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寄生捕喰者とツインテール

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青の登場と状況悪化

 
前書き
○主人公のプロフィール

新垣(にいがき) 瀧馬(たつま)

性別:男

年齢:15歳

誕生日:9月19日

身長:189㎝

体重:87kg


・見た目に反して意外と小食な、陽月学園に通う少年。
 意外と真面目な所があるが、基本は気分で早退したりとそれなりに不良じみた性格。筋肉も年相応以上につき、所見ではまず怖がられる事必死だが、本人の気性はそこまで荒くない。
 漫画やアニメを暇つぶしとして読んで見て、学校も単位が取れるほどには通い、それとなく日常を過ごして来た彼だったが、異世界からの来訪者“ラース”との出会いにより、その後の運命を大きく変えていくことになる。

 

 
「何が起きた……? どうなっちまった俺は……?」



 ガックリと湖岸近くで膝を突き、まだ諦めきれないか湖面を見つめ続けている瀧馬。しかし待てども眼をこすれども、見えるのは左手と右足が紫色の異質な形状を持ち、そして顔を見たから分かったが、左目が白目と黒目が逆転して、その回りが黒紫色で青白く太い血管浮かび上がっている、異形のモンスター娘の姿を映すのみだった。

 モンスター部分を差し引かずとも結構可愛く、寧ろモンスター部分があるからこそ魅力が増しているようにも思える。

 背は目算だが元の彼よりも三十センチ以上は縮んでおり、女となったうえ背が低くなったからかそれ相応の声の高さになってもいる。


 まだ悪足掻きが足りないのか頭を打ち付けたりするものの、それは地面が砕けたりめくれるだけで彼の望む変化を起こしてはくれない。


 まだ項垂れる瀧馬へと、ラースが以外にも申し訳なさそうに話しかけてきた。



相棒(バディ)ヨォ、そんな姿になっちまったノハ、多分俺が取り込んだ機器の所為だと睨んデル。つまりアルティメギルの奴等が造った代物の所為だと思ウゼ』

「……というと?」



 もう泣きそうになっているその様相は結構可愛く、ラースも場の雰囲気を忘れて茶化しそうになったがどうにかこらえる。
 代わりに、瀧馬の質問へ答えた。



『恐らくだガナ、あいつ等が持っていた機器はツインテール属性を世界中に広める為ノ、云わば偶像作成の為に必要な代物なんじゃないかと思ウ。具体的に言うナラ、万が一ツインテール属性が著しく少ない場合に備エ、自分達に対抗できる物をあえて渡すことにヨリ、ヒーローを生みだしその活躍でツインテール属性が増えた上がった時を見て狩ル―――ってのに使う為のだと思ウガ……』

「つまり……ツインテールにした少女のヒ―ロを作り出させて、その憧れからツインテールにする女性を増やして属性力をかっさらっていく訳か?」

『そういうこっタナ……本来なら相棒ハ、俺の元の姿と似た意匠の鎧に包まれる筈だったんダガ……大きな力を持っているが故ニ、機器の力が影響してそんな事になっちまっタ……ト、いう事じゃあないカネ』



 前にも言ったがラース達単純感情種のエレメリアンやそれに類する属性力を除けば、ツインテール属性は正に最強の属性力を持っている。だからこそ力が弱まったラースにもろ影響し、ツインテールのモンスター娘が生まれてしまったのだろう。



『後ハ、ごくごく単純に奴らの趣味だってこともあルカ。むさい男や自分達みたいな化け物よリモ、どうせ戦うなら少女に幼女の方がいいって事ダナ』

「……ああ、マジで変態じゃねぇか……アルティメギルは」

『だから言ったろーがイヨ』



 もしやテイルレッドも……? と瀧馬を思い至るが、彼女がそれを使っているのかどうかは分からないし、何よりテイルレッドが現れたのは本格的に宣戦布告される前の、しかも何の前情報もない初戦と言ってもいい時点。
 男では到底あり得ない程の泣き虫でもあるし、状況的に見てそうではない可能性の方が高い。



(……ああやってすぐ泣きだすなら、やはり年齢と性別が相応の奴が変身していると見るべきか)



