Gフォース~正義の行方~
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第7話 シンクレアの悲しい正義
12時間後、某所。
サムの乗った飛行機はワシントン国際空港に泊まった。
彼は分厚い防寒着と度の入ってないメガネをかけるとそのままワシントンに入った。
「サム、最低の変装ですね。」
防寒着のポケットの中にマナはいると彼に辛辣な皮肉をいった。
サムはそれを無視すると、そのまま前に進んでいった。
やがて、空港を出るとそこには大きな黒いベンツがあった。
そこにはスーツをきた、大柄な男がいた。
ダグラス・ゴードン大佐だった。
「久しぶりだな、サム。」
太く威厳のある声でゴードンはサムに聞いた。
サムは心底焦っているのか、ゴードンに状況を伝えた。
「ボクサー、フォードが大変なことになっちまった。」
サムはヒオを通じて連絡を受けていた。
フォードは濡れ衣を着せられ、あげく監禁されているとのことだ。
ボクサーはそれを知っていたので黙って首を縦に振ると、車のドアを開けた。
そこにはとんでもない数の弾丸と銃、そしてユリがいた。
ユリは銃の手入れをしていた。
「ああ、何だお前か。」
「あら、ブ男相変わらずね。」
ユリからそういわれるとサムは作り笑いをしながら怒りを抑えた。
「お、お前なあ・・・。」
ポケットから顔を出すと、マナはユリとボクサーに会釈をした。
ボクサーとユリは顔を縦に振り会釈しかえすと、二人を車の中に入れた。
四人を乗せたベンツはそのまま進んでいった。
ベンツの中でサムは話を始めた。
「なぜ、フォードが濡れ衣を着せられたんだ。」
「わかりません、なぜ?」
「わからん、何者かが我々をはめようとしているのかもしれんな。」
3人の会話にユリは間に入って行った。
「そういえば、ダニエルがメカゴジラを操縦してたら別のロボット怪獣が来たらしいわ。ガイガンって名前らしいわよ。もしかしたらそいつらと関係あるかも。」
ユリの話聞くと、ゴードンはふと思い出した。
「そういえば、撃たれた提督がフォードにある軍事プロジェクトの視察の話をしていた。もしかしたら、それが裏にあるのかも。」
「そう思って間違いありませんね、ところでこのベンツ。何ですの?」
マナはわかっていた。
このベンツがゴードンやユリの物ではないと。
「ああ、近くにいたマフィア崩れにもらったんだよ。」
「そうそう、寄付ってやつ!」
サムは眉をひそめると、まあマフィアならいいかと思った。
また後で知り合いのフィルに頼んで揉み消してもらっておこうとも考えた。
数時間後
フォードは目を覚ました。
ふと、周囲をみつめた。
周囲は暗く、何がなんなのかみえることはなかった。
フォードはふと、自分が死んだのだなと感じた。
恐らくそれは間違いといえただろう。
フォードは自分の腕が動かせないことに気がついた。
どうやら、両腕が縛られているようだった。
両腕が縛られている感触がある、ということは生きていることだ。
だが、暗く状況はどうなっているのかはわからなかった。
「う、動かない・・・。」
だが、フォードにとってわかったことがあった。
一つ、自分が死んでいないこと。
戦場でも経験したことだがまず最も誇らしいことは敵を打ち倒すことではない。
生きることだ。
フォードは幸運にも、生きていた。
まずその事を感謝した。
二つ、敵のアジトに侵入したこと。
敵地に乗り込んだ、ということは相手の真意を探れることだ。
だが、状況は良くなかった。
何より、首が痛かったし、それに敵に捕らえられている以上命は向こうの状況次第で変わる。
すると、ふと前方から光が差しのべた。
そこで、フォードは自分の置かれてる状況がその光のおかげでわかることができた。
全裸のまま、ベッドで磔の状態でいたのだ。
フォードは自分の姿がふとイエス・キリストの磔の絵にみえた。
恐らく、相手はこうやって辱めを与えこれから「いい刑事」「悪い刑事」のような雨と鞭作戦で洗脳していくのだろう。
フォードはジッと前方をにらんだ。
すると、目の前から意外な人物が現れた。
「元気か?」
声の主は聞いたことがある人間だった。
光がさしこんでいるためうまくみることはできなかったが、しだいに目がなれていくとどういう人物かわかった。
灰色のスーツと筋肉質な体をした、大柄な眼鏡をかけた壮年の男性。
シンクレア上院議員だった。
「上院議員?やはり、あなただったか!」
シンクレアはフォードの言葉を耳にすると微笑みながら電気をつけた。
すると、電機は灯り周囲が明るくなった。
フォードの周囲にはふと、レンガ状の建物と粗末で時代遅れな電灯がみえた。
