魔法科高校~黒衣の人間主神~
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九校戦編〈下〉
九校戦四日目(5)×ほのかの波乗りと名無しの力本領発揮
「あっ、織斑君、どうしたんですか?ほのかさんのレースまでまだ二時間以上ありますよ?」
「居心地が悪かったんでこちらに避難してきたのですよ」
首を傾げた中条先輩だったが、一真の隣にいた深雪は苦笑していた。
「兄は気にし過ぎですが、本体である名無しさんの事もですけど」
「やる気に繋がったから、結果オーライだと思うよ」
「あ、ああ、そう言う事ですか・・・・」
事情を察した中条先輩は、それだけだと鋭さを持っていると感じた。雫達の上位独占は、昼食時も称賛の的になった。幹部だけでなく、観戦していた本日オフの上級生達も、口々に雫達三人を褒め称し、エンジニアである一真にもたくさんの称賛をもらったので居心地が良くなかったからだ。功績に言及する者も少なくなかったが、男子スピード・シューティングが異常な対抗心を燃やしていたが優勝は名無しが確実だと思っているのに燃えていた。特に森崎は未だに陰口でブルームがウィードに劣る訳がないと言っていたのを聞いた護衛者が厳重注意処分をした。それを見た上級生も、森崎に向けた視線が冷たかった。
九校戦の会場は国防軍演習場の南東エリアに作られている。一エリアとはいえ、元々広大な富士演習場、各競技会場面を移動するだけでチョッとしたハイキングになるくらいの広さがある。そのくらいの広さがないとバトル・ボードのコースやモノリス・コードの戦闘フィールドは用意できない。バトル・ボードの競技コースは、曲がりくねった全長三キロメートルの人工水路サーキット。今年度から男女別なので、それだけの広さが必要なのだ。
「宿舎に戻って本体と一度合流してもよかったのですが、本体からの命で何かお手伝いがないか来た訳です」
「本当ですか!是非、私のデバイスも見て下さい!」
最近ほのかは、一真の影響なのかCADからデバイスと言うようになった。
「ほのか、それでは中条先輩に失礼に値するだろう?」
「えっ、あ、すみません!」
「気にしないで。そんなつもりじゃないのは分かってますから」
中条先輩は苦笑いしてから首を振ったが口調がお姉さんぽい口調でもあった。バトル・ボードの平均的な競技時間は一レース十五分。ボードの上げ下ろしや水路点検に、魔法で損傷した箇所があればその修復など、レースの準備にはその倍以上の時間がかかる。今年度から蒼い翼からの者で、修復するのはいつもより時間を短縮できるようにしたからかほのかのレースまであと一時間となった。
「さて、ほのかも反省したところだし、作戦の最終確認をしようか」
「はい」
最終レース開始までもうすぐなのか選手は既にスタート位置まで移動している、最後の作戦会議をしていたので、ほのかは前より緊張はない。あとは自分の力を信じるだけでもある。一真に纏わりつくほのかの姿に段々と機嫌の勾配を傾けていった深雪が、ほのかを兄から引き離すようにしてどうでもいい雑談をしたが最後はほのかのレース後である名無しの決勝トーナメントだ。それを合わせるかのように、蒼い翼の修復・点検チームが早めに最終レースを終わらせて深雪達をスピード・シューティングの方に行かせるためでもある。
手首、足首まで覆うウェットスーツと厚手のスイムシューズは、落下や激突の摩擦と衝撃から選手の身体を守る為の物。だけど圧迫気味に全身へ貼り付くユニフォームは、選手の身体のラインを実際以上にメリハリのあるものとして見せている。太ももには中抜き文字で大きく「ICHIKO」のロゴ。高校一年生とは思えぬ刺激的なプロポーションをカラフルなウェットスーツに浮かび上がらせ、ボードに片膝をつくスタイルで、ほのかはスタートを待っていた。デバイスは前腕部を覆う、幅を広くし厚みを薄くしているタイプで、面積が増えた分だけ操作用のボタンも大きくなっている。
最初に断った通り、一真はほのかのデバイスを一切調整していないからという事と、少し見てみたが直すところはなかったからである。中条先輩とほのかから何かアドバイスをと言われたので一真が口を出したのは一点で、ほのかが着用している濃い色のゴーグルは一真が持ってきた物だ。今は西へ傾いているから真夏の日差しが強いので、向き合うと眩しいくらいだった。グラス面に付着した水飛沫が視界を遮るのを嫌って、ゴーグルやサングラスを着用する者はほとんどいない。中条先輩は視界を狭めるデメリットしかないように感じられたが、ほのかは迷わず一真の持ってきたゴーグルを着用した。一真が渡したゴーグルは、グラス面が対水飛沫でほとんど濡れないし、逆に視界が狭まらないようになっている。
