Fate/EXTRA IN 衛宮士郎
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unknown 1
全ての死を悼め。
失ったものへの追悼は恥ずべきものではない。
全ての死は不可避であり
争いがそれを助長するのなら
全ての死を悼み、全ての戦いを憎み
全ての死を背負い、自身を犠牲に戦いを治めるがいい。
残り??人
《3回戦1日目》
ユリウスという男に襲われた翌日。俺が所持している端末に一つのメールが送られる
【2階掲示板にて、次の対戦者を発表する】
ついに聖杯戦争三回戦が幕を開けた。 マイルームから出て二階へと向かう。歩みを進めるたび心臓の鼓動が大きくなっていくのがわかる。人数も少なくなり今回戦う相手は遠坂や白野のように俺の知っている奴かもしれない。
「……………………」
しかし、いざ掲示板の前に来てみると俺の予想は外れ言葉が何も出てこなかった。寧ろ訳が分からず困惑している。表示されているのは一文のみ
マスター:unknown
決戦場:三の月想海
unknown、不明や未知という意味。この場合単純に俺の対戦相手は決まってないことになるのか。
それとも対戦相手の妨害?
「……………あいつに聞くしかないか」
ここで考えていても仕方ない。極力避けたかったが言峰に確認を取ってみよう。……………でもあいついつもどこにいるんだろう?教会は蒼崎姉妹が占拠してるし図書館や保健室は考えにくい。
「どこにいるんだ言峰のやつ?」
『麻婆豆腐でも食べてるんじゃないか?あの男の好物だからな』
「そうなのか?じゃあ食堂にいるかもな」
昼食には少し早い時間だけど、第六感が働いたのかなんとなくそこにいるような気がする。階段を降りて食堂へと足を運ぶ。すると
「うわ」
テーブルに積み上げられた皿と麻婆豆腐をひたすら食べている言峰がいた。ここの麻婆豆腐って白野曰く激辛なんじゃなかったのか?見ているこっちが胸焼けがしてきた。
「私に何か用かな?」
俺に気付いたのか食べている麻婆豆腐から視線を外し俺に問いかける。口元に麻婆豆腐のタレをつけながら。
藤ねえも同じようによく口元にタレをつけたまま話すことがあったがこいつの場合ふざけているようにしか感じない。おそらく人徳というものが関係しているんだろう。
「聖杯戦争のルールに詳しいんだよな。気になることがあるけどいいか?」
「可能な範囲でのみ答えよう」
「俺の対戦相手がunknownと表示されているのはなんでだ?」
「ならば君は不戦勝のようだ」
「不戦勝?」
「参加者が次々と行方不明となり人数調整のため今回限り不戦勝というプレイヤーが数人出来てしまった為の処置といえよう」
言峰の言葉にユリウスの顔が浮かび上がった。大多数はあの男に襲われ続行するのが不可能となったのだろう。昨日だけでも多くの人が死んだことが大きく影響しているのか。
「色々あると思うが頑張りたまえ」
薄ら暗い笑みを浮かべる外道神父こと言峰は、それだけ言うと食堂から姿を消した。入れ替わるようにアーチャーが実体化する。
「幸か不幸か今回殺しあう相手はいない。このままアリーナへと向かうとしよう」
「そうだな。とりあえずアリーナに行くか」
「アリーナについたら貴様に干将・莫邪の使い方を見せてやろう」
それだけ言うとアーチャーは霊体化し姿を消す。勿体振った言い方だが何か見せてくれるらしい。
悔しいことだが遠坂の授業や倫敦の時計塔で魔術特訓をするよりもアーチャーの教えの方が劇的に自分が進歩しているのがわかる。
食堂を出て一旦購買部へと向かうと新しい礼装が入荷されていた。使えそうな礼装を何個か選び購入。
一つ疑問がある。この端末に入っているお金は何処から支給されるのだろう?礼装一つ一つ値段が高く結構な量を使った気がするが電子マネーなので確認ができない。
(後で返済しろって言われなきゃいいけど…………)
そんなことを考えながら階段を登りアリーナへと向かう。その道中
「士郎、久しぶり!」
