IS 〈Infinite/stay night〉
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プロローグ
IS <Infinite/stay night>
「さあ、世界を己が意のままに染め上げる力はお前の手の中にある!!俺に、お前が成す神話を魅せてくれ!!」
「止めろ、ヤメロォォオオオ!!」
ソレの始まりは唐突だった。
世界はソレによって、瞬く間に作り替えられ非日常が日常へと変化することとなった。
この世界には、表と裏が存在する。表は一般人が謳歌する剣も魔法もないファンタジーではない現実の世界。
しかし、裏では人権など存在せず、力有る者のみが生き残れる弱肉強食な剣と魔法、否、魔術で血みどろな争いが続くファンタジーな世界だ。
両者は水と油の如く、隣合わせでいながらも雑じり合わぬように共存していた。
そう、していた、のだった。
だが、ある事件を契機に表と裏、両方が統合することとなった。
それは、聖杯戦争。
極東のとある地方都市で六十年に一度行われる、世界の英霊をサーバントとして七騎召喚し、最後の一人になるまで戦わせることで望みを叶える願望器を創り上げる儀式。
最初は枷を持たぬ英霊達が暴走し、現界のための魔力がすぐに枯渇したために消えて失敗した。
次は呼び出した英霊の負荷にマスター達が耐え切れず死亡したため、勝者無しのために失敗となった。
三回目は用意した聖杯の受け皿が壊れたため、これも失敗となった。
そして、四回目。これが問題だった。聖杯は完成する前に、その術式が何者かに盗まれて世界各地において、所謂亜種聖杯戦争が勃発することになった。
それによって、各地で聖杯を解体するためや自らの野望を叶えるための主義主張のぶつかり合いが頻発し、事態の収拾が追い付かなくなった。
だが、幸いと言っていいのかは疑問だが、表の世界でもある事柄でいっぱいいっぱいになっていた。
そして、科学が生み出した怪物の進撃。
某国が行った水爆の実験によって放射能が撒き散らされ、それを現地で密かに生きながらえていた古代の生物に影響を与え、人類を、文明を憎む不死身の復讐鬼が誕生してしまったのである。
その怪物に続くように、各地で同じような巨大生物も現れ、果てには宇宙から三つ首の竜や空飛ぶ亀の怪獣といったものまで飛来してきた。
それと、霧の艦隊。第二次世界大戦時の戦艦や潜水艦の形をした生命体が突如現れて一部の海域の封鎖を行った。
さらに、その科学の発展に貢献した金属生命体、車や戦闘機などの金属でできた乗り物に変化するトランスフォーマーの存在の発覚。
人類を奴隷化しようと企む正しく悪の軍団のディセプティコンの襲来と、それを阻止すべく同盟を結び人類と共に戦ったオートボット、さらに彼等を創造したという創造主との三つ巴の戦いがアメリカを中心に世界各地で起きた。この戦争は香港での激突を最後に、ディセプティコンは壊滅し、創造主はオートボットのリーダーが宇宙の彼方へ道連れにして追放したことで終結した。
現在は、ディセプティコンの残党と、それを追うリーダー不在のオートボット。そして、創造主から解放された金属の恐竜となって秘境の奥に姿を消したダイナボットの三種類のトランスフォーマーがいる。
極め付けは、四十年程前から続くショッカーと名乗るカルト集団の非人道的な殺人事件が連日報道され、最近はグローバルフリーズだっけか、まあそんな事件が起きてて人々は怪獣と狂信者の所業にビクビクしながら生活しているわけだよ。
それとおまけ程度だが、十年前に突如発生した世界中のミサイル基地がハッキングされ、日本に大量に向かったミサイルを宇宙開発用パワードスーツ『インフィニット・ストラトス』、通称ISの活躍によって阻止された事件。
その事件の影響で、一部地域を除いた世界は女尊男卑な風潮へと様変わりしてしまったことだな。