「・・・・そういえば光井さんは何故、光学系の起動式をあんなに沢山準備しているんでしょう?」
エンジニアが起動式の種類まで口を出すのは稀な事で、起動式のラインナップまで自分で決めてしまう一真は例外で、普通エンジニアは選手の希望した通りに起動式をデバイスへインストールする。ほのかが光学振動系の幻影魔法を得意としている事は、中条先輩も選手プロフィールから知っていたが、この競技の性質上、幻影魔法の出番は無いはずだと中条先輩の正直な感想だった。
「バトル・ボードのルールでは、他の選手に魔法干渉する事は禁じられていますが水面干渉をした結果、他の選手妨害となる事は禁止されていません」
「・・・・どういう事でしょう?」
中条先輩に重ねて問われた一真は、人の悪い笑みを返した。新人戦女子バトルボードの予選最終レース時に、観客席にいた俺達は皆サングラスをかけていたがその理由はすぐに知れたのだった。スタート時に一真達以外の観客達は水路から目を背けた、まるで深雪が使ったフラッシュのように暗闇を無くしたかのようなのが発光をした。選手が一人落水し、他の選手がバランスを崩し加速を中断した中でただ一人ダッシュを決めた選手がいた。この事態を予期していたかのように濃い色のゴーグルをかけたほのかが先頭を独占していた。
「よし、上手くいったようだ」
「・・・・これがお兄様の作戦ですか?」
サングラスを外しながら問いかける深雪の声も、呆れ声だったが光を使う者にとっては立派な作戦でもある。
「確かに、ルールには違反していないけど・・・・」
雫の声も、幾分非難混じり。フェアプレーの精神に反していると言われても仕方が無い、と感じていると思う。アンフェアなプレーがあった場合にイエローフラッグ、競技中断の旗も振られてないから問題ない。ルール違反選手の失格を示すレッドフラッグも無い、審判の中にも蒼い翼の者を入れているから事前に知らせてはいたので問題ない。なので大会委員は、ほのかの魔法を一真の作戦を合法に認めた、という事になる。
「・・・・水面に光学系魔法を仕掛けるなんて、思ってもみませんでした」
「水面干渉と言われてると、波を起こしたりとか渦を作ったとか、水面に挙動にばかり意識が向きがちではありますが、ルールで許可されているのはあくまでも『魔法で水面に干渉して他の選手を妨害する事』ですからね。水面を沸騰させるとかが全面的に凍結させるとかは危険ではありますが、目晦まし程度の事は今まで使用されてなかった方が不思議だと俺は思いますよ。俺も光属性を使えますからね、相手を目晦まししてからスタートさせるというのは策でもありますよ」
何の心構えも無く目潰しを喰らったので、すぐに視力が回復する事はない。緩やかなコースなら進めるが蛇行しているコースは視界を奪われた状態で全力疾走できないからか、ほのかと他の選手の間には既に決定的とも言えるだけの差が開いた事だった。そして独走状態のほのかとなり、三周して無事に予選突破したほのかだった。
「・・・・決まりだな」
「・・・・誰が考えたの、この作戦?」
モニター越しに見ていた真由美たちは、モニターで光量の調節が行われていたので眩しい思いをせずに済んだけど、それだけに作戦の独創性を冷静に評価し、驚きを覚えていた。まあ冷静に驚くという事らしいが、摩利の呟きに続いて発せられた真由美の問いかけに答えたのは鈴音だった。
「織斑君ですが」
「えっ、でも一真君は、この競技を担当していないはずだけど」
その答えを聞いて真由美は「あれっ?」と言う感じで首を捻る。それに対する鈴音の回答は、少し丁寧すぎるものだったかもしれない。
「作戦の具申は光井さん本人です。しかし起動式のラインナップを含めて作戦プランを作ったのは織斑君だと、その際言っていました」
「・・・・次から次へとやってくれるな」
摩利の口調は何か不機嫌な感じに聞こえているが、沈黙自体が摩利の内心を雄弁に物語っていた。
「・・・・工夫って大事よねぇ。老師の仰る通りだわ」