「久しいな!」
相変わらず元気いっぱいの白野と赤セイバーと出会った。どうやら問題なく二回戦を突破することができたようだ。
「二人とも二回戦を突破できたんだな」
「もちろん。セイバーと二人なら負ける要素なんかひとつもないよ」
「その通り奏者となら負けはせん」
出会った当初から変わらず自信満々の二人。能天気なのか自信家なのかわからないが、二人を見てるとどこか安心してしまう自分がいる。
「士郎は対戦相手はもう見てきた?俺、運のいいことに不戦勝だった」
「白野も俺と同じなのか」
「へぇ〜士郎もそうなんだ。俺は対戦相手の事を考えなくていいから嬉しい。これで一日中セイバーの事を考えられるからね」
「そ、奏者よ、て、照れるではない………」
「…………そうかよかったな」
会うたびに自身のサーヴァントへの愛が深まっている白野。彼の言葉を聞いて服と同じ色に顔を真っ赤にして赤セイバー。白野と赤セイバーの間に何があったんだろうか?普通ここまでサーヴァントに入れ込むのはここまでくると不自然な気もする。しかし、人目も気にせず抱き合うのはどうだろう……………。
「………イチャつくのは構わんが他所でやってもらえないか?目障りだ」
顔をしかめたアーチャーが実体化して二人に言葉を投げかける。気持ちはわかるが注意したところでこの二人には馬耳東風だと思う。
「セイバー」
「奏者」
「………………アリーナに行くぞ、マスター」
アーチャーは一人アリーナの方へと歩き始めた。あれは二人の世界に入っている白野と赤セイバーにアーチャーが折れて諦めたな。皮肉屋のアーチャーに勝つなんてある意味凄い。
《三の月想海 第一層》
扉をくぐり少し暗い印象を受けるアリーナへとたどり着いた。其処でアーチャーから干将・莫邪の使い方というのを目にする。
箱型のエネミーに対してアーチャーは三本の干将・莫邪を使う三連撃を俺に見せた。干将・莫邪の特性を上手く使った攻撃【鶴翼三連】。干将・莫邪の奥義と言っても良いだろう。
「投影開始」
アーチャーが見せた鶴翼三連を会得しようと俺もナスカの地上絵をモチーフにしたような鳥型のエネミーと交戦を始める。両手に使い慣れた干将・莫邪を投影し二組の干将・莫邪の工程を脳内に待機。
「―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ」
詠唱を口にして干将・莫邪を左右に放り弧を描きながら鳥型のエネミーに迫る。エネミーは翼を交差させて身を守るが投げつけた干将・莫邪が翼を弾き体を大きく仰け反った。
「―――心技、泰山ニ至リ」
脳内で待機していた干将・莫邪の工程をすぐさま解凍し展開。すると詠唱をしなくても両手に剣が生み出された。
そのままエネミーに向かって斬りかかる。
「―――心技 黄河ヲ渡ル」
投擲した干将・莫邪が手にしている干将・莫邪に引き寄せられエネミーにたいして前後からの同時攻撃。だが、エネミーは体を回転させて後ろからくる干将・莫邪を弾き飛ばし俺が手にしている干将・莫邪を砕く。
「 ―――唯名 別天ニ納メ」
エネミーの体は回転をしたことにより動けない。その隙に俺は脳内で待機している最後の干将・莫邪の工程を解凍し展開。
「―――両雄、共ニ命ヲ別ツ」
干将・莫邪に強化をかけてエネミーの体に向かって剣を突き刺そうとしたがエネミーの体に触れた途端手にしている剣は真っ二つに折れた。
「アーチャー!」
掛け声と同時にアーチャーは弓を構えエネミーに矢を放つ。エネミーの体に矢が突き刺さると粉々となり消滅。
「基本骨子の想定が甘い上、動作の一つ一つに隙がありすぎるぞマスター」
「くそっ………またか」
アーチャーは構えた弓を下ろしため息をつき駄目出し。アーチャーの技と比べて俺のは不完全であった。特に3回目の干将・莫邪の投影に強化を合わせるとどうしても基本骨子が甘くなり剣が折れてしまう。
「……………強化は諦めた方が良さそうだな」
「私のを完全に模範せんとも独自のものにすればいい。中途半端なものよりもその方がいいだろう」
