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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第63話 クレインVS赤い巨兵と蒼い騎士

 
前書き
明けましておめでとうございます、blueoceanです。

年末に出来たらと思いましたが、ギリギリ間に合いませんでした………
それはともかく皆さまいかがお過ごしでしょうか?今年は久しぶりにのんびりな正月を送る事が出来ています。


このSTS編も佳境に入り、ゴールが見えてきました。最後まで頑張ろうと思っていますので今年もよろしくお願いします!! 

 
「どうなったんだろ………」

零治にくっ付いたまま動かない3人、そしてそれから微動だに動かない4人を見ながら心配そうに見つめる優理。
戦闘での疲労も回復し、周辺の警戒しながらその場に居たが、この場に邪魔者が来ることは無かった。

「レイ………」

今だ目覚めない零治の顔を見つめる。無表情のまま立ち尽くす姿を見て優理の目には涙が溢れて来た。

「もうレイと一緒にいられないのかな………?」

どんどん不安な気持ちが湧き上がってくる。誰もいないこの場所の影響もあるのか、どんどん悪い方向へと考えてしまう。

「お願い、帰って来て………!!」

零治達の前で膝立ちになり、両手を合わせ祈る優理。

「お願い神様………!!」

普段から神様の存在自体信じていない優理だが、思わず呟いていた。

(大丈夫じゃ、帰ってくるぞ)

「えっ!?」

不意に念話に近い様な感覚でメッセージが流れてきた。慌てて涙を拭い、辺りを見渡すが誰もいないどころか人の気配すらない。

「気のせい………?」

しかし殆ど無音状態のこの場所で聞き間違いなどあり得るのか?そもそももし念話なら聞き間違えなんてあるのか……?
そんな思考が優理の頭の中で交錯する。

「………やっぱり気のせいかな?もう聞こえないし………」

不思議に思いながら再び零治達へと注目する。すると変化が見えた。

「光ってる………?」

ちょうど心臓のあたり、小さな光が着いたり消えたりしていた。
そしてその光は徐々に大きくなっていき、最後には部屋全体を照らす程の強い光を発した。

「何!?」

思わず目を瞑ってしまう優理。瞼の裏にまで光を感じる程輝いていた。

「一体何があったの……?」

戸惑いながらゆっくりと目を開ける。

「あっ………」

目の前には手を開いて閉じてと動かし、身体の動作確認をする零治が居た。

「レイ………?」

不安そうな声で優理が声を掛ける。本当に零治が戻ったのか、それとも失敗したのか………答えを聞くのに少々躊躇する気持ちがあったが意を決して声を掛けたのだ。

「………」

小さな声で聞こえなかったのか、それとも聞こえててスルーされたのか………優理は更に不安になるが逃げずに再び声を掛けようとした。

「………優理?」

しかしそれよりも早く名前を呼ぶ声がした。懐かしく、そしてずっと待ち焦がれていた声。

「ああ……レイ………!!」

温かく、そして優しい顔で微笑んでくれる零治。それを見たところで、優理は耐えきれず零治の胸へ飛び込んだ。

「………悪かったな心配かけて」
「ううん、お帰りレイ………」















「………くっ!?」
「エローシュ君!?」
「真白いちいち気を取られるな、落とされるぞ!!」
「う、うん………」

エローシュに攻撃がかすめ、思わず気を取られた真白を一喝した。

(普段のこいつなら絶対に声を荒げて怒るなんて事しないだろうに………それほど追い詰められているって事か)

そんな事をふとエクスは思う。エローシュは滅多に怒ることもない上、怒りで声を荒げる姿は今まで見せた事がなかった。

「くそっ、もう時間が………!!」

既にエローシュのブーストの有効時間も5分を切っていた。それが過ぎれば戦闘機人のイーグレイ家を残し、皆眠ってしまう。そしてもう目覚める事も………

「まだなのか………!!」

目の前に向かってきたガジェットをはやてに撃ち落として貰いながら、自分なりに今の現状の打開策を考えていた。

(3分切ったらもう撤退しかない………最悪、大悟さんだけでも逃さなければ………!!)

