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俺の名はシャルル・フェニックス

作者:南の星
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堕天使と不死鳥

「っぁあ……疲れた」

体をそのまま倒して机に身を預ける。

あ゙あ゙づがれだ。

千冬にこってりじっぽりと絞られ、悪さをした猫のように首根っこを捕まえられながら教室に帰還した後、そのまま真面目に授業を受けた。

流石に一日に2度は説教されたくはない。

クラスには『千冬御姉様に罵られたい』とか『千冬様に踏み潰されたい』とか『千冬お姉様の妹になりたい』等々言い、俺に紹介してくれと頼み込んでくる猛者もいるが、お前ら1回受けてみりゃあ分かるって。

どんだけキツいか。

はっきり言って死ねる。物理的に。

つーか死んでる。物理的に。

これが上級生からの苛めというやつか……

「シャルちゃん、大丈夫?」

心配そうに白雪が俺の顔を覗きこんでくる。

やべぇ、後光が。白雪の背後から後光が見える。

貴女が女神か……

あっ、悪魔ですよね。知ってる。

「……大丈夫だ」

馬鹿な事を考え始めた俺の頭を心配しつつもなんとか答える。

「今度千冬さんにもう少し優しくして貰うように言っておくね。
その……シャルちゃんが……辛そうな所見てると……私も辛いから」

モジモジと躊躇いながら言う白雪がいじらしい。

出来た娘や!!

4限目の授業の時間に遭遇した二人とは比べものにならない。

ってか、実際に比べ物にならない。

家の家事、炊事をほとんどやってる白雪と、生活破綻者たる千冬、束と比べるのも烏滸がましい。

白雪がいなければ俺以外の部屋はごみ屋敷とまではいかないがかなり汚い部屋となるし、飯は出前か外食となるだろう。

本当に頭が上がらない。

「ありがとな。
んじゃ、帰ろうぜ」

「はい!」

嬉しそうに笑みを浮かべ白雪は頷いた。

さて、理子を確保し、恋を迎えに行かねば。

理子は同じクラスだが、俺の所に来なかったことを鑑みるに、友達とギャルゲー談義でもしてるのだろう。

案の定、ギャルゲー談義中で盛り上がっていたため、放置。

先に恋、白音を迎えに行くことにした。

1年の恋、白音のいるクラスに白雪と一緒に行く途中で見知った顔を見つけた。

「よっ、誠菜」

片手をあげ、フランクに話しかける。

茶髪をショートカットにした小柄な女の子で可愛らしいんだが、かなりの引っ込み思案。

「あ……あぅ……こ、こんにちわ……し、シャルル先輩……し、白雪先輩……」

「こんにちは。誠菜ちゃん」

時折嫌われてるんじゃないかと思うが、本人曰く恥ずかしいらしい。

まぁ、小動物みたいでかなり可愛らしいんだが。

兄とは似ても似つかないやつだ。

「ああ、それで今から恋と白音をよびにいって帰るんだが、途中まで一緒にどうだ?」

「……あぅ…そ…ぅう……その…………」

もじもじと体をさせて顔を俯かせる。

ああ、こりゃ、言いたいことが言えないときの反応だわ。

つーか、これ外から見りゃあ下級生苛めてる先輩にしかみえないよな……

「何処か行く予定でもあるのか?」

「……は……はい……」

「そうか。じゃ、また今度誘うな」

「……ご……ごめん……なさい……」

「いいって別に謝ることなんかないさ。なぁ?」

同意が欲しかったので白雪に話をふると、白雪も頷いて言った。

「うん。私達は別に気にしてないから大丈夫だよ」

「……はぃ………」

「じゃ、また明日な」

「また明日」

「……ぇ……その……また…………明日……」

ペコリっと小さくお辞儀をされる。

ヒラヒラと手をふって返し、別れる。

白雪は会釈したみたいだが、生憎俺はそこまできっちりした悪魔じゃない。

貴族にだってフランクさがあったっていいじゃないか。

それに俺は嫌われ者なんだからばっちOK。

そう自分の中で自己完結。

その後知り合いと出会うこともなく、二人のいるクラスについた。

「恋、白音帰るぞ」

ドアから顔を覗かせ、いることを確認し呼びかける。

ぞろっとまだクラスにいた後輩たちが反応した。

いや、まぁ、駒王学園でそれなりの有名人であることは自覚してるが、一々その反応は飽きる。ってかウザい。

理子曰く、『知らない人がいない有名人ランキングin駒王学園』で堂々の1位らしい。

有名人の理由としては『留学生であること』『フェニックスという変わった姓』『駒王学園二大イケメン王子』『ハーレム王』『サボり魔』『不良(?)』等々。

全くもって嬉しくないがやってることがやってることなので仕方がないと思わないとやってられない。

「……シャル」

「シャル兄様」

そうこうしてると、白音と恋がやってきた。

元々帰りの仕度は終わってたらしく、後は帰るだけだったようだ。

「あれ?理子先輩はどうしたんですか?」

理子がいないことに気づいたのか白音が訊いてきた。

「あー、ギャルゲー談義で白熱してたから置いてきた」

別にやましいことじゃないんだが、ポリポリと頬を掻き遠い目をして俺は言った。

ギャルゲー談義中の理子のはっちゃけ具合を思い出してしまったためだ。

あれはもうアルコールはいってんじゃねーの?って位のはっちゃけさだ。

ぶっちゃけついていけそうにない。

「……なるほど」

白音も理子のことを思い出したのか少し遠い目をした。

「……帰る」

俺も恋の意見に同意なんだが、置いて帰るのも忍びない。

「……一言いれて帰るか」

そう結論に達した。

一度クラスに帰ってみると「りこりんちょっちゲーム屋はしごしてくる!」とのことで心の中でハンカチを振って見送った。

なんか琴線に触れるゲームの話でもあったのか?

3年である千冬と束は俺といると注目されて面倒とのことで二人で帰るため、今日の帰りは四人でとなった。


そして白雪が晩飯の食材を買い忘れたとのことでスーパーに寄った帰り道――

「付き合ってください」と告白を受ける一誠の姿を目撃した。

「……嘘……」

と白雪が手を口に当てて驚き。

「…………ありえない」

と目をパチパチと何度も瞬かせ白音が酷評し、

「…………!?」

恋までもが目を見開いた。

まぁ、変態兵藤(兄)が告白されてるシーンを生でとなると驚くよなぁ……

ぶっちゃけなくても駒王学園で変態3人組と悪評名高い一誠が告白されてるなんてありえない光景だからな。

でも、一誠に告白してる女は誰だ?

黒髪なのはいい、でもロングヘアーであり目なんかは碧眼しかもロリ巨乳系美少女。

おまけの堕天使の気配。

そんな相手の告白に一瞬の迷いなく即答でOKした一誠には脱帽するが、レイナーレじゃないことは確かである。

本当、この世界は俺を楽に楽しませてはくれないらしい。

分からないってのは厄介だが生きてるって気がするな。

レーティングゲーム前は最低限は原作通りでいてほしいと思ってたが、苦労する楽しみってのも存外に面白いもんだしな。

静かに俺は獰猛な笑みで鼻の下を伸ばしロリ美少女と帰宅と洒落こんだ一誠を見ていた。


 
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