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ウイングマン ビッグプラススモールプラス

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混沌 新たなる助っ人

 
前書き
美紅のピンチに姿を現したのはコスチュームが破れて身を隠していた桃子だった 

 
1.
「美紅ちゃん大丈夫?」
桃子が声をかけた。
美紅は自分のコスチュームの上に全裸でうつ伏せに倒れていた。
前は隠せているがおしりは完全に丸出しだった。
スモールプラスが桃子に蹴られて倒れたときに自分のコスチュームの上に投げ出されたのだ。
「うん、大丈夫」
5cm程度の高さで落とされただけだったので美紅は肉体的には大したダメージは受けていなかった。
ただ、小さくなっているとは言え全裸では恥ずかしい。
さっきまで身を隠していたパンティがスモールプラスに持ち上げられた際に少し離れたところに置き去りにされていた。
すぐ手の届くところにはコスチュームしかなかった。
仕方がないので、起き上がって自分が上に乗っていたコスチュームで身を隠そうとしてみたが、大きすぎてうまく持ち上げることができずに身を隠すことはできなかった。

「あっ!?」
桃子は美紅とその周りを見てみて、ひとつアイデアが閃いた。
「とりあえず、これで体を隠して」
まずは傍に落ちていたパンティを拾って美紅に渡した。
そして、美紅を持ち上げるとパンティと一緒にコスチュームの上から移動させた。
「私に美紅ちゃんのコスチュームを貸してもらえないかな?」
桃子は唐突な提案をした。
「美紅ちゃんのコスチュームを着て私が戦うわ!」

その提案は美紅としては正直、複雑な気持ちだった。
確かに桃子に葉っぱの水着で戦わせるわけにはいかない。
しかし、桃子が自分のコスチュームを使ってしまえば自分が元に戻った時に着るものがなくなってしまう……
ただ、現状、美紅が今の自分の大きさを考えれば戦力にもなりえないことくらいは明白だった。
それならば今の時点では桃子に譲るのが正しい選択だろう。
「うん。わかった。広野君をお願い!」
美紅自身も納得してその提案を受け入れた。
桃子は美紅の返事を聞いて、コスチュームを着はじめた。
「胸がちょっとだけキツイかな……」
桃子の方が美紅よりも身長こそ低いが出るところは出ていたのだ。


2.
林の中に逃げ込んだビッグプラスはその体形とは裏腹に、素早かった。
木々の障害を俊敏に避けてウイングマンの追撃から逃げていくのだ。
木々が邪魔でまったく攻撃することができないどころか、徐々にその差を離されていく。
「このままじゃマズイな……」
そう思った健太は木々を避けていくのをやめた。
健太がとったのは、追撃に邪魔な木はクロムレイバーでぶった切ってショートカットをする戦法だ。
その戦法はうまくいったようだった
みるみるビッグプラスとの間は縮まっていく。
「うわあ、きったねー! 正義の味方は森の木々は大切に!だろ!」
その行動にビッグプラスは猛烈に抗議した。
「うっ!」
健太としては痛いところをつかれた。
しかし、今更やめるわけにはいかない。
「だったらお前が逃げるのをやめろぉっ!」
そんなことを言われたからといっても足を止めるわけにはいかない。
追いつかれれば勝ち目はないことぐらいビッグプラスも自覚している。
「こうなったらこの手しかないな!」
ウイングマンとの差が縮まってもう一歩でつかまりそうなところまで追い詰められた。
そこでビッグプラスは奥の手を出した。
木を避けるとその木を目がけて光線を放った。
「うわっ」
いきなりウイングマンの目の前の木が巨大化して通せんぼをするのだ。
クロムレイバーで斬ることはできるが、労力は今までのレベルの比ではない。
またビッグプラスの間が開いてしまった。
「クッソー!! あったまきた、待てぇ~っ!」
健太はムキになって追いかけた。
しかし、ビッグプラスが木々を巨大化する作戦は、想像以上にウイングマンを苦しめた。
切れども切れども果てしない。
気づけばビッグプラスから随分と離されてしまった。
「それなら、これでどうだ!」
ウイングマンは戦法を変えた。
スパイラルカットを放った。
ウイングマンの額に伸びる角がブーメランとなって相手を攻撃するのがスパイラルカットだ。敵と距離が離れていても相手を攻撃できるのだ。
そして、この作戦は功を奏した。
ウイングマン本体しか気にしていなかったビッグプラスの足に見事に命中したのだ。
「うわっ!」
ビッグプラスが転げるように林から飛び出した。