それでも数時間程の時間稼ぎにしかならないと予想しているが、それが僅かながら繋げられる希望だとエローシュは考えていたのだ。

「はやてさん、話が………」

今までの苦労が水の泡となるが決断するしかなかった。

『!?待てエローシュ!!』

話そうとした瞬間エクスがエローシュを止めた。

「何だ!?どうしたエクス!!」
『気がつかないのか!?エンジェルソングが止まったぞ!!』

エクスの言う通り、先ほどまで流れていた歌が止まっていた。

「中で動きがあったんだな………ゆりかご自体には変化は見られないが取り敢えずこれで………!!」

エローシュの言葉通り、作戦に参加するはずのメンバー、参加していたメンバーが徐々に目覚め始めた。空にいたメンバーの殆どが上空で巻き込まれたり、落ちたりとその殆どが戦闘ができない状態だが、それでも後続部隊が動けるようになった事で一気に状況が変わった。

「エローシュ、後続部隊部隊が復帰するで!!これで形勢が変わる!!」
「後は中のメンバー次第ですね………俺も自分の事は自分で守りますから加奈さんのフォローに行ってやってください」

はやてはブラックサレナが修復し始めてから真白と共にエローシュを守ることに集中していた。

「分かった。………後少し何やから気張ってなエローシュ」

エローシュの顔を見てあえて何も言わず、指示の通り動くはやて。
そう言い残して大悟達の方へと向かった。

「やっぱりお見通しか………」

苦笑いしながら呟く。その顔からは疲労の色が誰の目から見ても分かるくらいハッキリと表れていた。

「エローシュ君………」
「真白、俺決めたわ。この事件が終わったら1ヶ月だらける。絶対働かねえ………!!」

心配そうにエローシュを見ていた真白の顔が驚きで口を開けたまま固まる。

「あはははははは!!!」

そして大きな声で笑った。

「冗談じゃないからな………?」
「わ、分かってる、私も協力してあげるよ」
「そうか。…………だったら一緒に何処かに出かけるか?」
「えっ………?」
「もちろん真白が良ければだけど……………って真白さん?」

エローシュの話を聞いたか聞いていないのか前を向いたまま、返事の無い真白。

「あの………真白さん?」
「エローシュ君………全部奢り………?」

いつもとは違う低い声で言われ戸惑うエローシュ

「えっ?………えっと………わ、分かった、全部奢ってやる!!」
「うん!!それじゃあ絶対に勝たないとね!!」

そう言って笑顔でエローシュに答える真白。

「お、おう………」
『珍しい、お前がこんなに動揺するなんてな』
「や、やかましい!!………エクス、いざとなったら俺の代わりに頼むぞ」
『俺がお前の代わりが出来るとは思えないがな………まあやれるだけはやってやる。お前は後の事を気にせず突き進め!!』
「頼りになる相棒だな………それじゃあ気にせずやらせてもらう!!」

なるべく疲れをみせない様にエローシュは皆に指示を出すのであった………

















「!?歌が止んだ………!?」
「何処を見ている!!」

慌てた様子でよそ見をしたクレインにアルトアイゼンの時よりも巨大になったバンカーを脇腹に向けて突いた。

「うおっ!?」

咄嗟に張った魔力の盾で防ごうとするが、巨大な杭はいとも簡単に盾を貫いた。

「ちっ!!」

しかし間に障害が入った影響で軌道がわずかに逸れ、バンカーは脇腹を掠めた形で外れる。

「油断ならないね本当に!!」

攻撃が逸れた影響で態勢が崩れた桐谷に拳を打ち込んだ。

「くっ………!!」

しかしそれをものともせず桐谷は左腕のチェーンガンで攻撃した。

「固いな………さて、どうするか………」

チェーンガンを防ぎながら呟く。桐谷に攻撃が届かなくてもクレインは全く焦った様子は無かった。

(………先ほど、よそ見した時、歌が止まったと言っていた。何かの仕掛けが止まったんだろう………あいつにとってそれは想定外だったろうが、それでも焦った様子が無い。まだ何か隠し玉があるのか………?)

