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SWORD ART ONLINE ―穿つ浸食の双刀―

作者:黒翼
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Lizbeth's Episode
  11:鍛冶屋

 
前書き

今回からはリズベット編。SAO編に30話は費やしたいと思っていたのですが、個人的に早めにALO編に突入したいので急遽話の編成を変えてます(笑)

番外編でハリンの武器入手的なのをやったりして合計でいいやと思ってしまった(笑)
 

 


「リズベット武具店へようこそ!!」

洒落た喫茶店のような音を立てる扉を開くと、一際元気な少女の声が響く。彼女がここ――――《リズベット武具店》のオーナーで間違いないだろう。

「あ······えっと、オーダーメイドを頼みたいんだけど······」

僕の隣に立つ少年、キリトがおずおずと口を開く。今回、僕ことハリンはキリトの付き添いに。別段今の装備に不満のない僕はオーダーメイドを頼む必要もないので、特にこの鍛冶屋に用がある訳ではない。

「今、ちょっと金属の相場が上がっておりまして······」

「予算は気にしなくていいから、今作れる最高の武器を作ってほしいんだ」

身形(みなり)を見ても然して強くはない、そう思ってお金の心配をしたのだろう。まぁ、鎧を付けている訳でもなければたいして珍しい装備をしている訳でもない。端から見れば中層ゾーンくらいに見えるだろう。

「と、言われましても······具体的に性能の目標値とかを出してもらわないと······」

「それもそうか······なら、この剣と同等かそれ以上の性能ってとこでどうかな?」

背中に吊るした漆黒の刀身の片手長剣《エリュシデータ》を少女に手渡すキリト。特に重さを疑う事もなくそれを手に持った少女はあまりの重さに剣を取り落としそうになる。

《魔剣》。

それはドロップする確率が異常に低く、それ故に要求されるステータス値もそれの性能に匹敵するものでなければならない。

僕は腰に吊るした己の愛用する二刀――――《フレイム・シン》及び《オーシャン・シン》なる銘の刀を一瞥する。

これら二つも《魔剣》というカテゴリーに含まれる武器の一つだ。

「これならどう?アタシが作り上げた、最高傑作よ」

キリトに少女の最高傑作らしい細身の片手長剣が手渡される。スピード重視の金属を用いて作ったらしいそれは見るからに軽く、重い武器を好むキリトはあからさまにではないが不服そうだ。

「ちょっと、試してみてもいい······?」

「試すって、何を?」

「耐久力をさ」

(おもむろ)に自分の片手長剣と少女が作った片手長剣を合わせる。まるで少女の作った片手長剣を叩きつけるかのように――――。

「ちょ、ちょっとっ、そんな事したら、アンタの剣が折れちゃうわよ!?」

「その時はその時さっ······!!」

ソードスキルを発動、リズベットの作った片手長剣がライトブルーのエフェクトを帯び、《エリュシデータ》に降り下ろされる。

パキィンッ!!!

剣が砕け散る音が、店内に響く。

――――折れていたのは、リズベットの作った片手長剣だった。刀身の半ばから見事に折れ、切っ先の方は少し離れた所に転がり、数十秒程度で爆散する。

「うぎゃあああああ!?!?」

鬼の形相でキリトの手から片手長剣を引ったくると、「修復不可能」と呟いて(こうべ)を垂れる。

通常、多少の破損程度なら修復は可能なのだが······あれだけ派手に折れてしまえば、確かに修復は無理だろう。

「な、な······」

「な?」

「何て事してくれんのよ!?」

今は無き片手長剣を思い出し、激昂する少女。勢いよく胸元を掴み上げられたキリトは「当てた方が折れるとは思っていなかった」などと火に油を注ぐ言い訳を言い出す。

「それはつまり、アタシの剣が弱っちかったって事!?」

「あー······まぁ、そうだ」

言い訳をする気すら無くなってしまったのか、キリトは少女の言い分を認める。

「言っておきますけどねぇ、金属さえあればあんたの剣がポキポキ折れちゃうような剣を作るのも容易なんだからね?」

「へぇ、そりゃ是非見てみたいな······これがポキポキ折れるやつをね」

「ちょ、ちょっと二人共、その辺にして「「何!?」」······何でもありません」

釘を刺そうと思ったのだが、何故か怒られる。横槍は無粋とでも言いたいのだろうか。

「んで、金属の宛は?」

「第五十五層の西の山に、水晶を餌にするドラゴンがいるらしいのよ」

五十五層。いくらなんでもこの少女を連れていくのは危険ではないだろうか。そう判断した僕は、口を開く。

「僕等二人で取りに行った方がいいんじゃないかな?」

しかし、その提案はあっさりと跳ねられる。

「金属を手に入れるには、マスタースミスがメンバーにいないいけないらしいわよ。それでも二人で行く?」

そう言われては仕方がない。二人で行っても何も出ないと言うのなら、行く必要も無くなるので渋々同行を認める。

「端でじっとしててよ······僕はハリン、宜しく」

「俺は、キリトだ」

「アタシは《リズベット》、宜しくね、ハリン、キリト」

「いきなり呼び捨てかよ······まぁ、良いけどさ。"リズベット"」

呼び捨てされたキリトは口角を吊り上げて仕返しとばかりに呼び捨てで言い返す。その表情に、リズベットはまた怒るのだった。

 
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