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舞台は急転

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第四章


第四章

「授業中にも仕掛けるけれどね」
「まだあるの?それだけやって」
「って何するのよ」
「まあ見ていればわかるわ」
 楽しく笑って皆に話す有美であった。
「これからもね」
「ふうん。どっちにしろ考えがあるのね」
「まだ先があるのは間違いないのね」
「そうよ。とりあえず第二段階はこれで終わりよ」
 今まで範人に見せていたその脚をハイソックスを元に戻すふりをしてなおした。あくまでさりげなくだがそれでも抜群の効果があるのは明らかであった。
「これでね」
「それで第三段階ね」
「しかもこの時間に」
「今度は一瞬よ」
 ハイソックスをなおし立ち上がりながら言うのであった。
「今度はね」
「一瞬なの」
「そう、一瞬」
 その妖しい笑みでの言葉である。
「けれどその一瞬で。また仕掛けるから」
 こう言ってまだ自分を見ている範人には気付かないふりをして皆と一緒にその場を後にする。しかしそれでも彼の視線には気付いているのであった。
 その授業中である。やはり範人はちらちらと有美を見ている。男子はサッカーで女子はラクロスをやっている。その中でちらちらと彼女を見ているのだ。
「やっぱり見てるわよ、西園寺君」
「あんたをね」
「わかってるわ」
 ラクロスを楽しみながら笑顔で答える有美だった。
「視線はっきりと感じるから」
「そうなの」
「それでどうするの?」
「そろそろ一旦休憩よね」
「あっ、そうね」
「そんな時間ね」
 皆有美のその言葉に頷いた。そんなことを言っているとそこで休憩になった。
 皆それで少し一息ついている。有美はここで仕掛けたのだった。
 あえて範人の方に背を向けて半ズボンの端のところをなおす。指でくい、と軽くだがそこを強調して彼にその動きを見せたのであった。
「あんた、また大胆じゃないの?」
「そこまでする?」
 皆彼女のその端をなおす動作に突っ込みを入れた。
「何をするかって思ったらそれなのね」
「確かに一瞬だけれど効果はあるわよね」
「どう?西園寺君は」 
 端をなおしたところで範人のことを尋ねるのだった。その間もずっと彼には背を向け続けている。
「見てるわよね」
「動き止まってるし」
「呆然となってるわよ」
 皆が彼女にかわってその範人を見て彼女に告げるのであった。
「さっきのあれに続いてね」
「さっきよりも凄いんじゃないの?あれは」
「じゃあこれも成功ね」
 彼女達のそうした話を聞いて微笑む有美であった。
「第三段階完了。さて、後は」
「後は?」
「第四段階よ」
 先程と同じ妖しい笑みを浮かべてまた言うのだった。
「今度はね」
「第四段階ね」
「そうよ。今度仕掛けるのはね」
「何時なの?」
「登校時間よ」
 今度言う時間はその時だった。
「そこで仕掛けるから」
「登校時間なの」
「私も西園寺君も通っている電車の線は一緒じゃない」
「そういえばそうだったわね」
「じゃあそこでなのね、今度は」
「そうよ。今度はもっと大胆にいくから」
 もうかなりにこにことしての言葉になっていた。
「楽しみよね」
「ってあんたねえ」
「今の顔、凄いわよ」
 皆有美の顔を見て言うのであった。
「にこにことして。そんなに楽しいの?」
「今のこれが」
「楽しいって言ったら楽しいわ」 
 それは言うが何故かここで顔を赤らめさせる有美であった。
「私だって。やっぱり」
「やっぱり!?」
「何かあるの?」
「あっ、何でもないわ」
 ここから先は咄嗟に消してしまった。
「何でもないから。気にしないで」
「そうなの」
「とにかくよ。次は登校時間」
 真面目な顔になって皆に告げた。
「そこでまたやるから」
「今度で第四段階よね」
「そうね」
 クラスメイトの一人の言葉に応えて頷いた。
 
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