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Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜

作者:Nelfe
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覚悟と決意

 
前書き

結構遅いですが明けましておめでとうございます!
投稿の方は作者の都合によりなかなか更新できないでいますが頑張って見守ってくれたらなぁと思っています。 

 
自分の不甲斐なさにほとほと呆れた。さっきまであんなに覚悟を決めていたのになんで今言えないんだ…。

「何かあったのか?」

カーテンの向こうからセイバーが声をかける。何かあった……確かにあった。神父に会い、自分の戦い方に疑問を持った。たった今その答えがようやく見つかったのに……言えない。

「いや、何もないよ」

セイバーが少し沈黙すると、そうか……と言い、特に追求はしてこなかった。セイバーなりの気遣いなのだろう。

このままセイバーに気を遣わせる訳にもいかない。何か明るい話題を持ち出さなくてはと考えた末、ふと思いついた事に微笑んでしまった。

「セイバー、何か食べたいものある?」

「ん、食べたいもの?なぜ今……あっ、まさかさっき言葉を切ったのってこれのことか!?」

するとその瞬間風呂場のカーテンが勢いよくガシャ、と音を鳴らして開いた。そこには眉をピクピクと痙攣させて、あまりご機嫌ではない表情を浮かべるセイバーが裸で出てきた。

「ぶふっ!?」

しかしそれどころではなかった。セイバーの裸体が丸見えだ。白く滑らかなセイバーの肌に風呂の水滴が滴り、エロい。関係ないが、女の子の肌はマシュマロみたいな感触だと誰かが言ってるを聞いた覚えがある。確かにそうかもしれない。見た目からしてもその感触がどの程度なのか分かってしまう。

そんなことを考えているうちに顔が急に熱くなるのが分かった。

「少し話をしようか、マスター」


その瞬間、セイバーの殺気に背筋が凍った。セイバーは拳をボキボキと鳴らしながら俺に近づいてくる。この時、俺は初めて寒さと熱さを同時に感じた。








数十分後。俺は大勢のマスターが行き通う廊下を歩いていた。みんな本当に自分達が殺し合うと思っていないのか笑い声が聞こえたり、ちょっとした世間話が聞こえてくる。

周りの明るい様子からこれから先起こる戦いなんて嘘なんじゃないかと思わせる。戦いに負けたら死ぬというルールも嘘なんじゃないか?もしそうであるならどれだけ心が軽くなるか…。できれば殺し合いなんてごめんだ。人が死んでいく様を見るなんて嫌だし死ぬのも嫌だ。

でも、現実はいつも非情だ。目の前に起きるのは都合の良いものではなく非情な現実。希望もないただ真っ暗な絶望を背にしたこの戦いを終わらせる他に生きることはできない。


周囲の賑わいに目を細め、次のアリーナへと足を進める。

その時。

「おや、また会いましたね」

俺の背後から聞き覚えのある声が響いてきた。正直、あまりこちらとしては顔を合わせづらい。なんせこの声の主にはずいぶんな無礼を働いてしまった。俺は後ろを振り向き、相手があの人かどうか確認する。

「偶然だね、レオ」

予想はみごと的中。そこにいたのはレオナルド・B・ハーウェイことレオが微笑を浮かべて立っていた。その背後にはセイバーと瓜二つの顔をしたアーサーと呼ばれるサーヴァントも控えていた。

その時苦い思い出が蘇る。アーサーとセイバーは以前鉢合わせた瞬間いきなり戦闘が起きた事例があった。戦闘と言ってもセイバーが一方的に攻撃していたのだが、今回もないとは限らない。

(今回は攻撃するなよ?セイバー)

(……)

前に立っているセイバーに耳打ちをするが返事はない。兜で表情が分からない分余計に心配になる。

「その方向から察するにアリーナに向かう途中ですか?」

「うん、まぁね」

「そうですか、何があるか分からないのでお気を付けてください」

「ああ、ありがとう」

レオと話している最中、チラチラとセイバーに意識が行く。無言で佇み、何かをする様子はない。普通は安心するところなのだが、人間ならではのちょっとした動作がないのは逆に不安になった。

「どうかなさいましたか?」

俺の落ち着きのない様子に気づいたのか問いを投げかける。

「いや、別にどうもしていない」

そこでまたセイバーの様子を窺う。セイバーは沈黙したままだ。すると、その一部始終を見たレオはなるほど、と呟いた。

「では僕は自分の部屋に戻ります。ご武運を」

そう言うと、踵を返して戻っていく。後ろにいたアーサーも付いていくが、一瞬だけこっちを見た……いや、たぶんセイバーの方を見たのだろう。純粋な瞳でセイバーを見つめていた。そこにどういう想いがあったかは分からないが、切なそうだった。

「行こう、マスター」

ずっと黙っていたセイバーがようやく口を開いたかと思ったら、アリーナへと進み始めた。

「お、おう」

一人おいてけぼりな俺。一体何がどうなっているのかさっぱりだったが、俺も人のことは言えない。俺だってまだ自分の悩みを抱えてセイバーに迷惑をかけている。彼女だって同じ気持ちだったはずだ。

俺もはやく伝えるべきことを伝えなくちゃいけない。

その決意を胸にセイバーを追いかける。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アリーナに着くとそこは以前のような真っ暗な景色とは違っていた。日も差さない程に冷たく、暗い群青色の景色が一面に広がっている。風景のせいなのかやけに自分の体から熱を持っていかれるような気がした。

