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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-9 新婚生活
  Story9-6 実力の差

シャオンside

俺たちがサーシャさんと会話していると、子どもたちが慌てた様子で入ってきて口早にいった。

「こら、お客様に失礼じゃないの!」

「それどころじゃないよ!!」

先程の赤毛の少年が、目に涙を浮かべながら叫ぶ。

「ギン兄たちが、軍のやつらに捕まっちゃったよ!!」

「場所は!?」

まるで別人のように毅然とした態度で立ち上がったサーシャが、少年に訪ねた。

「東5区の道具屋裏の空き地。

軍が10人くらいで通路をブロックしてる。コッタだけが逃げられたんだ」

「解った、すぐ行くわ。

すみませんが…………」

サーシャは俺たちのほうに向き直ると、軽く頭を下げた。

「私は子供たちを助けに行かなければなりません。

お話はまた後ほど……」

「俺たちも行くよ、先生!!」

赤毛の少年が叫ぶと、次々とその後ろに居る子供たちが同意の声を上げる。




しかし

「いけません!」

サーシャの叱責が飛ぶ。

「あなたたちはここで待ってなさい!」

立ち入ったことかもしれないが、キリトも口を挟んだ。

「ここで、君たちが出て行ってもどうすることもできない。
だからおとなしくまっているんだ。

俺たちが君たちの代わりにサーシャさんといっしょに行く」

「だな、キリトの言うとおりだ。

サーシャさん、同行しても?」

「ありがとうございます」















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
















教会から飛び出したサーシャは、腰の短剣を揺らして一直線に走り出した。

俺たち6人もその後を追う。


木立の間を縫って東6区の市街地に入り、裏通りを走り抜けて、最短距離をショートカットで行っているらしく、NPCショップの店や民家の庭などを突っ切って進んでいる。


そのうちに、前方の細い路地を塞ぐ一団が目に入った。


情報通り、10人強の灰緑と黒鉄色で統一された装備は、間違いなく軍の連中だ。


躊躇せずに路地に駆け込んだサーシャが足を止めると、それに気付いた軍のプレイヤーたちが振り向き、にやりと笑みを浮かべた。

「おっ、保母さんの登場だぜ」

「子供たちを返してください」

硬い声でサーシャが言う。

「人聞きの悪いこと言うなって。

すぐに返してやるよ、ちょっと社会常識ってもんを教えてやったらな」

「そうそう。市民には納税の義務があるからな」

男たちが甲高い耳障りな笑い声を上げた。

固く握られたサーシャの拳がぶるぶると震えている。

「ギン!ケイン!ミナ!!そこにいるの!?」

サーシャが男たちの向こうに呼びかけると、すぐに怯えきった少女の声で応えが上がった。

「先生!先生、助けて!」

「お金なんていいから、全部渡してしまいなさい!」

「先生、だめなんだ…………!」

今度は絞り出すような少年の声。

「くひひっ」

道を塞ぐ男の1人が、ひきつるような笑いを吐き出した。

「あんたら、ずいぶん税金を滞納してるからなぁ。

金だけじゃ足りないよなぁ」

「そうそう、装備も置いてってもらわないとなァー。

防具も全部、何から何までな」

大方、奴らは少女を含む子供たちに、着衣を全て解除しろと要求しているのだろう。

サーシャたちも同じ推測に至ったらしく、殴りかからんばかりの勢いで男たちに詰め寄った。

「そこを……そこをどきなさい!
さもないと…………」

「さもないと何だい、保母先生?

あんたが代わりに税金を払うかい?」




「…………キリト」

「ん?」

「とりあえず、子どもたちだけでも助ける。
みんなを守っててくれ」

「分かった」

俺は鍛えあげたステータスにものを言わせ、呆然とした表情で見上げるサーシャと軍の連中の頭上を軽々と飛び越え、四方を壁に囲まれた空き地へと降り立った。

「うわっ!?」

その場にいた数人の男たちが驚愕の表情で飛びずさる。

空き地の片隅には、10代前半くらいの2人の少年と1人の少女が、身を寄せ合って固まっていた。


防具はすでに除装され、簡素なインナーだけの姿だ。

その子たちを抱えて再び高く飛びもとの場所に飛んだ。

子どもたちをおろした俺は防具や武器をつけるように子供たちにうながした。

そして、鋭い眼差しで軍の連中を睨みつける。

「おい、オイオイオイ!!」

その時、ようやく我に返った軍のプレイヤーの1人が喚き声を上げた。

「なんだお前らは!!

軍の任務を妨害すんのか!!」

「これが任務…………か。


これのどこが任務だ。ただの恐喝まがいのチンピラにしか見えないな」

「まあ、待て」

先程喚いたプレイヤーを押しとどめ、一際重武装の男が進み出てきた。

どうやらこいつがリーダー格らしい。

「あんたら見ない顔だけど、解放軍に楯突く意味が解ってんだろうな?

