俺はやはり間違った選択をした
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俺と聖ともう一人
前書き
今回の出来はちょっと微妙
次回に期待と言うことで……
昼休み
それは一般生徒にとっての社交場のようなものだ
誰と一緒にどこで食べるかが一番の問題であり、今後の関係性を保っていけるかどうかの鍵を握っている
彼らは授業が終わると同時に席を移動して各カーストリーダーの元に行くか、近くで席をくっつけ合うかするのがセオリーだ
まぁ無論友達などいない俺にとってのそんなことは関係ない
それにそんなことをしてまで繋ぎ止められる友情など俺はいらない、こっちから願い下げだ
俺には俺のベストプレイスがある
今日もそこで昼を済まそうかと思ったが思いも寄らぬ邪魔が入った
「なぁ、羽武谷。一緒に飯食べよう」
そう、聖 亜蘇羅だ
いきなり話しかけてくんじゃねぇよ、友達だと思っちゃうだろうが
それに何故俺はこいつと飯を食わなきゃならないんだ
確かに俺は昨日、なるべく一緒にいると言ったが昼休みまで一緒にいてやるなんて言った覚えはない
それにコイツはバニングス達、トップカーストからは嫌われているが周りに友達も多い
周りとの付き合いも少なからずあるだろう
「なんでだよ。お前は他にいっぱいいるだろ」
「いや、でもさ羽武谷昼休みになるとすぐにどっか行っちゃうから気になってたんだよね」
ようは俺の事を知りたいのだろう
そして無防備な俺に洗いざらい吐かせた後、ネタにしてくるに決まっている
何この子、すごい怖い
それを想像してしまう俺も怖い
「それに昨日なるべく一緒にいるって言ったじゃん」
ぐっ……それを言われると痛い
今さっき昼まで一緒にいてやると言った覚えはないと言ったが、俺は俺で時期を設定していたわけではないので断りずらいことに気づいてしまったからだ
今だけは無駄に回る俺の頭を呪った
俺はしょうがなく聖の願いを承諾しておいた、俺が食べたい場所でという条件も付け加えて
それでも聖は引き下がらず、別にかまわないと言ってついてきたので今日はもうしょうがないと諦めることにした
後ろでニコニコしながらついてくる聖を見るとまた明日も同じことが起きそうに思えたので不安だ
大丈夫だよな?
☆☆☆
俺のベストプレイスは1階の保健室の横の駐輪場の小さい階段だ
俺はいつもここで飯を食っている
今日は邪魔者がいるが……
俺は少し聖の食べている弁当を覗いてみることにした
ご飯が半分を占め残りにはおかずが入っている普通の弁当だった
俺はというと惣菜パンを片手にコーヒー牛乳をすすっている……なんか寂しいな、俺の飯って
聖は何か話したい事があるのか、はたまた昼食中に無言で飯を食べることに抵抗があるのか先ほどから俺をチラチラ見ているがあえて無視している
一緒にいるという項目さえクリアできればOKなのだ、俺から話しかけてやる気はさらさらない
だが聖もそろそろ限界のようで口を開き何かを言おうとしたその瞬間、右後ろから声が投げかけられた
「あれ、亜蘇羅?」
声の主はけしからん胸、スタイル抜群、容姿端麗、スポーツ万能といったチート能力を備えたフェイト・T・ハラオウンだ
「んっ、ハラオウンさん?」
「ハ、ハラオウンさん?!」
ハラオウンは驚いているようだ
それはそうだろう、日頃から名前をいやらしく囁かれていたのだ
それが急にさん付けになったのだから驚くのは当たり前だ
まぁそれは一般の人達に該当するのであって俺には該当しない
名前で呼び合う友達などそもそもいないし、昔はそれこそいたがこの『急にさん付けになる現象』が続いたためそんなことでは驚かない
最終的には苗字まで呼ばれなくなる始末だ
だが逆説的に考えれば俺はとても敬われているということになる
名前を口にするだけでも恐れ多いということだな
従ってこれにどんどん拍車が掛かれば俺は将来仏になれるな・・・・・・なれない
何この悲しい現象……
「俺、何か変な事行ったかな?」
「今までのお前がおかしかったからそれが普通に思ってたんだろ」
「あ〜、確かに。今思い返すと相当痛かったな、あれ」
昔のことを思い出してそれだけで済むのなら聖はまだ軽症だ
俺はというと布団に潜って叫ぶか、寝転がって高速ゴロゴロをしなくては気がすまないほどに黒い過去しか持ってないのでかなり重症だ
「そういえばハラオウンさんはなんでここに?」
「飲み物を買いに来たんだけど、ここで飲んで行こうと思って」
そう言う事なら仕方ない
俺は一瞬次はどこで飯を食べるか考えてしまったが、ハラオウンのようなケースは稀だろう
ならば考える必要はない、俺の平穏は保たれる
なぜ俺がここまでこの事に敏感なのかというと、まぁーあれだ
カブトムシとかカナブンって樹液にすぐ集まるだろ?
