ハイスクールD×D~舞い踊りし剣舞姫~
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第十三話
前書き
遅くなり申し訳ありません。
俺はエストの剣の峰の部分でヴぁーリの拳撃を何とかいなしていく。
「ヴァーリ、聞こえてんだろ!?もう止めろ!」
「え!?何で止めなきゃいけないの!?私の存在価値を決める戦いなんだよ!?止めれる訳ないじゃん!!」
くそっ!この世ならざるものに取り憑かれてる所為か、俺の話なんてこれっぽっちも聞いてもくれやしない!
─イッセー、もはや私を突き立ててこの世ならざるものをあの娘から追い出すしか─
確かにエストの言う通りの方法もあるだろう。しかし
「いや、それじゃヴァーリのこの感情……認められたいという感情は抑えられない」
そう、根本的な問題が残ってしまう。このまま放っておけばまたこの世ならざるものが出てきて取り憑いてしまうかもしれない。
そもそもこの世ならざるものは何処から来るのか?それすらも解明出来ていないのだ。
「だから……俺があいつを認めてやるんだ。その為には……あいつの、戦いで価値観を決めるという考えを止めさせないといけないんだ!」
俺は一旦下がってエストにこう言う。
「エスト、頼む。俺にやらせてくれ」
─イッセー……?まさか……!止めてください…!─
─イッセー止めなさい。あの力を使うつもりなんでしょうけど……─
エストどころかレスティアにまでそれを使う事を止めろと言われた。
「でも、まずはあいつに戦いの恐怖を教えてやらないといけない。じゃないと……あいつは堕ちる所まで堕ちてしまう。それだけは避けたいんだ……だから、頼む」
─………………─
─………………─
二人共、黙ってしまう。
「そんなに突っ立ってていいの、イッセー君!」
「くそっ!」
俺はヴァーリの振るってきた拳を何とか後ろに下がりながら受け止める。
「へぇ、でもこんなに防戦一方じゃ勝てないんじゃないかな?」
確かにヴァーリの言う通りだ。このままじゃジリ貧だ……!
─…………わかったわ─
─闇精霊…?何を言っているのかわかって─
エストがレスティアに文句を言おうとするが
─でも、このままじゃイッセーの思う通りジリ貧よ。だったら一か八か賭けるべきよ─
─……………………わかりました。イッセー、無茶はしないでくださいね?─
わかってるよ。エスト、レスティアごめんな。無理言って。
俺は掴んでいたヴァーリの拳を振り払うともう一度後退する。
その際に俺からエストとレスティアが出てきて自身の姿を顕現する。
「あれ?もう剣は使わないの?」
「ああ、ここからは俺自身が相手してやる」
ドライグ、行くぜ?
『相棒、制限時間は五分だ。どうせ、スリークォーターで行くんだろ?』
「わかってんじゃねぇか、相棒。行くぜ」
『ああ』
「禁手!」
そう言って俺は右手で時を刻む赤龍帝の時計を持ち、左手はそんな右手に添えるように構える。
すると、時計から光が漏れだしていき、それらが時計の形をしていき、俺を包み込んでいく。
「これがイッセー君の神器の禁手……!赤龍帝の新たな姿……!」
「その通りさ」
俺の姿は…‥先ほどまで着ていた服はなくなっており傍から見れば裸に見えるかもしれない。しかし俺は決して裸ではない。その身を赤い鎧のような物で被っているからだ。
そして俺の右手には特徴的な槍が握られている。
これが時を刻む赤龍帝の時計の禁手。
「赤龍帝の骸殻!!」
俺は槍を構えながらそう宣言する。
「凄いね、これがイッセー君の本気なんだ……だからこそ、越えるのに燃えるんだよ!」
『Divid!』
俺の力が半減されるがそんなのは関係ない。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』
半減された力を上回るほどの速度で倍加が進んでいく。
「ヴァーリ、この姿になった以上手加減は出来ない……覚悟を決めろ、お前の前にいるのは……赤龍帝・ドライグだ」
俺はそう宣言した直後、通常ではありえないスピードでヴァーリに近づいた。
「なっ!?」
ヴァーリが俺がいつの間にか近くまできていた事に驚いているのか驚愕した顔をしているのが慌てたような声でわかる。
「遅いぞ、ヴァーリ」
俺は槍でヴァーリを攻撃する。
その時
『Penetrate!』
そんあ音声が鳴り響く。
「があっ!?な、何で……何で鎧には攻撃が通ってないのに!?」
ヴァーリはうめき声をあげてそんな疑問を言う。
「言っただろう?俺は赤龍帝・ドライグだと……今の俺はドライグそのものだ。ドライグが神器に封じられる前に使っていた能力さえも扱える。今のは生前の能力である「透過」の能力で攻撃したんだ」
「とう、か……?」
「その通りだ。お前はドライグ自身を相手にしているに等しいって事だよ」
「あ、あ……」
ヴァーリはその場で尻もちをつく。おそらくは恐怖を感じているのだろう。
それもそうだ。俺は龍そのもの。しかしヴァーリは二天龍が封じ込められた神器を使っているだけの存在だ。
白龍皇の力を使えるだけじゃ今の俺には勝てない。
それを本能的に悟ったのだろう。
「ヴァーリ。多分今までお前は認められなかったんだと思う。でもな……これからもそうだとは限らないだろ?」
俺はヴァーリの近くまで膝をつけて……ヴァーリの体を抱きしめる。鎧ごしだからかヴァーリの体温などは伝わってこないが……それでも構わない。
「少なくとも……俺だけは、お前を認めてやる」
「あ……」
「世界がどれだけお前を認めなくとも……俺だけはお前を認めてやる。俺だけは……ずっとお前の味方でいてやる」
「い、イッセー君……」
「だから……もう、頑張らなくてもいいんだぞ?」
「……う…………うぅぅうぅぅ…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ヴァーリは鎧を解除して俺に思いっきり抱きつく。
俺はそれを確認すると……槍を手に持つ。
「ヴァーリ、今からお前の中に存在している黒い存在を取り出す。少しだけ痛いかもしれない」
「ぐすっ……黒い、存在……?」
「ああ、お前の中に存在しているそいつは取り憑いている人間に悪影響を与える。お前も感じた事はなかったか?」
「そういえば……最初は闘いが楽しいって思わなかったのに……」
やっぱり、この世ならざるものは取り憑いた人間の最も望む感情を増幅させる。
そしてその増幅させた感情を喰らってこの世ならざるものは力を手に入れていくのだ。
「だから、お前からその黒い存在を取り除く。今俺が使った透過の力を使ってな」
「うん、わかった。お願い……」
そう言ってヴァーリは両手を広げて何でも受け入れるといった体勢を取る。
「わかった。行くぞ、ドライグ」
『おう、アルビオン。待っていろ、今すぐそいつから切り離してやる』
『ドライグ、お願い!』
アルビオンの為にも……絶対に成功させる!
