儚き運命の罪と罰
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第五話「海に響く爆音」
前書き
すみません!エクシリア2に夢中になってて更新遅れてしまいました!!!
ルドガー格好良すぎて泣いた...
地球での(リオンにとって)初めての実戦からわずかに数日
この間にはあまりリオンとフェイト達の雰囲気は好ましいものではなかった。
(・・・リオンさんも気にしてるのかな?)
とフェイトは思った。と言うのも実はジュエルシードをプレシアに届ける役割をリオンが担ったのだが彼がジュエルシードを二つ獲得したのにもかかわらずその内の一個を最初に持っていたときに忘れていったのだ。そのため彼は二回に分けて持って行かなくてはならなくなった。あれ程に効率を重要視した少年がジュエルシードを過失で忘れるとは思えなかった。或いはそれ程に今回のこの雰囲気が彼に影響を与えている言うことなのか。
何となく部屋にいられなかったフェイトは空を飛んでジュエルシードを探していた。
「…見つからない、か。」
その声には落胆も期待も無い。ただ
「頑張らなくちゃ。」
少女は母の為に役に立ちたい一心で幼さに似合わぬ力を振るう。今はそれだけだった。
探してもジュエルシードが無いのは言ってしまえば結果論だ。どんな形でも良いからプレシアに認めてもらいたいと、そのために努力という形で報いる。それに
「無駄なんかじゃない...。」
この世に決して無駄な努力は存在しない。それはフェイトが初めて会った『尊敬』すべき人物が示していた。
実際にその夜...
「海だと?」
「多分。あれだけ探しても見つからなかった以上残りは海にあると思います。」
何も見つからなかったことで得た成果を彼に伝えた。
「消去法と言うわけか。それで海の中にあるからと言ってどうやって回収する?まさか船でも使うのか?」
後半は少し声の調子がさがった
「船...ですか?そんなもの使いませんよ。飛行魔法で海の上を飛んで海中のジュエルシードに魔法をぶつけて発動させて、最後に封印します。」
フェイトは電撃の魔法が得意な魔道士だ。そのため海水に電気を流してその中...海中のジュエルシードを発動するくらいは朝飯前といっても過言ではない。
「そうか。」
少しばかりほっとした顔をリオンはした。
内面は少しばかりではない、彼はこの世界の文字を読んで使えるようになってそして店先で『酔い止め』の文字を読んで思わず満面の笑みをこぼす程船が苦手なのだ。
「しかしそれでは飛ばないといけないですね、坊ちゃん。」
「そうだな...あれは恐ろしく体力を喰うからできれば使いたくは無かったんだがな。」
リオンの飛行...と言うよりも『空中を走る』と言ったほうが正解か、シャルティエの晶術をもってすれば空中の空気を固めて足場を作りその上を歩くことは原理的には可能だ。リオンもそれを使って空中で剣を振るったり高速で相手の頭上を舞ったりすることは何度もしていた。それありきの剣技もある。
だが空中で敵の頭を飛び越えるにしても剣で攻撃するにしても恐ろしく短時間で行うことで次の瞬間には地面に足を着けることが前提としての話だ。
落ちることが許されない海上で、しかも長時間飛ぶのはやはり無理はある。
「文句があるならこなくて良いよ。」
とげだらけの言葉をリオンに言ったのはアルフ、彼女はリオンに今はいい印象を持ってはいなかった。
「アルフ、やめて。」
と言ってフェイトが止めたが
「もともとアンタなんかいなくてもアタシ達だけでジュエルシードを集めるのに何の苦労も無かったんだよ!