「……ってなことがあって、今の地球はお先真っ暗な状況なんだよ。で、そんな状況なのに関わらず、既に聖杯は解体されて魔術的な価値なんてほとんどないこの街に来た、自称魔術師たる君の目的は何かな?」
一息に説明を終えた青年は、カップに注がれたコーヒーを乾いた喉を潤すために飲みこむ。
「うるせえ!そんな出鱈目を信じるか!?この世界は、オリ主たる俺のもんだ!俺が主人公なんだ!!」
青年の説明に対し、相対していた少年は苛立ちを隠さずにテーブルを叩いて怒気を表す。
よく見ると癇癪を起している少年は、日本人らしからぬ銀髪に左右で色が違うオッドアイという出で立ちでシルバーアクセサリやヘヴィメタ調の服装なのに対し、青年はアジア系の顔立ちでありながら金髪なのを除けば、メガネをかけたジーパンに紺色のパーカーを羽織っている服装で平凡な雰囲気を醸し出している。
彼の周囲の空間に、幾つもの波紋が浮き出してその中からきらびやかな武器が現れる。
「食らいやがれ!!『ゲート・オブ・バビロン』だ!!」
座っている青年を目掛けて、武器が射出される。
轟音を立て、室内を揺るがすと白煙が漂う中で少年は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ならば、言ってやろう……」
『ソイヤ!カチドキ・アームズ!いざ出陣・エイエイオー!』
「理想を抱いたまま、溺死するがいい」
だが、その笑みは白煙の中から響いた声と電子音声によって掻き消される。
白煙が晴れると、そこには紺色のスーツの上に橙色の甲冑を纏い、さながら戦国時代の武将を思い起こす姿となった青年が、手に持つ大砲にベルトに填められていた半透明の橙色の錠前を外し、砲身に装填しているところだった。
『ロックオン!カチドキ・チャージ!』
「クソッ!?」
それに気付いた少年は、花弁のような六枚の盾を展開して防ごうとするが、砲弾が着弾すると一瞬の均衡で盾が相殺され、爆風によって後方に吹き飛ぶ。
少年が立ち上がる前に、青年は大砲の銃口に片刃の剣をジョイントして大剣とすると、それを構えて距離を詰める。
「ヒ、ヒィッ!!来るな!来るなぁあ!!」
「生憎だが、お前を見逃すことはできないんだな。ま、自業自得だから諦めろ」
「くそう!何故だ!?お前もチートを貰って転生したんじゃないのか!?」
「黙れ」
少年の喉元に刃を突き立ててることで、口を閉ざせる。
「突然、邪神に利用されて転生する破目になったことには同情する。だけどな、安易に能力に頼って、好き勝手迷惑考えずに暴れる、犯罪を繰り返すお前は、社会にとっては問題だろうが俺の害にならなければどうでも良い」
「な、なら…」
青年の言葉に、一縷の希望を抱いた少年は青年を見上げる。
だが、そこにあったのは仮面越しでも伝わる冷徹な感情であった。
「お前は、俺の家族に手を出した。そして、このベルトは託された物だ。意図的にではないだろうが、貶めたお前を俺は、許さん。あと、ついでだがお前のような不正転生者の討伐は報酬が入るんでな」
『ロックオン!イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン・オク・チョウ・ムリョウタイスウ!!』
「カッ……ハ…!?」
再度、錠前を装填した大剣が炎を纏い、青年はそれを無情に少年へと振り下す。
斬り付けられた少年の体は、傷口から光の粒子を撒き散らしてこの世界から姿を消した。
少年が消えると、半壊していた店内が一瞬の内に何事も無かったかのような状態へ戻り、まるで少年など初めから存在していなかったようであった。
それを確認した青年は、携帯を取り出してどこかに電話をかける。
「もしもし、俺だ。そっちに送った奴だが、ああ、了解。報酬はいつものところによろしく。騒がせたな、マスター」