 それでも絶対とは言い切れない辺りが不安だが、今はテイルレッドより自分の身だと瀧馬は思い返し、一先ずは立ち上がって再びラースへ話しかける。



「すまん、今日の所は試しに動いて終了でいいか……? 心に意外と傷をおったみたいだ……」

『……ア、あぁいイゼ、相棒。そんな沈みに沈んだ状態で出て行っテモ、負けずとも勝てないシナ』

「……すまん」



 単なるヒーローごっこでは当然無く、何かを救う為にただ変身して駆けまわる存在でも無く、本人自身の命が冗談抜きでかかっている以上、半端な状態で出撃しては力を消費するだけ。

 ならもう一日だけ置いてからにしようと、瀧馬とラースの意見は一致し、てきとうに動いて今日は帰る事にしたようだ。


 右よりも一回りは大きな左腕を振り回し、サイズそのものはさして変わらずとも装備の影響でゴツくみえる右足を振り抜き、人智を超えた身体能力で地上を、空中を駆けまわる。

 流石に力を試すという名目だけで自然破壊はしたくなかったか、体術はから打ちするのみに止めていた。

 と、沈んでいるとは思えない程かなり激しく動き回っていた矢先、瀧馬は不意にピタッと動きを止める。



(そういえば……テイルレッドは剣を使っていたが、俺にも武器はあるのか?)



 この事ばかりはラースに聞いた方がよいであろうが、心の傷はそこそこ深いのか聞く気になれず、再びわき上がってきたある種の恐怖を打ち消すように、瀧馬は再び動きまわり始めた。















 一方ニュース等で知らされる世間でのテイルレッド事情だが、此方にも変化が起きていた。

 ……尤も、瀧馬自身はテレビを見る気はなかったのに、朝方寝ぼけて瀧馬がリモコンを落下させた勢いでテレビが付き、偶々電源が入った時に移っていたのがそのニュースであっただけなのだが、そこはひとまず置いておく。


《本日、テイルレッドVSアルティメギルとの対戦で、“テイルブルー”と名乗る第二の戦士が現れました……が、やはりまだ味方か敵かは判別できないと?》
《はい、まだ決めるには早計でしょう。“ツインテイルズ”というチーム名を教えたりレッドを救ったり、味方関係を仄めかすような発言もしてはいました。しかし、彼女は笑っている様に見えても酷く暴力的な目をしており、その色濃く隠し切れていないのです。しかも人形とはいえ仲間を模した物を躊躇い無くぶった切る……見ようによっては蛮族でもあるでしょうね》
《確かに……この映像のテイルレッドとは大違いです》

《うわーん!! やめてぇー!?》

《本当に違いますよ、それにしても―――やっぱりレッドたんは可愛いなぁ、うひひ》



 次にテイルレッドの泣き顔が映ると同時、テレビで映してはいけない顔と大御所とも呼ばれる人が容易にしてはいけない顔が映ったかに思えたが、それを詳しく確認する前に場面はテイルブルーの戦闘シーンに切り替わる……とはいっても、せいぜい数秒だったのだが。


 しかしながら、瀧馬的に言ってみればブルーは称賛できる存在だった。



 テイルレッドはツインテールは破壊できないがどうのこうのと言う理由で右往左往し、なら顔でも腕でもぶった切ればいいのに、態々大人しく敵の精神攻撃を受けて苦しんで膝を突き始めると言う、初めから何をやりたかったのか分からない行動を取っていたのに対し、テイルブルーは躊躇もせず仲間を模した人形を切り落とすという行動こそしたものの、流れる様に武器を構えて敵を拘束、一撃を叩き込んで見事倒して見せたのだ。

 迷いなど一切ないその行動は、中々如何してスッキリする物でもあったのだ。



「暴力的眼だってのは、まあ同意できるが……だからって此処まで扱き下ろさなくてもいいだろうに」

『“可愛いは正義”ってやつなんだろうよきット。効率とか戦いに必要な物トカ、相手が変態であるとか如何でもよクテ、ただただテイルレッドが愛らしけりゃいいんダロ』

「……いよいよ破滅レベルまで来たか……」



 テイルブルーの眼はテレビ越しでもそれとなく感じる程に暴力的な目はしていたが、だからといってそれだけで味方では無いと判断する方がよほど早計ではなかろうか。現に彼女はテイルレッドが何故だか苦悶していた所に颯爽と現れ、助け出して敵を撃ち倒して見せたのだから。

