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ルドガーinD×D (改)

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二十九話:俺はあと二回変身を残している

 
前書き
分かり辛い所があったのでちょっぴり加筆しました。 

 
やっとだ…やっとたどり着いた。険しい道のりだったな。また、迷子になった時はどうしようかと思ったけど何とか辿り着けてよかった。若干出遅れた感があるけど、ヒーローは遅れて登場するものだから別にいいよな? 丁度、リドウとコカビエルと戦う前みたいだし、誰も死んでないから間に合ったはずだ。異論は認めません。

俺はリドウと睨み合ったままそんなことを頭の端で考える。戦闘前に何をしているんだと思うかもしれないがある程度気を抜いてやらないと疲れるんだよな。テンションはちょっと高いぐらいが戦闘においては良いんだよ。自然体で戦いに臨む難しさは分かる人には分かる、そしてそれが出来れば実力を最大限に発揮することが出来るんだから理にかなった考え方なんだ!

……はい、ごめんなさい。ただ単に迷子になったのが恥ずかしかっただけです。
いや…ずっと目を背けていたけど俺もう精神年齢は二十二歳なんだぞ?
パパになっていてもおかしくない年齢なんだぞ。というか、エルが生まれた年齢だし……。
それなのに迷子ってどうなんだよ……ダメだ、考えていたらテンションが落ちて来た。
この話は無しにしよう。うん、それがいい。ここはリドウを煽ってテンションを上げよう。



「リドウ、先にお前に絶望感を与えてやろう……どうしようもない絶望感をな…。骸殻は変身するたびにパワーがはるかに増す、それは良く知っているな? そしてその変身をあと二回もオレは残している……この意味が分かるな?」



「「「「な、何だってえええっ!?」」」」


「……って、それって○リーザのセリフじゃねぇか! ポジション逆だろ!?」


俺の驚愕の真実に反応して叫ぶグレモリー眷属と聖剣使い達。
リドウとコカビエルも反応はするがリアクションは取ってくれない。
イッセーは良い反応を返してくれたので俺は満足だ。
みんな、良いリアクションをありがとうな。リドウが乗って来てくれるとは全く思っていなかったから実はみんなしか頼りがいなかったんだ。俺は良い仲間を手に入れたよ。
心の中で一人感動していると苦々しげな顔をしたリドウが話しかけてくる。
意外だな、あいつのことだから無視されると思ったんだけどな。


「やっぱり、フル骸殻に至っていたか……流石はあの人の息子だな、ルドガー君」

「……俺の肉親は兄さんだけだ」

「よく言うぜ……まあ、のんびりと話すのもなんだ―――戦おうぜ!」

「はあっ!」


流石はビズリーの息子だというリドウに対して俺は自分の肉親は兄さんだけだと言う。
それに対してリドウはまるでお前が殺したくせに言うのかよ、とでも言いたげな態度をとるが直ぐに顔を引き締めて骸殻を発動して俺に襲い掛かってくる。
それに合わせて俺も地面を強く蹴って走り出す。
そして真正面から俺の槍とリドウの両手の医療ナイフがぶつかり合う。


「「うおおおおおっ!」」


雄叫びを上げてぶつかり合うと同時に激しい火花と衝撃波が生み出される。その衝撃に思わず後ろに下がりそうになるが根性で踏みとどまり逆にそのまま一気にリドウを押し返す。
リドウはそのことに若干驚きながらもすぐに体勢を立て直して再び俺に斬りかかって来る。
だが俺には当たらない。俺はまず、右上から振り下ろされるナイフを、体を捻るようにして避け、その捻りを利用して反動をつけた槍を横に薙ぎ払うように振るう。

それに反応したリドウは縦に一回転するように飛んでそれを躱す。だが、避けられるのは予想できていたのですぐさま詰め寄り勢いをそのままに蹴りつける。流石のリドウもそれは避けきれなかったが吹き飛ばされると同時に何とか受け身をとってすぐに立ち上がっていた。
そう言えば、戦っていて気づかなかったけどいつの間にかイッセー達と離れてしまったな……
まあ、あいつらを信じるしかないか。


「やれやれ……兄貴に年上は敬えって習わなかったのかよ、ルドガー君」

「兄さんなら、お前に対しては鉛玉をぶち込めって教えそうだけどな。
 ……リドウ、結局の所、お前の目的はなんなんだ」

「目的なんて大それたものじゃないさ。この町を中心にドデカい花火を上げてここいら一帯の人間をぱーっと皆殺しにしたら面白そうだなって思っているだけさ」

「……自分の存在を誰かに認めてもらうためにか?」


俺がそう言うと、飄々とした表情が一変して苦々しげに顔を歪ませるリドウ。
こいつは恵まれているように見えても全く恵まれていないんだ。誰にも認められていないから誰かに、より多くの人に認めてもらうために出世しようとしていた。

