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『自分:第1章』

作者:零那
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『別居』

昼は、ただ働き同然。
夜はセクキャバ。
閉店後は個人援助。
夜中迄働いた。
勿論、娘は旦那が寝かしつける。
当時の零那には、他に生活費を稼げる方法が無かった。
切羽詰まってた。


色んなリスクを背負った。
それでも、稼げる方へ靡いた...
其れが正しいとさえ思ってた。
娘との生活を守る為なら、自分が犠牲になることなんか何でも無かった。
辛いなんか思わんかった。
大事な仲間や友達を守る為に散々酷いこともしてきた。
自分も養父をはじめ色んな人から酷いこともされてきてる。
今更、自分が少しくらい痛い想いしたって何とも無い。
零那は強い筈やから。
弱くは無い筈やから。


暫くそんな生活。
旦那は理解してた。
だからこそ兄貴を許せんって言って仕事辞めた。
零那のせいで。
だから、毎日毎日ずーっとゲームとにらめっこしてても、一方的に責めれんくて言葉に詰まった。

そのうち、友達と一緒に県外の料理屋に修行しに行くって言ってきた。
寮に入るから当面の生活費として支度金くれって。
行く日が決まってたから、それ迄、頑張って体張って稼いだ。

高校卒業してすぐ父親になった旦那。
良い機会やから社会勉強として見送った。
両親も知ってた。


旦那が居らんなってからは、夜は姑が娘を見てくれてた。
0時迄。
姑が休みの前の日は、朝迄、泊まってた。
いつも寝顔の娘を抱えて連れて帰るのは...後ろめたさとか後悔とか、正直けっこう在った。

それでも仕方無い。
やれることはやった。
その上で、自分には風俗しか無かったんやから。
諦めるしか無い。
それに、借金塗れで大変で風俗で稼ぎたくても雇ってもらえんかった子も知ってる。
だったら雇って貰えてる自分はまだ恵まれてた。
リピーターのお客さんにも恵まれてる。
目線を変えれば世界は変わる。

現在の風俗と違って、当時は体型や顔もサービス技術も礼儀も全部が大事やった。
肥満体型、不細工、年寄り、SM...とかの専門はごく僅かだった時代やったから。
地域の中で高級店を選択してたから尚更求められるモノも大きかった。

それでも、所詮は田舎。
けつもちの組が店で違反行為しよんやけん、ろくなモンじゃない。
質の悪いヤクザはホンマ好かん。
そのくせヤクザに好かれてしまうってゆう悪循環。
下っ端に好かれても面倒臭いだけなんやけど。


旦那からは、たまに連絡が入る程度。
料理屋の修行なんやから大変やろうし、零那からもそんなにメールして無かった。


とりあえず、ヤクザ絡みで揉め事起こすのは勘弁やったから、何とか上手いこと交わしたり乗ったりしながら...

バカやのに偉そうで、勘違いのプライドだけ高い下っ端はタチ悪いけん扱いが怖かった。

幹部知っとるけん揉めても零那が筋通しときゃ問題無いけど、狭い街やし田舎やし噂って怖いし...もし、この先、娘の迷惑になるようなことが起こっても取り返しつかんからな。


そんなことを考えてた矢先に旦那から電話があった。
おまえ誰々と知り合いだろ!今すぐ携帯拒否して二度と会うな!って。
ここら地域じゃ中学の頃から喧嘩強くて有名な奴だったらしい。
そんなん言われても零那は此処が地元なワケちゃうし知らん。
狭い街ってすぐどっからともなく情報ダダ漏れやから怖い...。
しかも祭り好き地域やから職種や年齢問わず、関係性が抜群に広くて強い。
出身校とフルネーム言えば絶対に誰かが情報くれるレベル。
仮に出身校解らんくても地区か年齢言えば辿り着く。
今改めて考えると怖い...



旦那は、零那の性格を良く知ってる。
歪んでるのも知ってる。
ただ、旦那は純粋で無知。
だから、零那を理解はして無い。
ただ、知ってるだけ。

誰かの指示通りに素直に従う性格では無いんです。
悪いけど、拒否する方が拗れるのは目に見えてるから。
関わりを断つタイミングも自分が決める。


旦那の仕事は意外と順調らしい。
月々送ったりはしてるけど、社会勉強してくれてるなら意味はあるから。
てか、仕事辞めたんは零那のせいやし...。

それでも、料理が大好きな旦那には向いてると思った。
一生懸命してるから上司にも気に入られてるみたいやし。
元来、何処行っても上司に気に入られるタイプで、世渡り上手な性格でもある。
そのまま、料理の道で成功する事を望んだ。

 
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