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俺が愛した幻想郷

作者:茅島裕
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プロローグ
  第一話 知りたがり

 
前書き
「嬉しかった幻想郷」

「怒った幻想郷」

「哀しかった幻想郷」

「楽しかった幻想郷」

「喜怒哀楽な、幻想郷」


「俺が愛した幻想郷。そして、君も愛した幻想郷」

「俺が好きな幻想郷を、頼んだよ....」 

 
「.....つまんね」

ベッドに横になり、手にしていたスマホの電源を切った
頭の後ろ、後頭部に、組んだ手を添えて目を瞑った

一体なんなんだろうな、この世界は

まぁよ
いきなりウィルスが撒き散らされて
この世の半分以上の人間がゾンビになったとしよう
そしたら俺は怖くて動くことさえ出来ないだろう
いつ死ぬのか、そんなことをずっと考えながらガタガタ震えているんじゃないか?

でも、それでもいいと思うんだ

今、この世の人間の半分以上は、毎日同じことをさせられて、まるで奴隷のように動かされている


そんな、子供のときから馬鹿みたいにこんなこと考えていたわけではない
もっとも、中学三年まではな

ほんと、小学生の無邪気な子供に戻りたいよ

中学の三年になってやっと気づいたんだ
この世の人間は奴隷だって、また、奴隷になるんだって

考えてみろ、中学で勉強を学び、好きな、働かせられたい仕事場に行くために高校に入り
そして、高校を卒業したら、大学に入る人もいれば入らない人もいる
ここは入らない、と言う設定で考えようか

高校を卒業したら、仕事に就くよな
金の為だよな

毎日毎日、同じ時間に起きて、同じ場所に行って、同じことをさせられる
そんなの奴隷じゃないか....

たしかに
俺が考えていることはただのわがままだ
これが、この世のルールだからな

だからつまらないと言っている


そんな高校二年生だ


だが、と言うか
なんと言うか
変なんだよ、俺

小さいころ、いろんなとこを駆け回って遊んでたんだ
そしたら迷子になって、一人で森の中(?)を歩いていたら
目の前にふわりと現れたんだ
変な、見たことのないふわふわの帽子を被って
上半身だけが見えて居て

別に切れてるとかそう言うわけではない
強いて言うなら
空間が歪んだ? 空中が切れて
その切れた空間、空中から上半身だけを出していたんだ

顔から見るに女性
外国人? と言うかそれ以前に人間なのか?

当時の俺はそんなこと考えられなかったが
今となっちゃ不思議で不思議で仕方が無い

その上半身だけを出して現れた、不思議な帽子と不思議な服を着ている女性はそのまま森の奥へと行ってしまった

当時の俺はその女性を追っかけた、どうせ迷子でどうすることも出来なかったし、不思議で、知りたくてしょうがなかったらしい

すると
森の奥にある小さな湖
そこで女性は止まった
そして女性はこちらに振り向き、俺を見た
そのままにっこり笑い、俺に近づき
俺の頭を撫でたんだ

俺は怖がりもせず、そのままその女性に撫でられ続けた

それからのこと
何があったのかわからなくなり
気がついたら自分部屋、ここで眠って居たんだ

今思うと、あの女性は俺に何かを伝えたかったんじゃないか? そう思う
いや、絶対そうだ
何故なら


俺は目を瞑ったまま
右手を前に突き出した

そして、何もなかった右手に
ペットボトルのお茶が握られた

ペットボトルが握られた右手は
また何も無くなって居た

なんと言うか
自分でもわからないんだけど
遠くにある物を取り出せたりできるんだ
テレポート見たいな


口で説明するのがめんどくさくて行動に表したが
これさ
あの日、あの女性に会って撫でられたあと、気がついたら自分の部屋で起きて、喉が渇いたから冷蔵庫にある飲み物を取り出そうと思ったら右手に握られたんだ
要するに
気がついたら出来るようになって居た

話を戻そう
あの女性は俺に何かを伝えたかった
この変な能力
普通の人間なら使えないよな?

俺の推測だ
ただの推測、仮定に過ぎないが
この、俺が使ったこの変な能力...
もしあの女性が異世界人だとしたら
その異世界の人達はみんなこう言う能力を使えるんじゃないだろうか?

そこで、もう一つ
ここまでの仮定を丸めた仮定

俺はその異世界に居たほうがいいんじゃないのか?
もしくは生まれる世界を間違えたんじゃないのか?


フッと、我に返り
俺はため息をついた

「またかよ... ほんっとに俺はメルヘン脳だよな。あるわけねぇだろんなもん」

だけど、俺が使えるこの能力は本物だ
妄想でもなんでもない、"現実"だ



■■■


あの後、俺は直ぐに眠ってしまったみたいだ
気づいたら次の日だったよ
あ〜...いや、夢とかは見てない
もっとも、そんな夢なんて見てることよりしたいことがあるからさ
まぁ、今までにも同じことを考えて、実行しようと思ってたんだけど
怖いのか、めんどくさいのか、わかんないけど嫌だった

「さて」

無意識にそう言ってしまう
そして俺は、何かに囚われているかのように、操られているかのように
起き上がった。別に意味はないよ、ホントに囚われているわけでもないし、操られているわけでもない。ただ、そんな気がしただけ、それだけ

とりあえず部屋から出る... まぁ、部屋は一つしかないんだけどね
だから出るもなにもない
ちょっと移動すれば水道

蛇口を捻り、顔を洗う
近くにかけてあったタオルで顔を拭き
寝間着を脱ぎ捨てる(カゴに)

そしてベッド付近にある私服を手に取る
ちょっと暗い感じのシャツを下に着て、その上に黒いトレーナー
ズボンは適当なズボン、ちょっぴりサイズが大きい。気にしないよ

近くにあった鏡を持って、寝癖を整える

スマホをポケットに突っ込み、ショルダーバッグをかけて、靴を履いて
いざ出発....


前から、一年くらい前から考えてるだけで出来なかったこと、なんとなくだ
なんとなく実行しよう

あの女性と会った森に行くんだ


あの女性にもう一度会って聞く
全部聞く
俺の推測が正しければ
昨日の夜考えていたことは全てあの女性と関わっている
別に、俺をその異世界に連れてけなんて言わない
だから、会って話させてくれ

正直、なんの解決にならないかもしれない
でも....
せめて、伝えたいことがわかった
と言うことを知らせたい

もっと欲を言えば、なんで俺はこんな能力を持っているのか、なんであの時、俺を撫でたのか
聞きたい
教えてほしい



この世から、抜けたい
 
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