店の奥にいた店主は何も言わず、青年の言葉に頷いただけで再びグラス拭きに戻ってしまう。
少年が消えた跡を一瞥した青年は、変身を解くとカウンターに勘定を置くと店の外へ出て行った。
カランカラン、と店のドアに掛けられた『アーネンエルベ』と彫られた木札が音を鳴らすのを聴きながら、青年は足を止めてため息をつく。
「ご無事で何よりです、アーチャー」
「マスター、アーチャーなんて堅苦しい呼び方は止めて欲しいと何度も言ってるじゃないか」
ため息をついた青年に、車椅子に乗ったウェーブのかかった穏やかな気品を感じられる女性が声をかける。
「マスターではなく、フィオレです。聞いてますか、コウタ?」
「聞いてるって。フィオレ、これでいいだろ?」
「全く、カレンさんとは名前で呼び合う中なのに…」
車椅子の女性、フィオレは頬を膨らませて不機嫌な表情を作ることで、言外に私、怒っています!、と主張する。
「まあ、マスんん!フィオレ、もう三月になったとはいえ、まだ冷えるからそろそろ帰ろうか」
コウタと呼ばれた少年は、苦笑しながらフィオレの車椅子を押して歩き始める。
「ああ、そういえば貴方を指名で教会から連絡がありました。また、聖杯出現の兆しが視えたため、現地の調査を依頼したいそうです」
「へえ、場所は?」
「国際IS特殊専門高等学校、通称IS学園です」
「女子校じゃん!性転換でもしろと!?……ってまさか!?」
IS学園とは、ISの知識、技術を専門的に教育する高等学校に値する学校なのだがISという女性しか扱えないという特質によって、生徒は女子しかいないため実質女子校の状態である。
しかし、つい最近にその状態が崩れるニュースがあったことを、コウタは思い出した。
「世界初の、男性操縦者……」
「そう。貴方を二人目に仕立て上げるか、上が何か策を考えるそうですよ」
「何にせよ、行くのは確定か」
「こちらからも誰か送っても良いとのことですし、教会からもサポートするための人員が派遣されるそうです。しかし、何はともあれ帰ってから皆と話し合いましょう」
「ああ」
フィオレの言葉に頷き、コウタは彼女を車椅子を押して移動を開始する。
これからコウタが巻き込まれる運命に、一筋縄でいかないものを感じながらも、どんな結末になろうと後悔しないためにこの穏やかな時間を心置きなく堪能しようと、コウタ達は考えるのだった。
とあるビルの中になるオフィスの円卓が置かれた会議室の中、一人の青年が席に付いて取り出した懐中時計を見ていた。
「そろそろか」
眉を顰めた厳しい表情の青年が呟くと同時に、空席だった席にホログラムの人影が投影される。
「『光の国』、黒部ハヤタ」
「『立花レーシング』、藤岡タケシ」
「『番犬所』、小西コウガ」
「『地球防衛軍』、松岡シンイチ」
「『蒼き艦隊』、興津グンゾウ」
「『聖堂教会』、言峰ニセイ」
「『魔術協会』、ウェイバー・エルメロイ。本日の司会は、私が勤めさせていただく」
人影がそれぞれ名乗ると、初めからいた青年、ウェイバーの言葉に一同は頷くが、未だ空席が二つ残っていた。
「今回の定期報告会だが、『アベンジャーズ』のニック・フューリーと『X-MEN』のプロフェッサーだが、先日起きたウルトロンとセンチネルが暴走した事件の残党が燻っているため、欠席と連絡を受けている。そのため、本日の重要事項以外の採決はこちらで決定しても問題ないとのことだ」
ウェイバーの報告に、各々は違ったリアクションを取るが苦虫を噛み潰した顔になったことは共通していた。
「そうすると、アメリカはしばらくそれに係り切りになるか」
「『アベンジャーズ』の管轄下の『ベンタラ』も同様に忙殺されるわけだな」
「日本からも人員を派遣した方が良くないか?」
「それは大丈夫だろう。まだ救援要請が来ないということは、向こうで対処できているということじゃないか?」
