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オズのムシノスケ

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第十二幕その一

            第十二幕  楽しいお別れ
 ゆっくり休んでからでした、皆はです。
 大学を発ってエメラルドの都に向かいました、その途中で木樵はふと気付いてです、皆にこんなことを言いました。
「おっと、一つ忘れていたことがあったよ」
「どうしたの?」
「うん、身体に油をさすことをね」
 そのことをとドロシーに答えるのでした。
「忘れていたよ」
「あっ、そうだったの」
「だからね」
 それで、というのです。
「歩きながらで出来るけれどちょっと待ってね」
「油をさすのね」
「これを忘れるとね」
 それこそというのです。
「僕は動けなくなるからね」
「そうだったわね、それじゃあね」
 ドロシーはにこりと笑って木樵にこう言いました。
「木樵さんはそのまま歩いててでいいから」
「ドロシー嬢がだね」
「ええ、さしてあげるわ」
 その油をです。
「そうしていいわよね」
「お願いするよ、それじゃあね」
「ええ、今からね」
 ドロシーは木樵からその油さしを受け取ってでした、そのうえで。
 歩いている木樵の関節のあちこちに油を入れました、実に慣れた動きです。それを済ませてからでした。
 木樵にです、笑顔でこう言ったのです。
「済んだわ」
「有り難う」
「これで今日も安心して動けるわね」
「いや、僕は食べなくても飲まなくてもいいし」
「寝ることも休むこともね」
「一切しなくていいけれど」 
 それでもだというのです。
「油さしを忘れたらね」
「動けなくなるのよね」
「そうなんだよね、これが」
「それだけがですよね」
 カルロスもその木樵に笑顔で言います。
「木樵さんの弱点ですね」
「うん、油をささないとね」
「動けなくなることが」
「それで動けなくなって助けてもらったことがね」
「ドロシーさんとの出会いにもなりましたね」
「あの時ドロシー嬢に会わなかったら」
 そうしていたらどうなっていたか、木樵はしみじみとして言うのでした。
「僕はずっとあそこにいたままかもね」
「そうなっていかたも知れないんですね」
「本当にね、ドロシー嬢は僕の救世主だよ」
 木樵はドロシーを見つつ言うのでした。
「有り難い友人だよ」
「それは僕についてもだよ」
 かかしも言うのでした。
「僕もずっと畑で寂しくいたよ」
「それが、でしたね」
「ドロシー嬢と会ってからだね」
「今のかかしさんがあるんですよね」
「そうだよ、だから僕にとってもね」
 ドロシーはというのです。
「救世主だよ」
「そうなんですね」
「そう、本当にね」
 こう言うのでした。
「今の僕達はドロシー嬢との出会いからだよ」
「その私も」
 他ならぬドロシーも言うのでした。
「皆と出会えて」
「そうしてなんですね」
「今の私があるのよ」
「ドロシーさんもですね」
「そのはじまりは竜巻からだったわ」
 全てはそこからでした。 
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