「ビ、ビッグじゃないかっ!?」
目の前には今まさに桃子に追い詰められているスモールプラスがいた。
ビッグプラスを追っていたウイングマンも続いて姿を現した。
「え~っ!?なんでピンク?」
本当ならここで健太はビッグプラスにトドメをさすはずだった。
しかし、それよりも先に桃子の格好に驚いた。
桃子の着ていたコスチュームが美紅のものなのだ。
「どういうこと?」
健太は状況が理解できなかった。
胸のあたりが少々キツめで少し胸が目立っていて、美紅のコスチュームとは違った雰囲気に見えるが間違えようがない。
桃子が美紅のコスチュームを着ていることも気になるが美紅の姿が見えないことが気になっていた。
「美紅ちゃんは?」
桃子は少しすまなそう表情を見せて視線をずらした。
その視線を追うと、その先には美紅がいた。
「ひ、広野君……」
パンティに包まって恥ずかしそうにちょこっとだけ顔を出した美紅がいた。
一応、健太に存在だけでも知らせようとのアピールだった。
「美、美紅ちゃん!!!!?」
小さくなった美紅の姿を見て、驚いた。
同時にスモールプラスに怒りが湧いてきた。
「くそー! 美紅ちゃんをこんなにしやがって!」
ビッグプラスのトドメを刺すつもりだった健太だったが、攻撃対象を急遽変更した。
スモールプラスにクロムレイバーを向けたのだ。
「うわっ」
いきなりのウイングマンの攻撃にスモールプラスも逃げ腰だ。
「今度は私が相手よ!」
逆に桃子はビッグプラスに攻撃を始めた。
連続キックだ。
いつものコスチュームのタイトスカートよりも今のプリーツスカートは軽い。激しく動くと、簡単にひらひらとめくれてしまう。
動きが早いので一瞬ではあるのだが、時折、スカートの間からパンティ替わりの葉っぱも見えていた。
その葉っぱがビッグプラスの心に火をつけた。
「お前、なかなかおもしろい格好してるじゃねえか!」
なんと体を張って桃子のキックを両手で受け止めたのだ。
「何っ!?」
それだけではなかった。
「きゃあああああっ!」
ビッグプラスはそのまま片手でキックしてきた右足を押さえ、左足も捕まえて桃子を逆さ吊りにしてしまったのだ。
逆さになれば当然、重力には逆らえない。スカートが全開にめくれてしまい、葉っぱのパンティも丸出しになってしまった。
「どうした、ピンク!?」
スモールプラスとの戦いで状況を把握していなかった健太だったが、桃子の悲鳴に振り向こうとした。
しかし、さらに桃子からの絶叫が――
「リーダー、こっち見ないでぇっ!!」
必死の叫びだったが時すでに遅し。
振り向いた健太は桃子の葉っぱパンティに釘付けだ。
「おっ!!!?」
ビッグプラスは勝ち誇った顔をしている。
「ゲヘヘ、お前すごい格好をしてるよなあ」
「し、仕方ないでしょ、あんたのせいで服が破けちゃったんだからぁっ!」
顔を真っ赤にして桃子は泣きながらスカートを必死に押さえて股間を隠そうとする。
しかし、ビッグプラスは追い討ちをかける。
さらに桃子の両足を広げようと力を入れた。
「もうっ! 足を広げるのもやめてよぉ~!!! お願いだからぁ~!!」


3.
ウイングマンは桃子とビッグプラスの動向に釘付けになった。
スモールプラスは完全に置いてけぼりを食らっていた。
「オレを忘れてやがる……」
しかし――
「ということは、チャ~ンス!」
スモールプラスはウイングマンに光線を向けて放とうとした。
「小さくなればお前なんかにぎりつぶしてや……」
ドン!
スモールプラスの背中に衝撃が走って、前のめりに倒れた。
誰かがスモールプラスに蹴りを入れたのだ。
ビームは放たれたが明後日の方向だ。ウイングマンにはかするどころか放たれたことすら気づいていない。

