執筆手記
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没ネタその2 良くある異世界モノ
――――どこまでも広がる青い空。
――――振り返ればどこまでも広がる森。
――――遠くには日本では見た事も無い大きな山。
俺はいきなり海に投げ出された状態で、此処が何処なのか必死に考えていた。
少なくとも、俺は自分の部屋で寝ていた筈だ、悪戯にしては大掛かり過ぎる。
パシャパシャと海水を叩く――――リアル過ぎる、現実である事には間違いない。
良く夢の中で底の見えない崖に橋の上から足を滑らせて落ちたり、高速道路を猛スピードで進む夢を見たが、
それは本当に夢を見ているだけで、ベッドの上で寝ている感覚はしっかりあった。
しかし今、俺は波に揺られて、海水の冷たさを全身で感じている。
――――よし、とりあえず海から上がって服を乾かしながら考えよう。
立ち上がろうとして膝を立てると、足の裏に砂を踏みしめる感覚――――履物が欲しい。
上陸して寝間着代わりにしていたシャツを絞る、気温が高くて良かった、真冬なら心臓麻痺で死んでたね。
――――変な羽音が聞こえる。蚊かと思ったけど、少し大きい虫か?
注意して身体の周りを観察する…………までも無く、デカイのが居た。
手の平ほどの大きさの蚊が、俺の腕に止まり太いストローを刺そうとしていた。
――――――怖いわッ!!
咄嗟に払い落とすと、一瞬だけイヤホンのコードを握ったような、微妙なビニールぽい感覚が手に残った。
地面に落ちた特大の蚊を見ると、まだピクピクしてたので、一思いに踏み潰す。そしてグリグリと砂に捻り込む。
フー、ビビらせやがって――――止まった所が刺されてもいないのに痒くなりそうな気がして、思わず摩ってしまう。
森の中に入るのはヤバそうだな…………とりあえず、此処が何処なのかわからないし、人を探すか。
森には入らずに、海沿いに歩いていると――――奇妙なゼリーがウヨウヨしていた。
一言で言うと、クソでかい半透明のイソギンチャクだ、中型犬ぐらいの大きさがある。
良く見れば身体の中で呼吸をしているのか、ポコポコと空気の塊が液体の中を昇っている。
――――現状を整理しよう。
まず、あのイソギンチャクもどきは何なのか?
良くネットのニュースで新種の生物発見とか言って、微生物の塊が目玉に見える様な珍事が取り上げられていた。
では、アレも微生物の塊だとでも言うのだろうか? 俺が知らないだけで、現地では有名な現象なのだろうか?
観察すれば、触手の様な物を器用に扱い、砂を口らしき所に運んでいる。蟹の食事みたいなもんか?
遠くを見ればポツポツと同系統のイソギンチャクが複数居た――――良く体を維持できるな、中型犬って結構飯食うぞ?
俺の疑問に答えるかのように――――イソギンチャクもどきと目が合った…………様な気がした。
――――ビチビチビチッッ!!
イソギンチャクの触手がヤバそうな液体を撒き散らしながら長く伸び始めた。
――――うわ。
俺は咄嗟に砂に混ざった石を拾い上げ、迷わず投擲した。
――――ベチッ!
イソギンチャクもどきの身体に石がメリ込み、中の水分が溢れ出してくる。
それでもピクピク動く触手が俺に向かってくる、鬱陶しいので次々と石を拾い上げて投擲を続けた。
暫くすると動かなくなったので、少し離れた所に転がっていた流木を拾い上げ、スイカ割り大会に移行する。
ホラー映画なら、弱っていると見せかけて、近付いた瞬間にがぶりと殺られるところだが、
俺にはアレが弱っていて、確実に死に掛けていると言う確信がある。
流木で動かなくなった触手を叩き付けると、簡単に千切れた――――こんな脆い触手で獲物を捕らえるのは難しいだろう。
液体の方に蛇とかの神経毒を疑った方が良いかもしれない。
完全に反応しなくなったイソギンチャクの内臓を調べる事にした。
とは言っても、俺に解剖する技術もないし、流木で突いてグチャグチャにするだけだ。
最初に目に付いたのが、砂袋だった、これはイソギンチャクもどきだから口と胃と腸を兼ねた物だろうか?
暫くすると森の方からガサガサと草を掻き分けて、大型犬が飛び出してきた。
――――シベリアンハスキー? いや、狼か?
流木を構えて、イソギンチャクの死骸と狼から距離を取る、死骸を踏み付けてバランスを崩す訳には行かない。
狼はイソギンチャクの死骸に頭を突っ込み、貪り始めた――――美味いのかソレ?
尻尾をパタパタさせながら、ガツガツとお食事中の狼を眺めながら、俺はひとつの希望を抱いていた。
野生の動物は腹が減らないと他の動物を悪戯に襲わないと言う。
では、もう一匹、二匹、イソギンチャクをぶちのめしてコイツに食わせれば、俺は襲われないのではないだろうか?
よし、コイツが満腹になるまでイソギンチャクを狩る事にしよう。
――――――――――――没ネタ此処まで。
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