ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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戦う意思
前書き
久々の投稿です!
それではどうぞ!!
広大な砂漠エリア。
辺りには何もなく、風が砂を巻き上げる、そのフィールドの中に彼は立っていた。
「・・・・・」
目を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。音、臭い、感触、すべての情報をその体で感じとる。
そして、目を開けると───
「・・・来るッ」
次の瞬間、シオンの目のには既に一発の弾丸を捉えていた。
光剣で切り裂くとすぐさま弾が飛んできた方向へと走った。
「頼むぜ、皆ッ!」
シオンにはつい数十分前に交わした作戦が頭を過っていた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
『2チームに別れる?』
『そうだ、今残っているのは俺たち四人と闇風、そして死銃。この二人を迅速に対処するにはこれが一番効率的だ』
『でも、それなら闇風を四人で倒してからでも・・・』
『それだと、戦闘中に死銃に狙い撃ちにされる。またその逆も然りだ』
『それで、チームはどうするの?』
『まずは対闇風チーム、これはキリトとシノンに任せたい』
『俺とシノン?』
その案に対し、シノンは異議を唱えた。
『理由を聞いてもいいかしら?』
『戦力のバランス、そして・・・“経験の差”だ』
『経験の差?』
『俺とお前ではここでプレイしてきた時間が桁違いだ。その為、敵の情報を知っているやつが当たった方がそのぶんリスクが減る。適材適所ってやつさ』
『なるほど・・・』
シオンは武装を整えると、再びマップを開く。
『今まさに闇風はこちらに向かってきている。こちらとしては、闇風が死銃と離れたところでケリをつけたい・・・』
『そうね、その為には・・・』
『不意討ちの一撃必殺が最も効果的だ。出来るか?シノン、キリト』
シノンはヘカートを背負うと、
『出来るかじゃなくて、やるしかないでしょ?』
『俺たちもなるべく早く終わらせる。だから・・・』
シオンは頷いてマップをしまう。
『分かっている、この作戦は俺が先に倒された瞬間に失敗する。それに、この作戦の切り札は・・・』
シオンたちはこの作戦の切り札となる人物に視線を集めた。
『アリア、お前に懸かっている』
『了解、おねーさんにお任せあれ♪』
『よし、それじゃあ。行くぞ!』
『『『おうッ!』』』
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場所は変わり、砂漠エリアにそびえる大きく、そしてひどく風化した塔。そこにはシノンがヘカートを構えて待機していた。
「・・・・・」
シノンはスコープ越しに闇風を視界に捉えると下で待機しているキリトに合図を送る。それを受け取ったキリトは物陰に隠れ、息を潜める。
引き金に指を掛けたまま呼吸を整えるシノンの頭には出撃前に言われたシオンの言葉を思い出す。
『シノン』
『何?』
『戦闘が始まれば悠長に話していられない。だから今のうちに言っておく』
シオンはシノンに対してこんな言葉を投げ掛けた。
『戦況が硬直又は不利な状況を劇的に変える方々は二つある。それは・・・“自分を変えるか”、“その環境そのものを変えるか”だ』
『自分を変えるか、環境を変える・・・?』
『戦況が動かないということは双方が常に睨みあっていると言っていい。そんな状況が続けば勝機は我慢強い方に傾く。だが、それがどうしても当てはまらない時がある・・・』
『両方の力が互角の時・・・』
シノンの言葉に対し、シオンは頷く。
『そんな状況を劇的に変えるもの、それが個人が繰り出す“予想外の行動”とバトルフィールドが生む風や気候などの“環境の変化”であり、それが時に一発逆転の手札となる。勝負っていうのは、そういったものをいかに手中に納めるかで決まる。だが、それは容易にできることじゃない・・・』
『・・・・・』
『『今の状況を壊したくない』、『失敗したらどうしよう』、多くの者がそう思うだろうな。だけどな、それを理由に抵抗せずにやすやすと死ぬのか?』
シオンは拳を握りしめて表情を強ばらせた。
『俺は、嫌だね・・・。どうせ死ぬなら、その死ぬ一瞬まで足掻いて、足掻いて、足掻き続けてやるさ。シノン、お前にさっき言ったように戦えとは言わない。だけどもし、その心に少しでも“戦士”としての“生きたい”という気持ちがあるなら・・・』
シオンはシノンの目の前に拳を突き出して言った。
『“足掻け!”・・・心臓が止まるその一瞬までッ・・・!』
あの会話から今のこの状況まで、その言葉が彼女の頭の中を巡っていた。そしてその直後に言われた言葉も───
『シノン、もし今よりも強くなりたいなら、“今の自分を知り、それを受け入れろ”。自分の強さも弱さもな・・・』
「自分の強さも弱さも、か・・・」
シノンは息を大きく深呼吸するとスイッチを切り替える。
「いいわ、足掻いてやろうじゃない!」
シノンは再び集中、闇風をその目で捉えて引き金に指を掛けた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「彼処か!」
シオンは数十メートル先に死銃を視界に捉え、加速する。
『今だ、アリアッ!』
数百メートル離れた塔の最上階、そこにはスコープ越しに死銃を視界に捉える眼が一つ。
『見えたッ!』
しかし、それと同時に死銃も気がついていた。
「相討ちになってでもッ!」
バァンッ!!