「使いやすいようにか……」
結局俺はアーチャーから教わった技に自分なりにアレンジを加えることにした。具体的には3本目の強化をしないこと。威力は落ちるが最初よりもぐっと使いやすくなった。……………劣化したなとアーチャーに言われたがその通りなので何も言えない。だがいずれは完全に自分のものにしてやる。
その後アリーナの奥へと進んでいくと開けた場所についた。敵性エネミーは周りには存在していない。
辺りから異様な空気さえ感じられた。アリーナ自体少し暗い雰囲気のためそのように錯覚しているだけかと思ったが
「この感じは…………くるぞ!」
アーチャーの声と同時に空気は軋み始める。いや、空気どころの話ではなかった。目の前の空間を切り裂き、無骨な巨大な腕が空間のひずみをこじ開ける。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」
聞こえて来たのは狂った咆哮。身体の芯から冷え、思考は凍り、脳が警報を鳴らす。
「なん…………で………」
「………………」
俺とアーチャーは逃げることもできず立ち尽くすほかなかった。
現れたのは鉄の塊にも似た、巨人。 肥大した筋肉で固められたその体は、異常なほどの均整がとられていて不快感などはなく、奇妙なことに美さえ感じられる。目の前に現れた其れに驚愕を覚えた。忘れもしないこいつは………
「なんで、バーサーカーがこんなところにいるんだよ!?」
叫ばずにはいられない。突如目の前の空間から現れたのは英霊ヘラクレス。第5次聖杯戦争で狂戦士クラスのサーヴァント。
狂戦士に相応しいる巨体と威圧感を前にして圧倒されてしまう。予想外の出来事に脳の処理が追いつかない。
「何をしている、ここはひくぞ!」
アーチャーの指示に従い我にかえる。すぐさまリターンクリスタルを使おうとするが
「■■■■■■■■ッ!!」
アーチャーの総身ほどもありそうな斧剣を構え半神半人の大英雄がこの身へと突撃してくる。
リターンクリスタルを使うよりも脳裏に浮かんだ直感に従い、背後へ跳んだ。
一方アーチャーはバーサーカーの懐に飛び込み迫り来る必殺の刃を干将・莫邪で躱す。
斧剣の軌跡自体は単純そのものであったが斬撃は大気を巻き込んで突風を巻き起こす。 その上斬撃の余波が大気を抉り、地面を砕く。
ぞっと寒気がした。こいつは間違いなくあのバーサーカーだ。
腑に落ちない点が山ほどあるがリターンクリスタル使用してアリーナから一旦撤退する。
アリーナから撤退した俺は校舎に着くと壁にもたれそのまま床に座り込んだ。僅かに対峙しただけで精神的にかなりの疲労を感じた。
正直、不戦勝と聞いた時楽に勝ち上がれると思っていた自分がいる。しかし、現実はそこまで甘くはなかった。まさかバーサーカーがアリーナにいるなんて思いもしなかったが。
「あんな化け物をどうやって倒せばいいんだ…………」
手段を考えてみる。ギルガメッシュがアインツベルンの城でやった様に剣で串刺しにするか?でも、それだけで倒しきれる自信はない。アーチャーの夢で見た聖剣を投影するという策も思いついたが、あれはセイバーがいたから使えた策で俺たちでは使えない。
「八方塞がりか………」
「諦めるか?」
「そんな事するかよ!」
「ならば打てる手があるのか」
「…………………………ない」
考えてみたが良い策が何一つ出てこない。アーチャーの言う通り今の俺に打てる手はないと言える。
「そういうお前はあるのかよ」
「無論、手はあるが……………まずは何時も通り情報を集めろ」
「集めろったって、明日にならないとアリーナへは入れないぞ」
「そこの奴に聞けばいいだろう」
それだけ言うとアーチャーは実体化を解き消えてしまった。そこの奴って一体誰の……………
「その様子をみると何か悩みがあるようだな少年」
「っ!」
声が聞こえた方に顔を向けると、いつの間にか言峰が俺のそばに立っていた。いつの間にかこんな近くに来ていたんだ?全く気配を感じなかった……………不気味な奴。
