雲は遠くて
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67章 竜太郎の新しい恋人に、奈緒美!?
67章 竜太郎の新しい恋人に、奈緒美!?
1月25日、おだやかな青空が広がる、正午を過ぎたころ。
川口信也や新井竜太郎や竜太郎の弟の幸平たちが、
カフェ・ド・フローラ(Cafe de Flora)で、ゆったりと昼食でもとろうとしている。
カフェ・ド・フローラは、新宿駅東口から、歩いて3分という交通の便の良さもあってか、
川口信也や早瀬田大学のミュージック・ファン・クラブの学生たちとか、
音楽仲間がいつも寄り集まる溜り場になっている。
その店は、総席数170席のカフェ・バーで、モリカワの経営である。
フローラには、春の女神という意味もあり、
明るい華やかさと清潔感、居心地の良い店内で、
女性には特に人気があった。
料理店と喫茶店とバーを複合させた、リーズナブルな総合飲食店で、
2013年には、新宿西口店もオープンしている。
「竜さん、おれたちはビールでも飲みますか?」
信也は、テーブルの向かいの席の、新井竜太郎にそういった。
「そうしようか、信ちゃん。奈緒美ちゃん、幸(こう)ちゃんは、どうする?」
竜太郎はそういって、右隣の席にいる野中奈緒美と、その右隣にいる弟の幸平を見る。
「昼間っからビールですかぁ?それも楽しいっすよね、竜さん。あっはは」
幸平はそういってわらった。
「竜太郎さんや幸平さんたちは、お酒が強いからいいですよね。
いくら飲んでも、ふだんと変わらないんですもん。
わたしは、すぐに顔が紅くなっちゃうから。きょうは、わたしはオレンジジュースにしようかしら」
竜太郎の右隣の野中奈緒美は、そういって、微笑む。
野中奈緒美は、テレビに出演もするなどで、人気上昇中のモデル、タレント、女優である。
新井竜太郎が副社長をつとめるエタナールの、芸能プロダクションのクリエーションに所属している。
クリエーションでは、子どもから大人までの幅広い年齢層の、
モデルやタレントの育成やマネージメントをしていた。
野中奈緒美は、1993年3月3日生まれの21歳、身長は165センチ、可憐な美少女である。
テーブルの向かいの席にいる、竜太郎と野中奈緒美を眺めながら、
・・・どうやら、竜さんは、奈緒美ちゃんに、夢中のようだぜ。
相変わらず、美女がすきなんだからなぁ、竜さんは。うふふ・・・。それにしても、
真央ちゃんのこともあきらめきれないで、いまも好きなんだからなぁ・・・、
男ってそんなものかもしれないけどね、誰に迷惑になることでもないんだし、
そんな範囲では、男って、程度の差こそはあっても、誰もが、
美しさや美女を追い求めるドンファンなのかもしれないよね。
いつの夜だったか、ふたりで、バーのカウンターで、
ジョニー・デップが演じる、2003年ころの映画、愛する心の探究者のような、
伝説の伊達男、ドンファンを名乗る男の恋愛遍歴を描いた『ドンファン』について、
竜さんと、<あれは、男のロマンが感じられて、いい映画だよね>と語り合ったけど、
竜さん、生き方が、どこかあのドンファンに近いかもなぁ、
それも男の夢のひとつってところだろうけど・・・、・・・と信也は思うのであった。
「わたしも、きょうは、オレンジジュースにしようかしら?」
ぼんやりとしている信也を見つめるようして、その右隣の席にいる、
ピンクのニットを着ている大沢詩織が、微笑みながらそういった。
「詩織ちゃんも、奈緒美ちゃんも、ちょっとくらい、おれたちと一緒に飲みませんか。
せっかくの機会なんですから。ははは。
このお店の赤ワインは、女性に人気があって、おいしいですからね。
詩織ちゃんも、奈緒美ちゃんも、美結ちゃんも、美樹ちゃんも、裕子ちゃんも、
わかってもらえるだろうけど、おれや信ちゃんや幸ちゃんや陽斗さんもだろうけど、男って、
頭の中をフル回転させることが多くってね、そんな脳の疲れを取るのには、
お酒が1番ってことらしいんですよ。
それにしても、おれたちはちょっと飲みすぎかも知れないけどね。あっはっは」
声を出してわらう竜太郎だった。そんな竜太郎を見ながら、同じテーブルの席にいる、
詩織、奈緒美と、信也の妹の美結や清原美樹の、4人の女性たちは、
おたがいに目を合わせて微笑んだ。
「竜太郎さんと信ちゃんは、ほんとうに仲がいいんですね。なんか、いつ見ても一緒にいて、
お酒を飲んで楽しんでいるみたいなんですもの!ねえ、陽くん?」
清原美樹がそういって微笑む。美樹の右隣には、美樹の彼氏の松下陽斗がいる。
「うん、ほんと、竜さんと信ちゃんって、仲いいよね」といって、陽斗はみんなを見わたしてわらう。
「陽さんから見ても、仲良く見えますかぁ。お互いに、遠慮なく、言いたいこと言うから、
よくケンカもしてるんですけどね!あっはっはは。でもまあ、
おれと信ちゃんは、仲のいい酒飲み友だちなんでしょうね。でもよかったですよ。
オレと信ちゃんが、同じ会社の人間でなかったことが。これが同じ会社に勤めていたりしたら、
いろいろと問題ですからね。会社って組織は、特定の人間と、特別に仲良くなったりすると、
いろいろと問題が発生するところなんですから。組織って、いろいろと窮屈ですよね。あっはっは」
そういって、わらいながら、頭をちょっとかく、竜太郎である。
「わたしも、お兄ちゃんと竜太郎さんって、どうしてそんなに仲がいいんだろって、
ふと思うことあるんです」
竜太郎の左隣にいる信也の妹の美結がそういった。
「おれには、信ちゃんみたいな、音楽を作れる想像力がないのだけれど、
会社の副社長をやらせてもらっていますから、会社を成長や発展させてゆくための、
ロマンやビジョンを持たなければ、リーダーとして失格だと思うんですよ。
言い換えれば、構想力を持たないと、ダメなんですよね。
構想力っていうのは、芸術家が作品を作るときの想像力と同じようなものなんですよ。
だから、おれと信ちゃんは、共通の価値観も多くって、仲がいいんですよね。きっと。あっはは」
「まったく、そのとおりですよね。竜さん!あっはは」といって、信也はわらった。
信也、竜太郎、幸平、陽斗、そして、詩織、奈緒美、美結や美樹たちの、
8人は、同じテーブルで、わらい声の絶えない、楽しいひとときを過ごした。
≪つづく≫ --- 67章おわり ---
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