【完結】剣製の魔法少女戦記
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第六章 正義の在り処編
第百九十五話 『正義とは……、そして語られる過去』
前書き
更新します。
今回はブリューナク隊とシホの過去を語る話です。
ではどうぞー。
クラスカードによる疑似的にサーヴァントの能力を会得するホムンクルスたちの話が一段落済んで、今度は本題であるブリューナク隊について話し合われることになった。
「………それで士郎。ジグルド提督の参謀だと自称するウィルソン・ターナーという男を捕らえたと聞くが、なにかジグルド提督について話は聞くことはできたか?」
シグナムがそう聞く。
しかしそれに士郎は「いや……」と言って首を振る。
そう、ウィルソンはジグルドの起こした事件については一切話さないを徹底しているのだ。
聞くたびに何度も『私からはなにもいう事はありません。ジグルド提督の信頼を裏切るわけにはいきませんから』と口をそれ以外一切開かないから厄介であるのだ。
それは魔術事件対策課でシホには劣るが暗示をかけられる魔術師もいるにはいるのだが、論理に反するとして強硬な手段は取らないでいるというのも現状である。
「そうかぁ。ターナーさんは話さなかったかぁ。まぁ、無理に聞き出すのもなんかなって感じやしね。それじゃ残りのブリューナク隊の主要なメンバーについて話していこか」
はやての発言でまずティアナが少し無理してそうな顔つきで立ち上がる。
そんなティアナの肩にヴァイスが手を置く。
「………大丈夫か、ティアナ? 無理すんな。俺が代わりに話をつけてやってもいいんだぞ?」
「ありがとうございます。ヴァイス陸曹。でも、これはあたしの身内の問題なんです。だから……」
そう言われてはヴァイスも引き下がるしかないと思ったらしい。
頭を掻きながらため息をつき、
「………はぁ、わかったよ。ならさっさと報告しな。ただしあとで愚痴でもなんでも聞いてやるからな」
「ありがとうございます………ヴァイス……さん」
「ん……?」
そこでヴァイスはティアナの自身を呼ぶ呼び方に対して微妙な違和感を覚えた。
そして少し考えて「あっ………」と理解する。
「(今、ティアナは俺のこと『陸曹』ではなくて『さん』付けで呼んだのか………? いや、まさかな………)」
ヴァイスはティアナに限ってそんなわけがないなと結論付けて会議の話を黙って聞いておくことにした。
ただそれは他のものにも当然聞こえていたらしく特にはやてはニヤニヤとした笑みを浮かべていたのはティアナもヴァイスは気づかないでいた。
とにかく本題に入るとして、
「ブリューナク隊に、あたしの兄………ティーダ・ランスターがいました」
「ティアナの兄やて? でも、確か………」
「はい。兄は六年前のあの事件で重傷を負いさらには行方不明になっていました。ですが会話の内容的にジグルド提督に助けられてそのままタスラムと偽りの名で身を隠していたそうです………なんで兄がそんなことをしてまで自身の正体を隠していたのかはわかりません。ですがこうして敵になった以上………あたしが兄を捕まえます!」
ティアナは少し悲しそうにしながらもそう決意する。
それにスバルは「ティア………」と小さく心配そうに呟く。
それを聞いていたはやては「わかった」と一呼吸はさんで、
「でもな、ティアナ。ティアナだけじゃないんやで? みんなで捕まえような。一人で無理して強がってもぼろが出てしまうからな」
「………はい」
それでティアナも少しばかり表情はよくなっていた。
「よし。それで他の主な人員についてはわかっているのはいるか?」
「はい」
それでエリオが手をあげる。
「エリオか。話してみ?」
「はい。ブリューナク隊のロボ・バルコム君にセイラ・ヒラガさん、そして獅堂凰華陸曹の三名です。ロボ君はなんでも過去にお父さんを最高評議会が関わっていた事件で殺されたそうなんです……」
「例の事件やね………? バルコムか。その人の名前も死亡リストに載っとったな」
「それで、これで主な構成員は全部かな? あとは末端の魔導師といったところだね」
フェイトがそう締めくくる。