しかし、この攻撃は完全に予想外だった。
さっきも同じような展開を経験していたばかりなので警戒はしていた。
しかし、桃子とウイングマンの動向は確認している。
小さくなった美紅が自分を攻撃をできるはずもない。
警戒するべきところにはそれなりに注意を払っていた。
それなのに攻撃されたのだ。
ビームを放とうとした瞬間に攻撃を受けたので、放たれたビームは狙ったはずのウイングマンではなくビッグプラスにビームが命中してしまった。
ビッグプラスがみるみる小さくなる。
縮小するビッグプラスでは桃子の足を持つことができない。足はビッグプラスの呪縛から逃れることができたが、桃子はそのまま地面に一直線。地面に顔をぶつけた。
「痛ったぁ~」
強打した鼻を押さえなら顔を上げると桃子の目の前には綿菓子くらいの大きさになったビッグプラスがいた。
「よくもやってくれたわねぇ~」
桃子は不敵な笑みを見せてビッグプラスを睨んだ。


何者かに攻撃を受けたスモールプラスは振り返った。
「だ、誰だ!?」
そこには見覚えのある人物がいた。
この作戦に入る前にヴィムから知らされていたデータで見たことのあったショートカットの女性だった。
「アオイさん! 来てくれたんだ!」
健太も驚きの声を上げた。
ポドリムスという異次元から来た短髪の美少女アオイの姿がそこにはあった。
「ヒロインはおいしいところで登場するもんよ!」
アオイはピースサインをしてそれに応えた。
「どうしてここがわかったの?」
健太は素直に疑問を聞いたが、さすがに巨大化した桃子を見たので、というのははばかられた。
さすがに全裸姿が街から丸見えだったことを知ったら桃子のダメージは相当のものだということは想像ができた。
アオイは適当に答えると、すぐに話を変えた。
「カンよカン。それより桃子ちゃんはなんで美紅ちゃんの衣装着てんの?」
さっきの全裸で巨大化していたはずなのに、どういう経緯でそうなったのか全く想像がつかなかった。
「説明はあとあと。今はこいつらをやっつけるのが先決よ」
桃子も話をはぐらかした。
何から話していいかわからないし、話をすれば自分の恥ずかしい恰好のことなどを語らなければいけなくなる。
それはとにかく避けたかった。
「そうだ。そいつらを早くやっつけよう!」
健太も桃子の気持ちを察した。
そして、モールプラスを指差した。


「お前、何やってんだ!」
小さくされたビッグプラスはスモールプラスの足元で怒鳴っていた。
文句を言うのも仕方がない。流れ弾とは言え、まさか味方からの攻撃を受けるとは考えていなかった。しかも質の悪いことに虫のように小さくされてしまったのだ。
抗議を込めてスモールプラスの足を何度も何度も蹴るのだけれどまったく効いている様子はない。
「悪い悪い」
スモールプラスも完全に平謝りだ。
土下座までしている。
「こうなったら奥の手しかないな!」
ビッグプラスは言った。
スモールプラスはその発言にはいい顔をしなかった。
「あまり乗り気じゃないんだが……」
しかし、今の状況を考えればその提案しか手がないこともわかっていた。
「カッコイイ俺様がなんであんな格好にならないといけないんだ」
そう言って頭をかかえた。
「この際仕方ないだろう!」
渋るスモールプラスに必死の剣幕を怒鳴るビッグプラス。こうなると渋ってもいられない。
「わかったわかった!」
仕方なしにスモールプラスは苦い薬を飲むかのように目をつぶった。そしてビッグプラスをつまんでひと飲みをした。
ゴクン。
「わあ、食べたよ!」
その行動を見て、健太たちは驚いた。
「何考えてんだと、共食いかぁっ!?」
プラス怪人同士の会話は聞こえてなかったので、文句を言われたスモールプラスがビッグプラスを食ってしまったように見えた。
しかし、仲間割れが間違いであることはすぐわかった。
スモールプラスの体がビッグプラスに近い形に変形し、さらに巨大化した。