「静粛に!皆様の懸念は最もですが、アメリカは問題ないということで保留させていただきます」
アメリカの現状報告から脱線しかけた会議を立て直したウェイバーは、咳払いをして会議を進行させていく。
「まず、各々方からの報告だ。『光の国』から順に頼みます」
「了解した。私達からの報告だが、スパークドールズらしき反応が確認された。この結論の根拠だが、未知のエネルギーが感知された地域を衛星で確認したところ、その地域にある山中でウルトラマンと怪獣が戦闘していた。詳しい調査はこれからだが、戦闘していたウルトラマンがギンガだったため、スパークドールズがある可能性は高いだろう。以上だ」
「続いて『立花レーシング』からだ。都心を中心にロイミュードの活動が活発化しているが、重加速状態でも問題ないカブト系のライダーとドライブで対処しているところだ。それと、先日襲来したメガヘクスだがまだ活動を続けている個体がいる可能性があるため、警戒をお願いしたい」
「『番犬所』からは特にないな。強いて報告するなら、ゼドムの分体の塚が全て発見できていないため、引き続き調査中だ」
「『地球防衛軍』からも特にない。例のゴジラの封印も問題なしだ。ただ、レジェンダリー版のゴジラらしき生物を記した文献を発見したため、真偽の検証中だ」
「『蒼き艦隊』はいつもどおりだ。相変わらず、深海棲艦は湧き続けて発見次第撃破の繰り返しだ。出現地域が固定されているのも謎だ。それと、マラリア海溝の亀裂も再びKAIJUが出てくる兆候は見られない。『パシフィック・リム』は当分先だろう」
「『聖堂教会』からは、冬木市で邪神の落とし仔を多数確認されるようになったことだ。これは、原作の開始時期だからだと予想される。実際、先日も討伐の報告があった。後は、今日の重要課題に被るので割愛する」
「『魔術協会』からとしては、ルーマニアにあった大聖杯の解体が完全に完了したことだな。これで、『Apocrypha』は終結したと見て間違いないだろう。それでは、これより本日の重要事項の件に移りたいが異論がある者は?」
一度言葉を区切り、議場を見渡すウェイバーだが異論を出す者はいなかった。
「ではこれより、重要事項の采配に移る。予め通達した通り、第何号か数えるのが億劫になるほど聖杯を解体してきた我らだが、また新たに聖杯出現を感知した。情報源は例のルーラーであり、ニセイ殿のご子息にも確認を取ったため間違いないと判断し、調査した結果、出現場所の特定に至った。それが、IS学園だ」
一拍置いて手元に置かれた水を飲んで喉を潤し、ウェイバーは話を続ける。
「すでに聖堂教会から監査役として、『Apocrypha』において現界したルーラーが憑依した彼女の派遣が決定し、事務手続きも終わっている。そして、聖杯を解体するためにユグドミレニアのアーチャーの派遣の許可も出た。資金や資材も我々や彼の財閥が支援するため、問題はない」
「確かに、彼のアーチャー、《始まりの男》でありそのサポートの彼の《聖女》となれば、人材面では申し分ないな」
「然り。それにしても、ヘルヘイムの浸食が過去に何度も起きていたとは驚かされたな」
「原作でも、なぜ古代からヘルヘイムの伝承があるのかやその辺りは解明されてなかったしな」
「それでもって、今まで大聖杯が実は過去に破壊した黄金の果実の欠片が使われていたことにも驚きだったな」
「それに加え、ヘラクレスに射られた鏃と伝えられていた聖遺物が、実は彼が黄金の果実を求める争いの際に砕いた剣の破片だったとは」
一同が口にするのは、『始まりの男』の過去。一年程前にルーマニアで勃発した『Apocrypha』と呼ばれる事件の終結へ導いた立役者の一人にして、太古の昔、ヘルヘイムの浸食より星地球を守り抜いた名も無き英雄。
「重ね重ね申し訳ないが、静粛に!本題はこれからです!」
再び脱線した会議にウェイバーが諌めたことで、会話が止まる。