別にそんな引っ付きあって蜜吸わなくても他にもっといっぱいあるというのに
他にはあれだな、朝の通勤ラッシュの時の駅の自動改札とかだな
他のところが空いてるのに何故か1箇所の改札に群がるんだ奴らは
何を言いたいかというと、ハラオウンという至高のハチミツまたは改札が俺のベストプレイスを頻繁に訪れるとなるとそれを嗅ぎつけたカナブン共がわらわら寄ってくるということだ
俺にとっては迷惑極まりない上に立ち退きを余儀なくされる
ボッチに人権などないので気づかれる前に撤収するわけだ
皆のために俺が最大限の配慮をする、何これ俺がいい子すぎる……
「横、座ってもいいかな?」
「別に問題ないよ」
うわー、コイツ超ナチュラルに自分の横を空けたよ
自然に誘導するとかマジ聖さんパねぇっす
ハラオウンは聖の誘導の元、素直に横に座った
「なんか雰囲気変わったね」
ハラオウンはそう切り出してきた
それはそうだろう、彼女たちが今まで見てきた聖 亜蘇羅は虚像だったのだから
彼の本質を見抜けていない時点で彼女たちの関係も薄っぺらいのだろう
関係もクソもない俺が言えた義理じゃないが
「うん、そうだね。確かに俺は変わったよ」
変わったというより戻ったという方が正しいと俺は思う
「彼のおかげでね!!」
「はぁ?!」
俺の思考は聖の言葉に追いついていなかった、むしろオーバーヒート寸前だ
俺が何をしたというんだ、せいぜいこいつと行動を共にしてるぐらいだ
「彼は俺にこう言ったんだよ。好きな女にそんなにガッついてどうする、本当に振り向かせたいんなら目に見える物じゃなくお前自身の中身で振り向かせてみろってね」
聖は誇らしげにこんなことを語っているが全部嘘だ
俺はそんなことを行った覚えはないしコイツとまともに喋ったのは昨日が初めてだ
それに基本喋らない俺がそんなセリフ間違っても吐かない
コイツ一体何を考えてやがる
もしかして昨日会ったばかりでろくに喋った記憶のないしかも協力してる俺を今ここでハメる気なのか?!
「へぇー、そうなんだ」
何納得しちゃってんの?!
もうちょっと疑ってかかろうよ、今の今まで一言も喋ってないような奴がそんなこと言えるわけ無いでしょ?!
俺は主人公じゃないんだよ、そんな言葉すらすら出てくるどころかキョドりにキョドって気味悪くなるよ?!
だがそこでいいタイミングでチャイムがなった
正直ここまで授業のチャイムに感謝をしたことは無い、今後はそんなことがないことを願うが
「じゃ、私先戻ってるね」
ハラオウンはそれだけ言うとさっさと行ってしまった
危機が去ったことだけは確かだ
だがその危機を作り出した張本人が目の前にいることなので一応釘を刺しておくことにした
「おい、あんましああいうことすんじゃねぇよ」
「でもあれぐらいの理由があった方が別に一緒に居ても怪しまれないと思うんだけど」
聖は聖なりに考えてやった事なのだろうが俺にとっては大迷惑だ
そもそもあんな回りくどい説明なんかしなくても自然体で良かったのだ
クラスや学年での俺の評価など最底辺なのだから
名前を聞いてもまともに答えられる奴などいない
よって周りからは『聖君良くわかんない奴とこの頃つるんでるなー』程度にしか認識されないのだ
なのにコイツは……
それに加えて俺はしてやったぜ!!みたいなニコニコ顔が余計に俺を腹立たせる
そろそろ限界が近いので俺は弁当を片付け終えてない聖を置き去りにしてとっとと教室に戻ることにした
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