そう考えながら一旦距離を取る。一気に攻めようかとも思ったが、何を隠しているのか分からない以上、無闇に攻撃出来ないでいた。

「まさかホムラがやられたのか………?全てを任せていた私の失態でもあるが、これでは外の状況はまた変わる………大丈夫だとは思うがあまりのんびりとはいかないな………だが先ずは………」

そう言ってディスプレイを表示させ、何かを操作する。

「何をする気だ………?」
「悪いが、君の相手をする前に話を聞かなくてはいけない相手がいる。少し待ってもらおうか」




















「レイ、大丈夫ですか?」
「………ああ、ちょっと自分の身体じゃないみたいな違和感があるけど、大丈夫だ」

屈伸やジャンプをして体の不調を確認する零治。そんな零治の様子を星達は心配そうに見ていた。

「これからどうしましょう?」
「取り敢えず桐谷達とバルトさんと合流するべきだろう。今どんな状況か分からない以上、いつまでもバラバラに動くわけにもいくまい」
「夜美の言う通りだな、取り敢えず合流するか………」

まだ今の現状の話を全く聞いていない零治だが、夜美や星の話の中でも誰かと合流するのが一番だと言う事は直感で分かっていた。

「零治零治!!操っていたデバイスどうするんだよ!!ここで破壊しておくか?」
「ホムラか………」

アギトにそう言われ、刀を見る。

『私は貴方達の決定に任せるわ。好きになさい………』
『だったら私達と一緒に来ませんか?』
「えっ!?ラグナル!?」
「エリス………だよ優理」

ライが訂正しながら優理の頭を撫でる。

「エリス………?」
『ラグナルでいいわよライ』
「いいえ、本当の貴女になったんですからちゃんと本当の名前で呼ばないと駄目ですよ」
「そうだな、星の言う通りだ」
『2人共………ありがとう………』

星と夜美に言われ、感謝の言葉を述べるエリス。

「………どう言う事?」
「訳が分からないんだけど………」
「全て終わったら2人に説明するよ」

訳が分からないと言った顔をする優理とアギトに2人にライは優しく話しかけた。

「さて、それじゃあエリス、引き続きよろしくな」
『………はい、マスター』
「零治でいいよ」
『はい、零治………』

エリスは嬉しそうに零治の名前を呼ぶ。

『………私はどうすれば良いの?』

そんな中、すっかり話が変わってしまった零治達に気まずそうにホムラは話しかけた。

「ああごめん、付いてくるかホムラ?」
『あなたも本当にそれでいいの?』
「まあ遺恨が無いわけじゃないけどお前の想いも感じたし、星達やエリスも連れて行きたいみたいだしね」
『そう………分かったわ、だったら………!?零治!!』
「何を………えっ?」

ホムラに言われた時には遅かった。
零治を囲う様に魔法陣が展開され、零治にくっついていた優理も弾かれた。

「えっ!?」
「レイ!!」
「これは………!!」
『恐らくクレインが歌と止めた私と零治を強制的に転送するつもりね………』
「そんな!!折角助けたのにまた………!!」
「レイ、待って!!」