自分が偉くなれば他人に認めてもらえるとそう信じて今まで必死に生きてきたんだろうな……。
でも、あいつも俺も一度死んでこの世界に来た。今まで築き上げてきた全ての物を失って、また一からスタートだ。ちょっとばかり自暴自棄になってもなんらおかしいことは無い。

今までのあいつは裏でテロリストとつるむことはあっても、決して自分に悪名が立たないようにしていた。そんなあいつが堂々と出てきているということは、自分を認めさせるためなら悪名であっても構わないと思うようになったんだろうな。まあ……死んでまでクルスニク一族に縛られているんじゃ自暴自棄にもなるよな。俺はそう思って憐みの視線をリドウに向ける。


「まただ…っ。またその目だ! ユリウスもお前も同じような目で俺を見やがる!
 俺はその目が大嫌いなんだよ。ユリウスも最初は俺なんかと同じ目をしていたのによ。
 気づいたらその目で俺を見る様になっていた……俺はそれが堪らなく気に入らないんだよ!」


そう言うや否や、叫びながら無茶苦茶にナイフを振り回して来るリドウ。俺はそれを槍で防ぎながらリドウの目を見る。その目は孤独に憑りつかれていて、酷く冷たく寂しげに見えた。
兄さんが同じ目をしていたというのなら……きっと同じ理由なんだろうな。
リドウ……お前はただ―――


「俺はお前の周りにいる奴らを全員消してあの時のユリウスと同じ目にしてやりたかったんだよ! 言えよ、ルドガー君。お前だって過去に戻りたくてしょうがないんだろ! 失った者を取り戻すために全部捨てちまえよ!」


俺はしばらく黙ってナイフと槍を打ち合わせながらリドウの言葉を聞いていたが、ついに堪え切れなくなってリドウの手に持つナイフを吹き飛ばし、そのまま腕を掴みリドウを叩き伏せた。
そしてあの世界で最後に戦った時のように見下ろす。



「リドウ……本当は、お前はだだ―――1人ぼっちで寂しかっただけなんだな」



その言葉に激しく顔を歪まし苦しみの表情を浮かべるリドウ。
一人で寂しかったから同じ目をした同族を求めた。かつてはそれが兄さんだった。でも兄さんは俺という家族が出来て一人じゃなくなった。だから、リドウは、今度は俺を同じ目をした同族にしようとした。

考えて見ればこの世界で初めてリドウと会った時こいつは偶然ではなく必然的に俺に会った。
こいつは俺がこの世界で暮らしていることをだいぶ前から知っていたんだろうな。
そして、俺を同族にするためにバルパーやコカビエルと一緒に計画を立てた。

俺を孤独にして孤独から抜け出すために……こんなはた迷惑なやり方でな。
まあ、俺がもし“過去”を選んでいたらこいつみたいなことをしていたかもしれないけどな。
でも、俺とこいつは違う。俺は押さえつけていた手をどけてから口を開き、
ハッキリとした口調で伝える。


「リドウ……俺は過去を取り戻すわけでもなく、未来に生きていくわけでもない。
 俺は“今”を生きるためにこの槍を振るうって決めたんだ。
 そして、俺は新しくできた大切な人を俺の全てを賭けて守ると選択した」


「何だって、お前もユリウスも他人なんかの為に命を賭けられるんだよ!?」


よろよろと立ち上がりながらどこからか出したナイフを再び手に持ち叫ぶ様に聞いてくるリドウ。どうしてか? ……まず、お前は前提から間違っているんだよ。


「リドウ……お前は一つ、間違っている。
 人は―――誰かの為でなければ命を賭けられない」


兄さんが俺の為に命をかけてくれたように、ミラがエルの為に命をかけたように、
俺がエルの為に―――全てを捨てたように!
人は誰かの為に命をかける。それは自己犠牲でも何でもない、ただ己の大切な者の為に全てを捧げたいというエゴだ。そして、そのエゴこそが―――人の意志だ!
槍を突きつけるように構えてリドウと向かい合う。……これで終わりにしよう。