困ることなんか何も無かった、少しぐらい強いからっていい気になるんじゃないよ!」
そう吐き捨てた
それを聞いてもリオンは飽くまでも涼しげに
「フン...聞いた話じゃあ今はもう既に状況が違うみたいだが?」
「何を...」
「何でも聞くところによると『時空管理局』と言う巨大な組織も本格的にこの一件に介入しはじめたようだな?」
「…クソババァから聞いたか。けど、」
「人の話は最後まで黙って聞いたらどうだ?この前の...なのはだったか?あいつを含めた、他にも大勢の魔道士が敵と言うことじゃないか。
それにお前たちの話を聞く限りじゃあ海にあるジュエルシードを一気に発動すると言うことになる。
当然暴走体も今まで通りの雑魚とはいかなくなるだろうな。そいつらを同時に相手をしてジュエルシードを封印できるだけの算段がお前にあるのか?」
「・・・・・」
彼女はそっぽを向いた
「お前は?」
「...多分難しいです。」
ニコリともせずにリオンは頷いてアルフに向き直った。
「だそうだが?」
彼女は答えようともしなかった。
「・・・じゃあどうします?」
フェイトは訊いた
「簡単なことだろう。お前たちが飛んで空からジュエルシードを発動させて僕にその詳しい位置を念話で伝えてその後に出てくる暴走体と...もし管理局員がでてきたら僕がそれを倒してジュエルシードを持って逃げればいい。」
打てば響くように彼は答えた。
作戦ともいえないほど単純な策だが、それ故に目立った欠点も無く確実と言えただろう。少なくとも妙な奇策よりはずっと信じるに足る策だ。時間は明日の正午と決まった。
「…わかりました。」
「・・・・・」
フェイトもアルフも反論しなかった。
「特に異論は無いようだな...なら話は以上だ。」
それを聞くとほぼ同時にアルフは踵を返して寝室に向かっていった、フェイトもそれに着いていこうとしたがリオンに「ちょっと待て」と呼び止められた。
「なんでしょう?」
「少しバルディッシュを貸してくれ。」
「?ええ、いいですよ。」
バルディッシュを渡されたリオンは小声でバルディッシュと話した後、直ぐにフェイトに返した。
言葉の勉強をするのかと思っていたフェイトは驚いた。
「もういいんですか?」
「ああ、後はお前にも用がある。」
「え、私...ですか?」
これと言った心当たりも無かった。アルフとリオンが喧嘩して以降、フェイトとも彼は余り話していなかった。
「まあそれ程重要なことでもないがな、適当に答えてくれればいい。お前はもし願い事がかなうとしたらどのような願いがいい?」
「願い事...ですか?」
「そうだ。たった一つだけだぞ。」
フェイトは即答していた。
「母さんに幸せになってほしいです。」
それを聞いたリオンは一瞬...本当に一瞬、もし眼を見て話していなければ絶対に判らないほどの間だけ眼を伏せた。
「そうか、なら今ジュエルシードを集めているのもプレシアのため...だな。」
「勿論です。」
「ならいい。妙なことを訊いたな、忘れてくれ。お互いに明日に備えなくてはいけないからな。」
フェイトは少しだけ戸惑ったようだったがすぐに「ええ」とだけ言って今度こそ寝室に向かっていった。
それを確認したリオンはシャルティエにだけ聞こえる声で呟いた。
「生者よりも生きている死者と死者よりも死んでいる生者...なあシャル、一体どっちに意味が有るんだろうな?」
シャルティエの答えを聞いたリオンは満足気な顔になって眼を閉じた。
そして次の日...
リオンはベンチに座ってこれまたまだ彼には使い慣れない自販機で買った彼お気に入りの『カル○ス・ウォーター』を口にしていた。
買ってからかなりの時間が経過している筈なのにその量はちっとも減っていなかった。
「...これも生温いと余り美味しくはないな。」
後で部屋の冷蔵庫に入れて冷やしてから続きを飲もうと思った。
「海は青いですねえ...こういうのはどこでも変わらないんでしょうか。」
「かもな。そこに住むのが人であろうと、魔物であろうと。何が住んでいようと余計なことを考えたり行ったりしなければビクともしないのが世界だからな。幾ら違うからと言ってその事がホイホイと変わってしまっては困る。」
とは言うもののリオンはやはりホッとしていた。もちろん遠目には海だって町の高いところを移動する機会もあったからその青いことも勿論知っていたが、それでも本に載っているような赤い血の海だとか燃える海だとかはお目にかかりたくはなかったしここが異界である以上何が起こっても不思議ではない。
それにリオンは死人だ...少なくとも死んだ筈だ。だとすればこの世界は
「あの世、なのかも知れないからな。」
