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フリージング 新訳

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第15話 Tempest Turn 6

 
前書き
やばい。過去最低の駄文になってしまった……本当にすいません……
今回でイングリット戦は終了となりますね。次回はその後みたいな話になります。
カズト「お前、本当に文才ないな」
わかってるよ‼︎ 

 
「何故だ……」

イングリットには理解できなかった。
何故、サテライザーが乱入者の一年生を守ったのか……ではない。

「何故、貴様らは秩序を乱すことができる‼︎‼︎‼︎」

何故。どうして。その問いに答える者はいない。帰ってきたのは、サテライザーからの剣戟だった。

「レオ!フリージングを…」
「させるかよ。」

イングリットがレオに指示を飛ばすが、カズトの静かな声がそれを遮った。
その場の全員が其方に目を向ける。
そこに居たのは、やはりカズトだ。
だが様子が違う。先ほどの様に、荒々しい雰囲気は消えており、今度は静かな。
まるで氷の様な雰囲気を纏っている。

「止まれ。」

地面に突き刺したグラディウスが、赤い光を放つ。同時に、その柄が、ほんの一瞬だが、黒く光った。
その光が、レオの放ったフリージングの光とぶつかり、相殺する。
バチバチと刃が光を纏い、カズトの右眼も唸るような赤い光を放っていた。

「まさか…貴様……」
「ああ。俺流フリージングだ。」

ここで補足説明をしておこう。
通常、フリージングは自らのパンドラとイレインバーセットすることで発動することができる技だ。
だがカズトの場合、体の50%程度が聖痕なので、1人でフリージングを使うことができる。それはノヴァと同じ原理である。その能力を、カズトはボルトウェポンに大半を回しているが、フリージングが使えないというわけではない。

「カウンター限定だけど……パンドラ相手なら、これでも十分いける。」
「…………貴方、まだ手を出すつもり?」

カズトがフリージングを発動してきた事に、サテライザーが目ざとく反応した。

ーまだ俺が戦うのが嫌なのか……

少しショックだ。だが、カズトは引き下がる気は無い。サテライザーもだが、彼にだって、ここは譲れないのだ。

「先輩。これは俺が始めた事です。」
「私が、狙われたのよ。」
「乱入したのは俺です。」
「……足手まといにはならないで。」

サテライザーは少し顔を赤らめ、構える。もちろん照れ隠しだ。

「先輩は突っ込んで下さい。俺が、7位の攻撃とフリージングを防ぎます。」
「………………まかせるわ。」

そして、二人は並び立つ。
その姿に、何を感じたのかイングリットはほんの少し、優しい笑みを浮かべた。

「……いいだろう。サテライザー。ここから先は、戦士としての決闘だ。」

ディバイントラストを構え、高らかに名乗りをあげる。

「三学年7位。“秩序の守護者”。イングリット・バーンシュタイン。名乗るがいい、貴様ら‼︎」

それに応えるように、二人が名乗る。

「二学年2位。“接触禁止の女王”。サテライザー・エル・ブリジット。」
「一学年ランク外。アオイ・カズト。」

三人は、名乗りをあげた。
それは負けられないという意味が込められている。
ここから先は、人間では及ばない世界。
人外の超速戦闘である。
三人が、同時に動き始めた。

SIDE カズト

4つの刃がぶつかり合い、火花を散らす。当然、俺とサテライザー先輩、イングリット先輩の物だ。
サテライザー先輩が正面から突っ込み、迎撃に移るイングリット先輩のトンファーを俺がグラディウスを滑り込ませ、弾く。その都度、右手に尋常ではない負荷がかかるが、そんな物に構っている余裕はない。

「チィッ‼︎レオ!」
「はい!」

フリージングが張り巡らされるが、俺の剣から発せられた赤い光が阻害する。
戦闘しながらのフリージング解除は、相当の体力を削られるが、致し方ない。

「先輩!」
「わかってる!」

俺が右に、先輩が左へと加速していく。
左右からの同時攻撃。コンビネーションなど初めてだが、どうしてかサテライザー先輩の思考が読み取れる。
イングリット先輩もテンペストで応戦するが、回数で防げても速度は追いつかない。

「とった!」

イングリット先輩のトンファーをサテライザー先輩がかち上げ、俺がその間に剣戟を叩き込んだ。
その時だ。
頭の中に、イメージが流れ込んでくる。
雨の中、ノヴァを相手に1人で立ち向かうショートカットの少女。
悲しみを抱え、憎しみを潜ませた、イングリット・バーンシュタインの根底にある記憶の欠片。
それらが一瞬で流れ込んできたのだ。

「そんな………………」
「何を惚けているの‼︎」

イングリット先輩の打撃によって、現実に引き戻されると同時に、血を吐き出した。痛みはある。だが持続的なものではない。
サテライザー先輩が引っ張ってダメージを軽減してくれたからだ。