それぞれが止めようとするが、転送の魔法陣の中へは誰も入れずにいた。

「レイ!!」
「やだよまた離れるなんて!!」
「零治!!」

皆が叫ぶ中、アギトだけがその魔法陣を突破し、零治へとたどり着いた。

「アギト!!」
「もう離れない!!マイスターと一緒に私も戦う!!」
「アギト………みんな、後で合流しよう!!」

涙目ながら慌てる4人に声を掛ける零治。
それと同時に零治が言いたい事が4人には分かった。

「うん!!必ず!!今は私達が出来る事をします!!」
「だから無事で!!」
「終わり次第我等もレイの元へ向かう!!」
「レイ、無茶しないでね!!」

「ああ、4人も無事で!!」

そう言い残し、零治は4人の前から消えたのだった………






















「なのは!!」
「バルトさん!?作戦は!!」
「………!!」

なのはがバルトに視線を送った瞬間を見逃さなかった。
ブラスタービットの攻撃をかいくぐり、回し蹴りでなのはを蹴り落とす。

「うおっ!?」

空から降ってくるなのはを何とかキャッチしたバルト。

「あ、ありがとうございます………ですけど何でその人と一緒なんです?」

立ち上がってバルトに対して睨みながら問いかけるなのは。

「あ、ああ、色々あって協力してもらう事にした。イクト、ヴィヴィオの様子はどうだ?」
「………無表情ですけど、やはり出力が上がってますね、どうやって耐えてるのか分かりませんけどこのままじゃ聖王は完全に元に戻せなくなります」
「そんな!!どうにかならないの!?」

イクトの言葉になのはが倒す勢いで迫って叫んだ。

「………手はあります。ですけど………」

そんななのはの言葉に言葉を濁して返事をする。

「この際何だって良い。可能性があるなら言ってみろ」
「………先ずはあの溢れるばかりのレリックの出力を止めます、それにはそれ以上の威力のある魔力をぶつけ。打ち消すしかありません。ですがそれには聖王の鎧を破壊し、レリックの出力以上の攻撃を加える必要がります。その攻撃にあの聖王が耐えてくれるかどうか………」
「なのは!!」

「ディバインバスター!!」

バルトの掛け声と共にヴィヴィオが3人に対してディバインバスターを発射。
声のお蔭で反応できた3人は直ぐに射線上から退避した。

「ば、バルトさん!!何でお姫様だっこしてるんですか!!」
「仕方ねえだろ!!コイツはお前みたいに戦えないんだ!!」
「あ、ありがとうございます」
「お礼はいい!!それよりもそれでヴィヴィオは助けられるのか?」
「………いいえ、ただ一時的に停止状態にしただけなので、それから今度は完全にレリックを破壊しないといけません。ですけどそれにはかなり精密な魔力操作が必要で少し失敗すれば人体に後遺症を残してしまうかもしれません………」
「そ、そんな………!!」

離れた場所から話を聞いたなのはだが、直ぐにヴィヴィオが向かって来て戦闘に集中した。

「他に手は?」
「無いです。これが一番ベストで確実だと思います。この方法で、シャイデ・ミナートはイクスヴェリアを救いました」
「なるほど、実際に検証済みってか………」
「ただし、あの時はただ破壊だけの作業をしただけで、今回みたいに無理矢理停止させてからしたわけじゃないです、なのでどうなるかは正直未知数です………」
「………」

そんなイクトの言葉を聞いてバルトは静かに考え込む。
なのははビットを上手く操作し、ヴィヴィオ自分に集中させていた。

(この案でやるとしたら威力で考えれば普段なら俺の方がある。聖王器であればヴォルフバイルの時以上の威力もだせるだろう。………だがそれはどちらかと言えば広域殲滅タイプだ。………そうなると、一点集中で攻撃出来る技でそれ以上の威力となるとなのはのブラスタービットを最大の4基まで起動させたスターライトブレイカーか………だが今のなのはの身体じゃ………)

そう思いながらなのはを見るバルト。

(………大丈夫です、行けます!!)
(なのは………)