「私が思うにアリーナで何か予想外なものでも見つけてしまったのじゃないか?」
勿体振った口調をしやがって。この口ぶりから察するにアリーナに現れたバーサーカーについてなにかしっているな。ここは素直に質問をぶつけたほうがよさそうだ。
「ああ、アリーナに英霊が現れた。あれはどういうことだ?俺は確か不戦勝だったはずなんだけど」
「ほぅ……………英霊クラスのものが現れるとはついていないな。説明しよう。君の目の前に現れたものはエネミーだ。但し、英霊のステータスを持ったエネミーだがな」
あのバーサーカーがエネミーだと?蜂型や箱型のエネミーなんかはよく見るけど英霊クラスのステータスを持ったエネミーなんているのかよ。
「私の言葉通りになったな。また何かあったら聞きに来るといい」
言峰はそれだけ言うと背を向け立ち去ろうとしたが
「神父、私から一つ尋ねることがある」
再び実体化したアーチャーが言峰を呼び止めた。
「サーヴァントからの質問とはな?構わん言ってみろ」
「奴は英霊を真似たエネミーなら英霊個人が持つ能力も所持しているのか?」
「そこまでは再現しきれん。あくまでステータスのみだ」
「……………そうか。ならばこれ以上聞くことはない」
アーチャーの言葉を聞いて納得した言峰は姿を消し立ち去っていった。その後廊下に何時までも居るわけには行かないため、マイルームへと移動。二人とも定位置になりつつ場所に腰を下ろし話し合いを始める。
「作戦を話そう。あのバーサーカーと戦うのは私一人で十分だ。マスターは後衛でコードキャストを使い支援を頼む」
「思ったんだけどエネミーなら別に倒す必要がないんじゃないか?倒さずに暗号鍵だけとるとか」
そうすれば俺たちに対する負担がなく無駄な戦いをしなくても良い。アーチャーは俺の意見に首を横に振った。
「いや、あのバーサーカーの模したエネミーの背に暗号鍵が入っていると思われるボックスを視界に取られた。恐らくゲームのようにあれを倒さねば手に入れられんだろう」
「ゲームみたいだな………」
まるで昔やったゲームと同じ。強い敵を倒してアイテムを手に入れるといったRPGでよくあること。先ほど現れた言峰はまるで主人公にボス攻略の情報を与えるキャラといったところか。
「…………そうまるでゲームのように我々は動かされている気がする」
「ん?何か言ったか?」
「……………独り言だ。気にするな」
《三回戦 二日目》
「………………」
二日目を迎えた朝。廊下に出てみると一人の、白衣を着た男が歩いてきたのだが……存在感が薄かった、目を凝らしてみないと見えないほどに。……………言葉が出なかった。
「幽霊って初めて見たな…………」
俺自身衝撃を覚える。話には聞いていたが心霊体験というのを初体験したからだ。
「サーヴァントを使役するものが驚いてどうする。マスターが目にしてきた英霊も幽霊と大差がないが…………」
「あっ、そうか」
呆れているアーチャーの言葉に納得をしてしまった。言われてみれば英霊も幽霊広い意味で似たようなものか。納得していると半透明の白衣の青年が俺たちの間を貫通して通り過ぎていった。触れた感覚もなく本当にすり抜けただけの感触無き感触。
「…………立体映像みたいなものか」
「正確には違いますね」
呟く俺に話しかける人物がいるとは思わず、驚いてそちらを見てみると、輝くような赤色の制服を着込んだ貴公子、レオがいた。アーチャーの奴め………実体化とく前にレオが来たことに気づいたなら教えてくれてもいいに。
「こんにちは、レオ。あれを知っているのか?」
「ええ、よく知っています。あれは網霊ですよ」
「あの幽霊みたいなやつの名前?」
「幽霊とは少し違いますが似たようなものです。あれはセラフの中枢に記録された幾兆をも超える生命の設計図から漏れだした疑似生命体ですから」
「へぇ〜大したものだ」
簡潔にするとあれは、この月に保存されている設計図から生み出されたもので、別にできてもおかしくはないものらしい。