「悪く思わないでくれ、これも正義なのだ。」
フォードはひたすら、シンクレアのほうをにらんだ。
ただただ、無言で。
自分に辱めを与えた、議員への怨念。
そして、恐らくは提督を撃ち自分に罪を着せたことであろう事への憤怒。
それらがまざり、フォードはシンクレアをただただ睨んでいた。
だが、フォードは冷静に聞いた。
「提督を撃ったのはあなたか?」
シンクレアは首を横に振った。
その姿はわざとらしくみえた。
「勘違いするな、私が狙撃したわけではない。」
「その指示を出したということか、提督はあなたの市民監視計画に賛同をしていたのに!」
シンクレアは少し一瞬、戸惑った表情をみせた。
フォードはそれを見逃さなかった。
一瞬、罪悪感を感じているような表情をした。
しかし、目を泳がせながらも冷静にいった。
「正義には犠牲がつきものだ、それに君がいけないのだよ。君が私の計画を断ったからだ。君を正体した提督もその内君の意見に賛同してしまうだろう。その時点で大義はあるのだよ、ブロディ君。」
「ふざけるなよ、お前なんか違い提督は市民を守るため戦っていた。」
シンクレアはフォードの発言にムッとした表情を見せた。
口先は歪み、目は睨み返していた。
今までの議員の姿とは違っていた。
「心外だ、私も市民を守る事を最優先にしているのだ。」
「市民を監視し、邪魔者を逮捕ことが正義ですか?」
「君の小さい正義では、私の大きい正義は理解できんようだな。」
シンクレアはそういってわざとらしく笑ってみせると、フォードに顔を向けた。
フォードはシンクレアの目を睨み返した。
「なぜ、俺に罪を着せて偽の警官を送って殺そうとしたんだ。」
「君はこの計画を知り、尚且つ断ったからだ。だが、私は心が広い寛大だ。命だけは助けてあげよう。」
フォードはどの口がいうんだと笑いそうになりながらもこらえてさらに睨んだ。
大体、どこの世界でも自分の口から「寛大だ」「心が広い」なんていうやつは大抵が物事の視野が狭く極端なやつなんだ。
そう、フォードは考えていた。
シンクレアはフォードにとってまさにその典型例だった。
「で、俺を洗脳するわけだな。」
「洗脳とは人聞きの悪い、説得だ。」
大体同じようなもんだろ、フォードはそう思うと彼を心の奥底からせせら笑った。
シンクレアは怒りを抑え込むと、作り笑いをしながらフォードに近寄った。
そしれ彼に静かに怒りをぶつけるかのようにこういった。
「君は物事を悪いように解釈するようだな。」
フォードは思ったことをありのまま、シンクレアにぶちまけた。
「あんたはどうやら物事を自分の都合のいいように解釈するようだな。」
シンクレアは少しフォードから離れると、大げさにせきこみながらこう言った。
「君を生かして私の部隊の指揮官になってほしかったのだが、どうやら聞き入れてくれそうにはないな。だが、私は心が広い。待ってあげよう。また来るからその時まで頭を冷やすんだな。もしも、考えを改めなければ・・・どうなるかな?」
シンクレアは怒りを抑えるように歩き、去ろうとした。
「待て!」
シンクレアはフォードの言葉に反応し、足を止めた。
そして、フォードのほうをみつめた。
「なぜ、アイアンズ軍曹をあんな姿にしたんだ。」
シンクレア議員は首を傾げながらフォードのほうをみつめた。
「どういうことだ?」
「彼女は、死んだはずだ。」
フォードの発言にシンクレア上院議員は心底驚いてるようだった。
どうやら、シンクレア議員はあのサイボーグの正体を理解していなかったようだ。
しばし、無言のやり取りが続いた。
だが・・・。
「君の質問には一切答えない。」
議員は明かりを消すと、ドアを閉めた。
再びあたりを暗黒と静寂が包み込んだ。
すると、フォードの頭の中に話しかける声がした。
「フォード・・・結構痩せたね。」
聞きなれた声だった。
ヒオだった。
「ヒオ、俺のいう事に従ったみたいだな。よくやった。」
実はフォードは気絶する一瞬に彼女に秘密任務を与えていた。
その任務とは、敵が自分を連れ去る場合はその敵を追いかけること。
そして、場所が特定すればゴードンやサムに連絡をすること。
作戦は成功だった。
ヒオはフォードの支持通りに動いた。
そして、フォードが気絶してる間にここがどこなのかを判明しておいた。
フォードとヒオがいるのは、ワシントン郊外のとある軍事基地の跡地だった。
「大丈夫だよ、もうほかの人には連絡をしてるから1日ぐらい待ってたら来るよ。」
1日長い時間だ、フォードは思わずため息をついた。
そして、無言で頭の中を通してヒオに話しかけた。
「1日も全裸でいなくちゃいけないのか?しかもこんな暗く寒い部屋で風邪ひいたらどうすんだよ・・・。」
