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Fate/ONLINE

作者:遮那王
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第三十一話 真相へ

 
前書き

お待たせいたしました。
投稿いたします。

 

 

言峰綺礼。

突如として現れた、聖杯戦争の監督役。
自らをただのNPCと名乗る、謎の男。
彼が何者で、何のために此処に居るのかは誰にもわからない。
もちろん、このゲームを開発した茅場明彦にも。

彼は、聖杯の寄る辺に従い、マスターとなったプレイヤーたちを導くためにここに存在していると自らを名乗った。
その真偽は定かではないが、その濁った眼はすべてのマスターに深い嫌悪感を植えつけた。

無論、それはキリトとアスナにも言えることで、出来る事なら彼らも言峰に会うことは避けたかった。

だが、自体は急を要する。
圏内殺人のトリックをいち早く突き止めなければならない。
その使命感が二人を突き動かした。

彼らが協会に辿り着いた頃には日はドップリと暮れていた。
夜の闇が、教会をより一層不気味な雰囲気へと変える。

その感じが苦手なのか、アスナは少し戸惑ったような感じでキリトの後ろを付いて歩いていた。

キリトが教会の前に立つと、ゆっくりと扉を引く。

―――――――――ギギギギギギギ―――――――――

音とともに扉が開かれると、淡い光が彼らを包み込んだ。

礼拝堂は無数の蝋燭によって照らされている。
その光が、より一層教会の不気味さを醸し出す。
思わず身を固くする二人。

背を向けながら、手に持っていた聖書らしき本をぱたりと閉じる。
彼はこちらに顔を向けることなく話し始めた。

「サーヴァントを無くしたわけでもなく、この教会に入ってくるとは、相当切羽詰まっているのであろう。だが、決して教会は門を閉ざしたりはしない。神の御前ではすべてが平等だ。いかなる時いかなる人であっても、その者を出迎えよう」

そして、二人の体を向ける。

「ようこそ、迷えるマスターよ。如何なる用でこの教会の門を叩いたのかな?」

不気味な笑みがキリト、そしてアスナの体を震わせる。
だが、彼らには聞かなければならない事がある。
恐怖心、そして嫌悪感を押しとどめて、キリトは言峰へと視線を向けた。

「聞きたい事がある」
「―――――ほう、それは昨今このゲームを騒がせている圏内殺人についての事かな?」
「……」

やはり……。

言峰は圏内事件について知っていた。
元々素性のわからない男だ。
このデスゲーム、および聖杯戦争の情報は粗方手に入れているのであろうと、キリトは踏んでいた。

そして、思った通り言峰はその事件について知っている。

「知っているのなら話が早い。この事件について――――――サーヴァントが関係してるんじゃないかと、俺達は疑っている……言峰、何か知っているのか?」

ストレートに話を切り出した。
下手に誤魔化してもこの男なら簡単に看破するであろうし、オブラートに包むよりも分かりやすい。

言峰は、フム……と顎に手を置き、やや思案する素振りを見せる。
そして、数秒後話し始めた。

「――――――まず大前提として、聖杯戦争はこのゲームのルールに従って行われる。つまり、いかにサーヴァントといえど圏内での戦闘行為は不可能だ」
「それなら……!令呪を使えば――――――!」

アスナが声を荒げて言峰に問いを投げる。
確かに、英霊に対する絶対命令権を使えば……あるいは。

だが……

「確かに令呪を使用すれば一時的には圏内戦闘が可能であろう。だが、それは重大なルール違反となり、すぐにこの事が私に報告される。あいにくだが、私にはその様な報告は受けていない」

それに……と言葉を続け

「わざわざ令呪を使用してまでその様な騒ぎを起こすメリットがあるとは、私には考えられないが」

確かにそうだ。

令呪は強力なブーストであり、そう簡単には使えない。
わざわざ、三回限定の令呪を使ってまでする事でもない。
キリトは内心そう考えを巡らせていた。

「―――――――――そう、ですか」

複雑な様子のアスナの声が響いた。
当てが外れた落胆と、サーヴァントの殺人が起きていなかった事に対する安堵の声だ。

だが、これで完全に振り出しに戻った。

「貴重な話が聞けた、ありがとう」

キリトがそう言うと、二人は踵を返して外に出ようとする。
だが、そんな二人を引きとめるかのように、言峰の独り言のような呟きが発せられた。

「彼は本当に死んだのか?」
「……え?」
「ふと気になったのだよ、彼が本当に死んだのかとね」
「なにを……私たちは確かに見たんです!彼が光とともに消えるのを!!」

アスナが声を荒げる。
確かに、キリトもそれに関しては目撃者だ。
否定しようがない。

「だが、それは消えただけだ」

言峰が言葉を続ける。

「だから……っ」

アスナの苛立ったような声が響く。
だが、それにも気にも留めないように言峰は決定的な一言を放った。

「――――――光の粒子を発生させるのは死んだ時だけなのか?」
「……え?」

アスナが絶句する。
沸騰しかけていた脳内が一瞬で冷えていく。

「……」

言峰は無表情なまま二人を見下ろす。

その言葉に対し、キリトは一人考え込むような表情を見せると、すぐその場を後にしようと足を動かした。

「ちょっと…キリト君!?」

それを焦ったようにアスナは彼の背中を追う。
そのまま、無言のまま彼らは外へと出ていく。

キリトは確信に迫ったような表情を見せながら。
アスナは色んな事がありすぎて、何が起きたのか理解できないという表情を作りながら。

それぞれの思いが交叉していった。

----------------

二人が出て行った事により、教会には再び静けさが取り戻された。

教会の主、言峰綺礼は扉を見つめながら口元を歪めた。

「良いのか?中立の立場である監督役が自ら入れ知恵をするなど」

教会の虚空から声が聞こえる。

「構わんさ。どうせ今回の件はサーヴァントが関わっているわけでは無い。むしろ、早々に解決して貰わなければこちらも動きづらいからな」

そう言うと、言峰は声の方向へと体を向ける。

「だが、もしサーヴァントが関わるような事があれば、お前は手を出すな。彼らの技量がどれほどのものなのか私も見てみたい」

その言葉とともに、影が言峰の目の前に現れる。

「阿々々々。とんだ聖職者もいたものだ、そこまで混乱を臨むか」

笑い声を上げながら問いかける男。

「ランサーがキャスターとバーサーカーの手に落ちた今、貴様が出て行ってはすぐ決着が付く。それでは面白くない」
「ふむ……まあ、よかろう。此度はゆるりと見物と行こうか」

そう言うと、男の影はゆっくりと姿を消した。
男が姿を消した後、言峰は一人言葉を紡ぐ。

「貴様にはまた、十分に働いてもらう。それまで事を荒立てるなよ―――――――――――――アサシン」

そう言い、言峰は再び聖書を開いた。
 
 

 
後書き

短い……。

一月以上待たせてこの短さ。
ぶっちゃけ切りが良いところで切るとこれぐらいなんです。

本当にすいません。

そして、本編でついに明かされたアサシンのマスター。

まさかの言峰でしたー(棒読み)。

感想見る限りほとんどの方にはばれていたようで。

まあ、原作のランサーポジですから。

さて、次回は局面に差し掛かります。
いつ更新になるか分かりませんが、気長に待っていてください。

では。
 
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