倒なのでしょう。
「マー姉は間違いなく同じ目的じゃないかな?もっと他にもやってそうだけど」
「マリーはそうなんだろうなぁ・・・」
神代家の中で一番早い段階で武双に告白したマリー。それからのことを考えると、性格もあの性格ですし確定でしょうね。
「氷柱ちゃんは、たまに添い寝してるよ?」
「あの子はようやく素直になれたんだ・・・」
少なくとも、私が神代家に来たばかりの頃・・・何かキツイことを言ってしまっては自分の部屋で膝を抱えていたころに比べれば、かなり。
「切歌ちゃんは意外にも積極的になることが少ないんだけど、二人きりの時は何かしてそう」
私はてっきり、調と切歌の二人で、と言う事になるかと思っていたのですが、切歌一人だけのようです。こうなってくると調は武双のことをどう思っているのかが気になりますね。
「で、ナーシャちゃんは相変わらず」
「ナーシャは氷柱のポジションを継いでるよね・・・と言うか、ウチって人でなければないほど積極的になれてない?」
まつろわぬ神である私や神祖であるナーシャはあまり積極的になれず、しかし他の人間である人たちは各々程度の差はあれなれているという・・・
「う~ん・・・それは、どちらかろ言うと焦っている部分が・・・」
「焦ってる?」
一体何を・・・?武双に何かあるとは思えませんし・・・
「えっと・・・ほら、アー姉とソウ兄の出会いってかなりインパクトが強いじゃん?」
「・・・まつろわぬ神である私ですら、強い驚きを抱きましたからね」
恐れを見せず、親しげ。しかも家族にならないかと誘われたり、と言うのが私の感覚で出会ったその日のことになりますからね。さらに言えば、次の日には私を守るためにゼウスに戦いを挑んで、勝って・・・控えめに言っても、惚れてしまって仕方ないと思います。
「そう言うインパクトはソウ兄の中にもあるだろうし。だとするとアー姉に勝つには・・・というわけですよ」
「そう言うインパクトの話をすると、他にもいると思うんだけど・・・」
「いるんだけど、ちょっとね~」
ふむ・・・
父や兄から性的虐待とでも言うべきものを(最後まではしてないとはいえ)受けていてそこから助けてもらった氷柱。
神への生贄としてまつろわぬウィツィロポチトリの命で捧げられそうになっていたところをウィツィロポチトリを殺す、と言う手段で助け出されたマリー。
まつろわぬザババのもつ『捕虜を捕まえ殺害する』と言う属性から捕らわれ、惨殺されそうになっていた切歌と調。
シヴァとの戦いにおいて助けられ、後にヒルコの中からも助けられ、神祖であるという事実を受け止める手助けとなってくれた武双。
さて、この五人と私との間にある違いと言えば・・・
「・・・武双にとってもインパクトが強かった?」
「そういうこと!これから先何があっても、ソウ兄の中では一番インパクトが強かった出来事になるだろうし」
好意がどうなるのかはともかく、確かに武双の記憶の中に占める割合、の様なものは大きくなるかもできません。
「そう言うわけで、割と必死なのです・・・ソウ兄がハーレムOKかどうかが大きい・・・」
「んー・・・」
割とOKな気がします。武双ですし。
他のところから送り込まれた人は拒否でしょうけど、そうでないのなら・・・ワンチャンありそうです。
「そう言うわけで、今ソウ兄の中の印象が一番強いのはアー姉であり、最有力である、と言うのが私たちの総意なの」
「そこまでなっちゃうと、もうどう反応していいのやら・・・っ!?」
反射的に手に持っていたものを家の自室に『投函』しながら、武双の権能で作ったナイフを『召喚』。振り返りながら突き出された剣を弾いて立夏を庇うような体制をとります。
この気配、それにこの感覚は・・・
「・・・おかしいですね。今この時代にいる神殺しは八人全員と会っているはずなんですけど」
「ま、オレのことは知らなくて当然だろうよ。世間一般には知られてない・・・ってか、まだなってから二ヶ月もたってねえんだし」
クククッ、と笑うその男性を・・・本人の談によると九人目のカンピオーネをみながら体中に一気に呪力を流してブレスレットを破壊。そのまま一番使いなれた武器である槍を『召喚』して構えます。おそらく、彼の言は事実ですから。
「さて・・・ここで『目的は何ですか?』とか聞くのは野暮ですかね?」
「たりめえだろ。神と神殺しが出会ってすることなんて決まってんだからな」
まあ、その通りです。よっぽど特殊な事情でもない限りは、戦うのみでしょう。
神殺しは本能的に私たち『まつろわぬ神』などの強敵との戦いを望む。居場所が分かっているまつろわぬ神がいるのなら、そりゃくるでしょう。他の人たちが来ないのは武双によって契約をさせられているからですし。
「・・・狂気よ、我が手に集え」