フォードが思ってた以上に元気だったことに驚いたヒオはフォードの見える範囲まで近寄った。
すると、蛍のようにヒオは明るく体を光らせた。
彼の胸の上にヒオはちょこんと座った。
「どうだい、明るくなっただろう?なんつって!」
さすがに明るくなると、連中は疑う。
監視カメラの一つはあるだろうと、フォードはわかっていたので頭の中のメッセージを通してたしなめることにした。
「やめろ、連中にばれるかもしれないだろ!」
ヒオは急いで体を光らせるのをやめるとフォードの頭にちょこんとすわった。
ふと、フォードは自分の体が暖かい感じがするのを感じた。
そして、さらに深くため息をついた。
「ごめんね、フォード。」
「は?」
「あたしにフォードほどの力があればこんな鎖今すぐとってあげれるのにさ。」
「いや、君は充分役に立ってるよ。できれば傍にいてくれ。誰かがいないと寂しいからね。」
ヒオはフォードの言った言葉を心底うれしく感じると胸の上で小躍りをした。
フォードは素肌を通して、それを感じたので心底こちょばく感じると、大笑いをし始めた。
それをドアの前にいた警備兵は聞いていたが、警備兵の男はフォードの頭がおかしくなったんだなと思うと再び監視を始めたのだった。
某所、モナーク秘密研究所。
ガイガンとジョアンナは検査を受けていた。
点検担当の医師は整備をし終えると、ジョアンナを暗い専用の点検部屋に押し込めた。
すると、ジョアンナの赤い目はさらに赤く輝いた。
その中で、ジョアンナはふととある映像を再確認していた。
その映像は、フォードの映像だった。
フォードを攻撃した時、敵であるフォードは自分を知っているようだった。
「軍曹、気は確かですか?」
彼女はその部分を何度も何度も再生していた。
軍曹、彼女は気になって脳内の回路をインターネット回線につなぐことで検索した。
標的のフォード・ブロディ、そして軍曹。
フォードはテキサスの士官学校出身だった。
そこには、イラクで戦死したジョアンナ・アイアンズ軍曹がいた。
彼女は今度はジョアンナ・アイアンズ軍曹で検索をはじめようとした。
ジョアンナ・アイアンズ軍曹
生年月日 1972年 11月11日誕生
血液型 B型
出身地 テキサス
テキサス士官学校にて、白兵戦術の教官を務める
30歳で地雷を踏み、死亡
死亡。
彼女の頭の中にその言葉がメモリーとして強調されて残った。
そして、彼女はさらに画像検索をした。
ふと、その画像は彼女自身とよく似ていた。
彼女の体に激しい電気信号が走った。
彼女の体は激しく、振動し震えた。
一方、ガイガンはゴーグルグラスの目をさらに明るく光らせた。
ガイガン、彼はゴジラ細胞を動力源として作り出されたサイボーグ怪獣だった。
オスムートーの死骸を基にして作られた彼は、最初は自我がなく、ただパイロットの命令に従うだけの存在だった。
だが、研究者たちには誤算があった。
彼の動力源はゴジラ細胞だった、そしてゴジラのDNAを色濃く残す彼はゴジラのごとき、青白い熱線を吐く存在だった。
彼のゴジラ細胞はやがて、機械の回路、ムートーのDNAを侵食しあるものを生みだした。
「自我」である。
ガイガンは明確な自我を生み始めていた。
その自我はしだいに脳内の回路をネット回線に繋ぐことで、明確な答えが生まれた。
彼が生み出された理由は「秩序を保つこと」であった。
この世界に混沌を生み出す、「テロリスト」を倒すために彼は生まれた。
だが、彼はしだいにいきすぎた秩序が生み出すものも虐殺や反乱という混沌であるとわかった。
人間が人間を憎み、嫌い、蔑み殺すこと。
彼は人間そのものが、あるいは混沌の原因であると考えた。
やがて、彼は答えを出した。
混沌を生み出す存在は排除する。
もしも、テロリストや犯罪者を生み出すのが人間であるなら人間そのものがこの世界にとっての秩序を乱す存在でしかない。
彼のゴジラ細胞の中にある本能は「自分にとって邪魔者を排除する」というゴジラの本能だった。
今、その本能とプログラムのデータがある結論を生み出した結論はこうだった。
邪魔者であり、混沌を生み、歪んだ秩序を生み出し、この世界のバランスを乱すのは「人間」である。
そして、その「人間」を排除することで、パワーバランスを安定させ、自分が頂点捕食者となり世界の均等をとると・・・・。
そのためには、シンクレアやモナークを利用するのだと。
彼の頭の中にある最終プラグラムはこれだった。
「DESTROY ALL HUMANS〈全ての人間を殲滅せよ>」
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