「ほう、前回とはまた違った工夫がなされているようだな」

セイバーは余裕たっぷりにそう呟く。さすがセイバーというかなんというか……。相変わらずの強気な態度は俺の心を救ってくれる。なんて言ったってこの風景だけでも俺は色々な恐怖と戦っているのだ。

下を見ればガラス張りのように床が透け、底が見える。その底には砂に埋もれた沈没船らしきものが魚の住処になっているのが分かった。これだけで大体ここが深海だということが察すことができる。

ブルッと俺の体が震えた。もし向こうに放り出されたらとマイナスなことを考えてしまった。

そんなイメージを払拭するように顔を左右に振る。そんな起きるか起きないかのことを考えても仕方ない。今はとにかくこのアリーナをどう攻略するか考えなくちゃいけない。

「行こう、セイバー」

セイバーに声をかけ、進む。向こうに広がる闇がたまらなく自分を不安にするが、その気持ちを押し殺す。自分を殺せ。感情を殺せ。そう自分に言い聞かせながら奥へと向かっていった。






数分後、俺とセイバーは広間を通過しようとしていた。


「止まれマスター」


今まで無言で後方を歩いていたセイバーが急に声を上げた。その瞬間、反射的に俺の足にストッパーがかかりこれ以上進むことを拒絶する。なぜここでセイバーが止めたのか最初は分からなかったがすぐにその意味を理解した。

「敵か?」

俺は周りに警戒しながら身を構える。広間は薄暗く奥の方はあまりよく見えない。ここはなるべく動かない方が得策だろう。

「ああ、しかも複数だ。油断するな」

セイバーがそう言った瞬間だった。

「伏せろマスター!!」

「ッ!!」

セイバーの勢いある声に体が反応し素早く身体をしゃがませる。その直後、俺の視界の端で頭上に彼女の剣らしきものが横に通過していくのが見えた。その直後、ズシャと何かが切り裂かれた音が聞こえてくる。


「立てるか?」

セイバーが周りの敵を気にしながら俺に声をかける。

「ああ、大丈夫」

そう言って立ったものの、足がガタガタ震えている。なんとか今の攻撃は避けれて助かったけど、もしタイミングを間違えたらと思うと震えが止まらなかった。

「まだいるのか?」


「ああ…正確な数は分からないが何体かはいる」

思わず舌打ちをしそうになった。まだ敵が何体もいるとなるとこっちの戦況が不利になる。一言言っておくが、決してセイバーが頼りないということではない。ただ、相手の数が多い場合何体かはセイバーと接触するがその他のエネミーは俺の方へと流れてくる可能性が高い。対抗策のない俺には致命的だ。

「つまらないことを考えていないだろうな?」

「ッ!?」

「詳しいことを探るつもりはないが今は意識をここに集中させろ」

冷静な声でセイバーは俺に言う。そうだ、今はそんなことを考えている時じゃない。今この一瞬一瞬をどう乗り切るか動かなくては。

「来るぞマスター!」

セイバーの声に身構える。相手への警戒心を緩めることなくどこから出て行くのかしっかり確認する。








数分後、戦闘はあっさり終わった。同じ場所から敵が複数やってきて、セイバーに向かって集中砲火。だが、彼女は目にも留まらぬ速さで避け一瞬のうちに敵エネミーを掃討した。


怪我をしているのにこの強さだ。普通の状態だったらもっと凄い動きになって気付いた時には戦闘が終わっているかもしれない。しかし、そんな甘ったれたこと考えたって現状が良くなりはしない。自分も彼女の役に立ちたい、そう思った時だった。

ある通路の一室に俺たちは辿り着いた。そこにあるのはアイテムフォルダのみだけで、あとは寂しい風景が続いている。

「アイテムか。まぁ、持ってても損はないだろう」

セイバーがそう言いながら俺にアイテムを取るように促す。俺は何も言わずアイテムフォルダへと近づき、アイテムを取得する。

しかし、この時運命と言うのはなんでこんなにも都合が良いのかと俺は思った。目の前に自分が理想としていたものがそこにあった。


体が震えた。恐怖によるものか嬉しさによるものかは不明だが何かやれそうな気持ちになる。

俺が手にしたアイテムは礼装だ。通称『守り刀』。こいつを装備している時は魔力が上がり、敵を一時的に動けなくするスキルを持っている。

ふとセイバーがポンと俺の肩に手を乗せた。

「どうかしたのか?」

放たれた質問に俺は数秒遅れてこう答える。

「いや、なんでもない」

「……そうか」

いまいち納得していない様子を見せるセイバーだったが、何も聞かないでくれた。今までならここで会話は終了していたが、今なら言えるかもしれない。

今なら……マイルームで言いそびれたあの一言を……。






「セイバー……俺に剣を教えてくれ」

 
 

 
後書き
最近ゲームショップに出かけたらFateの一番くじをやっていたので運試しも兼ねてやってみました。結果はラバーストラップ。

うん……ありっちゃあありかな…?
本当はコップとかタオルとかそういうのが欲しかったんだけどなぁ…。

まぁ、たまにはこういうのも良いと思いますw

 
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