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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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ランニング:現実サイド

「……クソッ!」
ダンッ、と俺は壁を叩いた。
ライトを救えなかったばかりか、行方不明にしてしまったから。
キリトも同じ状況らしく、アスナはミザール達と共に、アルヴヘイムにダイブして会議している。
俺は現実世界で、情報を洗ったが、手掛かりは無し。
「……少し落ち着け、ダーク」
ゲンが俺に言い、ミヤビが頷く。
「こう言うときこそ落ち着きが大切。落ち着くべき」
「……ああ」
ストレアからの情報で、ライトが入院した病院から居なくなっていることが判明したのは一昨日の事だ。
「……俺のミスだ。あのとき、俺がすぐに行っていればっ!!」
拳を握って、ダンッ!と机を叩く。
そこに、ユウキが上から降りてきた。
「ゲンさん、今話で二人とも拉致されたんじゃないかって話が出たよ」
「……そうか。ダーク、我らは中に居る。ミヤビはダークの側に居てくれ」
「解った」
ゲンはそういうと、ユウキと共に、上にいった。
……ユウキの悲しそうな顔を見て、俺は更に奥歯を噛み締めた。
「くっそが!!」
再びバンッ!!と机を叩く。
自分への苛立ちが収まらない。
「くそっ!!くそっ!!くそっ!!」
「……ダーク」
途端、ミヤビが俺に抱き付き、そのまま俺を押し倒す形で倒れた。
「ミヤビ、離せ!!」
ミヤビを殴ろうとすると、頬に水が付いた。
ーーーミヤビが泣いていた。
「ダーク……貴方は悪くない。責めるのは止めて!!このままじゃ、ダークが壊れるだけ!!」
「……ミヤビ、お前に何が解る!!救えた人が救えない気持ちが……殺人鬼のお前に解るか!?」
殺人鬼なのは俺も一緒だが、一時期、それを忘れていた。
「お前に……一番のダチが救えなかった気持ちが解るか!?いや、そう簡単に解って……」
パンッ!!
「………え?」
頬が、叩かれた。
「馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!」
「んなっ!?」
ミヤビは俺の顔を両手で固定して顔を近付ける。
「私にだって解る!!その気持ちは解る!!貴方だけがその体験を幾度となくした訳じゃ無い!!」
……そうだ。ミヤビも、神化した影響を受けて、ジェイダの記憶が共有され、そして別世界のミヤビの記憶が共有されたんだ。
そう思った時、ミヤビは俺を見ていた。
「ダーク……貴方は悪くない!!悪いのはデス・ガンと拉致した方!!お願いだから……何時ものダークに戻って……何時もの、傲慢で食事好きで、何者も恐れない神の、ダークに戻って!!……私の好きなダークに戻ってよ!!」
ミヤビは泣きながら、俺に言った。
……ああ、そうだった。俺は、何で忘れていたんだろう。
「……」
俺は、ミヤビの顔を胸に抱き寄せる。
「……え?」
「ありがとう、ミヤビ。いや、真夜美」
俺は初めて、ミヤビの本名を言った。
「お前のお陰だ。んなとこで腐ってたら、ライトの野郎が見つかるはずねぇな」
俺は真夜美を横に退けてから、涙を拭いてやる。
「ん、何時もの真夜美だ。俺はその方が良いぜ?」
途端、真夜美の顔が赤くなり、そっぽ向いた。
「そ、それより!!」
「ああ、敵さんがライトの野郎を連れてった場所だな。ストレア、検討は?」
途端、タイプテクニックシフトカーを介して、中からストレアが報告してくる。
『はい。現在、AIの話に関連する企業を調べました。しかし、ソウル・トランスレーターについての物は有りませんでした』
「ライトが時折呟いていた<ALICE>が鍵になるはずなんだ……企業が開いてるとすれば……」
「不思議の国のアリスに関連してるの、それ?」
と、横から真夜美が言ってくる。
「アリス……<ALICE>……」
と、そこでストレアに言う。
「おい、ストレア!!<ALICE>が何か解るか!?」
『<ALICE>……ですか。恐らく頭字語>だと思います。Aはアーティフィシャル、Lはレイビル、Iはインテリジェンス。強引に翻訳すれば<Artifcial Labile Intelligence>ーーー<高適応性人工知能>になります』
アーティフィシャル・インテリジェンスはつまり<AI>。ブレイン・マシン・インタフェース開発の会社にAIが関係する……即ちNPC、ノンプレイヤーキャラクター。しかし、しっくり来ない。
そこに、ストレアが言う。
『<ALICE>に関連する物でヒットしませんでしたが、<不思議の国のアリス>で検索したところ、<ラース>と言う単語がヒットしました!』
ラース……英語に訳せばRATH……もう少しで繋がりそうだ……。
「ラース、アリス、人工知能……あー、繋がりそうで繋がらねぇ!!」
「落ち着きが大切。落ち着くべき」
真夜美が俺に言う。……そうだったそうだった。焦りはミスを犯す。
「んー……そもそも、AIって何なの?」
『それを私に聞きますか』
ストレアは苦笑して言う。
『それは私がマスターに人間とは何かと聞くような物です』
「ああ……そうだったな」
面倒な事だな。
「ちっ……兎に角、そのラースって言う会社がある以上、そいつの所に行きゃ良いだけだろ?」
『所在が解らないのにどうやっていく気ですか?』
……ごもっとも。
「もう、ラースは単なるベンチャー企業じゃ無い。それだけ解れば充分」
『いえ、所在が解らなければ突撃しようが在りませんけど……』
「確か、キリトがそこに行ったのは菊岡のバイトだよな?」
『はい。姉さんから聞きました』
「つーことはアレか。彼奴が怪しいのか……」
「まぁ、言うだけ無駄」
バッサリ斬るなぁ……。
『公表されている各省庁データもアクセスしましたが、全て無関係と判断。不自然な予算請求も在りません。偽造している可能性は営めませんが、恐らく発見は不可かと……』
「ああ、もうまどろっこしい!!真夜美、何かデータ無いのか!?」
「在るわけ……待って。覚えが一つだけ」
ニューロリンカーにケーブルをさしこんで直結すると、真夜美が俺にデータを寄越す。
「何だこれ?」
「海底の油田やレアメタル鉱床を探すための小型潜水艦を自立走行させる研究。さっき急いで調べて、特に何も無いからそのままトップに残してたもの」
「いや、それの何処が……」
「プロジェクトが置かれてるのは<オーシャン・タートル>。画像も見て」
すぐに画像も送られてきて、見る。
「……亀か豚か?」
「……泳ぐカメブタ。それを意味する事は」
途端、全てが繋がった。
「『ラース!!』」
「当たり」
ミヤビは微笑んで言った。

