| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

背中

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第七章

 テレサ、金襴緞子から普通のパーティーの服に着替えている彼女はくすりと笑ってだ、共にパーティーの服に着替えている祐也に言った。
「背中見ているかしら」
「皆のだね」
「そう、どうかしら」
「今の皆の背中はね」
 祐也の親戚達のそれはというと。
「丸くなっても反り返ってもいなくて」
「普通になってるわね」
「うん、普通でね」
 それにだった。
「明るい感じだね」
「そうなってるわよね」
「そうなんだ、背中なんだ」
 あらためて言う祐也だった。
「人は背中を見ればわかるんだね」
「そうなの、その人の心の状態がね」
 そのままというのだ。
「出るものなんだよ」
「そうなんだ」
「祐也も大体わかってたと思うけれど」
 微笑み赤ワインを飲みつつだ、テレサは祐也に尋ねた。
「このことは」
「人は背中を見ればわかるってことが」
「そうじゃないの?」
「そういえばそうかな」
「バーテンダーをしていればわかるでしょ」
「明るい心持ちの人は背筋もしゃんとしててね」
 バーの仕事からだ、彼は話した。
「それで沈んでいるとね」
「背中が丸くなるわよね」
「オーラもね」
 背中から多く出ているそれもだった。
「そうだね」
「そうよね、大体わかってたわよね」
「だからね」
 それで、というのだ。
「人は背中を見ればいいのよ」
「そういうことなんだね」
「そう、だからこれからもね」
「人の背中を見ること」
「そうしていくといいわ」
 こう夫となった彼に言うのだった。
「何かとね」
「そうなんだね、そういえば俺も」
「祐也は?」
「テレサの背中好きだしね」
 悪戯っぽい笑みになってだ、彼はこう言ったのだった。
「そこも」
「それは違う場合でしょ」
「まあね、ドレスから出ているそこも」
 スペイン風のドレスの多くは背中を出している、テレサの今のパーティー用のドレスもだ。彼はそれも見つつ言うのだった。
「そして夜もね」
「それは背中は背中でもね」
「違う背中だね」
「そう、そこは違うわよ」
 テレサは祐也の今の言葉にくすりと笑って返した。
「またね」
「そうだよね」
「ええ、けれど背中はね」
「これからもだね」
「見ていくといいわ」
 こう笑顔で言うのだった、そうして祐也は今パーティーにいる人達全ての背中を見てだ、その明るさに笑いながら飲んで楽しむのだった。


背中   完


                          2014・7・18 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