真由美の見た所、摩利は自分が思いつかなかった作戦を見せられて不機嫌になっていると感じた。多彩なテクニックを売りにしている摩利にとっては面白くないレースであっただろう。
「過去九年、誰も思いつかなかった作戦ですから、ここは素直に感心すべき所かと」
「・・・・感心しているさ。だから癪に障るんじゃないか」
「ちなみに作戦プランを考えた織斑君自身も、もしかしたら自分も使うと言ってました。彼はエレメンツ使いですから、光や闇も使えるからだと思いますが」
鈴音にズバッと斬り込まれて、渋々嫉妬しているから摩利は認めたが、一真も使うかもというところで名無しが使うかもしれないと思ったに違いない。認められるだけの度量があるから、あえてツッコんだけどこれは一回限りの作戦だから決勝トーナメントでは選手全員がゴーグル着用するかもしれない事を一真は先読みをしていた。そんで俺達は観客席から水路から上がるほのかを待っていた。
「勝ちました!勝ちましたよ、一真さん!」
「見てたよ、おめでとう。次の決勝トーナメントでは、別の策でやるといい」
チームメイトばかりか他校スタッフの視線を気にもせずに、一真は素直に祝福と準々決勝の時の事を考えてから押し停めた。
「ありがとうございます!」
ほのかは目の前に差し出された一真の両手をガッシリと握り締めて、うるうると泣き出してしまった。たぶん嬉し涙なんだと思ったが、潤んだ瞳が一真の顔を見詰めだした。深雪もここまでストレートな感情表現はあまりないが、拠点にいる嫁達はこういう風に競技で勝って感情表現を示す事はある。
「まあまあ、泣くな。まだ予選突破したんだから、ほら泣かないの」
と言いながら濡れた頭を静かに手を置き、ほのかを落ち着かせようとしてしばらく経つと涙は止まっていた。涙は一真のハンカチで拭いたからで、落ち着いた分は嬉しさ半分とまだ少し泣きそうな感じだった。
「私、いつも本番に弱くて・・・・運動会とか対抗戦とかこういう競技会で勝てた事ってほとんど無いんです」
そう言いながらだったので、隣にいた雫からの情報だと戦略自体にはひどくもないが小学生の頃の話だと聞いた後に、仙術で完全に落ち着かせてから深雪がタオルを差し出した後に手を離したほのかだったけど。
「予選突破したのは、一真さんのお陰です!」
「うむ。次回からの策も任せてもらおうか、さて、ほのかが落ち着いたところで着替えてきたらどうかな?そろそろ本体である名無しが男子スピード・シューティングの決勝トーナメントに出るためにな」
そう言った後にほのかは、雫と共に着替えに行った後に深雪と一緒に待っていた。そしてほのかが制服姿に戻ったところで、急いでスピード・シューティング会場に行って席を探していたらエリカ達と会長達がいたのだった。会長はほのかに予選突破おめでとうと言っていたが、分身体である一真は深雪と共に来たはずがいつの間にかいなくなっていた事に気付くほのかと雫だった。
「会長も名無し様の試技を直接見に来られたのですか?」
「そうよ、だって予選でも分析が得意なリンちゃんでさえ分からず仕舞いだったから」
「そう言う事だが、一真君はどうしたんだ?」
「それだったら本体と合流致しましたよ?決勝トーナメントからのハンデは予選とは大違いなものですから」
予選ではどんなハンデだったのかも知らされてなかった会長達にエリカ達だったから、事前に知っていた深雪から語られたが予選ではここから遥か1キロ先にあるところから狙撃をしたのだと言ったらあり得ないハンデだと言った渡辺先輩は思った。深雪曰く俺のハンデは予選では生温いハンデだったと言っていて、予選ではどういう風に狙撃をしたのかを市原先輩が言ったので深雪は静かに語る。
「予選では一キロ先にある屋外演習場からここまで狙撃するのは、普通なら無理ですが名無し様ならあり得る事ができます。空中にある有効範囲エリアから地面にクレーの影が出現したら、小銃形態の汎用型の引き金を引きます。引いた後にクレーは粉砕されてますが、エレメンツは地と風と光を使った事です」
「予選の時は太陽光から影が出来た時に、粉砕されてたって言ってたけど、その言い方じゃあ違うようだねぇ~」
「エリカの言う通り、ただ影を粉砕したからじゃないの。クレーがエリア内に入る時に地面全体にセンサーであり、クレーが射出されたという事を風で知りそして光の弾である光弾で一キロ先から狙撃が出来たのです。光の速さは伊達ではありません」
