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舞台は急転

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第十章


第十章

「それで仕掛けなさい」
「いいわね」
「わかったわ。それじゃあ」
 皆に言われるままにその第五段階に入るのであった。
 範人がいるのをわかったうえでちらりと。流し目で彼を見るのであった。
 たったそれだけだがその顔が彼の目にも入った。すると彼はそれだけで顔を赤くさせたのであった。今は彼を見ていないがその姿が目に入っただけでで、ある。
「これでね。まずはね」
「ふうん、今度は目ね」
「それだったの」
「そうなのよ」
 顔を皆に戻したうえで答えるのだった。
「こうしてね。仕掛ける予定だったの」
「それで実際に仕掛けてみたってわけね」
「そうよ」
 その問いにも答えた。
「こうしてね」
「それで感想は?」
「手応えはあった?」
「ええ、それはね」
 今の問いにも頷いて答える。
「あったわ。充分よ」
「そう。ならいいけれど」
「とりあえずは第五段階も成功ってわけね」
「ええ」
 また皆の言葉に頷くのだった。
「けれど。まだ仕掛けるわ」
「えっ、まだ!?」
「まだあるの」
「そうよ。だって一緒の場所にいるのよ」
 自分で言ってまた胸の鼓動が高まるのを感じた。そのせいで苦しくもなってしまうがそれでも何とか言葉として出したのであった。
「だからまたね」
「あんたやっぱり考えてるじゃない」
「何だかんだ言って」
「だから。これは最初から計画として考えていたのよ」
 少しムキになったような声で皆に言うのだった。
「これはね」
「まあそれはそれでいいけれど」
「とにかく。これで第五段階の最初はクリアーね」
「それはね」
 これははっきりとわかっていた。とりあえずは。
「そうよ」
「じゃあまずはこれでよしね」
「続きだけれど」
「それも考えているわ」
 すぐにこう答えるのであった。
「それもね」
「席はあそこになったわよ」
 女の子の一人が範人が座った席を目で指し示して有美に教える。
「あそこね。見えるわよね」
「ええ、あそこね」
「いい場所よね。ここからはっきり見えるわよ」
 別の一人がその席の場所について言った。
「あれも妹さんの手引きかしら」
「そういうことも御願いしておいたから」
 有美はまた述べた。
「だから。あそこに」
「やっぱりね」
「本当に妹さんも頑張ってるわね」
 皆は今度は彼女を褒めるのだった。見ればその妹も方もにこりと笑ってこっちを見ている。流石に側にその将がいるのでそれ以上はっきりとした行動は取らないが。
「だったらあんたも」
「いいわね」
「わかってはいるわ」
 ここでも頼りない有美の返事だった。
「それはね」
「ほら。それじゃあ」
「目、使って」
「ええ」
 皆の言葉に頷きさりげなく流し目をしてみせる。それをわざと範人に見せるのだった。それを見た彼はまた目を彼女に釘付けにさせるのであった。
「ほら、見てるから西園寺君」
「ばっちり決まってるわよ」
「そ、そうなの」
「いい流れよ」
 こうも皆に言われたのだった。
「このままいけばね」
「いけるわよ」
「そうかしら」
 やはり今は恥ずかしそうな有美だった。
「だったらいいけれど」
「何度も言うけれど自信持ちなさいって」
「あんた今かなりけてるから」
「だから西園寺君だって見てるわけだし」
「うまくいってるのね」
 思わず皆に尋ねる有美だった。
「今ので」
「ええ。だから向こうも見てるんじゃない」
「そうじゃなかったら見ないじゃない」
「そうよね」
 皆の言葉を聞いてまずはそれで自信を少しだけ持った有美だった。
「やっぱり。だから」
「そうよ。もう西園寺君あんたばかり見てるから」
「妹さんまたこっち見てにこりとしてるわよ」
 つまりいい流れだというサインであった。彼女から見ても今の有美の流し目は決まっているのである。有美自身は恥ずかしさでどうにも自信がなさげであってもだ。
「さて、じゃあ第五段階も成功ね」
「いいわよ、最高よ」
「最高なの」
 有美は皆の今の言葉を聞いて少しだがさらにテンションをあげた。
「この流れで」
「そうよ。まあ流し目はこれ位でいいんじゃない?」
「あまりやり過ぎてもわざとらしいし」
「そうね」
 皆の今の言葉に頷いた。
「それもそうね」
「そういうこと。だったら今度は」
「今度は?」
「勉強しましょう」
 周りの皆はそちらに話をやってきたのだった。
「勉強ね。本格的にね」
「本格的になの」
「その為に図書室に来たんじゃない」
「ねえ」
 皆わかっていてあえて悪戯っぽく笑ってそれぞれ顔を見合わせて話すのだった。
 
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