炸裂する銃声、放たれた二つの弾丸は互いを掠めるようにして通過した。
アリアが放った弾丸は死銃の持つサイレントアサシンのスコープに着弾し、死銃が放った弾丸はアリアのハリスM87Rの銃身に被弾した。
「あーあ、やっぱ軽いと弱いのかな~、借り物とはいえ勿体無かったな~・・・」
アリアはハリスM87Rを名残惜しそうに捨てると、先程自分が撃った方向を眺めた。
「死銃、想像以上に厄介ね・・・。・・・しょうがない」
アリアはウインドウを開き、操作し始める。
「こりゃ、本気でいこうかな?」
そして、あるものを取り出した。
「頼むわよ雪羅、この作戦の切り札はアタシとか言っちゃってるけど、アンタもなんだからね」
アリアが狙撃したポイントは死銃のスコープを捉え、見事に破壊に成功した。
『よくやったぞ、アリア。後は任せろ!』
「見つけたぞッ!!」
死銃は破壊されたサイレントアサシンを捨てると長さ数十センチの物体を持ち出し、隠れていた岩影から姿を現した。
『なんだ、あれは?』
それを引き抜いた次の瞬間、死銃の姿がぶれて見えた。
「あれは、ッ!?」
シオンが気づいた頃には既にソレは彼の右肩に刺さっていた。
苦痛に顔を一瞬歪ませるも、引きつらせた苦笑を浮かべながら言った。
「オイオイ、マジか、よッ!」
肩に刺さったものを光剣で振り払うと死銃はバックステップでかわし距離をとった。
距離をとられて始めてシオンはソレがなんなのか理解した。
「刺剣、か・・・。驚いたな、まさかGGOにも金属剣があるなんてな」
死銃はしゅうしゅうと掠れた笑いを漏らしながら切れ切れの声で答えた。
「お前と、したことが、不勉強だったな、《白の剣士》。《ナイフ作成》スキルの、上位派生、《銃剣作成》スキルで、作れる。長さや、重さは、このへんが、限界だが」
「ほう、そいつは随分と耳寄りな情報だこと。今度試してみるよ」
「なら、そんなオモチャは、さぞかし、不本意、だろう」
死銃の言葉にシオンは光剣をクルクルと回しながら答えた。
「そんなことはないさ、これはこれで中々いいものだぜ?それに、“武器”であることにかわりはない、お前の首をぶっ飛ばすことくらいはお安いご用さ」
「ク、ク、ク。威勢が、いいな。できるのか、お前に」
「できるさ」
「!」
シオンはそう答えると光剣のスイッチを再びONする。
「来いよ。その頭、この俺が吹っ飛ばしてやる!」
「フン、やれるものなら、やって、みろ!!」
バネのように唐突な動きで死銃はシオンの心臓を的確に狙ってきた。しかしシオンはギリギリのところで光剣で弾く。
「ッ!!」
「そう焦るなよ。楽しもうぜ、今のこの状況を」
「フッ、ほざけ!」
死銃は凪ぎ払うようにエストックを振ると、シオンは回転しながらかわす。
「久々なんだよ、血がたぎってウズウズすんだよ。アンタみたいな強敵はそうそう出会えないからな。お前もそうだろ死銃?いや・・・」
シオンは光剣を死銃に向けると核心に迫るような言い方をした。
「───“赤眼のザザ”!」
「やはり、気づいていたか・・・」
「だが、そんなことは俺にとってはどうでもいいんだわ。ただ俺は・・・未だに過去の仕事をやってる奴にいい加減退職をしてもらいたいだけさ」
「・・・・・」
「まぁ、お喋りはここまでだ。はじめようぜ、ザザ!!」
光剣を器用にふりまわすとシオンは死銃に剣先を向ける。光剣は微弱なスパークを散らしてまるで臨戦態勢をとっているようだった。
「いい、だろう、殺れるものなら、殺ってみろ!」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ!!」
ぶつかり合う二対の剣、ほとばしるスパークは彼らの心の熱さが魅せるものなのか、それとも───
後書き
はい、久しぶりの投稿となりました。
ついに死銃とのラストバトルが始まりました!
はたしてシオンは死銃に勝てるのか否か、それとも───
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ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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