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
『Penetrate!』
俺が突き出した槍は……ヴァーリを貫く。
「あれ?痛くない」
しかし俺はヴァーリ自体を傷つけてはいない。
透過の力でヴァーリの体自体を透過して目的の存在だけを槍で貫いたのだ。
その目的の存在は……俺の槍の先に刺さっている。
黒い塊……この世ならざるものだ。
「ヴァーリ、こっちに来い!」
俺は槍をそのまま突き出すようにしたままさらにヴァーリの先に飛ばすように手放すとヴァーリをこちらに引き寄せる。
すると、槍が消えてこの世ならざるものだけがその場に残される。
「ヴァーリ、後ろに下がってろ」
俺は引き寄せたヴァーリを守るように後ろに控えさせる。
「わ、わかった……」
ヴァーリを下がらせると……この世ならざるものはその黒い塊から姿をウネウネと変えていく。
そして……その姿は、白龍皇の鎧そのものだった。
「わ、私と同じ姿……?」
『どうせ誰も認めてもらえないよ?』
目の前の鎧姿のこの世ならざるものはそう言った。
『この世にあなたを認める存在なんていない。あなたは必要ない存在なんだよ』
「私は、必要ない存在……」
ヴァーリはそれを復唱する。
『そうだよ。君は必要ない存在……だから……私が、貴女になってあげるよ!』
この世ならざるものは黒い翼を広げて俺たちに襲いかかってくる。
「させるかっ!」
俺は玄室から取り出した刀で応戦する。
『何でこんな奴を庇うの?あなたにこんな奴を庇う理由なんかない。いなくなっても誰も悲しまない。だから、私に入れ替わってても誰も気づかない。そんな存在なんだよ。その娘は!』
「それは違う!ヴァーリは必要だから生まれてきたんだ!この世に必要ない存在なんかいやしない!!」
俺は両手で握っていた刀から左手だけを離してこの世ならざるものの顔面を殴りつける。
『痛いなぁ!!君はなぜそんなにも邪魔するのかな!?兵藤一誠!』
「お前らが邪魔者だからだよ!」
俺は刀で、この世ならざるものは拳で闘い合う。
『相棒、急げ!もう時間がない!』
「そうだな!さっさと決めてヴァーリの誤解を解いておかないとな!」
俺は一旦下がる。
両手を広げると……俺の背後に五つの光の塊が現れる。
「これで決める!ふっ!はっ!やっ!せい!」
俺が殴りつけるように拳を振るうとその光の塊がこの世ならざるものに向かって突っ込んでいく。
『そんなもの!』
この世ならざるものはそれらを悉く避けるが……んなもんは計算尽くなんだよ!
「おりゃあ!」
俺は最後の光の塊を投げつけると槍を顕現させる。
そしてその光の塊に自身の姿が重なるようにこの世ならざるものに向かっていく。
『だから効かな、何っ!?』
「驕りがお前の敗因だったな!これで、終わりだ!」
これぞ、相手の虚をつく俺の奥義……!
「一騎当千!スパイラル・スピア・グングニル!!」
俺の槍は、回転を加えて………………この世ならざるものを貫いていた。
『私だってね……誰かに認めてもらいたいんだよ。誰も認めてくれない……』
と、この世ならざるものは独り言を言い始めた。
『誰かに、認めてもらいたかったのに…………』
それが、この世ならざるものの言葉だったのか、ヴァーリの心に潜んでいる時に得たヴァーリの心の言葉なのかはわからない。
だから、俺には何を言えばいいのかわからない。
でも、この言葉だけは送ってやる。
「いいさ。それでも、もう休んでも……いいと、思うぞ」
『休む、か……そんな発想、なかったな……』
そうして、この世ならざるものは消え去った。
それと同時に禁手が解除される。
「ヴァーリ」
俺は千切れそうな意識を何とか繋いぐ。
まだ、ヴァーリに必要な事を言っていない……!
「俺だけは絶対に離れない……お前を見捨てない。だから頼む、泣くんじゃねぇぞ……」
「え……?」
ヴァーリは今気づいたように頬に手を添える。
そこには、雫があった。そう、ヴァーリは泣いているのだ。
「わ、私、泣いて……」
俺は意識を無くさないように歯を噛み締めながら何とかヴァーリの近くまでやってくる。
そしてその雫を右手ですくってやる。
「あ……」
「お前には、笑顔が似合う」
俺はそこまで言ってついに限界がきて……意識を、手放してしまった。
後書き
あっはっは!遅くなっちゃった!
すいませんでした!
次回で四巻の内容は終わりとなります!
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