念話をしたわけではないが、互いの顔を見て、瞬時に意思疎通が出来た。

「なのは!!」
「はい、お願いします!!」
「えっ!?」

その後の動きは速かった。
イクトに説明する前にバルトはなのはの名前を呼び駆け出す。
それと同時にヴィヴィオから距離を取り、なのははビットを4基展開した。

「集束開始………くぅ!!」

魔力を集束したと同時に軋むような痛みが全身を襲う。その痛みを噛みしめ、集束を続ける。

「………!!」
「おっと、行かせねえよ」

なのはの魔力の動きを危険と感じたのかヴィヴィオが迎撃に向かおうとした所をバルトが止めた。

「ヴィヴィオ、悪いが少し痛い目みてもらう。文句は全部終わった後に聞いてやる、だから我慢してくれよ!!」

そう叫びながらバルトは斧をヴィヴィオに向けるのだった………





















「………ここは、桐谷!?それにあれはバルトさん!?………いや、バルトマンか!!」

転送が終わるとそこは広い部屋の中。そこにはアルトアイゼン・リーゼの姿となった桐谷と、大怪我を負ったバルトマンの姿があった。

「その反応………まさか戻ったとのか?」
「その声………まさかクレイン・アルゲイルか………」

全身アーマーを着た誰か。アーマーで覆われているがその声でクレインだと零治には分かった。

「ホムラはどうしたんだ?」
『私はここに居るわ』

クレインの言葉に返事をするホムラ。

「………なるほど、裏切ったって事かな?」
『元々私達は利害が一致して協力しただけよ、私がどうしようよあなたには関係無いわ』
「だが、それでも君の気持ちの変化には正直驚いた。一体どうしたんだい?」
『………説得されたのよ。私の本当の気持ちを気づかされてね、もうどうでも良くなったわ』
「なるほど、その姿でもまだ女だったって事かな?」
『そうね………だからこそ、彼女達の未来を潰したくないとも思ったのよ、私みたいな思いをしてほしくないってね』
「………私には分からない感情だ」

険しい顔で唸りながら答えるクレイン。

『そうね………あなたには理解できないでしょうね………………零治、私も協力するわ。クレインを倒せばこの戦いも終わる』
「ああ。………桐谷、やるぞ」
「分かった、あの時以来だな………」
「エリス、アーベントを」
『分かったわ』
「エリス………?」

ラグナルで無い名前、そして聞いた事のある名前に疑問を持ちながら桐谷は呟く。しかしいつもの赤いラインが特徴のアーベントを見て、切り替えた。

「出し惜しみはしない………フルドライブ!!」

魔力を解放し、アーベントの真の姿を見せる。赤いラインが青いラインへと代わり、パルチザンランチャーも形が変わる。

「いきなり本気だね」
「時間も無いからな直ぐに終わらせてやる!!」

そう言い、2人は駆け出した。

「援護を頼む」
「突っ込め!!」

パルチザンブラスターの砲撃を連続で発射し、その砲撃と共に桐谷が突貫する。

「くっ………」

クレインは魔力の盾を出現させ、砲撃を防ぐが、連射される砲撃に何とか手が追いついている状態で、桐谷の突貫に対応できる余裕は無かった。

「だが………!!」

それでも砲撃と共に向かってくる桐谷の動きは見ている事が出来、タイミングを見計らって避けようと考えたクレイン。

だが、近くに来た途端、桐谷は急上昇。

「なっ!?」

いきなり視界から消えた桐谷を追おうとするが、零治の砲撃で手一杯で対応が出来ない。

「先ずは!!」

リーゼの角が魔力を帯び、そのまま落下の勢いと共にクレインを斬り裂いた。

「うおおっ!!」

装甲を斬り裂く。………が、それほど深くはダメージを与えられず、浅い。

「だが、それだけじゃ終わらない!!」

距離を取らずバンカーでそのまま貫く。

「ぐうっ………!!」

加速からの一突きでは無いので普段よりも威力が低いが、それでも爆発によりクレインは完全にのけぞった。

「次!!」

高速で動いた零治はクレインの後ろへ移動し、そのままパルチザンブラスターEモードで砲撃を加えた。

「ぬおおおおお!!!」

のけぞった状態では防御する事も出来ず、そのまま受け、再び桐谷の方へと吹っ飛ばされてしまう。

「今度はそのまま仕留める!!」

バンカーを構え、待ち受ける。

「このまま好きにはさせないさ!!」

零治の砲撃を背中に受けながらも魔力で刀を展開し、迎えうとうとするクレイン。

「攻撃を受けている状態で!?」
「だが!!」

砲撃の勢いに乗ったまま斬りかかるクレインと待ち受けてバンカーを構える桐谷。
互いに鍔迫り合いでぶつかり合う両者。

「くぅ………!!」

その互いの鍔迫り合いは勢いの乗ったクレインの方が押していた。
しかし強度で言えば桐谷のバンカーの方が優っており、次第に魔力の刀の方にひびが入り、最終的には砕けてしまった。