「なんだあ~!?」
巨大化したプラス怪人を見て健太は驚いた。
巨大化したと言っても最終的には2mくらいの大きさなので、その大きさで驚いたわけではない。単純に変身したことに驚いたのだ。
巨漢の雲の化け物の誕生だ。
「ハハハ。これでオレはタイププラスになったぜ!」
そう名乗ったプラス怪人はボディビルダーのようにポージングして自分のボディをアピールした。
「こうなったオレは、ものを大きくするのも小さくするのも自由自在だぜ!」
そう言うとさっとアオイの後ろにまわって腕を掴んだ。

「何をするのよ!」
アオイは背中に寒気を感じた。
手を振りほどこうと必死にもがくがタイププラスのパワーは半端なかった。
「さっきのお礼さ」
タイププラスは不敵に笑って、アオイの体を完全に羽交い絞め状態にした。こうなるとアオイはもう逃げることはできない。
「アオイさんを人質にする気かっ!?」
健太も桃子もアオイを盾にされては攻撃の手を止めざるを得ない。
「ハハハ。何言ってるんだ? そんなチンケなことをするためにこいつを取り押さえたわけじゃないぜ」
タイププラスは不敵に笑った。
「この姿になったオレは、モノを大きくしたり小さくしたりできるだけじゃないんだ。それを見せてやろうと思ってな」
そんなことを言われても、アオイはピンと来なかった。
今までのプラス怪人の攻撃を見てきたわけではないので、この怪人が何をやってくるのかまったくわからなかった。
ただ攻撃対象は間違いなく自分なのだ。
何をされるかわからずにアオイは恐怖で顔を歪ませた。
「覚悟しろよ!」
タイププラスの腕の色が変わり、気功のようにアオイに向けてエネルギーを放たれた。
アオイの体をうっすらと光が包んだ。
「ちょ、ちょっと、何をするのよ!?」
アオイはタイププラスの手をのけようともがいてみたが、それを跳ねのけることはできなかった。
しかし、痛みはまったく感じなかった。
それなのに、アオイを見る健太と桃子の顔が歪んでいく。
「あ、アオイさん……」
特に桃子は絶句して表情は恐怖でこわばっていた。
「やめろ! そんなことして何になるっ!? 」
アオイとしては腕を強く掴まれている程度で、それ以上の痛みはないのに2人の表情や態度はどういうことだろう。
何かしら恐ろしいことが行われているようにしか思えなかった。
「ちょ、ちょっとみんなどうしちゃったのよ?」
桃子は戦意喪失しているように見えた。
「動けないけど、私は大丈夫だから!」
アオイは死に自分の無事をアピールする。
痛みもないし何も我慢もしていないのだ。
しかし、健太、桃子にはまるでその言葉が聞こえていないかのように表情がみ合っていない。
アオイも強がってはみたが段々と不安になりはじめた。
その不安を煽るかのようにタイププラスはアオイに語りかけた。
「ほう、その恰好で大丈夫なのか。お前は衣装、窮屈になっただろ?」
確かに言われてみればそうだった。
両腕を抑えられていたせいでしびれてそう感じているのだとアオイは思っていた。
しかし、冷静になってみると確かに締め付けられていると感じる部分は限られていた。胸と腰、そして足と腕……
その窮屈さはコスチュームの位置と合致していた。
すごく嫌な予感がする。
とりあえずアオイは自分の目で確かめてみようと窮屈だと感じる部分に目をやった。
コスチュームが異様に伸びきっている!
それだけじゃない。アオイの体が伸びきっていた!
体が太りすぎてコスチュームがはちきれそうになっていたのだ。
「え~っ!? 何、これぇ~っっ!?」
アオイは一瞬、自分の目を疑った。というよりは信じたくなかった。
相撲取りかと見まごうくらいに太らされてしまっているのだ。
もう一度見直したが、やはり体が変化しているのは間違いがなかった。
実際どのくらい太っているかは認識はできていないがふくよかな手足やお腹を見ると、その変化には愕然とした。
「ハハハハ。実害としては動きが鈍くなるくらいだが、精神的なダメージは相当キツイんじゃないか?」
アオイの反応にタイププラスは得意げに笑った。
続いて、ウイングマンと桃子に向けて言い放った。
「お前たちもこの攻撃は受けたくないだろう?」
「た、確かに……」
ウイングマンと桃子は目を見合わせた。
「さあ、次はお前の番かな?」
タイププラスは桃子を指差した。
「えっ!?」
いきなり矛先を向けられて桃子は焦った。
そして、自分の太った姿を想像すると、顔がみるみる青ざめた。
「これ以上太るのはイヤ~っ!」
桃子は慌ててその場を逃げ出した。
桃子は決して太ってはいないが肉付きはいいので体型を気にしていたのだ。
桃子の絶叫はアオイの恐怖心をさらに煽った。
「も、桃子ちゃん!? ちょ、ちょっと……」
自分の体が太ってしまったということは理解してはいたが、実際の自分の姿を見たわけではないのでどの程度なのかわかってはいなかった。
しかし、桃子のこの拒否反応の激しさを見ると自分の姿がどれだけ変化しているのか知るのが怖くなった。
すがる気持ちもあって、タイププラスの腕を振り払い桃子を追いかけようとしたが、体が予想以上に重かった。とてもじゃないけど桃子には追いつかない。
ドスンドスドスン。
動くたびに軽く地響きまで聞こえてきそうだ。
「どすこいどすこい。ハハハハハ」
タイププラスはアオイの動きを見て大爆笑だ。
健太はその光景を見て何を言えばいいのかわからず、固まっていた。
アオイは絶望感と共に、怒りに身震いした。
こんな体にしたタイププラスに張り手の一発でも食らわさないことには気が収まらない。
「もうヤケクソよっ!」
アオイはタイププラスに張り手を一発お見舞いした。
ドスコーイっ!!!
乙女の恨みか凄まじいパワーを発揮したのか、タイププラスはおもいっきり吹っ飛ばされた。
「す、凄い……」
健太もこのパワーには驚いた。
「お、お前のどこにそんなパワーがあるんだ!?」
吹っ飛ばされたタイププラスは驚くどころの騒ぎではなかった。
太って動きが鈍くなる。
そして精神的ダメージを受ける。
その2つから戦力ダウンと計算していた。
それなのに、このパワーはなんだ?
逆に要注意だ。