唯一にして最大の権能でもある狂気を手に、そしてそのまま槍に宿らせてから状況を確認。武双がこの場にいない以上、ベストなのは彼を殺害しつつ立夏とともに問題なく逃げ切ることですけど・・・高望みせず、立夏を連れて逃げきることを最優先に考えましょう。周辺の被害なんかは・・・まあ、気にするまでもないですね。この際、どうなっても仕方ないです。
「じゃあ・・・いくぜ!」
そう言いながら先ほどと同じ剣で斬りかかってきたのを槍で弾き、そのまま穂先で突き刺して狂気を流し込もうとしますが・・・
「我は殻を纏う。環境に応じて得た殻よ、我を守護せよ!」
その穂先は彼の体に当たる前に弾かれました。言霊から察するに、何か透明な殻でも纏っているのでしょう。さて、殻を纏う神なんていたでしょうか・・・
せめてそれさえ分かれば、後は触れるだけでその権能を使えないようにすることができるのですけど。
「その者は生涯に一度、癒えぬ傷を負う。我、それを与える者也!」
その瞬間、繰りだされた剣を今度は弾くのではなく体勢を崩してでも避けます。理由は単純に、言霊にうすら寒いものを感じたから。言霊から単純に考えれば、治癒不可能な傷を負わされることになるでしょうから。
「オラッ!これで」
「火よ!」
体勢を崩したところにくわえられた攻撃は、その瞬間に立夏が彼の足もとに出した火と、即席で作ったのであろう野良ネコの使い魔によって邪魔され、その隙に距離をとります。
「・・・ありがとう、立夏。今のはちょっとまずかった」
「大丈夫。でも・・・相手がカンピオーネなら、私にできることは少ないかも・・・」
「気にしないで。今みたいにできる時にしてくれればいいから」
とはいったものの、どうしましょうか・・・よくよく見れば、あの剣もかなり危険そうですし。おそらく、魔剣の類でしょう。
「・・・あー。そうかそうか。そういや、神代家は全員が化け物クラスなんだっけか。・・・おもしれえじゃねえか」
そして、それを持つ彼はとても歪んだ笑みを浮かべてこちらを見ています。髪の色も気がつけば赤から緑に変わっていますし。手に集まっているのは・・・腐敗の力?酸化、と言うのが一番近いかもしれませんね。
「さーて、と・・・仕方ねえな。これ使うか」
そう言いながら、何のためらいもなく魔剣を持ちあげる。さすがはカンピオーネ。リスクを一切恐れていません。
「クククッ・・・さあ、魔剣よ。オレの願いを」
「穿て、ブリューナク!」
どう受けるかを本気で悩んでいたら・・・何とも頼もしい声と一緒に、見覚えのある槍が雷光を纏って飛んできました。
彼の背後から飛んできたそれに当たるかと思いましたが、彼はその場から消えて・・・いえ、ものすごく速いスピードで避け、武双と対峙する形で向かい合いました。
「へぇ・・・その剣は権能だろうし、今のは神速か?複数個権能を所持してる、ってことでいいのかな?新参にしては多そうだ」
そう言いながら武双はブリューナクを回収し、逆の手にゲイ・ボルグを持ってからこちらに何かを蹴飛ばしてきました。
それを受け止めてみると・・・
「聖槍・・・分かりました。いいですよ、武双」
つまり、私自身と立夏は私が守ればいいのでしょう。確かに、相手がどこまでできるのか分からない以上は手の数から考えても武双が対応したほうがいいです。
「へぇ・・・しくったな。予定ではあんたが来る前にもう一個権能が増えてる予定だったんだけど」
「つまり、アテを殺すつもりだった、ってことだよな。・・・死ぬ覚悟はできてるんだろうな」
次の瞬間には、武双の周りを雷と水が漂い、二振りの槍にも呪力が込められていきます。
明らかに、本気で戦う気でしょう。
「ハッ、あんたと戦っても死なないために権能を増やしたかったんだよ。・・・今日は月齢も悪い。この場はひかせてもらう。・・・次は、アンタと直接手合わせをさせてもらうぜ」
そう言った次の瞬間には、彼は神速を再び解放してどこかへ逃げて行きました。
武双は神速の権能だけは持っていないので追うのを諦め、二振りをしまってからこちらに歩いてきます。
「帰ったらすぐに今のやつの情報をまとめる・・・って方向でいいな?」
「うん、それでいいけど・・・今のって、本当に?」
「俺は、カンピオーネだと思う。アテは?」
「あの男を倒せ、とでも言うように体中から力が湧いてきましたから・・・間違いないと思います」
二人の意見が一致した、と言う事はもう確定でしょう。となると・・・
「・・・聖槍は、このまま預かっていても?」
「ああ、念のために持っておいてくれ。家に帰ったら、切歌と調、ナーシャにも渡しとくか・・・」
とりあえずどうするかが決まったところで、私たちは家へと向かい始めました。
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