「そうだね、フェイトちゃん。このメンバーに後はモリア・モルドレッドとジグルド提督を入れてブリューナク隊なんだね」
「つまり、モリアのキリングドール製造ラインの資金源はジグルドの奴のところってわけだな、はやて」
「そうなるな、ヴィータ。ただ、ジグルド提督だけでモリアの研究を支えていたと考えるとあきらかに違和感あるな。なんていうかどこからその資金を調達したかにも考えさせられるからなぁ……」
「おそらく別のパイプも持っていたんでしょうね。それこそ最高評議会並みの権力者か誰かね。どこにでもお金は持っている人はいるし、それを道楽に使う輩も少なくないから」
シホの予想にみんなは概ね納得のようである。
それでこれからの方針を話し合おうとした時にエリオがシホ達にある質問を投げかける。
「シホさん、少しいいですか?」
「ん? どうしたの、エリオ?」
「はい。正義ってなんですか……?」
「正義………?」
「………わからないんです。ロボ君と戦って僕は今まで時空管理局が正義を担ってきたと思っていましたけど、ロボ君たちにとってはまた別の正義がある。だから明確な正義というものがなんなのか知りたいんです!」
「エリオ君………」
「エリオ………」
エリオの告白にキャロとフェイトは心配げにエリオの名を呟く。
「シホさん! 僕も知りたいです!」
そこにレンも声をあげる。
それにシホは少し困ったような表情をしながらも、しかたないなぁと言う思いで話すことにした。
「それじゃエリオ、それにレンも。後、スバルにティアナ、キャロにラン………あなた達にとっての正義って明確にある………?」
「僕たちにとっての正義………」
それにフォワードの六人は少し考え始める。
しばらくして、
「わからない、です……」
スバルが代表して答える。
だけど「でも」と続けて、
「あたしはなのはさんやシホさんのように助けを求めている人を助けられるような人を目標にして今まで頑張ってきました。正義というわけではありませんが、しいて言えば人助けが私にとっての目標であり正義なのかもしれません」
「そう。スバルはそう考えているんだね。私はその想いだけでも嬉しいよ」
「はい!」
なのはに褒められてスバルは元気に返事をする。
「………あたしは今まで兄の夢を引き継ぎたいと言う思いで執務官を目指してきました。………でも、兄が生きていてこんな事件の片棒を担いでいると知って少し兄が信じられなくなってきています。
でも、執務官になるという夢はもうあたし自身の目標です。だから諦めたくないです。だから、どんな時でも冷静になって犯罪者を逮捕するのがあたしの目標であり正義なのかもしれません。明確じゃなくてすみません」
「ううん。ティアナは間違っていないよ。私だってなにが絶対な正義だなんて思ったことはないから。正義っていうのは自身で信じるものだと思ってる。正義なんて人それぞれによって異なる事が当然なんだから」
フェイトがティアナの想いに共感して、そして正義はそれぞれ違うということを教えた。
「エリオとキャロはどう思ってるんだ? 話してみろ」
ランサーにそう言われて二人は少し考えた後にポツポツと答え始める。
「………まだ、わかりません。ロボ君の言う正義は正しいものなのかもしれませんし、かと言ってそれを認めたら僕はなにか足を踏み外してしまうかもしれない恐怖があります」
「私もエリオ君とおんなじ感想です。まだそんなに理解できません。なにが正しいのかも違うのか……」
まだ子供なりに考えて答えたのだろう、しかし恥を感じることはない。まだこれからも成長していくのだからいつか自信を持って答えを見つけてくれればいい………という思いでランサーは笑みを浮かべながらも二人の頭を撫でるのであった。
「まだ二人はガキなんだからこれから見つけていけばいいんだよ。人生のまだ半分も生きてちゃいねーんだからな」
そう言って陽気に笑うランサーを見て他のみんなも「ランサーの言うとおりだね」と納得しているのであった。
そして最後にランとレンが答える。
「私とレンはシホさんに助けられた時からシホさんと同じ道を行きたいと思っています」
「うん、そうです」
そんな二人の発言にシホは少し恥ずかしそうに頬を赤くしながらも、
「私なんかを見本にしなくてもいいのよ?」
