ひねくれヒーロー
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あなたは何処にいるのか
あなたは弱さから逃げることはできない。時には最後まで戦わなければならないし、死んでしまうこともある。
戦うなら、何故今でないのか、あなたは何処にいるのか?
—ロバート・ルイス・スティーヴンソン—
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あなたは何処にいるのか
◆◇◆コン◆◇◆
どうしてこうなったのか
結界内で立ち尽くすオレに七人の視線が突き刺さる
結界の外から木の葉の暗部が何やら叫んでいる
危ない
そうだ、ここは危ない
三代目が大蛇丸に殺されるためだけの場所なのだから
結界で変色したように見える空を見上げ、そっと吐血した
遡ること半日
先生から教えられたカタパルトの術・・字面が嫌だなぁ
射出の術とかで良いんじゃないのか、良いよな
なんとか直線加速が出来るようになったのを良いことに再不斬を探す
ペインが取った宿で自来也となにやら深刻そうな表情で話しあっていた
ちなみにペインは焼き芋買いに行ったらしい
・・・確かに無性に食べたくなる時があるけど今かよ・・・
「成功するかどうかも分からねえんなら・・・抜けさせてもらうぜ・・・
・・・なんだ、ガキ」
じろりと睨まれる
だが見つめ返せば向こうから目を逸らすことを覚えて以来、ずっと見つめることにしている
「・・・術、教えてもらったんだ・・・見てよ」
目をそむけた再不斬に構わず話す
横で自来也がコンが忍術を!と泣きそうな顔をしているが無視だ
「お前が覚えられる術、だと?」
座り込む再不斬の手を引っ張り、宿の屋上に連れ出す
始めの印を組み、なるべく障害物のない方へ体を向ける
チャクラを軽く流し、印を完成させる
・・・カタパルトって説明すんの面倒だな
「雷遁・電磁加速!」
「!」
先生にバレたら怒られそうだが気にしない
瞬く間に、木の葉の門付近の宿から火影岩まで一直線に飛び移る
これを使って体当たりってのも使えるか
そのときは土遁で体を固くしておくべきだな
三代目の顔岩に腰をおろし、宿の方角を見る
・・・おぉ走ってきてる
しばらく眺めているとたどり着いた再不斬に頭を叩かれた
「ガキ!なんだそのデタラメな術は!?」
怒られた
「先生直伝、電磁加速の術なりー
速さはこれで補えないかな」
速さが足りないって先生のみならずお前にまで言われちゃ気にもするさ
「・・・自分で緩急つけられるのか?」
・・・直線で加速するだけだからなぁ・・・
「・・・しゅ、修行次第?」
「・・・退避用だな、あんまり手の内見せるなよ」
む、そういう使い方か
オレてっきりこのスピードで近づいて暗殺するものかと思ってた
でも退避用だと考えたら納得、チャクラ少なくて済むのも良いな
瞬身の術だとチャクラ使いすぎるからな
やっぱり速さは自分自身で磨かなきゃだめか
溜息をつくと同時に吐血するが気にせず乱暴に拭いとった
「お前、中忍試験どうした」
「ん、あと一時間で開会式だよ」
「早く行けよ」
「一遍行ったけど準備の人以外来てなかった」
・・・木の葉ってなんでこんなに時間にルーズなのか
その後再不斬におぶってもらって宿に戻る
ペインが焼き芋を両手に抱えて戻っていたので少しだけもらった
芋うま
「しかし楽しみだなぁ中忍試験・・・ナルトも出るんだろう?」
ペインがニコニコと笑いながら尋ねる
そうか、この一カ月で自来也と一緒に修行みてたんだっけ
可愛い弟弟子の活躍に期待してるんだな
「でも対戦相手が天才と誉れ高い日向一族の子だからね
勝てないんじゃない?」
ナルトが勝つんだけど、でも、負けるとそう思うのが普通なんだよな
「ナルトは強い子だよ!きっと大丈夫さ」
お前は親か
笑ったペインの口元に焼き芋のカスがくっついていたが、指摘せずに試験会場へ向かった
道中幼女に笑われようやく気付いたペインに怒られた
怒る前にカスを取れ、怒られてる気がしねえよ
焼き芋を食べたのが悪かったのか、三代目の開会宣言のあと体調を崩したオレは控室で横になった
吐き気と口内に広がる胃液の味
あー・・・シュロにもっと言いたいこといっぱいあったのになぁ・・・
ナルト戦を見学し終わり、心配して見に来てくれたペインに背中をさすられるが一向に楽にならない
壁に寄りかかったまま始終無言の再不斬
ペインはずっとナルトの活躍とやらを語ってくる
テメェも本体は看護人必要な癖に・・・!
そう思いつつ桶に顔を突っ込む
瞬間
腹部からわき上がる熱が異常を知らせた
ゾク
あまりの熱さに腹を抱えて転がる
こんな感覚、前にもあった
波の国で、ナルトが暴走しかけたときの、あの熱
誰だ、一尾・・・我愛羅か?