何なら本部でじっくり話聞いてもいいんだぜ」

リーダーの細い眼が凶暴な光を帯びた。

腰から大振りのブロードソードを引き抜くと、わざとらしくぺたぺたと刀身を手の平に打ち付けながら歩み寄る。

剣の表面が低い西日を反射してギラギラと光った。

それは、一度の損傷も修理も経験していない武器特有の薄い輝き。

「それとも圏外行くか、圏外?おぉ!?」

「それは本気でやってもいいということ、だよな…………
ずいぶんと威勢がいいな」

「てめぇ!なにがおかしい?」

「アンタ、そいつらの中じゃ最も腕が高そうだが」

「当たり前だ!俺がこのグループのリーダーだからな!」

「リーダー、ね。バカの集まりかと思ったよ」

「なんだと!貴様軍をバカにする気か?!だったら斬られても文句はないんだな!」

「文句ないよ、俺に触れることができたらの話だけどな。

フローラ、剣、パス」

「ほいっ!」

鞘に入ったままのムーブドミューズプレーヤーを背中に装備し、剣を抜き取る。

「サンキュー、フローラ。


んじゃ、ひとっ走り付き合えよ」

ギャリィン

俺は言葉と同時に相手を斬りつけた。

圏内なのでダメージはないが、ノックバックが発生する。

「ぐううううう!なんだ!この一撃の速さは!」

「戦闘の一度も経験してないやつが俺に勝てると思ってんの?」

「くっ、全員かかれ!」

『ウオオオオオオッ!』

「フローラ」

「はいきた!」

俺はフローラからブレードオブホーリークロスを受け取った。

『くたばれぇぇぇぇ!』

「こういう感じのバカは集まっても…………こういう感じのバカだよな。

連二刀流スキル、ラウンドサークル・スレッジ」

広範囲を攻撃する連二刀流スキル。
こういうところで使いたくなかったんだけどな、頭にきたんで使ってやった。






男たちは吹き飛び、その場に倒れこんだ。

何人かが叫ぶ。

「や、やめてくれ。い、いのちだけは、たすけてくれ!」

「どうするかな…………」

「ひぃぃーーーー」

男は悲鳴をあげて走り去ろうとするが俺は鍛え上げたステータスにより男に剣の柄で突きを放った。

「ぐっ…………」

「二度と…………徴税とかそういう行動すんな。
攻略とかできないならやるなと軍に伝えておけ。

それができないなら…………軍を潰すからな、覚悟しとけ」

俺は捨て台詞のように言うと、軍の男たちに背を向けて仲間たちのところへ戻った。

「あ、あの〜シャオンさん?」

「あ、すみません。変なところをお見せしまして」

「い、いえ、それより本当にありがとうございました」

「気にしなくていいですよ。俺はあんな連中が大嫌いですから」

「それにしても、シャオン君って本当に軍が嫌いよね」

「いや、俺は軍そのものじゃなくて軍の雰囲気とか、あんな連中が嫌いなだけ」

「す、すげぇ〜!」

「兄ちゃんかっけえぇー!」

「な、なんか照れるな…………」

俺は、あっという間に子どもたちに囲まれてしまった。








しかし、その時ユイとレイが宙に視線を向け、右手と左手をそれぞれ伸ばしていた。


フローラとアスナは慌ててその方角を見やるが、そこには何もない。

「みんなの…………」

「こころ、が…………」

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」

「しっかりして!レイちゃん!!」

キリトたちの呼びかけに2人は2、3度瞬きをして、きょとんとした表情を浮かべた。

俺も慌てて走りより、子供たちの手を握る。

「ユイ、何か、思い出しのか?」

「そうなの、レイちゃん!?」

「あたし、あたし…………」

「レイたち、は…………」

2人は眉を寄せ、俯く。

「ここには、いなかった……」

「ずっと、ふたりで、くらいとこにいた……」

何かを思い出そうとするかのように顔をしかめ、唇を噛む。

と、突然……

「「あ、うあ、ああああ!!」」

2人の顔が仰け反り、細い喉から高い悲鳴が迸った。

「「「「!?」」」」

ザ、ザッという、SAO内では初めて聞くノイズ音に俺たちは眉を寄せる。

直後、ユイたちの硬直した体のあちこちが崩壊するように激しく振動した。

「ユイちゃーーんッ!」

「レイちゃーーーん!」

ユイたちも悲鳴を上げ、その体を両手で必死に包み込む。

「ママ、こわい、ママ!!」

「ママ、ママぁ、こわい、こわいよお!!」

















Story9-6 END 
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