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ジョジョは奇妙な英雄

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『悪霊使い』の少年その④

 
前書き
ランキングにランクインしたようで。
ありがとうございます………!
感謝………圧倒的感謝………! 

 
   翌日、一誠が学園のマドンナと登校してきたとのことで学年銃が大騒ぎであった。性欲の化身、三匹のエロの一人である一誠がどうしてリアス・グレモリーと登校してきたのか。質問の雨を松田や元浜に浴びせられる中、千城は幼少期に何を思ったのか幼い千城にジョルジオがプレゼントした懐中時計を開いた。少し大きめで中央にはローマ数字が書いてある文字盤のアナログ時計で左右の扉には写真を入れるためであろうスペースがある。左側は抜け落ちていて、抜け落ちていない方の右側の写真を入れるスペースには幼少期にアーシアと撮った写真が入っている。この時計は以前に何も知らずにチェザーレがプリクラを貼ろうとして千城が激怒したのはいつだったか。

「よっ、御上。あんたはいいの?兵藤に質問責めしなくて」
「桐生か。いいじゃないか、そんなのは好き好きだろうに」

   席で何かをしているように見えたので気になった桐生藍華は千城に声をかけた。元浜アキラにはスリーサイズスカウターなるものがあるらしく、桐生はそれの女子版(?)と言ったところで男の象徴を視力で推測できるという厄介な能力の持ち主(元浜談)。文学少女に見える眼鏡に三つ編みおさげの桐生は興味津々な様子でさっさと千城が懐にしまったものが何かと窺っている。

「何しまったの?よかったら私にも見せてよ」
「お前が気にすることじゃないだろ。時計見てたんだよ、時計」
「へぇ、珍しいな。ケータイとかスマホで見ない人なんだね」
「父親が特殊な仕事してたのは知ってるだろ、誕生日プレゼントにもらったんだよ」

  昔な、と千城がわずかに懐かしそうに当時に思いを馳せたので桐生はふうんと腕を組んだ。できれば千城としては桐生にも見せたくなかったが、下手に怒鳴っても後味が悪いので普通に受け答えした。桐生もまた千城にとっては夢美とは違う意味で心置きなく接することができる存在だ。チェザーレのようなノリを持っているのも大きいが、憎めないヤツという点でもチェザーレに似ているかもしれない。
   千城がジョセフによって一年前に海外を連れまわされた時、入学式に遅れたことがあった。そのときに遅れて登場して浮いた千城に一誠と同タイミングで話しかけてきたのは他ならぬ桐生だった。

「まぁ、兵藤はさておき御上は似合うからねぇ。なんか懐中時計って言うと、アンティークなイメージあるけど。見せてもらっていい?壊さないからーーって怒るなよ、ジョークだよ、ジョーク」

   懐中時計に興味を示したらしく、早く早くと催促する桐生の目は輝いている。三匹のエロの一人が尋問に遭うのを見て苦笑いし、髪が飛び出してはいてもニット帽を被っているテンションの低い同級生からの睨みつけるような視線を受けて慌てて訂正すると千城は桐生に懐中時計を見せた。古い時計で大きさは少々手のひらに収まるほどで通常のものよりは大きく、年号が刻まれているようだが擦れて見えない。

「開けていい?」
「無理」
「どうしても?」
「無論」
「開けたらどうするの?」

   桐生が懐中時計に開閉機能があると気づき、一応は千城の許可を取っておこうと思って尋ねてみるが千城は頑なに開けて欲しくないようだ。何度も聞いてみると、次第に千城の表情が薄れていって最後には左手のひらをパーにして右手を拳にして打ちつけた。開けば許さない、という意識の表れらしい。
   御上千城は『悪霊使い』である。
   それは駒王学園に通うものならば誰でも知っていることで桐生もまた然りだ。証言によると殆どは千城の逆鱗に触れた上で報復に遭っているだけらしいので千城に非はないだろう。面白がって焚き付ければ拳を振るう性質は変わっていないようで現在でもたまに噂は聞く。寡黙な分、感情を押さえつけているのもあるだろうが、だからこそ弾けると厄介だ。