「坊ちゃん、それは。」
「縁起でもないことは百も承知だシャル、それに僕だって馬鹿馬鹿しいとは思う...あの世なんて迷信だと思ってるさ。
だが可能性が無いわけではない。...もっとも、地獄にしては生温い気もするがな。」
自分が極楽にいる等と自惚れるつもりも彼には無い。
それ程に善行を前世...と言ってもいいのかどうかはまだ判らないが積んでいるとも思わなかった。
「むしろ僕は傷つけた...からな。」
「坊ちゃん...」
リオンは世界をも揺るがす刃である友を除いて他にこの世界に持って来れた物など何も無かった。
ただ一人、何に代えても守りたかった人や自分のことを受け入れてくれた仲間たちとももう二度と会うこともない、そんな気さえした。
だがそれでも彼はたった一つだけの望みを持っている。
彼は答えが知りたかった。何が本当に正しくて、何が間違えているのか。
「一人でって言うのが間違い...お前はそういったな。」
彼らに会うまで、リオンの傍に本当の意味でいたのはシャルティエと彼女しかいなかった。だからもしそれを聞いたのが『過去』の彼だったとすれば眉唾物だったことだろう。何せ一人と言うのが間違いだったとしてもその相談する相手はどこにいるのか。綺麗事ととしかとても思えなかっただろうし、「貴様に何がわかる」とでも言った筈だ...だがそう突き放すには彼の言葉は胸に響き過ぎていた。
だからと言って昨日まで生きてきた自分が間違っている、と改められるほど人は単純ではない。
彼は今自分から進んでまた他人の傍にいようとしていた。フェイトが彼の求める答えをくれそうな気がしたから。
「自分でも馬鹿馬鹿しくなるな。まさかこんな直感で僕が人と行動するなんて。」
「いいじゃないですか直感でも。僕らはまだこの世界のことを何も知らないんですから。この世界が本当は何なのかも判断できないくらいに無知だったら勘に頼るしかないでしょうとも。
それに坊ちゃん...結構確信してるじゃないですか。」
「まあな...」
潮風を感じつつゆったりとしていた。もしこれが決戦の前でないなら本の一冊でも読みたいところだ感じていた。
「それにしても...遅いな。話を聞いた限りでは直ぐにでもジュエルシードが見つかりそうな気がしたが。」
「それもそうですね...意外に探索に手間取っているんでしょうか?」
暴走体と魔道士の力は既にリオンは知っていた。なのはやフェイトのランクで一流の力だと言うのならはっきりってリオンにとっては恐れるに足らなかった。無論今日に関して言えば飛行でかなりの体力を使う不安はあるがそれでも不意を打たれたりしなければ...真正面から戦かえれば負ける気は微塵もしなかった。決して傲慢や慢心ではなくそれだけの力の持ち主だった。だからこそその声も表情も余裕で満ち溢れていた。
だが...
ズガアアアアアアアン!!!!!!
突如として酷く耳障りな爆音が響いた。
戦場における目算などあてにならない物だ、一瞬何が起こったかわからず唖然とした。
怒りと共に数日前に喧嘩したときのアルフとのやり取りが蘇ってきた
彼女はリオンに「雇い主の意思を尊重するのも仕事のうちに入るんじゃあないのかい!」言っていた。
リオンは「残念なことに僕の雇い主はお前たちじゃない、僕自身も気に食わないことだが僕を雇っているのはプレシアだ。だからこそ奴の意思を尊重して『効率よく』ジュエルシードを集める方法を選んだんだがな。」と返した覚えがあった。
その後にはアンタも鬼ババァの仲間なのか、と言うようなことを言われたような気がした。
今になってそれを思い出したのは余り気にしてなかったからだ、リオンは自分のミスを思わず呪った。
物見遊山の一般市民がすわ何事かと大勢集まり始めていた、皆海を見ていた。テロでも起こったのかなどと口々に喚いているのが耳に入った。
無論これは自分のミスだ...それは頭ではわかっていた。
「お前たちは一体何を考えている...それがどう言う事だか本当にわかっているんだろうな...!」
だからと言ってそれが怒りを抑える要因とはならなかった。
ベコリと音を立てて右手に握っていたペットボトルが握りつぶされた。
彼の知らぬところで、決戦は始まっていた。
後書き
さていよいよ...というか結構早いんですが無印編は海上決戦に突入です。次回はフェイトサイドで書きます。
結構早いのはリオンはトリップ自体は無印開始直後くらいだったんですが寝てた期間があったので参戦が遅くなってしまったからですね。
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