「なるほど、だからこちらでは影が粉砕されていると錯覚をしたのですか。それなら納得いきますが、名無し君は決勝でもその戦法で行くのですか?」
そう言った市原先輩に、深雪は首を横に振ったのだったけどまもなく始まる決勝トーナメントでは一高選手はあの森崎だけだった。最初に森崎と試技した後に吉祥寺をこちらに来させる算段だと言っている。既に三高が優勝を果たしたと言っていたが、それは準決勝だと告げられた吉祥寺は渋々こちらに来る事となる。
『さてそれでは、蒼い翼特別推薦枠である名無し選手は既に準備完了だと言ってますが、森崎選手の準備も整ったようですので始めたいと思います』
相変わらず森崎は白のクレーを撃つために白の立ち位置にいるが、紅のクレーを撃ち落とす名無しの姿がないがどこにいるかというと遥か上空にいた。上空五千フィートで、逆さのような感じで狙撃の構えをしていた。五千フィートは千五百メートルだから1キロと二キロの間にいた。そこには落下しないように、ISを纏っていた桜花と結衣がいた。もちろん全身装甲となり顔を隠していたけど、名無しは風術で身体を逆さのまま固定し足を風の塊のとこに立たせている状態だ。
「まさかこうやって地面を見るとは思わなかったが、これはこれでいいだろう。現代魔法なら飛行術式だと思われるが違うし、司会者の沙紀、こっちは準備完了だ」
そして会場では、ランプが全て点った瞬間に有効範囲エリアに紅と白のクレーが入る時には、紅色のクレーが粉砕されていた事に驚く森崎。アイツは早撃ちが得意だそうだが、こちらとはレベルが違うようなもんだ。そして次々と紅と白が放たれるという瞬間に目でも追えないほどの速度であっという間に粉砕した紅のクレーは百個のを粉砕し終えたので名無しの勝ちとなった。森崎はまだ50だったのに、狙撃速度が違う事でチームメイトの活躍でやる気を出していたはずなのに、同じ一高選手に負けた。
「おいおい、森崎を瞬殺したとは一体どこで狙撃をしているんだ?」
「分かりません。先程の深雪さんの説明だと分かるんですが、今回は紅と白の同時ですので予選の手は無いと思われますが」
「さすがのリンちゃんでも分からないとなると、こちらもお手上げだわ」
「今度はどんな仕組みでやったんだ?こっちから見たら秒殺のようなKO勝ちだったな」
「僕にも分からないけど、精霊魔法を使う僕でさえね。彼は精霊術師だからそれをフル活用していると思ったんだけど」
「あたしも分からないなぁ~。深雪!」
深雪に振ったエリカだったが、まだ教えない気でいたために決勝が終えてから教えると言ったので視線を前方に向けたら、ここにはいないはずの三高の吉祥寺がいたのだった。彼は別の会場でやっていたはずだと言った会長達だったが、わざわざこちらに来させたと深雪が言ったので本当の決勝が始まると思ったらしい。
「精度はまだまだイケるな、もう少し高度を高めるか。それといつまでも逆さだと頭に血が上る」
「どこまで行きますか?最大射程は私達だとISならどこまでもいけますが、隊長が持っているのは一見小銃形態の汎用型ですがホントはトリガーメモリを入れたライフルなのでは?」
「その答えはハズレだな、さてと三キロまで上がるか」
そう言いながら地上では少し待てと言ってから、一旦上空に立っている状態から更に上がっていく。成層圏までまだだが、空気は薄くなっているはずなので風術でこの辺りだけは地上と変わらずなとこにしてから、また逆さ向きにしてから狙撃態勢になった。トリガーメモリを入れているとそれは反則なので、目をスコープのようにしてから真上から見たクレーがあると風と地からのセンサーが働いてから引き金を引いた後に風の弾丸で粉砕している事を話すとそれは隊長しかできない事ですねと言っていたけどね。そして吉祥寺との試技が開始されてから、不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)で対抗しようともその時には既に粉砕していた。対象のエイドスを改変無しに直接圧力そのものを書き加える魔法なので、引き金を引いたら標的を圧力で砕いてるような感じであるが、速度も精度も名無しの方が上だと感じた吉祥寺。そんで試技が終了して優勝は一高名無し選手で準優勝は三高で三位は一高の森崎となった。
『ここで名無し選手がどうやって撃ったかは、遥か上空を見れば分かりますよ。カメラを上空にいる名無し選手を映し出そうとしても、無理があるようですので降りてきてもらいましょう』