「リドウ、俺がお前に引導を渡してやる!」

「はっ! 出来るものならやってみろよ!」


少し調子を取り戻したのかそんな事を言いながら構えるリドウ。
そのままの状態で一瞬とも永劫とも思える静寂が流れる。
そして、ここだと思った瞬間に二人同時に動き出す。

俺は無数の小型の槍をリドウ目掛けて投げつけていき、リドウは赤く巨大な斬撃を飛ばして来る。お互いがお互いの技に当っているがどちらも止まらない。
巨大な槍を手に構え、放たれた弾丸のように一直線に突っ込んでいく俺。
それを迎え撃つように同じように突っ込んで行きながらも回転するように斬りこむリドウ。


「うおおおっ! マター・デストラクトオオオッ!」


「おらぁっ! スパイン・ビュート!」


両者の技がぶつかり合い、凄まじい音が鳴り響く。リドウ、お前は強い。
骸殻だって俺と同じハーフの状態なら力は互角だ。
それなのにどうして―――俺が今お前を押しているか分かるか?
理由なんてたいそうな物じゃないけど、俺がお前より強い理由はちゃんと存在する。

本当に簡単な理由さ、骸殻は人の欲望に、意志に反応する力だ。
それは何も進化の時にだけ発揮されるわけじゃない。骸殻は使用者の意志に応える。
もう分かるだろ、俺がお前より強い理由は一つ―――意志の差だ!


「はああああっ!」


「マジ…かよ…っ。くそおぉぉぉっ!」


リドウの体を槍で貫きそのままの状態で校舎に突っ込んで行き、校舎を破壊しながら止めとばかりにリドウを突き飛ばす。リドウはまるで大砲のような音を立てながらぶつかり校舎の瓦礫の中に消えていく。………これで積年の恨みを果たしたことにしておいてやるよ。

あ、因みにもし壊れた校舎の賠償請求をされたらその時はお前に押し付けるからな。
まあ……死んでいたらコカビエルがやったことにするけどな。
ん? お前が払わないのかだって? 俺が払うわけがないだろ。
これは全部あいつらのせいだ。だから俺は悪くねえ! ルドガーは悪くないですー。
そんな冗談を考えていた時―――


「小猫ちゃあぁぁぁん!?」


イッセーの悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた。







ルドガーとリドウが戦っていた反対側ではグレモリー眷属と聖剣使い達がコカビエルと対峙していた。ここに居る全員には目立った傷は見られない。しかしながら、状況は確実にコカビエルの方が優勢であった。何故そう言えるのかといえば簡単だ。

お互いの表情を見比べてみればいい。戦意は失っていないものの焦りと緊張から額から冷たい汗を流しているグレモリー眷属と聖剣使い達。それに対してコカビエルは涼しげな顔を浮かべ、相手が次は何をしてくるのかを楽しみに待っているありさまだ。
これを見れば誰が見てもコカビエルが優勢だというのが分かるだろう。


「部長、譲渡の力です!」

『Transfer』

「ありがとう、イッセー。これならきっと!」


赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の二つ目の能力である譲渡を受けて普段の何倍もの大きさの滅びの魔力弾を創り出しコカビエルに撃ちだすリアス。今までの攻撃は誰がなにをやっても効かなかったがこれなら通用すると思っていた。だが現実は非常だった。


「ほう、赤龍帝が一人いるだけで戦略の幅が広がるのだな」


そう感心したように呟くだけで自らを覆い尽くさんばかりの巨大な魔力弾を避けようともしない。それどころか両手を広げて受け止める構えを取り出したのだ。驚くグレモリー眷属達をしり目にコカビエルはその巨大な正面から受け止める。


「ぬ、中々の威力だな。抑え続けるのは少々厳しいか」

「うそ……止めた? しかも素手で…あれは全てを滅ぼす滅びの魔力から出来ているのに…」


呆然とするリアスを気にするでもなく、コカビエルは魔力弾を横に逸らす。
魔力弾はそのままテニスコートに飛んでいき三面あったテニスコート全てを跡形もなく消し飛ばした。ここから分かることは二つだ。リアスの先程の攻撃は決して弱かったわけではないこと。

そしてもう一つは―――それだけの力をもってしてもコカビエルには傷一つ付けられないということだ。その事実に一同は堕天使幹部の実力を思い知らされた。残酷な現実により沈黙に包まれる中でコカビエルはさらに絶望に落とした方が面白いと思いあることを口にする。
それは決して口にしてはならない最大の“タブー”。


