ソードアート・オンライン ~白夜の満月~
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弐:未踏の地
前書き
人物紹介は、おそらくSAO編完結してから公開となります。ネタバレ入ってたりするので(笑)因みに、モーントリヒトは全て《モーントリヒト》の様に表示しております。また、その話で登場一回目のキャラクターも最初は《》が付きます。
《未踏の地》。探検家なら誰もが心動かされるその響き。今回、《モーントリヒト》のリーダーである少年《ルーナ》が提案したのはそんな《未踏の地》に足を運ぼうという物だった。
「んで、具体的にはどの辺にあんだよ?」
「ああ、何でも53層くらいにあるらしいぜ。凄い強いボスが邪魔しててその先に行けた奴はいないらしいんだが、まぁ俺等なら余裕だろ」
青年《タツキ》の問いかけに、ルーナはさらっと答える。喧嘩番長的ポジションなタツキは、《強い奴》という単語にピンポイントに反応しつつ、ルーナの説明に納得して頷く。
「でも、私あんまりお力添え出来ませんよー?」
茶葉を入れた湯飲みにポットからお湯を注ぎつつ、そう問うのは《ユナ》。《女神》の異名を欲しいがままにする彼女だが、《モーントリヒト》内での戦闘が一番苦手だ。その理由は、役割が《鍛冶》《裁縫》《料理》と戦闘に特化しないからだろう。
「ばーか、んなもん気にすんなって。別に戦闘出来ない奴は付いてくるなー、なんて言わねぇよ」
ルーナはそんなユナの頭をぐりぐりと撫で回すと、にかっと笑う。つられるように笑うユナの頬は心なしか少し赤い。
「じゃあ、今回は《未踏の地》に行ってその場を拝むのが目的って事でっ!······クロ君、シュラちゃん、反対意見とかあるかな?」
要点を纏め、簡潔に説明しつつ反対意見を問うのは《モーントリヒト》のサブリーダー《マリ》。
「僕は特に······えっと、シュラーフさんは······って、寝てますね」
「······zzzzzz」
特に意見はないと言った少年は《クロ》。いつもの事ながらに、髪が目を覆い隠している為表情までは読み取れないが、口許は苦笑いしている。クロの視線には、既に爆睡中の少女《シュラーフ》が写る。暇さえあれば眠りこける彼女にとって、今の会議は退屈だったらしい。
「······反対意見無しって事で、んじゃあ早速行くか!」
無理矢理満員一致という事にし、ルーナは支度を始める。ついでにシュラーフも起こし、準備をさせる。全員の準備が終わるや否や、ギルドホームの扉を開け放つ。
「っしゃあ、気合い入れて行くぞッ!!!」
「「おおッ!!」」
出発前の挨拶はタツキが行うのが恒例となっている。彼の力強い掛け声がメンバー全員の士気を上げるらしい。
「楽しみだ······どんな場所が待ってんのかなぁっ!」
両手を広げ、軽い足取りで歩くルーナの表情は、誰から見ても楽しんでいると分かる。しかし、未踏の地には危険が付き物だ。彼等もそれを自覚している筈だったのだが――――
* * * * *
「おいおいおいおいおいぃぃぃっ!?!?!?」
疑問の叫びを上げるのはルーナ。まだ見ぬ《未踏の地》を求めてアインクラッド第53層に足を運び、難なく問題のボス部屋に辿り着き、乗り込んではみたのだが――――
「ふっざけんなよっ、硬ぇし速ぇしっ、茅場の野郎頭イッてんだろッ······!!」
愚痴のついでに開発者の暴言を吐くタツキの顔には、焦りと怒りが浮かんでいる。未だ誰も倒せた事のないボスモンスターと言うだけあって、やはり一筋縄ではいかないようだ。
先ず、防御力が異常に高い。玄武の物とおぼしき甲羅をつけているからか、攻撃は通らなければ弾かれるばかり。これでは精神的な問題で挫折する者が後を絶たないだろう。
そして、速い。目視でギリギリ確認出来るくらいのスピードでの移動は、かなり面倒だ。移動回数自体はそこまで多くはないのが救いだが、面倒は面倒。
「あぁめんどくせぇっ、さっさとくたばれよこの亀野郎ッ!!」
ルーナも愚痴を溢しつつ片手直剣で応戦する。移動速度からか、直撃よりかする割合の方が高い。
