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ファイナルファンタジーⅠ

作者:風亜
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30話 ≪自らの真意≫

「 ────それで、どうするのジタン。4つの場所を1つずつ、攻略して行くの?」


「1つは全て、全ては1つ……。この言葉通り、4ヵ所を1度に攻略するんだ」

 飛空艇のブリッジでガーネットの問いにジタンが答え、次いでビビが少し不安そうに問う。

「え、それってもしかして、いつもみたいにみんなと一緒に行くわけじゃないの?」

「あぁ、二組ずつ4つのグループに分かれて行動するのさ」

「二組ずつって……、あの人はどーするつもりっ?」

 意識を失い、船室に運び込まれた赤魔道士のマゥスンを気に掛けるエーコ。


「マゥスンの意識が戻るのを待ってる訳にもいかないしな……。オレ達はいつも通りにやるだけだし、目的地に着くまでに意識が戻れば、本人の意志と調子次第、かな。────行かせるとすれば、フライヤとサラマンダーに同行させようと思ってる」

「……なにそれ、エーコとは行かせてくれないわけっ?」

「いやほら、そこはやっぱり大人同士で、と言うか…… 」

「そーやってエーコを子供扱いするんだから! 村を出たあたしはもう一人前なのよっ!」

「……ジタンはクイナと一緒に行くそうだから、エーコはわたしと一緒に行きましょう?」

「へ? な、何でそうなるんだ? ガーネットは、オレと行くんじゃ……」

「誰もそんな事言ってないわ。……後はスタイナーとビビの組で決まりね。それぞれどこに降ろすかは、ジタンが決めてね?」

 ガーネットと二人きりで行きたかったジタンだが、決定に逆らう事が出来ず渋々承諾する。

「わ、分かったよ……。ここから一番近いポイントと言えば────"大地に囲まれし水の底にて守られる"って場所みたいだから、始めにガーネットとエーコに行ってもらおうと思うけど……、女の子二人だけで大丈夫か?」

「見くびらないでよねっ、エーコとガーネットには召喚獣が付いてるんだから! ジタンはせいぜいクイナの青魔法にほんろーされないことね! ビビはスタイナーの"おもり"みたいなものだし、サラマンダーはマイペースすぎるけどフライヤがしっかりしてるから安心よ! ────でも何考えてんだか分かんないあの人が一番安心できないし、今にもロウソクの火みたいに消えちゃいそうでほっとけないの! 別に、エーコはガーネットと一緒ならモンクないけど……!」

「どこ行くんだエーコ、様子見に行くつもりか?」

 ブリッジから出て行こうとするのをジタンが呼び止める。

「それくらい、いいでしょっ?」

「今はまだ行かない方がいいって、フライヤとサラマンダーに任せておこうぜ?」

「んもぅ何よジタンってば、エーコの気も知らないで……っ!」

「あ、待ってよエーコ……!」

 ビビが慌てた様子で後を追って行く。


「……しょうがないなぁ」

「エーコは、あの人の事を本当に案じているのよ。それ以上でも、それ以下でもないわ」

 ジタンにそれとなく諭すように言うガーネット。

「そろそろ、マゥスンの方から何か話して欲しい所だけどな………」






「どうなってる、こいつの身体……透けてきてやがるぞ」

「これは一体────マゥスンよ、目を覚ますのじゃ!」

 船室のベッドに横たわらせた身体が不意に透けてゆくのをサラマンダーが気付き、フライヤは名を呼び掛けるが意識は戻らず、このままでは存在自体が消滅するのではないかと感じたサラマンダーは、咄嗟に相手の額に片手を翳して<オーラ>を施し温かな光に包まれるとマゥスンは存在を取り戻してゆき、おぼろ気に目覚めた。

