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琉装

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第六章

「そういうのも買うよな」
「クラスの女の子全員で旅行前にお話してね」
「それで皆で一着ずつ買ったの」
「お金も用意してね」
「それでなのよ」
「そういうことか、けれどな」
 光はここで首を捻って女の子達に尋ねた。
「何でここで着て来たんだよ」
「この琉装をね」
「そのことね」
「ああ、俺達に披露しに来たのかよ」
「そうそう、折角買ったし」
「それもあるわ」
「それも?」
 また問うた光だった。
「他にも目的あるのか」
「あるから皆に残ってもらったの」
「折角の修学旅行だけれど今日は何の日よ」
 女の子達が言うのはこのこともだった。
「そもそも」
「まさか」
「そう、そのまさかよ」
 まさにという返事だった。
「バレンタインでしょ、今日は」
「ああ、確かにな」
「それでよ」
 また言うのだった。
「折角の沖縄での留学旅行中のバレンタインだから」
「それでね」
「琉装を着て」
「はい、これ」
 女の子はここでだ、どさっとだった。
 自分達の前にチョコレートを出して来た、堆く積まれたそれを男組に対して見せてそのうえでまた言った。
「バレンタインだからね」
「ホワイトデーはキャンデーかマシュマロ宜しくね」
「義理だから安いのばかりだけれど」
「遠慮なく食べて」
「ああ、それでか」
「沖縄のバレンタインだからか」
「それで俺達を残らせてか」
 男組もここで納得したのだった。
「琉装を着て」
「それはお披露と演出で」
「沖縄だから」
「それでバレンタインだから」
「チョコレートか」
「そういうことか」
「これでわかったでしょ」
 女の子の一人が男組に強く言った。
「残ってもらった理由が。じゃあチョコ食べて」
「そうさせてもらうな」
「折角のチョコだからな」
「それじゃあな」
「暫くおやつには困らないな」
「こういうのもいいな」
 男組はチョコレートをその手に持って行く、そして光もその中に入ってそうして言うのだった。
「こうしたバレンタインも」
「ああ、いいバレンタインだな」
 大助もチョコレートを手の中に集めつつ言う。
「忘れられないバレンタインになったな」
「そうだな、しかし琉装か」
 光は大助に応えながら女の子達の服も見た、その琉装を。
「可愛いな」
「いい服だろ」
「ああ、花か蝶々みたいだな」
「こっちは義理なしだから」
「好きなだけ見ていいわよ」
 女の子達は自分達を観ている光にくすりと笑って告げた。
「遠慮なくね」
「私達をね」
「そうさせてもらうな、ちょっと」
「じゃあチョコレート食べて」
「後はね」
「帰ったらホワイトデーよ」
「楽しみにしてるからね」
 女の子達はそのことを念押しした、そうしてだった。
 光はこの時のバレンタインは自分でも絶対に忘れないだろうと思った、そして実際に彼はこのバレンタインを一生忘れなかった、女の子達の琉装姿と共に。


琉装   完


                             2015・1・29 
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