「わかったよ、そこまで言われたら仕方ないなぁ。器が小さいのはさておき、ソレも小さいと悦ばせられないゾ☆」
「………父親の上司みたいなことするな、桐生」
「濃い人なんだな、きっと。ナチュラルに流したよね、今」

   千城の下腹部に視線を送り、チョキを作って真横にして顔の前に添えてきゃぴっと効果音がつきそうな桐生の振り付けは『魔王少女』を名乗る父親の上司を思わせる。正式な場では、それこそ正装してはいるものの良い年してツインテールにコスプレは痛々しくて見ていられない。この学校に通っているそうだが、最後に会ったのはいつだろうか。
   千城に懐中時計を返却し、「しゃきっとしろよ少年!」と背中を叩いて一誠を囲む二人の中に桐生は飛び込んでいった。人当たりの良い桐生は誰とでも仲良くなれるという点では羨ましく思うが、何を思ったのかトチ狂ったようなことをしなければモテるだろうにと思う千城だった。

***

  珍しく放課後は久々に夢美と二人で帰る日だった。チェザーレもレイナーレも用事があるようで何かあるのではないか、レイナーレに尋ねたところ、レイナーレは照れながらチェザーレを引っ叩いた。久々に夢美と帰ることとなっても、たわいのない会話をするだけだったがどこか気まずそうな様子が見て取れたので気づかまいとしていたところ、夢美も夢美で「ごめん、今日はこれで」と互いに気を遣った結果、すぐに別れてしまった。家に帰るにもまだ早く、フラフラと歩いていると目前に金髪の少女が見えた。修道服に金髪、どこか優しげな顔の少女はーー。

『アー、シア………?』
『センジョー、ですか………?』

   彼女の母国の言葉で話しかけると、何か困っていたらしく千城を見つけて懐かしさ半分と驚き半分と言った様子で駆け寄ってきた。目には嬉し涙を浮かべ、すっかり差が開いてしまった身長差によってアーシアは千城の胴回りを抱きしめる。

『言葉が通じなくて困っていたんですけど、まさかセンジョーに会えるなんて。夢でも納得してしまいます』
『夢じゃない、夢じゃないんだよ。お前はここにいる、おれ、だって………』
『すっかり大きくなりましたね。おれ、だなんてセンジョーも男性らしくなったといいますか』

  嬉し泣きで貰い泣きする千城の涙を拭おうとハンカチを取り出して『少し低くなってください』と言って態勢を低くさせ、涙を拭う。そーっと千城の学生服の裾を掴みながら、

『もっと、どこかでお話ししたいんですけど、いいですか?』
『ああ、構わないよ。どこに行こうか』
『センジョーに任せます。………あっ、ちょっと待ってください』

   アーシアは転けて怪我をした幼い男児に元へと向かい、手をかざすと緑色の光が溢れ出す。まるで祖父やシーザーやチェザーレが放つ波紋のような暖かさを秘めた、その光。「これで大丈夫です」とアーシアが言えば、男児は「ありがとう、おねえちゃんっ!おにいちゃんっ!」と笑顔で駆け出して行った。自分は何もしていないが、男児の笑顔は眩しい。

『日本語、話せるのか?』
『ええ。もしかして、日本語がいいですか?』
『………いや、俺はこれでいいよ。昔みたいだ』
『ふふ、私もです。じゃあ、連れて行ってくださいね、センジョー』
『………ああ』

   千城の指に触れて昔のように手を繋ごうとするが、成長して互いに変化したことで恥ずかしさが拭えない。互いがそんな調子なのだから、結局は腕を絡めることで落ち着いた。千城はアーシアの粗の不思議な力が何かというよりも、まずは今のこの幸せなひとときを過ごしたいと思った。 
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