| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

背中

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「結婚式の時は」
「皆来てくれるわよ」
「スペインから」
「そう、私のお祝いにね」
「それって大変だよね」
 遠いスペインから日本に来るのはというのだ。
「やっぱり」
「飛行機だから」
「今じゃすぐっていうんだ」
「そう、すぐに来てね」
「すぐに帰られるから」
「別に大変じゃないから」
「けれどお金も」
 疲れはしなくともだ、今度はこのことを話に出した祐也だった。
「かかるじゃない」
「大丈夫よ、それ位のお金は」
「あるんだ」
「確かにスペイン今は危ないけれど」
 経済的にかなり辛い状況にあるというのだ、これは欧州全体のことであるが。
「それでも一回行き来出来る位のお金はね」
「あるのね」
「そう、あるから」
 それでだというのだ。
「気にしないで」
「だといいけれど」
「祐也の親戚も大丈夫よね」
「うん、皆大阪嫌いだけれどね」
 二人が今いる大阪をだというのだ。
「京都だから」
「大阪と京都って仲悪いわよね」
 テレサは日本暮らしの中でこのことを知った。実は大阪と京都は何かと仲が悪いのである。
「もっと言えば京都と他の関西の府県が」
「まあね、京都はね」
「ちょっと、よね」
「あまり好かれていないことは確かだね」
「他の府県から」
「お高く止まってるって言われてね」
「それで祐也の親戚の人達も」
 彼等もというのだ。
「大阪嫌いなのね」
「向こうも嫌いなんだよ」
 大阪、もっと言えば他の府県をというのだ。
「相手のことが」
「嫌えば、よね」
「嫌われるしね」
「そういうことでなのね」
「僕はたまたまね」
 祐也自身はというと。
「大阪の大学だったし」
「そこしか受からなくて」
「最初から大阪も他の府県も嫌いじゃなかったから」
「あまり抵抗なくだったっていうのね」
「そう、大阪にはいられたから」
 それでだったのだ。
「今も抵抗ないよ」
「そうよね」
「けれどそれは僕だけだから」
 他の親戚はというのだ。
「皆違うからね」
「大阪嫌いだから」
「そこがね」
 どうもというのだ。
「大丈夫かなって思うけれど」
「そうなのね、けれどね」
「けれど?」
「私は確かに大阪育ちだけれど」
 それでもだというのだ。
「生まれはスペインだから」
「だから京都人でも」
「大丈夫じゃないかしら」
「だといいけれどね」
「そうした相手の人はね」
 つまりだ、他所者を好まない者達はというのだ。まさに祐也の親戚の面々がそれである。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