「ですが、人類が誕生した奇跡に比べれば小さなこと」
「そんな規模の事と比べられてもな…………」
ま、どちらも人間が生まれたという事だが、何もなかったところから生まれた人間よりも、設計図が用意されてできた網霊の方がお手軽、いや手軽ではないのだろうが少なくとも簡単ではあるのだろう。
「聖杯ってすごいな………」
「いまさら何を言っているんですか?」
「いや、なんとなく」
あの冬木市にあったものとは違い、強大な力を持つ月の聖杯。これを手に入れたら本当に全知全能になれるじゃないか?まあ、そんなことに興味はないけど。
「では、用事があるのでこれで失礼します」
「説明してくれてありがとう。またな」
二人はその場で別れ、再びそれぞれの日常に戻っていく。レオがいなくなると始終無言だったアーチャーは再び実体化した。
「死者の蘇生には時間旅行、平行世界の運営、無の否定、いずれかの魔法が絡むといのに。こうもあっさりと死者の再現という最上の神秘を目にするとは………」
「……………」
「黙り込んで、どうしたマスター?」
「いや、思い返してみれば。俺この世界の聖杯のこと殆ど知らないなって」
時間もあることだし少し調べてみようかな。こういう情報がある場所は図書室にいけば調べられるはずだ。早速行ってみよう。
「アーチャー、図書室に行くぞ」
「構わんが、午後からはあのバーサーカーもどきと戦い暗号鍵を手に入れるぞ」
「ああ、わかった」
今日の予定は午前中は図書室で調べ物をしてからアリーナに行くってことだな。準備もあるし図書室であまり時間をかけずに調べてみよう。
そのまま、二階の図書室に行き改めてこの世界の聖杯について調べてみた。
【ムーンセル・オートマトン】
人類外のテクノロジーによる太陽系最古の古代遺物と実際には月そのものであり神の自動書記装置ともよばれ、地球を監視し、余さず記録し、保存する霊子の頭脳。月の眼という異名を持つ。
魔術師たちはこうも呼ぶ、あらゆる人類、あらゆる人間の願いを叶えるに足る、万能の記録装置。この世全てを解き明かす最後の奇跡、七天の聖杯と。
人類が生まれる遥かな過去から一瞬も休む事なく、地球上の全ての生命、全ての生体、歴史、思想、魂に至るまで、地球の全てを記録し続けている。七つの階層を持つ神の遺物。それゆえに奇跡の聖杯、この世の全てを解き明かす七天の聖杯と呼ばれる。
またムーンセルを完全に掌握した者のは太陽系を支配したことと同じとされ神代における【権能】の域に達すると言われる。
(ざっと調べただけでこれだけのことがわかったけど…………)
改めて調べてみると俺たちのいた世界の聖杯よりも強烈なものであると同時に恐ろしいものだ。この聖杯を手に入れた者のいかなる願望を叶えてしまう。人を生かすも殺すも自由ということ。だが、逆に…………
「これを手にすることができれば、正義の味方など必要ない平和な世界が作れるということか?」
「……………そう言ったことができるだけの力はあるんだろな。どうだ?マスターの願いである誰もが幸せになれるチャンスかもしれんぞ」
読んだ限りアーチャーの言う通りの世界が作れるだろう。だが、
「こんなもの俺には必要ないさ」
誰もが幸せになるであろう世界の実現か。心惹かれるものがあるけど今の俺には関係のない話だ。この聖杯はあくまでこの世界のもの。部外者である俺には手に負えない。
しかし、聖杯の力を使えば俺がここにいる理由も元の世界に変えることも可能かもしれない。何時までもこんなところにいたら遠坂達が心配をかけてちまうからな。
「………というと思ったよ。さてそろそろアリーナに行くとしようマスター」
「もうそんな時間か?」
気がつくと時計の針は12時を回っていた。この世界の時間の流れは早い気がする。情報を集めていたから時間が尚更早くすぎたのか。集中するのはいいけど気をつけたほうがよさそうだ。
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