「それにしても……聖剣使い共も大変だな。“存在しない”神の為に働くというのは」

「な、なにを言っているの?」

「要するに―――神は既に死んでいるんだよ。当の昔に……戦争の時に魔王共と共にな!」


聖書の神の死……禁じられた事実を言い放つコカビエル。その事実に嘘だとイリナとゼノヴィアは同時に吐き出す。しかしながら、コカビエルは淡々と聖書の神が存在していないがために聖魔剣なるものが生まれたのだと言い、その淡い幻想を打ち砕いていく。

ショックを受けているのは何もイリナとゼノヴィアだけではない。アーシアもフラフラと今にも倒れそうになりながら独り言をつぶやいている。彼女は悪魔になっても未だに神への信仰心を持ち続けていた。それだけ敬虔な信徒である彼女が己の信じていたものが既に存在しないと言われればそのショックは計り知れない。


「神の愛がないなんて……私達はどうすればいいの?」

「私の信じていた物は…希望は…何だったのだ……」

「主の愛が無い今……何を信じればいいのですか?」


悲しみに打ちひしがれる三人の重たい空気に加えて、コカビエルとの圧倒的な戦力差が
一同の戦意を奪っていく中、一人だけ、戦意が未だに衰えていない者がいた。
その人物の名前は兵藤一誠、今代の赤龍帝。

彼は悲しみにくれる彼女達の前に進み出てコカビエルと彼女たちの間に盾になるように立つ。
そしてキッと力強い目をコカビエルに向ける。そのことにコカビエルは強い関心を抱く。
ここまで徹底的に潰して心が折れない者を見るのは中々いないとコカビエルの中でのイッセーの評価は上がる。


「神がいるとかいないとか俺には正直いって分からねえ。ただな、お前がどんな手を使ってきても俺はお前に勝つことを絶対に諦めない! 力がなくたって、弱くたって俺は絶対に諦めることはしない。手足をもがれたってお前に食らいついてやる!」


イッセーの諦めない心に折れかけていた三人の心が少しだけ持ち直す。一同の心も同様だ。
その様子を見たコカビエルはニヤリと笑う。その笑みは嘲笑などの類ではなく純粋に面白いと思ったものだ。彼が今後成長していけば自分と相対するにふさわしい人間になるのではないかという思いから笑ったのだ。


「アーシア、イリナ、ゼノヴィア。……今だけでいい、今だけでいいんだ。
 今だけでいいから…神の代わりに俺を―――支えにして一緒に戦ってくれ」


その言葉に息をのむ三人。アーシアに至ってはボロボロと涙を流している。
イリナとゼノヴィアも若干目に涙を浮かべてイッセーの力強い背中に見入っている。
コカビエルもまた、その強い精神に感心し同時に―――どこまで耐えられるか試したくなった。

彼が仲間の精神的支えとなるなら、彼を殺せば仲間は崩れる。
だが、それでは面白くない。どうせなら仲間の方から一人ずつ殺していってどこまで彼が堪えられるか見てみたい。そう考えたコカビエルは手に巨大な光弾を創り出す。
まずは、あの子供から殺そう、そう思い手を振る。


「貴様の心がどこまで耐えられるか見せて貰おう、赤龍帝」


「なっ!? 小猫ちゃん!」


コカビエルの放った光弾の先に居たのはこの場で最も幼い塔城小猫だった。
イッセーはすぐさま身を挺して庇いに走り出すが幾分距離がありすぎた。
小猫は突然の事で体が対処出来ずに身動きをとることが出来ない。
せめてもの抵抗として腕で自分の体を抱きしめ目をつむる。
そして、次の瞬間、彼女の周りを光と爆風が包み込んだ。


「小猫ちゃあぁぁぁん!?」


小猫はその声を聞きながら来るべき衝撃と痛みに備える。
しかし、いつまでたっても衝撃も痛みも感じない。
もしかすると自分は痛みも感じずに死んでしまったのかと思いながら恐る恐る目を開けてみる。

すると目の前にはもう何年も見ていなかった懐かしい背中があった。
あの日からもう二度と会うことが無いと諦めていた温もりが彼女のすぐ傍に居た。
彼女がそのことに目を疑っているとその人物はゆっくりとこちらに顔を向け優しく微笑んだ。



「ケガはないかにゃ? ―――白音」



「……姉…様?」



そこにはずっと自分を見捨てたと思っていた姉が身を挺して自分を庇う姿があった。
 
 

 
後書き
リドウさんが最も嫌がることは同情されることだと思って書きました。
肉体的に追い込む方を期待していた方ごめんなさい。
 
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