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オズのムシノスケ

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第十幕その一

       第十幕  ヘラジカ達の群れ
 ドロシーはヘラジカさんにです、あらためて尋ねました。
「それで貴女の群れの場所だけれど」
「そこね」
「一体何処かしら」
「あっちの森よ」
 右手の青い森を指差してです、ドロシーに答えるヘラジカさんでした。
「あそこに私のいる群れがあるのよ」
「そうなのね、それじゃあ」
「今から戻りなさいっていうのね」
「私達も一緒に行くから」
 ドロシーはこのことをまたヘラジカさんに言いました。
「それで間に入ったりするから」
「喧嘩の仲裁してくれるっていうのね」
「そうよ、どういった理由で喧嘩したのか知らないけれど」
 それでもだと言うのでした。
「とりあえず一緒に行くからね」
「頼りにしていいっていうのね」
「どうも貴女意地っ張りみたいだし」
 ドロシーはヘラジカさんのそうした性格をもう見抜いていました、それで皆一緒に行ってそうして仲裁をするというのです。
「そうさせてもらうわ」
「何か悪いわね」
「そう思わなくていいけれど」
「それでもなの」
「そう、とにかくね」
 仲裁に入るというのです。
「森に戻るわよ」
「わかったわ、それじゃあね」
 ヘラジカさんもドロシーの言葉に頷きます、一行はそのヘラジカさんと一緒に森に向かいました。そしてその途中で。
 カルロスは少し考えるお顔になってです、教授に尋ねました。
「あの、少し気になったんですけれど」
「うん、何かな」
「僕達将軍のお家に行く前に象さんに会いましたね」
「うん、煉瓦の道で寝ていたね」
「それで今はヘラジカさんと一緒ですけれど」
「そのことがだね」
「象さんは暑い場所の生きもので」
「ヘラジカはだね」
「寒い場所の生きものって聞いてますけれど」
「どうして同じ国にいるかだね」
 教授はカルロスが言いたいことを察して言いました。
「このことだね」
「それはどうしてですか?」
「うん、オズの国は特に暑くも寒くもなく」
 まずはオズの国の気候のことからお話するのでした。
「そしてこの国は君達の世界とは別の生態系だから」
「象さんとヘラジカさんが同じ場所にいても」
「これがこの国では普通なんだよ」
 オズの国ではというのです。
「全くね」
「そういうことですか」
「うん、そうだよ」
 こうお話するのでした。
「この国ではそれが普通だからね」
「わかりました、そうしたところもオズの国なんですね」
「そういうことになるよ」
「いや、オズの国が不思議の国なのは知ってましたけれど」
「生態系についてもね」
「不思議な国なんですね」
「そういうことだよ」
 こうカルロスにも他の子達にもお話するのでした、そうして。
 一行で森の中に入りました、森はマンチキンの国なので木の葉も草も青くてです。その青い森の中に入って。
 そしてです、皆でヘラジカさん達の群れを探しました、その中で。
 ヘラジカさんはです、少し嫌そうにこう言いました。
「やれやれね」
「ご家族に会いたくないんだね」
「ええ、そうよ」
 その通りとです、ヘラジカさんはかかしに返しました。
「喧嘩したばかりだからね」
「その気持ちはわかるけれどね」
「喧嘩したらっていうのね」
「そう、仲直りした方がいいよ」
「それでなの」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「君はここに戻ってもね」
「嫌な顔はしないで」
「そうだよ、仲直りすべきなんだよ」
「ううん、そのことはわかるけれど」
 まだです、ヘラジカさんは項垂れています。 
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