「乙女の美を汚した恨みは怖いわよ。さっさと元に戻さないと、ひどい目にあうわよ」
アオイは開き直った。
ドスコーイっ!
今度は腹部に平手を一発お見舞いした。
確実にダメージを与えた一発だった。
しかし、タイププラスも策士だ。
ダメージを受け、フラフラになりながらも不敵な笑みでこう言った。
「オレを殺ったら、一生そんな力士みたいな体型だぜ。いいのか?」
そんなことを言われては、アオイは攻撃することができない。
実際見てはいないが、桃子が真っ青になって逃げ出すくらいの姿なのだ。
自分の張り手のパワーから考えても相撲取りのような姿に違いなかった。
ここでもう1発張り手をお見舞いすればタイププラスを倒すことはできるだろう。
今までのスレンダーなナイスボディを捨ててこのまま相撲取りような姿で生きていくのか、この瞬間、選択が問われているのだ。
「ぐぐぐ……」
「アオイさん、オレが代わりに殺ってやる!」
クロムレイバーでウイングマンがタイププラスに斬りかかろうとした。
「やめてーっ!」
ドスコーイっ!
アオイは思わずウイングマンを平手で突っ張った。
思い切り吹っ飛ばされる。。
「アオイさん、どうして?」
いきなり味方からの攻撃に健太も困惑の色を隠せない。
「ごめんなさい。でも、ケン坊が倒しても、私、一生このままになっちゃう!」
アオイは今にも泣き出しそうな顔だ。
「ハハハ、これで勝負はあったな」
タイププラスは大満足で大笑いだ。
「クソッ」
苦虫を噛み潰す健太。
アオイも膝からがくんと崩れ落ちて泣いて悔しがった。
この状況を打破する策がまったく思い浮かばなかった。