「よし!!」
「………それは読んでいたよ!!」

砕けた瞬間、バンカーの軌道から体を避けたクレインは左手に魔力で短刀を作り出し、脇腹めがけて突き刺した。

「そんな短刀じゃリーゼの装甲は………!?」
「どんな強固な装甲でも完全に覆うと逆に動きを阻害してしまう。だからこそ、僅かながら隙間はあるもんさ」

装甲と装甲の間に突き刺した短刀から血がたらたらと流れ始める。

「桐谷!!!」

零治は今度は連射が出来、尚且つEモードよりも威力のあるBモードで攻撃した。

「先ほどの私の様子を見て不審に思わなかったのかな?」

そう言うと短刀から手を離し、右手の手のひらを砲撃の方へ向けた。

「何をする気だ………?」

直撃をする瞬間、まるで何かのフィールドに守られているかの様に当たる直前で消え去った。

「何だと!?」
『零治!!あれって妹さんの………』
「まさかフォースフィールド!?」
「そうだよ、あんなに優れた防御フィールドがあれば私が興味を持つのも当然だ。………もっともオリジナルのと同じ様にはいかないが、それでも充分すぎる性能さ」

「零治………!!」
「射撃中心のアーベントじゃ不利か………アギト!!」
「おう!!」

ブラックサレナに変わった零治の肩に懐から飛び出たアギトが座る。

「「ユニゾンイン!!」」

紅蓮の炎に包まれ、現れた姿はブラックサレナよりも薄い装甲ながら炎をあちこちに吹き出し、更に火力がある姿へと変わったブラックサレナが現れた。

「ユニゾン出来るバリアアーマー………それもまた珍しい。是非色々と調べさせてもらいたいが………」
「俺の存在も忘れるな………!!」

クレインの目の前で両肩のスラスターを展開する桐谷。

「くっ………!!」
「アヴァランチ・クレイモア!!」

スラスターから発射された更に大量になった魔力弾をこれでもかと言うほどばら撒く、それはまさに敵の視界を覆うほどの量だった。

クレインは後退しながら先ほどと同じく右手を前に出し、フィールドを展開しながら攻撃を防ぐ。

「クロスレンジでも使えるのか!!」
『と言うよりは範囲が少ないんじゃないのかしら?だから交代しながら攻撃を防いでいるのではなくて?』
『確かにホムラの言う通りに見えるわね』
「………やってみれば分かる、行くぞアギト!!」
『おう!!』