「ええ!上空にいたのお~!」
「真由美、マルチスコープで確認できたか?」
「ちょっと待ってて・・・・・いたけど、上空一万フィート以上にいるわよ!」
「上空一万フィート以上って飛行機が飛ぶのと同じ高さで撃ったって事ですか!?」
そう驚いていた会長達三人とエリカ達六人だったがだんだん黒い点みたいなのが見えてきたと思えば、頭を下に向けていたのでこのまま落ちると思った観客達だったが有効範囲エリアのところで身体の向きを上手に変えながら着地してきた名無し選手だった。
「あんな高さからどうやって静かに着地したの!?もしかして飛行術式?」
「それは違いますよ会長。名無し様は小銃携帯デバイスしか持っていません、となるとエレメンツの一つである風で飛んでいただけです」
そう言う深雪の答えは、着地してきた名無し選手が持つ小銃形態の汎用型を持っていた。それを使い複数の魔法を使っていたとされていたが、飛んでいたのは先月発表された飛行魔法だと観客達は勘違いをしていたので、司会である沙紀が持つマイクを持った名無し選手だった。
『観客席にいる諸君たちは一つ勘違いをしている、俺のデバイスはこれのみであとはどこにもないぞ。俺が使ったのは飛行術式ではなく、エレメンツマスターである俺だから使えただけの事。風を操り自由に飛ぶ事が可能だ、俺の周辺にある風が分かるだろう?』
そう言った後に会場周辺を飛んで見せた名無し選手は、色をつけた風で飛んでいるという証拠を見せた後に名無し選手は会場から姿を消した。その後、会長達は天幕へ戻った。エリカ達はホテルに戻ったが、天幕に戻った会長達は深雪に一真を呼んでくるように指示を出してから戻った。男子スピード・シューティングは、一高の選手は予選落ちをしたそうだ、運動競技でも盤面遊戯でもやる気が無ければ勝利が無い事は知っているようにそれは魔法競技も同じだった。チームメイトの活躍を見てから、「今
度は自分が」と意気込むところまでは良かったが、勝利を勝ち取るのはやる気だけでは取れない。時には「やる気」が「気負い」に繋がり「空回り」へとなる。その実例が今目の前で起きた。
「森崎君が三位したけど・・・・」
失望をオブラートに包んだ会長だったが。
「あとの二人は予選落ちで、見事に名無しである彼は優勝を果たしてみせた。実力に差が有りまくりだぞ、名無しの力は」
失望を露わにしてから、九校戦前に競技に出場するからには全部優勝してみせると言ったのが、現実となった。しかもハンデはあるのに、それ以上の戦果をしてみせた名無しである一真であるが、彼は少し疲れていた。エレメンツを少し本気にして複数のを同時に扱ったので、ミーティングルームのドア前にて汗だくりの一真と深雪がいたのを発見したかのように感じた会長はドアを開けたら床に這いつくばっていた一真だった。
「一真君!大丈夫?」
「これが大丈夫に見えますか?分身体を作りだし、予選では力を出さないとはいえ決勝では本気を少し出しただけなのですから」
深雪が冷却魔法で一真の身体を冷やした後に、中にいる十文字会頭が一真を担いでから中に入ってから椅子に腰かけた一真だった。
「織斑、今日はよくやったと言いたいが、スピード・シューティング決勝の時に使った飛行やら説明を頼む」
「・・・・予選ではさっき深雪が会長に話した通りですが、決勝では森崎とは五千フィートにいて吉祥寺とは一万フィート以上の高さにいましたから。それと使ったデバイスは、小銃形態の汎用型を使いました。これは私の手作りで、一見そう見えますがエレメンツをフル活用できるようにしたものですから。弾丸は風と光を使って最速で粉砕させました」
「まさかそんな高等技術を使うなんて、あたしらだって分からず仕舞いだったが今の説明なら何となく分かる。上空からの超遠距離狙撃は、高校生レベルを逸脱しているが一真君は違うと考えられる」
「お陰様で、本来だとホテルに行って休むところを会長からのお呼びで参った次第。もうまもなく回復しますので少々お待ちを」
そう言った一真は、内ポケットから出したドリンクを飲むと体力と魔力やらが元通りとなったので大丈夫となった。新人戦一日目を終えて男子スピード・シューティングの順位を見ていた俺達。
「男子と女子で逆の成績になるところだったわ」
「そうですね、名無し選手のお陰で三高は二位と五位ですから。女子で稼いだ貯金と男子で優勝したポイントを加算するとかなり差が開きますが、力量の差を見たので恐らく他高の選手たちも名無し選手と当たる者はどうなるか見物ではありますね」