 ……しかしながら同時に、テレビ越しでも暴力的と感じてしまう雰囲気を持つ者に、地球の文明をも超えたオーバーテクノロジーを与えてよいのだろうかと、やはり考えてしまうのも必然ではあった。


 それに、笑っていたという事はもしかするとテレビで絶賛される事を想像していたのかもしれない。だとすると、ブルーに変身していた者は今頃怒るか戸惑うかしているのだろうか。



「ヒーローもヒーローで大変なものだな」

『人の事言っている場合じゃアないぜ相棒。今日から俺らもエレメリアンを倒シニ……いや狩りに行くんだかラナ!』

「重々承知してるっての……」

『何度も言うがそこまで必死に摂取しなくてもすぐに死にはしネェ。けど弱る時は急速に弱ってくから結局は毎日でも喰い続けるしかないかラナ』

「了解だ」



 それだけ答えて瀧馬はあえて無視し続けていたテレビの電源を切ってから、制服に着替えてサンドイッチをニ個ほど口に詰め込んでお茶を飲んだ……ところで、瀧馬はとある違和感を感じる。



「オイ、腹が余計に空いてきたんだが」

『辺りめーダ、変身前が普通の高校生で変身後がキモ可愛いモンスター娘だとはイエ、相棒は構造が人知の範疇を超えた化け物になったんダゼ? そりゃ属性力だけじゃなく相棒自身の体維持の為に有機物も仰山必要となルサ』

「これまであまり金を使わなくてよかった……」



 瀧馬はアニメこそ見ているがソレ関係のグッズを殆ど買っておらず、本屋には迷惑な事甚だしいだろうが立ち読みで済ませている為余り本も買わず、親の職業の都合もあってそれこそ貯金はかなり溜まっているのだ。
 喰い物……いや、食い物を買うのに困る事は無いだろうと思われる。



 早速とばかりにコンビニへ寄って、買い占めんばかりにごっそりと大量のサンドイッチを買い込み、膨大な量で山と積まれたサンドイッチに唖然とする店員や客をしり目に、外に出てからクラブハウスサンドと卵サンドの包装を同時に解いて、頬張りながら通学路を行く。


 同じく唖然としながら瀧馬の食事と歩行の同時進行を見やる生徒達を無視し、次のサンドイッチへと彼が手を付けた時、聴力もよくなっているのか、ふと奇妙な会話が彼の耳に入ってきた。 



「あのさぁ……ブレイクレリーズとかオーラピラーって叫ぶ必要あるの……?」
「出来るだけヒーローっぽくしたいし、精神を高ぶらせるなら言った方がいいだろ。それにこれ以上愛玩動物扱いも御免だし……」
「まあ、心を力に変えるのがテイルギアだし、意識の収束は必要だけどさ……」



 こそこそと話しているその会話は、まるで自分達がヒーローか何かである様なもので、一体何をしているんだ高校生にもなってまだ中二病を引きずっているのかと、会話している人物達へと目を向ける。

 そこにいたのは……ツインテール好きにも拘らずテイルレッドは余り好かないらしい観束と、彼の幼馴染であるらしいツインテールな少女の津辺(瀧馬は後で名字を知った)であった。

 ペアルックなのか、昨日までは無かった色違いのブレスレットをしている。


 流石に校則違反だろうと、朝っぱらの登校開始時点から早退を視野に入れて居る人物に言われたくない様な事を瀧馬が考えた時……ラースが不意に驚いた声を上げた。



『オイオイオイ! マジかいマジなのカイ!!』

「……何だいきなり……?」



 ラースの声は周りに聞こえないが瀧馬の声は例えラースへ話しかけているものだとしてもばっちり周りに聞こえる為、傍から見れば中二病とか人の事が言えないのだろうなと思いながらも、音量を落としてラースに問う。



『アイツら凄んいぐらいのツインテール属性をもってルゼ! クソったれな程美味そウダ!』

「……オイ」

『わーってるよ相棒。というか動けないから食えなイシ』

「……はぁ」




 溜息を吐きながらも、瀧馬は彼等が中二病であるという事以外に、もう一つだけ可能性を思い浮かべていた。

 わざわざ隠すように内緒話をするのなら、通学路では無く家で堂々と話せばいいだけ。ならば何故に彼等はこんな所であんな話をしていたのか?