4.
「アオイさん!アオイさん!」
下の方から彼女を呼ぶ小さな声が聞こえた。
聞き覚えのあるその声の主は――
「み、美紅ちゃん?」
声の方に視線をずらすと白いパンティが地面に落ちていた。
その隙間から恥ずかしそうに顔を出す美紅の姿がそこにはあった。
「どうしたの!? そんなに小さくなっちゃって……」
小人のように小さくなった美紅の姿を見てアオイは驚いた。
「美紅ちゃんはあいつらに小さくされちゃったんだよ」
健太がそれをフォローした。
「つまり、あいつは人のサイズや体型を変えることができるのね……」
やっかいな能力だとアオイは改めて思った。
真面目に今の状況をなんとかしなきゃと考えているのに、不自然に太っているその姿のせいでまったく様になっていない。
健太も悪気はないのだがアオイを見る目が少し冷ややかだ。
「そんな目で見ないでよぉ~!」
半泣きのアオイに申し訳ないと思ったのか健太もモードを切り替えた。
「でも、とにかく、元に戻す方法を聞き出さないとはじまらないぞ……」
とはいえ、やはり笑ってしまいそうなのは簡単に抑えることはできない。
神妙な顔つきで必死にごまかしていた。
「その話なんだけど……」
美紅が口を挟んだ。
美紅は小さくなってしまったために出せる声の大きさも小さくなっているために、必死に大声で言っているのだけれど、発言自体がとても申し訳なさそうな遠慮がちに聞こえる。
「どうしたの? 美紅ちゃん」
アオイは不真面目な健太は放っておいて美紅の声に傾けた。
「あの怪人を倒せば元に戻るはずよ」
その言葉にアオイは前のめりになって、美紅に顔を近づけた。
「美紅ちゃん、どうしてそれをっ!?」
ちょっと顔が近づきすぎて、旅人を襲う北風のように息が荒い。
美紅はちょっと引き気味だ。
しかし顔を近づけてくれたお蔭であまり大声を出さずに済んだ・
「さ、さっきスモールプラスが言ってたのよ。元に戻るには倒すしかないって」

キラーン!
アオイは目を輝かせた。
「……ということは」
健太の方に目をやると健太も目を輝かせていた。

タイププラスは逃げ腰だ。
身から出た錆、自業自得。すでに自分で弱点をさらけ出していたのだ。
「それさえわかれば、はやく決着つけなくちゃ!」
ウイングマンはそう言うと決めのポーズをとった。
アオイを早く元に戻してあげたいという気持ちから出た言葉だ。
それにウイングマンに変身できる時間もあとわずかというのもあった。
「ソーラーガーダー!」
健太が叫ぶと、ウイングマンの各関節部が一瞬、光に包まれた。
その光が消えると、今まで光っていた部分にプロテクターが装着されていた。
これがソーラガーダーだ。
時にシールドの役割を果たす一方で、必殺技のデスボールを放つことができる強化パーツだ。

アオイも張り手の構えを見せた。
早くこの恰好とはオサラバしたい。攻める気持ちは急いていた。
「乙女の純情踏みにじった罪は重いわよ。覚悟しなさい!」
ウイングマンがデスボールを放つ前にアオイは動いた。
タイププラスにどすこーい!とばかりに張り手を一発食らわせた。
腹部に命中し、タイププラスは思いっきり吹っ飛んだ。

チャンスだとばかりに健太は必殺攻撃の準備に入った。
「覚悟しろ! デスボール発射!!」
ソーラガーダーの胸部が開き、火の玉のような放電する球体が2つ発射された。
その2つの球体が同時にタイププラスに命中した。
2つの球体は巨大な1つの放電する玉になった。
これがデスボール。ウイングマンの必殺技だ。
デスボールはターゲットを覆ってその中に閉じ込めると動きを完全に封じるのだ。
「な、なんだコレは動きがとれないぞ」
タイププラスがデスボールの中で暴れてもビクともしない。
さっきまで現場から逃げ出していた桃子もデスボールの発射音を耳にすると戦況を確認するために、ひょっこり戻ってきた。
「人の体を弄んだ罰よ!」
デスボールにとらわれて身動きのできないタイププラスにアオイはそう言った。
そして健太に攻撃を促した。
「ケン坊、一気に殺っちゃって!」
ウイングマンはヒートサーベルを手に構えた。
「ヒートアタック!」
ウイングマンはデスボールごとタイププラスを真っ二つに切り裂いた。
「まさか、自分の作り出した相撲キャラに追い詰められるとは……」
そう言い残してプラス怪人は真っ二つになった。
そして、デスボールの中で爆発した。
「ドスコ~イ」
それが最後の言葉だった。