「場所が場所だけに、いつもみたいに戸籍や様々な情報の偽装を凝らして潜入することができません。何せ、世界中の国々が、最強の兵器と言われるISの情報を得ようと謀略を巡らしているのですから」
「そこで、皆の知恵を借りたいのでこうして集まってもらったのだ」
「アーチャーからは、サポートとしてセイバーも頼みたいと要望があったが、こちらはルーマニアからの研修生という形で落ち着いた」
「となると、アーチャーか。確かつい先日、世界初の男性でISを動かせた人物が発見されたんだよな?」
「ええ、その通りです。名前は、織斑一夏。裏には一切関わりのない、日本国籍の中学三年生の男性です。ただ、両親が幼少の頃に行方不明となっており、姉が彼を育てていたようです」
「なるほどね。では、アーチャーもISを動かせたことにすればいいのでは?」
「それも考えましたが、学生として潜入するため授業で操縦できなければ退学になるため、却下しました」
「ん?だったら、ISっぽいスーツ作って、その実験としてIS学園に出向させるのはどうだ?」
「なるほど。『アベンジャーズ』のトニー博士のアイアンマンなんて、まさにそれだからな。アメリカの協力は必須だが、なんとかなるだろうな」
「そうすれば、彼本来の力もそのパワードスーツによるものだとすれば、問題なさそうだな」
「ふむ。では、私はIS学園に出資している企業に掛け合ってみよう」
「では、彼はISに準ずるパワードスーツのテスターとして、データ取りに最適でISの知識を学び取り入れるためにIS学園に出向するという方針で良いだろうか?賛成の方は挙手を」
満場一致で手が挙がり、反対する者はいなかった。
「では、本日の定期報告会はこれにて終了させていただきます。詳しい方針は、決定次第追って連作させていただきます」
ウェイバーの言葉を〆にして、出席者達はこれから連絡の通達や人員の選定に奔走されるであう『魔術協会』と『聖堂教会』の代表に労いの言葉を掛けてから、姿を消していく。
「科学の聖地とされる地に降臨する聖杯。これは荒れますな」
「然り。誰が用意したのか、目的は何か、未だ不明。今まで以上の警戒が必要ですね」
「頼みますぞ、ウェイバー殿」
「こちらこそ、頼りにしていますよ」
会議室に最後に残ったニセイの姿が消えると、ウェイバーも部屋を出る。
彼の胸には不安がよぎるが、あのアーチャーならやってくれるだろうとも安心感もあった。
自分はバックアップしかできないが、それでも友の助けとなるならば全力で取り組もうと決意するウェイバーだった。
旧き時代の噺をしよう。
かつて、この星に異次元からの浸食が起きた。
原因は、ヘルヘイムと名付けられた植物の繁殖行為であった。
理由なき悪意と皮肉られたその侵略は、瞬く間に星を汚染し始めた。
だが、その脅威に立ち向かい阻止することに成功した人物がいた。
『始まりの男』という呪いをその人物が受けた代償によって、星はヘルヘイムの侵略より守られたと思われた。
しかし、その爪痕は大きかった。
星に散ったとある・・・欠片が、膨大な力を秘めていたためその欠片を巡る争いが起きた。
さらにヘルヘイムの浸食は時代を経て、幾度なく再開されてその度に多くの血が流れ、もはや彼の心は摩耗する一方であった。
やがて、彼に転機が訪れた。
一年前のルーマニアで起きた、『Apocrypha』と呼ばれる亜種聖杯戦争の一つ。
数奇な運命から、参加することになった彼は、自身が守りたいと想う存在と邂逅した。
そして、数々の障害をかつての友や仲間の絆と共に乗り越え、彼はようやく呪いから解放されたのだった。
これより始まるのは、『始まりの男』から『守りし者』となった彼の物語……。
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