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俺の名はシャルル・フェニックス

作者:南の星
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その後と不死鳥

俺の婚約をかけたレーティングゲームが終わった。

辛く苦々しい勝利によって。


俺は一人でレーティングゲームが始まる前と同じ部屋にいた。

少し休憩したあとサーゼクスさんたちがいる所へと赴かなければならない。

憂鬱だ。このままふて寝したくなるぜ……

部屋を見回す。

やけに広い部屋だ。

一人だからか。

俺の眷属は全員病院送りとなった。

全員が重傷だからだ。

しかも、白雪と理子は意識不明の重態。

自分の我が儘に付き合わせた結果がこれだ。

全力を出さなかった結果がこれだ。

俺に力がなかった結果がこれだ。

本当に嫌になってくる……

自分の弱さに……

もし、俺に宝涙を自腹で買える金があったら?

もし、俺が全力を出さなくても俺一人、もしくはあと一人つけたして、二人で本隊を押さえられたら?

もし、俺が親という偶像にすがらなければ?

俺は権力も力も心も弱い。

それが嫌というほど思い知らされた。

どうすれば、強くなれる?

力をつけるなら修行するしかない。

でも、心と権力は?

精神年齢が35でも、こんな甘ちゃんなんだ。

今さら急激に強くなれるとは思えない。

権力にしたってそうだ。

たかが1貴族の4男で11歳。

しかも正室ではなく側室の子供。

権力なんて無いに等しい。

本当に俺はどうすればいいんだ……

皆と一緒にいるためには……

いっそのことはぐれ悪魔になって禍の団に――――

何馬鹿なことを考えてるんだ!

アホか俺は……

理子の敵かもしれねぇところじゃねぇか。

そんなとこ行けるわけねぇ……

でも、はぐれ悪魔か……

もしもの時は……

いや、フェニックス家にとって俺はいなくてはならない存在のはずだ。

宝涙を作れるのは俺だけなんだから。

でも、だからといって眷属まで安全が保証されるのだろうか……

相手にとっては俺だけさえいればいいわけで……

眷属は不慮の事故とかで……

いや、それだけじゃねぇ。

いくら宝涙を作れるからといっても限度というものがある。

例えば謀られて反逆者にさせられはしないだろうか……?

どうしても殺したいという理由があればそれも可能だ……

クソッ、どうしても考えが悪い方にいきやがる。

ありえねぇことがありえるんじゃねぇかって疑心暗鬼になってやがる。

ああ、クソッどうすりゃあいいんだ……


俺がソファーに座って頭を抱えていると、コンコンコン、と部屋の扉がノックされた。

「私、リアスよ。入っていいかしら」

リアスか……

リアスは両親にも、兄(サーゼクス)にも愛されてる。

だから、原作でもライザーとのレーティングゲームがおきた。

縁談を無にするために……

そう思うと羨ましかった。

愛してくれない片親を持つ俺は愛してくれる両親を持つリアスが羨ましくて妬ましかった。

前世から親に恵まれない俺は、な。

「……はいってくれ……」

苦々しく言った。

醜い俺の心がでてしまいそうだったから。

ガチャッと扉が開く。

「シャル兄さま……!」

すると、白音が走って抱きついてきた。

「…………白音……
済まねぇ……黒歌傷つけちまった……
俺……自分のことしか……考えてなくて……自分の意地で……皆……怪我させちまった……済まねぇ……本当に……済まねぇ……」

馬鹿だ。俺はどうしようもないほどの馬鹿だ。

ライザーを馬鹿にできねぇほどの馬鹿だ。

自分が馬鹿すぎて涙が出てきやがる……

俺が今言ってることもそうだ。

こんなこと、俺のために戦ってくれた皆には侮辱でしかねぇのに……

「シャル兄さま…………黒歌姉さまだって嬉しかったと思います……
いつも、シャル兄さまは自分一人でやっちゃうから……」

「……俺は……本当は弱いんだ……いつも強がってるだけなんだよ……
自分の弱さが嫌で……強くならなくちゃ……いけなくて…………それで強くみせようと……口調まで偽って……愛されなくなるのが……怖くて……だから……頼れなくて……今回頼った……結果が……これだ……」