ホムラとエリスの言葉を聞き、アギトをに声を掛け、進む。

「突貫する!!」

炎の出力と共に更に増す推進力と共に前方にフィールドを張り、突貫する零治。

「次から次へと………!!」

クレイモアを凌いだクレインは両手に魔力の片手剣を持ち、バツの字じ構えた。

「喰らえ、ディストーションアタック!!」

勢いそのままでクレインへと突っ込んだ。

「くううううぅぅぅ!!!」

零治の突貫を受け止めたクレインは後ろへ体を押されるも、体勢を崩される事も無く、耐える。

「だが、敵は1人ではない………!!」

そんなクレインの背後へバンカーを構え、突貫する桐谷。
少々ふらつきながらも勢いはそのままで向かって行く。

「貰った!!」
「………仕方がないな」

そう呟くとクレインの周辺に魔力ので出来た巨大な槍が現れる。

「何………だと?」
「グレイブフォース」

その無数の槍に貫かれた桐谷は完全に勢いを止められ、バンカーを向けた状態で動けなくなってしまった。

「き、桐谷………!!」

ダメージを受けたのは零治も同じで、フィールドを前方に張っていた影響もあり、何か所か魔力の槍の攻撃を受けてしまった。

「エリス………!!」
『大丈夫、まだブラックサレナでも戦える!!』

損傷は想像以上で中破してしまうほどの威力があった。

「グラビティブラスト!!」

チャージをせず、低威力だがクレインに向かって砲撃を与えた。

「くっ!?」

クレインは辛うじて避けたが、零治の狙いはクレインでは無かった。

「桐谷!!」

桐谷を突き刺していた魔力の槍を吹き飛ばした、桐谷を助ける。

「大丈夫か桐谷!!」
「あ、ああ………」

しかしリーゼは大きなダメージを受け、強制的にバリアアーマーが解けてしまった。

「くそっ………」

幸い、装甲を貫いて受けたダメージに致命傷のものは無く、怪我が多いがそれでも戦闘不能に陥るほどでは無かった。

「レミエル大丈夫か………?」
『損傷どちらも80%を超えてます………修復に時間がかかります………マスターこそ大丈夫ですか?』
「致命傷は無い。回復して戦線に復帰する。レミエルは出来るだけ修復を急げ」
『分かりました、マスター!!』

レミエルに指示をした後、傷の回復に努める桐谷。

(それにしてもあの威力は何だ………?今までみたいにただ武装を結晶の様に展開しただけじゃない。あの威力は集束魔法の様な密度の高い魔力だった。それにあの追い込まれた状態での展開。何故今の今まで使わなかった?そうポンポンと使えるものじゃないのか?)

そう考えながら回復に努める。

(幸運なのか、相手の余裕なのか、負傷している俺に仕掛けてこない。………だったらそれまでにクレインのからくりを解いてみせる!!)
















「ちっ!!」

両手に展開した魔力刃でクレインの展開した二刀流の剣に対する。

「どうしたんだい?私のスピードに追い付いてないみたいだが………?」
「くそっ………!!」

アーマーを着ているのと、そもそものスピードで負けている分、同じ二刀でも零治が劣勢になっていた。防御こそ固いものの、何度も攻撃を受けている。

「ブラックサレナも変えるかい?そうなると後はあの刀での戦闘になるね」
「………随分余裕だな」
「もう時間は限られているからね。このまま時間稼ぎをしても私の思った通りとなる。君には感謝してるよ。君のお蔭で色々と私の計画が達成できた。本当に感謝してるよ」
「ふざけるな!!お前の只の好奇心の為に世界を破壊されてたまるか!!」
「ぬうっ!?」

目の前に炎が現れ、視界が隠れた所で回転した勢いを乗せ。斬り付け、クレインを吹き飛ばした。

「なるほど、ユニゾンの恩恵かい?」

斬り付けた傷は多少傷が出来た程度で、殆どダメージが無い。

「まだまだ!!」

両手に展開したハンドガンでクレインを攻撃する零治。

「無駄だよ」

それを以前と同じ様に右手を前に突き出し、消し止めた。

「分かってるさ」
「何を………!?」

足元から炎が湧きだしクレインを包む。

「グラビティブラストチャージ………」

飲まれている隙にチャージを開始する。

「こんなもので私を………なっ!?」

炎を消し去った時には既にチャージは完了していた。

「喰らえ、グラビティブラスト!!」
『フルシュート!!』

今度は魔力を充分に溜めこんだ魔力を放出。
その威力は先ほどのものとは比べものにならない。

(不味い、フィールドの展開が間に合わない………!!)

再び、右手を前に突きだそうとしたが、その前に零治の砲撃がクレインを飲み込んだ。

「いけええええええええ!!!!」

溜めこんだ魔力以上の魔力を放出するように気持ちを乗せて攻撃を続ける。
そして今までに無い威力の砲撃がクレインに発射されたのだった………

 
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