「何だこれは・・・?」
「何が起こってやがる?」
「一尾、人柱力の暴走だ・・・
尾獣の残りかすがそれに共鳴してやがる・・・」
腹を抑えたまま立ち上がる
もうすぐ、木の葉崩しが起こる・・・
「なるほど、この感覚の正体は尾獣のチャクラか」
「ちっ・・・面倒事に巻き込まれる前にオレは行くぜ・・・」
戦闘狂の癖に戦いたがらないとは珍しい
上手くいけば三代目とも戦えるかもしれないのにな
立ち去ろうとする再不斬の手を握る
「・・・オレが戦いたいのは人間だ
獣と戦うつもりはねえ」
ゆっくり振り向いて、そういった
・・・なら、獣になり損ねたオレはなんなんだ
頭を振って控室の外へ出る
白い、羽が舞い散っている
「ガキ、しっかりしやがれ」
背中を押され、幻術が解除されたことを知る
危ない、また幻術にはまるところだった
幻術対策しないと駄目だな
里の方で何者かに口寄せされた大蛇が見える
「里はオレが行こう、コン、自来也先生は・・・」
ペインが六道を引き連れ呼びかけた
「このまま来ないようならあとで引っぱたく!」
あの我が儘仙人が!と吐き捨ててみると苦笑された
オレが言えたセリフじゃないけどな
「・・・伝えよう」
そのまま瞬身の術で遠ざかっていく
このままだと、あんたの先生は死んじゃうんだぞ自来也
そう教えたよな
なのに、どうして何もしないんだ
先生が・・・死んだら悲しいじゃないか
オレは、そんなの嫌だぞ
シナイ先生が死ぬのは嫌だ
・・・自来也先生が死ぬのもいやだ
だから、自来也の先生が死ぬのもいやだ
死ぬのは怖いじゃないか
生きたいって誰だって思うだろ
なら、覚悟しなきゃ
死なせないって、覚悟しなきゃ、変われない
木の葉の暗部と砂の忍びが飛び上がるのを発見、あっちか!
踵を返そうとしていた再不斬の服を引っ掴んで止めた後、急いで印を組んだ
「!おい、ガキ・・・!」
服を引っ掴んで雷球に足をかけ、オレは飛んだ
目指すは物見やぐら、結界を作る四人のうち誰か1人でもいい
そいつに一太刀浴びせる、そいつを倒せばあとは暗部が、先生がなんとかしてくれる
保険に再不斬もいるんだ、きっと・・・大丈夫!
そう思って、飛んだんだけどなぁ・・・
結界が張られるギリギリ前で侵入するって・・・ありなのか
妙な沈黙が結界内に染み渡る
・・・目線が、痛い
「おい・・・餓鬼・・・」
「後悔してますゴメンナサ・・・痛っ」
蹴りつけられた
「何だコイツら・・・」「大蛇丸様が瞬殺するだろ、放っとけ」
止めなさい四人衆、ぼそぼそ呟くんじゃありません
分かってるよ、場違いなことぐらい
三代目どころか大蛇丸まで唖然とした表情で見てくるんだからな
違うんですオレはただ四人衆と戦おうと思っていただけなんです、信じてください
「逃げるんじゃコン君!」
叫ぶ三代目
・・・どこから逃げればいいんでしょうか
結界の外で暗部の方々がはらはらしてらっしゃる
・・・あぁ、見覚えがあると思ったら雑用任務で知りあった小隊じゃないですか
お久しぶりです
あいさつも兼ねて暗部方にお辞儀する
「霧隠れの鬼人が・・・どうしてこんな所にいるのかしら・・・邪魔しないでもらえる?」
ねっとりとした執念深そうな声が響き渡る
「はっ・・・俺だって来たくて来たわけじゃねえ・・・って信じられないだろうなぁ・・・」
懐から短刀を取り出し構える再不斬
よし、巻き込み作戦は成功だな
「だからといってお前に協力なんざしねえぞ」
・・・作戦失敗
「出来れば、そっちのか弱いおチビさんと一緒に下がって貰いたいわねぇ・・・」
言うが早いが口寄せの蛇がオレに襲いかかる
クナイを盾にしようとした瞬間、再不斬が蛇を叩き斬った
「断る
木の葉に義理はねえが、こいつが師匠共々世話になったと五月蠅いんだ
・・・あと、テメェがムカつく」
「死にたいのかしら・・・?」
「こっちのセリフだ」
両者睨みあう
その隙に大蛇丸の拘束から逃れた三代目がオレに近づく
大蛇丸と再不斬の斬り合いの音が高く鳴り響く
「何故ここに来た!?御主がおっても何も出来んのだぞ!?」
その通りだ
そもそも結界内にまで乱入するつもりはなかった
だがオレはここにいる
それなら、オレの出来る限りのことをするべきだ
「オレは、仙人に伝言を確かに伝えた!だから来た!」
見せてやる
オレも、自来也のジジイもただ見てるだけじゃないって
祈るだけの存在じゃないってことを見せてやる
イカリに作ってもらった特別な口寄せ用巻物を懐から取り出し、三代目に渡す
「大蛇丸が口寄せできるんなら、この場にいるオレ達も口寄せが使えなきゃおかしい
三代目も使うつもりだったんでしょ!?ならまずはこいつを使って!」
オレに口寄せするだけのチャクラはない
これは誰かに口寄せをしてもらうためだけに用意した巻物
オレの叫びを聞き入れた三代目が口寄せのためにチャクラを練る
煙を撒きあげつつ現れたのは———
「北に南に西東!
斉天敵わぬ三忍の白髪童子蝦蟇使い!
泣く子も黙る色男、異仙忍者自来也さまのォ!
天外魔境暴れ舞い!」
オレの、初めての先生
「「自来也・・・!?」」
大蛇丸と三代目の驚愕の声が、結界内に響き渡った
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少しずつ、皆が変わってきた
原作も変わる
人も変わる
コンも変わる
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