 そして愛玩動物扱いと観束は言っていたが……それを言うならテイルレッドが愛玩動物扱いなのではなかろうか?


 まさか、彼等は―――――



(考え過ぎか、突拍子もなさすぎる)



 瀧馬がそう考えていると、観束と津辺に気付かれない様にコソコソと、透き通った銀色という現代日本はおろか外国でもいるかどうかが分からない、しかし染色したとは感じられない髪色のロングヘアを持つ、白衣に様でいてコートの様でもある服を羽負った少女が、彼らの背後へ近寄って行く。



「……何だあいつ?」

『変人じゃあねェノ?』

「それには同意だが……」



 そして、巻き込まれない為にと念を入れて少し離れた矢先。



「ぐぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ―――――――――」

『オオ、ホームラン級ダゼ』



 ドゴガッ! という何処か爽快感漂う効果音の後、悲鳴を上げて残響の尾を引きながら、銀髪の少女は遥か彼方へ飛ばされていった。

 見ると津辺は脚を振り上げており、蹴飛ばしたのであろう事が窺える。



「おはようございます!」

「んっ!?」



 いきなり後ろから声を掛けられ、振り向いてみるとメイドは少し離れた位置にいるが他は誰も居ない……否、目線を傾けて下方向に居たのに瀧馬は気が付く。

 陽月学園の生徒会長が居たのだ。



「あ……おはようございます……」

「はい! 今日も一日がんばって行きましょう!」

「……」



 何故自分に挨拶をしたのだと思いながらもつい返してしまった瀧馬だったが、続いて観束や津辺にも挨拶をした辺り、出会う生徒たちすべてに声をかけているのだろう。

 名も知らぬ生徒ですらあいさつを欠かさない、それは生徒会長の鑑とでも言うべきであろうか。

 会長はその後観束達を少し会話を交わし、いきなり観束へと顔を近づけて意味深な笑いを見せ、そのままメイド達に囲まれながら去って行った。

 ギリギリで聞こえない位置にいた為に何を話していたかは分からないが、観束と津辺はとても嬉しそうにしており、小走りで校門へ向かっていく。


 そして校門前ギリギリで急にストップした。


 何があったのかと瀧馬も校門に近付くと―――――




「あ、ああ!! 今微笑みかけてくれたぞ!! テイルレッドが俺に! 俺ニィ!!」
「ふふふ、まだまだ甘いなお前……」
「何っ!?」
「俺なんかなぁ……自分のトランクスにテイルレッドを転写したんだぜ!! もう四六時中一緒じゃないと気が落ち着かないぜっ!」
「なんとぉ!!」

「貴様ぁ! 最初にファンクラブを作ったのは俺だ! だから会員第一号も俺なんだよ!!」
「何を言うか! 俺がテイルレッドを世界一、いや宇宙一愛している! 故に第一号は私だ!!」



 正に魔窟とも言える状況がそこのに生まれていた。前にも言ったが、これでもまだ正気な方であり、最悪な所では……



「うん、うん、それじゃあ放課後にスイーツパーラーね。わかってる、愛してるよテイルレッドたん」



 内容は兎も角一見普通に携帯へ話しているように見えるこの台詞。これが何処にもつながっていない携帯電話へ向かって話していると、一体誰が想像できるだろうか。……単純に恐ろしくなってくる。

 こんなのが高校の登校時の日常風景だと知ったなら、常識人はひっくり返るのではなかろうか。



(……今日も昼で帰っちまおうかな……)



 己の正気の方を疑いはじめそうな光景を前に、瀧馬は立ち止まって無表情になるのと同時、一応数少ない常識人に入る観束と津辺が立ち止まった理由を察し、コレは流石にしょうがないとも思った。


 すると、同じく呆然としている様子から同志だと勘づいたか、観束が瀧馬へ近寄ってくる。



「なあ、これを見て、どう思う……?」
「いや……普通にどころか、異常に気持ち悪いと思―――」
「ううっ、まともな人がここに居てくれたよぉ……ううぅ」
「良かったわね、そーじ」
「……」



 何故だか泣き出し始めた観束を見て少し申し訳ない気持ちになった瀧馬は、取りあえず昼で変えるのは止めておこうかと考えるのだった。


 
 

 
後書き
 アルティメギル(又の名を超が付く変態)とのバトルシーンはもう少しお待ちください。 
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