「言ったでしょ!足手まといにならないでって‼︎」

先輩が怒鳴るが、俺はまだ惚けたままだ。

「あなた、聞いて「泣いてた…」……え?」
「泣いてたんですよあの人は!親友を失って、たった一人で孤独に泣いてたんです‼︎」

右目から流れる涙を拭い、グラディウスを杖にして立ち上がる。

「先輩、手を貸してください。」
「え……?」

俺は戦う。

「あの人を縛っている鎖を、断ち切るために。」

SIDE OUT

絶叫をあげながら、カズトはグラディウスを上段に構えて突進する。
今までとは違う、単純な直進。普通なら、単独ならば簡単に避けられる。
しかし、その無謀とも言える特攻は、一人だけではなかった。
左右からの同時攻撃。当然、アクセル状態のサテライザーとカズトだ。
しかもその速度は今までで最高。
おそらく、ダブルアクセルを超えているだろう。そのアクセルは、彼らの決意が生み出せる物だった。

「ゼアッ‼︎」
「ハァッ!」

左右からの同時攻撃は、さすがのイングリットでも耐えきれずに、膝をついた。

「あんた、こんな戦いで親友が喜ぶと思うのか?」

カズトが顔を近づけ、イングリットに問う。その表情は真剣そのものだ。

「貴様……何故それを……‼︎」
「質問に答えろ!」
「黙れ!」

ガキンと、グラディウスを弾き、カズトとサテライザーを突き飛ばした。

「レオ今だ‼︎」

カズトが離れた隙を突かれ、レオがサテライザーにフリージングをかけた。
一瞬だが、サテライザーが膝を折る。
その一瞬を、学年7位は見逃さない。

「終わりだ、サテライザー‼︎」

渾身の拳を振り下ろすが、それは直撃しなかった。
拳とサテライザーの間に、銀色の閃光が走り、イングリットのトンファーを破壊した。
当然、カズトのグラディウスだ。

「きさ……‼︎」

カズトを睨みつけようとするが、そこに彼の姿はない。

まさかと思い、レオへと目をやる。
そこには、膝を吐いたレオと、それを見下ろすカズトの姿があった。

「終わりだぜ。イングリット・バーンシュタイン‼︎」

グラディウスを呼び出し、アクセルで接近してくるカズト。そして、フリージングから解かれノヴァブラッドを振りかぶるサテライザー。

しかし、イングリットにはまだアレがある。

「パンドラモード、起動‼︎」

怒号にも似た叫びと共に、イングリットの体が黒の鎧に包まれる。ガネッサのものとは違い、不安定なところなどは無く、完成された強さがそこにはある。
その姿は、まるで憎しみを具現化したような、悲しい物だった。

「何でそんなに秩序に拘る‼︎⁉︎」

カズトの問いに、イングリットはようやく答えらしい物を答えた。

「秩序を乱す者はいずれ必ず仲間を見捨てる‼︎そうなる前に、異端者は排除しなければならないんだ‼︎」

ーそうだろう、マリン
ーあの日、一年生がお前を見捨てなければ、お前はまだ生きていた筈なんだ。
ー今でも、私の隣に……‼︎

「下らない。」

そんなイングリットの決意を、カズトはその一言で切り捨てた。
まるで、そんな決意に意味などないかの様に。

「あんたの親友が守りたかったのは、本当に秩序なのか?違うだろ。
「その人が守りたかったのは秩序が守っているもので、秩序そのものじゃない。
「自分の後ろにいる、守るべき人達を、その人は守ろうとしたんじゃないのかよ‼︎
「いい加減気づけよ。
「あんたの親友の意志を一番踏みにじってるのは、誰かってことに。
「もう分かれよ。
「あんたのやってる事が、どれだけ無駄かっていう現実に‼︎」

グラディウスを構える。アオイ・カズハから受け継いだ、一撃必殺の剣術。

「終わりにしよう。イングリット・バーンシュタイン。」
「終わるのは貴様だ。アオイ・カズト。」

殺意に満ちたイングリットの瞳は、決意が宿った真紅の右目が写っていた。

ダンッ‼︎

今出せる全力のアクセル対四人分身のテンペストターン。四つの拳と、カズトのグラディウスの刃が交錯する。
カズトの思考は今までにないほど加速していた。もう何度打ち合ったか覚えてなどいない。


そして、最後の一撃がぶつかり合い、お互いの武器が砕ける。
無茶なアクセルによって、カズトの両脚からは少量ではあるが、出血が見られた。
イングリットの体もボロボロだろう。
それでも、彼女は倒れない。
倒れるわけにはいかないのだ。
カズトが膝をつき、立ち上がろうとしても、足が動かない。
勝敗は決した。

「今度こそ、終わりだ、一年生…」

イングリットの歩みが止まる。勝利したと、思っていた。
だが、それは儚い幻想だったのだ。

「ああ、終わりだよ。」

カズトが倒れたその先に金色の髪が靡く。

「あとは、お願いします。サテライザー先輩。」

一筋の閃光が、イングリットを貫く。

 
 

 
後書き
戦いで傷ついたイングリットの元にカズトが訪れる。はなすのは、自分のこと。

次回 ありがとう。

アンケート、まだまだ、いつでもやってます‼︎感想待ってます‼︎
2015/03/09 改稿
 
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