「そろそろっ、寝といてくれませんかねぇっ······!!」
短剣で応戦するクロもしんどいと言った様な表情だ。リーチの問題上、攻撃を通しにくいクロにとってこのボスモンスターはかなり辛いだろう。
「うえぇっ、気持ち悪いよこいつっ······」
泣きながら細剣で戦うユナは、迫ってくる触手を斬り落としている。もともとスライムを見るだけでも泣き出す程ぬめっとした物が苦手なユナは、触手もお気に召さなかったらしい。
「マリ、危ねぇぞっ!!」
「うわっ、ありがとう、タツキ君ッ···!!」
エストックによる突攻撃で相手を怯ませていたためか、周囲の警戒を怠っていたマリに迫った触手をタツキの大剣がねじ伏せる。
「帰って寝たい······」
無関係極まりない発言をしつつも、曲刀で腹部に斬激を浴びせるのはシュラーフ。ボスよりも睡眠を考える余裕がある辺り、彼女が一番強いのかもしれない。
「ラスト一本······しんどいかもしれないけど、攻めて叩き潰すぞッ!!!」
直剣を頭上に掲げて声を上げ、同時に疾走するルーナにタツキとマリが続く。ラスト一本であってもヘタをすれば小1時間はかかるであろうボスだ、油断は出来ない。
「おおおぉぉぉっ!!!」
威勢の良い叫びを上げ、ルーナが移動開始寸前のボスに一撃を浴びせる。直後に移動を開始するボスに、一つの影が飛び込む。その人物は――――
「――――シュラーフ!?」
シュラーフだ。一番やる気を見せていなかった彼女が、ここに来て本領を発揮する気になったのだろうか。猛スピードで移動するボスを的確に捉え、曲刀で足を切断する。足を一つ失ったボスは体制を崩し、転倒して足掻くように揺れる。
「今······チャンスっ······!!」
シュラーフが小さい声で叫ぶ。普段滅多にする事のないシュラーフのそれに彼等はポカンとするが、直ぐにハッとなって駆け出す。
「止めは俺が貰ったあぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
銅色の大剣に紅のエフェクトを迸らせ、タツキがボスに肉薄する。両手剣3連撃スキル《ロー・アグレイト》。クロス斬りから縦に降り下ろされる斬激が、上手くボスの頭部を捉える。
「ビンゴっ、皆!!弱点は頭部だ!!頭部を攻めろおぉッ!!」
タツキは己の攻撃で弱点を見出だし、弱点を叫んで伝える。それが分かれば怖くないと言った様子で、全員の攻撃が頭部に集中する。
紅、蒼、黄、緑、紫······カラフルなエフェクトで包まれた剣が、頭部に叩き込まれる。
「ぐるおららああぁぁ!!!!」
ボスは叫び、回転と同時に起き上がる。全員が吹き飛ばされ宙を舞う中、ルーナが空中で体制を立て直す。
「止めだ······ぜりゃあぁッ!」
ルーナが壁を蹴り、ボスに突撃する。鈍い音と共に、ルーナの片手直剣がボスの頭部に突き刺さる。
暫しの沈黙と共、直後ボスは爆散。静寂は直ぐに終わり、6人の小さな歓喜の叫びがボス部屋を埋め尽くす。
「さ、ゆっくりはしてらんねぇな······さっさと《未踏の地》を拝んで、打ち上げするぞ!」
喜べる時間も長い訳ではなく、全員でボス部屋内部の奥にある扉に歩き出す。その先にどんな光景が待っているのか――――
* * * * *
夕焼けの空が、その場を埋め尽くしていた。声一つ出せない程、美しい景色だ。無限に広がるラベンダーの花畑、奥にはオアシスの様に壮大な湖が見える。湖に映し出された夕焼けが、照り変えってこちらを照らす。
「こりゃあ······絶句せざるを得ないよな······」
長く厳しいボス戦の疲れなど吹っ飛ぶ様な景色、言葉ではとても言い表せないだろう。そんな《未踏の地》の景色を求めて、《モーントリヒト》はこの世界を生きている――――
後書き
イラストの件ですが、前回言っていた通り描いてくださる方はメッセージ下さい。容姿とかの設定はメッセージで送りますので。では。
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