翌日。俺達はトライドロンでアスナと女博士の乗ったヘリを追い、オーシャン・タートルへと到着した。
「……おい、本当に大丈夫かよ」
『平気よ。後で落ち合いましょう』
通信機を使った連絡を後に、俺達は船底の停車場にトライドロンを乗せて、身体チェック。
そこから幾つもの身体チェック等を受け、俺達は第一制御室に来た。
「オーシャン・タートルへようこそ」
不意に右側から声が聞こえた。あの馬鹿だ。
とびかかりたい気持ちを押さえ、アスナが出るのを待つ。
「残念ながら、今は紹介出来ないんだ。折を見て、数日中に……」
アスナの合図。
「「じゃあ代わりに私(俺)が名前を言ってあげるわ(やるぜ)、菊岡さん」」
「何ッ……!?」
俺は影から出て、アスナはウイッグとサングラスをむしりとる。
「キリト君を、どこに隠したの?」
「ライトを何処へやった、馬鹿ハイト!!」
「是……」
「……研究助手の身元は、カルフォルニア工科大学の学籍データベースから得た写真で多重チェックした筈だが」
「残念だが、此方にはハッカーが四人ばかし居てね。差し替え済みなのさ」
「因みに、本物のマユミとその仲間は休暇を楽しんでるでしょうね」
にっこりと女博士は言った。
「さて、説明をしてもらおうか。でなければ……」
俺と真夜美は神化して言う。
「今すぐここを宣言で撃沈させる!」
「ちょっ!!待ちたまえ!!今ここを撃沈されたらキリト君達が危ない!!」
「……何?」
俺は神力を身に押さえて言う。
「誤解が在るようだが、少々危険な方法で二人を連れてきたのは申し訳無かった。しかし、彼らを助けたいが為に無茶を承知でやったんだ!!回復したら、ちゃんと説明する筈だったんだ」
「……現代医学では不可能か」
「……ああ。脳の、重要なネットワークを構成していた神経細胞の一部が損傷している。あのまま入院してきたら何時目覚めるか解らない……だからこそ、STLーーーソウル・トランスレーターによる治療を行うためにオーシャン・タートルに運び入れたんだ」
俺はそれを聞くと、元に戻って言う。
「……良いだろう。貴様の話、信じよう。暫くはここに滞在させてもらうぞ」
「勿論だ。好きな部屋を使いたまえ。僕は二人に説明しなければいけないからね」
それを聞くと、俺は部屋を出ていった。





















適当な部屋を選び、俺達は入ると、俺はフラフラになった。
「……ダーク、大丈夫?」
「無理だ。眠い……」
本気の出力で出したため、体への負担は大きい。彼処で倒れなかったのは本当に凄い。
「真夜美、俺は、少し、寝る、わ……」
真夜美の方に倒れながら、俺は睡魔に襲われて寝に入った。 
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