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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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憂鬱になったので


将来のことを考えていると憂鬱になったので、そんなことはやめてマーマレードを作ることにした。
オレンジを刻んだり、床を磨いたりするうちに、気分が明るくなっていくのには全くびっくりする。
—D・H・ローレンス—

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憂鬱になったので









◇◆◇コン◇◆◇






ひとしきり笑い倒した後、誤魔化すように咳をして立ちあがり一礼する


「・・・失礼した
 私は上忍のまじらずシナイ、今回君たちとフォーマンセルを組む小隊長だ
 ・・・よろしく頼む」


サイは少し引いていたが、差し出された手をとって握手した

オレも同じように握手する


「フォーマンセル、とのことですが・・・残りの一人は?」


シナイちゃんが小隊長なら、残りの一人は中忍もしくは下忍だろうか

勝手に予想をたてておく


「あぁ、もうすぐ来るはず・・・来た来た、ガイこっちー」

「おお、待たせたなシナイ!」


ガイ先生キター・・・え?上忍2人?


「まじらず上忍、今回の任務・・・ランクの方はどれくらいなのですか?
 何故、上忍がお二人も・・・」


普通は上忍1人じゃないか

上忍が多数いる場合は上忍だけで構成されるはずだが・・・

オレ達が根の構成員だからといっても、この班構成はおかしい


「基本はCランクだが、場合によってはSランクに相当します」


「え」


二度見する

先生に頷かれた

もう一度見る

ガイ先生に肩を叩かれる


「・・・え?」


「諦めれば良いと思うよ」


サイが何かを悟ったように促してくる

そうか・・・オレには何がなんだかさっぱりだよ・・・


「ところで、オレにも自己紹介してもらえるかな?
 オレは木の葉の気高き碧い猛獣、マイト・ガイだ!」


これが噂のナイスガイポーズ・・・!

白い歯が煌めいている

きっと、虫歯なったことないんだろうな


「・・・鶸茶と、申します
 未熟者ですが、足手まといにならぬよう努めて参ります」


頭を下げようとしないサイを蹴りつけて促す

何やら考えあぐねた挙句、会釈だけして自己紹介する


「薄墨です
 よろしくお願いします」


・・・お願いしますと言えるようになっただけ、マシなのかな


「よろしく! 
 鶸茶君は体術使いだと聞いている!
 オレとシナイは体術のエキスパート・・・
 我々を見て、連携の取り方を学ぶよう、ダンゾウ様から指示が出ているぞ」


ん?

体術使いの連携の取り方?

ダンゾウはオレがシナイ班の生徒だと知っている

シナイ班はガイ班と似たように体術に特化していると言っていい

まぁオレ以外は前世で術なり何なりを覚えていたため、先生が教えられるものは体術だけになってしまったからなんだが・・・

体術使いの連携の取り方は、良く教え込まれたものなんだが・・・

サイに連携の取り方を覚えさせろと言うこと・・・なのだろうか?


「さて、任務の詳細は歩きながら話そう
 目的地は火ノ寺!
 出ぱぁつッ!」

「よーし一日で行くぞー!
 青春ファイオーっ!」


拳を掲げて高らかに宣言した先生

それにノリで返すガイ先生

あ、この二人しんどい


「これが・・・体術使いのコミュニケーション方法・・・?」



サイ、それは違うからな












門を出て火ノ寺の方角を目指し、山道を歩く

息を乱さない前方三人、それに比べてオレはどうだ

体力がついたとはいえ、人並み以下の体力・・・平坦な道でさえ息を上げてしまう

それになんだか頭が痛い

酸素不足だろうか

ときたま先生が振り返って、立ち止まってくれたり休憩を入れてくれる

そのせいで肝心な任務の詳細が明かされない


「ふむ・・・体術使い・・・と聞いていたんだが・・・
 少々、スタミナに問題があるようだな」

「鶸茶はスタミナよりスピード勝負ですから
 体力がない、その分はボクがカバーします」

「おお!何という麗しきチーム愛・・・青春してるなぁお前ら!」

「これが・・・青春・・・!」


長い事ガイ先生と絡ませるとリー二号が出来上がるかも知れん

見たい気もするが嫌だ

・・・青春してるサイ、か・・・


「ぶふっ・・・!」


似たような事を想像したのか、シナイちゃんが吹いた
 
分かるよ、その気持ち


「・・・さて、今回の任務だが・・・
 とある宗教のについての情勢調査だ」


「・・・宗教?火ノ寺に関わりのある宗派ですか?」


寺か

宗派の違いで起こるもめ事は多いけれど、忍者は必要なのだろうか


「いや、なんというか、檀家の奪い合い?
 この二年の間で湯、雨、草、滝など小国の隠れ里の90%がその宗派に改宗してな
 改宗するスピードが尋常じゃなく、戒律にも・・・問題がある」


二年で90%!?

え、そんなんあり?


「そんな宗教があるだなんて・・・なんていうんですか?」


「・・・殺戮をモットーとする・・・ジャシン、教」


・・・飛段・・・何してんの・・・?