と答える。
「でも、シホさんがいなかったら今の僕とラン姉さんはなかったんです。だから………信じさせてください」
「それにちょうどいいと言いますか、シホさんの正義を教えてくれませんか?」
「私の正義、か………」
そう言われてシホは話すべきか悩む。
だが、そこでアルトリアが、
「シホ。いい機会です。ここでシホの過去を語るときではありませんか? 以前にナノハとフェイト、はやての過去をフォワードのみんなに語りましたがシホだけは流してしまったではないですか」
「そう、ね。みんなならもう拒絶はしないでくれると信じたい」
それでシホは過去を思い出しながらも語り始める。
それにシホの過去を知らないフォワード達にギンガ、ヴァイスは興味深げに耳を傾ける。
―――シホ、いや、衛宮士郎の原初の記憶の始まり。
―――衛宮切嗣の理想である『すべてを救う正義の味方』を引き継いだ月下の夜。
―――巻き込まれてしまった第五次聖杯戦争。そこで体験した様々な真実。
―――聖杯戦争終結後に世界に出て己の正義を貫いた半生。
―――そして死にかけた時に助けられた事実。義理の姉イリヤの想いに答えて新しい体に宿った事。
―――今の世界にやってきて判明した様々な事象。
―――新たな理想である『大切な者たちを守れる正義の味方』を明確にできた事。
シホはすべてを語り終えると、
「これが、私と士郎のすべてよ」
「……………」
初聴きのみんなはしばらく黙っていた。
シホと士郎は理由はどうあれ過去にたくさんの人を殺してきた。
改めて聞いたなのは達も黙るのは仕方がないことだとある意味ドライに捉えていた。
だがここで援軍の声が上がる。
それは英霊のみんなだった。
「確かにシホは切嗣のように理想のためにその身を汚してきました。ですがそれは我ら英霊にも言えることなのです」
「確かにな。奏者以上に我らも屍を重ねてこうして英霊になったのだからな」
「………はい。私も攻めてくる者は容赦なく石化して姉様たちを守っていましたから」
「俺もなぁ。たくさんの戦をして殺したな。ま、相手も殺すつもりで来たんだからお互い様だがな」
「私もベルカの民を守るために必死に戦いました」
「俺もアルクェイドを守るために攻め込んできたやつは殺したな」
「んー………私も殺す奴は殺していたかなぁ?」
「わたくしも殺されそうになったから殺しました♪」
アルトリアが、ネロが、ライダーが、ランサーが、オリヴィエが、志貴が、アルクェイドが、キャスターが、自身の過去の行為を語る。
「英霊になるものは善悪に関係なく人殺しなのです。以前に切嗣はあることを言いました。
『英雄とは栄光や名誉をかざして人殺しを容認する生き物』だと。
癪に障る言葉ですが否定ができないのが痛いところなのです。
だから、シホとシロウもある意味被害者なのかもしれません。元は私たちの残した罪過でシロウは聖杯戦争に巻き込まれたのですから」
アルトリアがそう言って話を締める。
それでまた一旦話は止まる。
だがしばらくして、
「………シホさんのした事は確かに許されないものかもしれません。でも、信じたいです! 僕たちは今までシホさんの事を不審に思ったことはありません。そしてこれからもきっと……ッ!」
「レン………ありがとう」
「あたしもシホさんを信じます。だって、あたしの師匠なんですから」
ティアナにもそう言われて感極まる想いであった。
それから他のみんなもそれぞれシホと士郎の事を信じると言ってくれた事にシホは拒絶されないで安心し、なのは達もよかったと笑みを浮かべているのだった。
それから話の軌道を戻して会議を再開した一同はある事を決めて次の作戦行動まで身を休めるのであった。
後書き
なにやらヴァイスといい雰囲気のティアナでした。
そしてやっぱり管理局に所属している身でシホを認めるのは容易ではなかったようです。
ですが、なんとか認められて良かったです。
さて、本編はこれからどうなるか?
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
では。
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