「シャル兄さま…………」

ぎゅっと白音の抱きつく力が強くなった。

まるで、私はここにいるって教えてくれてるみたいだった。

「貴方は王として間違っていないと思うわ。
相手の意表をつけてたもの」

聞こえたのはリアスの声。

意表をつけてただけじゃいけないんだよ……

「大元が間違ってたんだよ。リアス。
まだ早かった。リアスの言う通りだった。
でも、俺は焦ったんだ……焦りすぎていたんだ……」

後の祭りだ。ただの愚痴に等しい。

だってこの時期じゃなければ、親父もヴィレーネも俺のことを警戒してレーティングゲームをしてくれない可能性が高かったんだから。

今だからこそ、悪魔の駒を手にいれて調子にのった子供にお灸を据えるという名目でレーティングゲームができた。

俺がもう少しでも年をとれば、油断してくれず、問答無用で結婚させられていた。

だから、今の時期なんだ。

「……朱乃、幻滅したか?
これがお前を助けた悪魔の本当の姿だ」

自嘲の笑みを浮かべて言った。

お前の憧れは幻想に過ぎないと。

「…………いえ……」

朱乃はただそれだけを言うと黙った。

どんな顔してるのか、興味はわいたが見ようとは思わなかった。

「それで……?
リアスは何のために来たんだ?
まさか、あんな情けない勝利を祝いに来た訳じゃないだろ?」

「……お兄さまがお呼びよ」

さて、何がおこるかね……

白音を退けて立ち上がる。

「わかった。今いく……」

「貴方酷い顔よ?」

「それでも、魔王様のお呼びだろ?
いかなきゃいけない」

そのままリアスと朱乃の横を通りすぎて、魔王様がいるであろう部屋へと向かった。








サーゼクスさん、グレイフィアさん、グレモリー夫妻、シトリー夫妻、フェニックス夫妻、ライザー、ソーナがいる部屋へとついた。

どうやら、アンドロマリウス家当主様は退席したらしくいなかった。

「久しぶりだね。シャルル君」

つくと同時にサーゼクスさんが話しかけてきた。

「はい。グレモリー家であった以来ですね」

「うん。あのときはなかなか楽しませて貰ったよ。
それで、君がここに呼ばれた理由は分かるかな?」

「縁談が破棄されることですか?
それとも、緋き不死鳥の型(フェニックス・オブ・スカーレット)のことですか?」

「その緋き不死鳥の型というのも聞いてはみたいが、縁談についてだ」

緋き不死鳥の型について聞かれると思ったんだがな、違ったらしい。

「縁談は破棄されることとなった。これは君がレーティングゲームで勝った時の条件だ。
それとは別に私から面白い戦いを見せてくれた君に褒美を与えよう」

一瞬何を言われたかわからなかった。

褒美?褒美と言ったか?

あんな酷いゲームをしておいて?

「何故でしょうか?
お世辞にも魔王様を満足させるようなゲームではなかったと思いますが……」

「私は素晴らしい勝負だったと思う。
君はゲーム前から圧倒的に不利だった。
そこから勝つというのは褒美を与えるのに相応しい結果だと思うのだよ」

「それに、将来有望な若手がいなくなるのは惜しい」

その一言に俺はブルッと体を震わせ、動揺を隠せなかった。

いなくなるのは惜しい……

俺がはぐれになろうかと考えてることがバレたのか!?

それとも、俺が暗殺されると示唆してるのか……!?

恐い、目の前にいる紅色の髪をした魔王が……

全てを見透かされてるようで……

ここには俺とサーゼクスさんしかいないのではと思えるほど俺の意識はサーゼクスさんに持っていかれた。

「…………」

ダメだ。言葉がでない。

口がカラカラと渇いて、俺の口が自分のじゃないのかと錯覚してしまう。

「さあ、シャルル君。なんでもあげるよ。何が欲しい?」

再度問われ、俺は乾ききった口を開けた。

「お、俺に……力をください……
俺の眷属を守れるだけの、力をください」

「わかった。ならば、シャルル君には爵位と領地を与えよう。
そうだね。爵位は子爵でいいかな。
領地はキミはアミィ家の血もひいていたはずだから、御家断絶したアミィ家の領地を与えよう。
返還されてから代官をたてて魔王領となっていたから下賜しよう。
もちろん代官はそのままにして」

…………は?

いったい俺の目の前にいる魔王様は何を言ってるんだ?

乱心してるのか?

俺に爵位、しかも子爵を与える?

こんな11歳の子供に?

俺に領地を与える?

アミィ家の領地がどれほどでかいかは知らないが、代官がいるってことは人が住んでる場所もあるってわけだ。

嘘だろ?

あり得ないだろ?

「因みにこれはゲームを他のところで見ていた他の四大魔王も了承してる」

あっダメだ。

頭が追いつかない。

何考えてるのか訳が分からない。

突拍子もないことが連続で襲いかかってきて頭が働かねぇ。

助けを求めようと、グレイフィアさんを見るが、無表情。

グレモリー夫妻、シトリー夫妻、を見るが、絶句中。

ダメだ助ける悪魔がいない。

もう、深く考えるのはやめよう。

貰えるなら貰っておこう。

「有りがたく頂戴します」

「これからも、よろしく頼むよ。フェニックス子爵」


もう、どうにでもなれ……

ここ来る前に悩んでたことが馬鹿らしくなってきた……





この後あれよあれよと言う間に話は進んでいき、四人が無事退院するころには、かなりの領土を持つフェニックス子爵となってた。


あれ?おかしいな、急展開すぎてついていけないや……



◇◆◇◆◇

「よかったのか?サーゼクス。
大公や、大王を筆頭にかなり叩かれてるが……」

「アジュカ、キミも了承したじゃないか」

「まぁ、俺らの後輩だからね。
それくらいはするさ」

「強くなると思うかい?」

「当然だろう。だから、敵にならないよう手を回しただろう?」

「そうだね。
彼が敵になると厄介すぎる」

「旧魔王派か……」

「ああ。どうしても彼らは私達を受け入れようとはしてくれない」

「そうかやはりか……」

「私は、リアスやシャルル君のような若手が戦争する世界にはしたくない」

「同感だね」


 
 

 
後書き
ああ、今回は本当に申し訳ないです。

あと、原作までもう1話入ります。

眷属揃えないと……


 
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