「気が付いたか……! どういう事じゃ? 先程のおぬし、透けてゆくように身体が消えかかっておったが」

「 ────── 」

 フライヤの問いに虚ろな表情のまま答えようとしないのに対し、サラマンダーが問い質す。

「黙ってたって分かりゃしねぇ。……それとも、記憶喪失で答えられないとでも言うつもりか?」

「無理に話させる必要もあるまい、本人にも判らぬ事やも知れぬ」

 気遣うフライヤだが、マゥスンはゆっくりと上体を起こして無感情に答える。


「 ────私は今、本体から切り離された<精神体>としてこの世界に存在している」

「何だと? ……実体にしか見えねぇが、魂の存在という事か? その本体とやらは、どこにある」

 訝りながらも、話を受け入れるサラマンダー。

「この世界とは、異なる次元。────ある要因で、こちらに<精神>のみ飛ばされて来た」

「ウイユヴェール………それでおぬしは、あの場所に意識不明のまま現れたのじゃな? やはり、自らの名以外に何も憶えていない訳ではなかったようじゃの」

 フライヤは薄々気付いていながら、問い質す事はしないでくれていたらしい。……サラマンダーは構わず疑問を投げ掛けてくる。

「つまりお前は、本当の意味で異世界の者だと言う事か。……それはそうと、さっきお前の存在自体が消えかかってたのは何故だ?」


「 ────この世界での、<精神体>としての消耗が激しい。このままでは、早々に消滅し兼ねない。そうなれば元の世界で眠っている本体は、屍と化すのみ」

「何という事じゃ……それでおぬし、私らと行動を共にして元の世界へ戻る方法を探っておったのじゃな」

 さすがに驚きを隠せぬフライヤだが、サラマンダーは別の意味で納得し難いらしい。

「……お前、よくもそう淡々としてられるな。少しは不安とやらを感じたりしねぇのか?」

「 私は、そちらを利用しているに過ぎない。迷惑を掛けている事は、すまないと思っている」

「そういう事を聞いてるんじゃねぇ。……お前自身は本当に、元の世界へ戻りたいと思ってるのか?」

「 ────── 」


「そうやって黙る事自体、お前が"すまない"と感じるべきなんじゃねぇのか」

「サラマンダー……、何もそのように言い立てる必要あるまい?」

「俺はただ、真意の見えないこいつが気に食わねぇだけだ」

 サラマンダーの言う事にも一理あると思ってか、フライヤはそれ以上言おうとせず、当のマゥスンは表情をほぼ変えずとも僅かに目を伏せたように答える。


「 ………元の世界に戻らなければならないのは事実。他の者達に、後始末を任せきる訳にもいかない」

「他の者達ってのは……、お前を待っている奴らの事か?」

「 …………、よく判らない」

「判らないも何も、それが"仲間"と言うものじゃ。……のう、サラマンダー?」

「 俺に聞くな 」

 フライヤに微笑され、何故か極まりが悪くなるサラマンダー。

「とにかくお前には、待たせてる奴らが居るって事か。お前の素振りからして、これまでの俺と同じように独りで行動して来たのかと思ったが、そうでもねぇらしいな。まぁいい………それよりそこのチビガキ共、盗み聞きは良くねぇぜ」

 ふとサラマンダーが船室のドアの向こう側に声を掛けると、足早に二人くらいの小幅な足音が遠のいていった。

「……どうやら、エーコとビビに聴かれていたようじゃの。まぁ、今さら隠す事もない。おぬしは独りではないのじゃ、出来うる限り私らはおぬしの力となろう」


「 …………、ありがとう 」


 フライヤの言葉をどう感じてか、エーコから教わっていた礼を述べておくマゥスンに、サラマンダーが話の核心に触れてくる。

「それで、肝心の元の世界に戻る方法とやらは分かったのか?」


「 ────こちらの世界に存在する異世界に通じるゲートにて、事象の異なる次元の狭間を見つける事が出来れば、そこから別ルートを通して戻る事が可能なはず」

「ふむ……それにはやはり、鍵となる4つの鏡で異世界へ通じるという輝く島の封印を解かねばなるまい。おぬしの消耗が激しいとなればこの先、無理をするでないぞ。サラマンダーが施した"気"で何とか留められたようじゃが、それでも消滅を免れなくなるやも知れぬからな」
 
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