アカメが斬る! 抜刀必殺の帝具使い
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第四話
「二時、三時、六時、九字の方向!」
「二、三はスレイブ!他二つは俺が対処する!」
「了解」
と、テリンガの指示があった方向を見ると・・・確かにその方向からイノシシの様な危険種がこちらに向けて突進してくる。
とりあえず、せっかくの機会であるのでこうして特訓をすることにした。スレイブも剣の状態で鞘から抜くか奥の手を使うかしない限りは代償を必要としないので参加している。
方針としてはこうだ。
テリンガには戦闘能力が皆無なので戦わず、その代わりに特化している耳で周りの状況を認識。逐一それを俺達に報告して状況に合わせて対応できるものがそれに対応する形だ。
最初は慣れるまでは急に対応するのは難しいだろうと思っていたのだが、テリンガの能力を侮っていた。テリンガは、本当に周りの情報を完全に認識できている。どこからくる、と言うのを言われてからそいつが実際に来るまでに、直進ならかなりの速度を持つイノシシもどきですら十秒弱かかるのだ。対応するのはかなり楽。一緒に行動していれば不意打ちなんかを受ける心配もなくなるだろう。
「次、零時の方向・・・む、群れで一気にきます・・・」
「「ゲ・・・」」
と、目を閉じて耳を澄ましていたテリンガも含めた三人がこれを零時にすると定めていた巨木の方向を見ると・・・それを先頭の者がへし折り、その後ろに続くように次から次へと走ってくる。
信じたくない。しかし、目の前で起こっている以上は信じるしか・・・!
「まずっ・・・テリンガは俺とスレイブの後ろに隠れ、前以外から何かが来たらすぐに報告!俺とスレイブはとりあえずひたすらあれを倒すぞ!」
「「りょ、了解!」」
この後、俺とスレイブはひたすらテリンガを守れる位置をキープしながら危険種を狩りに狩りに狩りまくり・・・
「あ、上からも何か・・・」
「・・・・・・・・・こ、」
そろそろ、精神的な限界が近づいてきて・・・
「こうなりゃやけだコンチクショウ!」
スレイブに投げ飛ばしてもらって上から来たやつを迎え撃って倒し、落下の勢いでイノシシどもを吹き飛ばした。
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「うっわー・・・カズキにスレイブ、テリンガの三人はまたたくさん討伐してきたねー・・・土竜までいるよ」
「まあ、やりすぎた自覚はあるけど・・・途中からもうやけくそぎみに来るやつを狩ってたし」
「ちょうどこのイノシシの通り道に当たったのか、やけに次から次へと来た」
「そして、それを食べようとしたやつも・・・喉、疲れた・・・」
とりあえず討伐した危険種をうまいこと縛ってまとめ、ボール状にして転がしてきたんだが・・・それでも疲れた。
「まあ、テリンガがどこから来るか教えてくれるおかげで引き際がはっきりと分かるからな。おかげでギリギリまで狩りを続けられた」
「へえ、テリンガがいるとそんなことまで分かるのか・・・今度から、他の者との連携も練習しておいてくれ」
「あ、はい」
そして、ここ一カ月の間にテリンガはメンバーからの信頼を得ていた。一番の要因はスタイリッシュがあの性格であるため、まず間違いなくあれに対して思うところはないだろう、という本人としてはとても遺憾であろう理由なのだが・・・個人的には良かったと思っている。
「まあなんにしても、この周囲の危険種はスムーズに討伐できるようになったな」
「いろんなタイプのやつがいて攻撃してくるから気が抜けないぜ」
「いいじゃん、その方が面白い」
「ってか、それくらいでないと特訓にもならないしな」
今回のイノシシは真正面から来るタイプだったが、酸を吐くやつとかもいるからな。何が飛び出すか分からない。
正直、体力よりも精神力を削られる。
「で、どうだ二人とも?ナイトレイドのみんなを一カ月見て」
「んー・・・そだね・・・」
チェルシーは少しばかり悩むようなしぐさを見せてから、
「うん・・・つよいね・・・。そこの例外を除けば、私が前にいたチームの誰よりも強いよ」
その言葉にタツミとマインの二人は喜んだような表情をするが、
「でも・・・強いからって生き残れるわけじゃない」
次にチェルシーが言った言葉で表情が固まり、
「昔の報告書は読ませてもらったけど・・・シェーレとブラート。殉職したこの二人・・・人間としては好感持てるけど、殺し屋としては失格だと思う」
「なっ!」
その次の言葉で、怒りに染まった。
「皆も甘いところをどうにかしないと、これから先いくつ命があっても足りないんじゃない?」
そして、チェルシーはそんな二人を気にもせずにそう言い残し、アジトの中へと入っていく。
はぁ、まったく・・・
「アイツ・・・どこまでも、ムカツク・・・」
マインはそんなチェルシーにいらだちを感じたのか、手をきつく握りしめてそうもらす。
「相変わらず、ズバズバ言うヤツだな」
「あー・・・悪いな、皆。変なところで不器用なんだよ、アイツ」
一応そう謝っておいてから・・・
「とはいえ、もう少し甘いところを減らさないといつ死んでもおかしくない、ってのは俺も同意見だ。何かを見捨てたり、諦めたり・・・そう言う力も必要なんだよ、この稼業は」
と、個人的な意見を全員に言ってから、チェルシーの後を追って扉を開き・・・
「・・・って、お前・・・」
「アハハ・・・ごめんね、カズキ。また私の代わりに謝ってもらっちゃって」
「いいよ、気にすんな。もう今更だ・・・それに、俺も同意見だったしな」
入ってすぐのところで壁にもたれかかっていたチェルシーの横で俺も壁にもたれかかり、そう話をする。
「・・・もう二度と、あんな思いをしたくない。そうだよな?」
「やっぱり、カズキには分かっちゃうか・・・うん、ここの連中には、ああなってほしくない」
俺とチェルシー、スレイブが共通して抱いているであろう思い。
仕事を終えて帰ってきてみたら、チームのメンバーが全滅してたなんてことは。一気にたくさんの仲間を失うなんてことは、もうあってほしくないし、誰かがそんな目に会っていいとも思わない。
俺達も殺し屋である以上、誰かをそう言う目に合わせることにもなるだろう。そこが裏の仕事同士の対決で起こる虚しさだ。だから、どうせなら仲間内でくらいは・・・
「・・・あーあ、ちょっとつらいなぁ・・・」
「だな・・・」
そして、その時のことを思い出してしまい、俺達は二人揃って同じつらさを味わっていた。
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