「今日だけでも、成績以上のを残してくれたのは名無しである一真君のお陰だ。リードを奪った事で良しとしなければ」
「しかし、男子の不振は『早撃ち』だけではない。『波乗り』でも予選通過女子二名と男子である名無しとで二名だ」
自分自身に言い聞かせるような口調だった渡辺先輩だったが、十文字会頭が険しい表情で異を唱えた。
「このままズルズルと不振が続くようであれば、織斑に無理を言わせるしかないが一日でこの疲れようでは織斑をあまり追い込むのもな。今年はいいが、来年以降に差し障りがあるかもしれん」
「それは、負け癖が付くという事か?」
「そのおそれがあるだろう、男子の方は梃入れが必要だな。無理を支障させると今度は織斑までダウンしてしまう」
「その発言に肯定しておきますが、今更だと何が出来ますか?」
一真が言った事で、確かに今更である。九校戦は始まっているから、もう梃入れをするにも今は新人戦が始まっている状態だ。今からでは選手もスタッフも入れ替える事は出来ないが、名無しと一真ならできると言ったがそれは却下された。三種目でもう手一杯だから、これ以上させると体調管理に問題が起きる。そして俺と深雪が退席した後に部屋に戻った一真は、ベッドに飛び込んで寝たのだった。蒼太は床で寝てしまう一真をベッドまで移動させてから、静かに部屋を出たのだった。夕方だったが先程飲んだドリンクで回復したので、夕飯を食い終わった後に深雪の部屋に向かった。
「お兄様・・・・体調はよろしいのですか?」
「ああもう大丈夫だ、心配をかけたな。明日からは深雪の出番となるが、要注意だ」
「分かっております。無頭竜からのちょっかいもありますし、恐らく明日の事務連絡で伝えられますわ」
「既に調整済みのを厳重にロックさせたと見せかけて、空間に入れてあるから心配はない」
玄信達独立魔装大隊とソレスタルビーイングでの連携は完璧で、警戒は真上上空にいるトレミーからも監視網を敷いている。夜勤のCBメンバーがフェルトとミレイナの仕事を引き継いでいるので、今はCBメンバーの者に一任されている。もし戦闘となれば起きてくるだろう。深雪から話をしたが『インデックス』についてだが、これについては名前を載せても問題はないと思うが、一応の事もあるので蒼い翼研究者と言う風にした。
「この方が俺だとバレ無くて済む、俺はFLTで会長職をやっている身だ」
「そうですね、魔法大学の調査力が高くとも蒼い翼のなら大丈夫かと。ニュースサイトでゴシップサイトを運営していましても、そこらの報道機関など比べものになりません。軍の諜報機関に匹敵したとしてもすぐに諜報部の方が揉み消すかと思われます」
新魔法の開発者には大学の資料を利用する上で様々な特権が与えられる関係で、その身元を詳細に調べ上げてしまう。敵性国家群のスパイや、テロ組織を排除するために高校の入学審査とは桁が違う調査量となる。蒼い翼という大きな抑止力で、情報をブロックしている。零家と織斑家との繋がりを暴き出す事も可能だが、そんな事をさせないために記憶共有者達が頑なにがバックアップがあっての大きな力で停止させている。九校戦に出ているだけでも身元が割り出されるが、主催は蒼い翼も入っているから問題ないし、不審者が観客達の中にいたとしてもすぐに捕縛される。
「魔法大全に載ったとしても、零達也が俺だとはバレないという事はゼロだと言いたい」
「お兄様周辺にはいつだってお仲間がいますから、平気でしょう」
そう言ってからおやすみと言ってから自分の部屋に戻ったら、そこには深夜がいた。今日はとても頑張っていたから今日は一緒に寝ましょうと言ってきた。蒼太もいるからだけど、地下温泉はまだやっている時間だったので俺達は温泉に入った。もちろん真夜達もいたけど、今回の立役者は一真だったので背中を洗ったり6対12枚の翼を展開した後、お疲れ様を込めて洗ってくれた。今回はホントは翼を使った事だったけど、翼を透明にさせたから疲れたのさ。そんで一緒に入った後に深夜と一緒に寝よう
としたが真夜も一緒に寝ると言い出したのでベッドを大きくさせてから、隣のベッドは蒼太が使うけど今日は両手に花の状態で寝たのだった。
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