アオイ、桃子、美紅も歓喜の声を上げた。
「やったぁ!」
3人のウイングガールズは拳を天高く伸ばして、まるでウルトラマンが変身して地上に現れたときのようなポーズで喜びを表した。
それを見た健太は――
ウイングマンの格好のまま、鼻血を出して倒れた。
「美、美紅ちゃんっ!?……う~ん」

タイププラスが死ぬことで、アオイも美紅もみるみる元の姿に戻っていった。
力士のような姿だったアオイは体も元のスレンダーのボディに戻った。
一緒に伸びていたコスチュームも体に合わせて収縮した。

問題は美紅だった。
小さかったときにはパンティに体を隠していたものの、大きくなるとそのパンティを手にしたまま大きくなってしまった。
大きくなった美紅は全裸で拳にパンティを握った状態だった。
大事なところは何一つ隠せていない。
それどころか傍から見れば、自分でパンツを脱いで大はしゃぎをしているように見える。そんな格好だったのだ。

健太が倒れても最初は美紅にはその理由がわからなかった。
自分自身もいきなり大きさが戻ったことすら理解できていなかった。
ただ、自分の見ていたものの倍率が普通に戻りに戻ってくる。
その視覚で最初に見えたのがウイングマが鼻血を出して倒れてしまう姿だった。
「え!?」
どうして倒れたのか理由を考えるよりもまず、倒れた健太に驚いた。
その健太の異変に関係なくアオイは歓喜の声を上げた。
「やった! 元に戻ったぁっ!」
桃子もアオイの変化を一緒に喜んだ。
「よかったですね、元通りですよ、アオイさん!」

「広野君、大丈夫?」
間もなく健太は変身が解けたが、顔は鼻血まみれだった。
アオイと桃子はアオイの体型が戻ったことの喜びと安心感が大きかった。
血まみれの健太を気にかける人間は美紅しかいなかった。
健太の体を揺らして無事を確認した。
タイププラスとの戦いはある程度見ていたが、それほどのダメージを受けたような気はしなかった。
「誰にこんなこと……」
健太は、美紅が介抱をするまでもなく、すぐに健太は意識を取り戻した。
しかし、健太の目に飛び込んできたのは美紅の小ぶりだが形のいいバストだった。
「う~ん……」
健太はまた鼻血を吹きあげてまた気絶した。
「広野く~んっ!?」
その状況に美紅は大慌てた。
いきなり目の前での健太の出血&気絶で美紅には少しパニックになっていた。
そして、美紅の慌てる声でようやくアオイと桃子が健太たちの方を見た。
「アオイさん、桃子ちゃん、広野君が!?」
涙目で美紅は2人の方を見た。
「あらあら……」
アオイと桃子は落ち着いていた。
健太の倒れている原因が明白だから慌てる必要もなかった。
「美紅ちゃん、その恰好じゃけん坊はまた倒れちゃうわよ」
アオイのその言葉に桃子は顔を赤くしてうなずいた。
「その恰好……?」
美紅は自分の姿を改めて見てみた。
そして自分が全裸だったことに気が付いた。
「いやあ~んっ!!!」
美紅は慌てて体を隠そうとした。
自分が元の大きさに戻ったことをは理解していたが、健太がいきなり倒れていたので自分のことを鑑みる余裕がなかった。
さっきまで小さくされていたがパンティが体を隠してくれていた。
しかし、体のサイズが元に戻れば、パンティで体を覆うことなどできるはずがなかった。
今の状況は当然の結果だった。

自分の着るものは……
自分の右手を見た。パンティをしっかり手に持っていた。
美紅は慌ててそれを履いた。
しかし、それでもトップレス。小ぶりながら形のいいおっぱいは全開だ。
「もう、どうしいたらいいのっ!?」
美紅は顔を真っ赤にして慌てて手ブラで胸を隠した。
「あ~ん、もう嫌だぁ~」
しかし、どうすることもできず恥ずかしすぎて地べたに座り込んだ。
そんな美紅を見てアオイはこう言った。
「美紅ちゃんてば大胆なんだから!」
相撲取りショックからようやく冗談も言えるくらいには平常心を取り戻せたのだった。
 
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