いや、きっと飛段が布教してるわけじゃないんだろうけど・・・

でも、おい飛段何してんだお前


「それで、そのジャシン教が、まぁなんだ・・・アレだよアレ
 アレでソレだから調査しに行くの
 もしかしたらジャシン教の妨害があるかもしれないので、ランクがあやふやなんだ」

「こらシナイ、お前はまたそう説明を端折る癖を・・・
 そんな事では班の者が困ると何度も教えただろう」


アレでソレって何なんだよ・・・

ガイ先生が溜息つくのも分かる

歩き続けていると、舗装された登り階段が現れる

何段あるのだろうか、千段?

惚けたように見上げるとまた頭痛に襲われる


「痛・・・」


ズキズキとした痛みが、前頭部を刺激する

立つことが叶わず、頭を抱えてへたり込んだ

そんなオレを心配して、サイが近寄ってくる

ガイ先生も心配して、背負ってやろうかと言われるが、首を振って遠慮する

シナイちゃんはすでに階段を上り始めている

・・・頭痛なんかで、立ち止まってちゃダメダメだな


「鶸茶・・・大丈夫かい?添い寝する?」

「・・・お前今度は何の本読んだ」

「友人のための看護法、だけど?」

「お忘れなさい」

「あ、うん、わかった」


お忘れなさい


階段を一歩一歩登って行くごとに、頭痛がひどくなる

眩暈にも似た感覚が襲う

痛みに耐えながら登りつめていくと、大きな門が見えてきた

原作と変わりもしない、大きな、大きな門






「ここが・・・火ノ寺」



風がそよぐ

前を進む先生の髪が流されていく

オレの声を聞き取った先生が振り返る




「そうだ
 そして、”忍僧”は皆”仙族の才”と呼ばれる特別な力を持つといわれる」




門の前に立ち、大声を上げる




「我等は木の葉の忍、どうか開門していただきたい!」




ギギ・・・と木が軋む音が響き渡り、ゆっくりと門が開いていく

開いた門から僧のほかに、僧衣を着た1人の少年がいる

顎のあたりで切りそろえられた髪、真ん中で分けられた前髪は何故か一束だけ眉間を通っている

何故か眉間にしわを寄せてこちらを睨みつけている・・・ように思える

目があった気がした


「よくぞ参られました木の葉の方々
 地陸様よりお話は聞いております、さぁ本堂の方へ」


「よろしくお願いいたします」


先生とガイ先生があいさつを交わす横で、オレは先程の少年と向かい合っていた

・・・随分と、調子が悪そうだ


ポケットから頭痛薬を取り出す


「・・・お水、貰えます?」


どこまで歩くか分からなかったから、水は最小限しか飲んでないんだよな

寺なら井戸からたらふく貰えることだろう


「あ、あぁ・・・井戸はこっちだ
 調子悪いのか・・?」


面喰ったように困惑した顔で問われる

いつも調子は悪いよ


「少し、頭痛が」

「え・・・あ、オレも頭痛がしてて・・・
 その薬、効くのか?」

「木の葉が誇る大病院で処方されたものです
 ・・・あまりよい事ではありませんが、お分けいたしましょうか」


別にオレ用に処方された奴じゃなくて、大衆向けに作られた頭痛薬だから・・・

大丈夫だろう


「・・・貰う」

「・・・薄墨、オレはこの人と井戸へ行くから、まじらず上忍たちから離れないように」


先生を仰ぐと、気にするなとでも言いたげに手を振られる

少年の後に続いて歩き出す

その後ろをついてこようとするサイにもう一度だけ声をかけて歩き出す


「薄墨」


「分かったよ」


少しだけ低く声をだすと、すんなりと立ち止まったサイ

そのまま踵を返して先生の傍に向かった

後ろ姿を確認して、改めて少年の後を追った


















井戸にたどり着くまで終始無言

まァこんなマスク付けている怪しげな忍ににこやかに声をかける気にはならないだろうな


「・・・ほら、水ならここで汲め」

「ありがとうございます
 こちらが先程の薬です、お使いください」

「あぁ・・・」


薬を飲むにはマスクを外さなければならない

素顔がばれる・・・?

マスクを脱ぐことによる対応策はすでにある

少年がちらりと脱ぎ始めたマスクを凝視している


ククク・・・その好奇心が仇となるのだ・・・


首元で固定していた部分をとり、そのまま一気に頭部を露出する!



「なっ!?
 ま、マスクの下にマスク、だと・・・ッ!?」



そのまま脱ぎ取ったマスクを少年に叩きつける!

その隙にマスクの口部分へ薬と水を放り込んだ


マスクが一枚犠牲になったが・・・仕方あるまい



「あ!
 も、もう薬飲んでやがる・・・」



もう一枚のマスクを持ったまま、少年が呟いた

ククク・・・何故だか知らんが優越感に浸る



「お水ありがとうございます
 ・・・私は鶸茶 貴方のお名前は?」


「・・・ソラ、だ」



ところでカメーンって知ってる?

某赤緑兄弟RPGに出てくる仮面みたいなモブ敵なんだけど


トモダチマスクの下、カメーンマスクなんだよね


・・・12thマスクと悩んだんだけど・・・下に着るには嵩張り過ぎてダメだった


これ、シナイちゃんにネタ通じるかなぁ



 
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