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第二章


第二章

「わかりました。占い師の」
「そうです。見たところ貴女は」
 次に優子の顔をその右目で覗くように見てきた。女の子としては長身の優子よりもまだ頭一つ高い。それにとても整った穏やかな顔をしていた。
「一つ災厄に襲われようとしています」
「災厄ですか?」
「そうです。災厄です」
 こう優子に述べるのだった。
「それも貴女ではなく」
「私ではなく、ですか」
「その通りです。貴女を以前襲った不幸」
「不幸・・・・・・まさか」
 以前襲った不幸と聞いてであった。優子の顔が一気に曇ったのだ。
「それって」
「それは貴女が最も御存知だと思いますが」
「はい」
 その曇った顔で頷く優子だった。
「わかります。それは」
「そうですね。これがその証拠です」
 速水は言いながらコートの中ポケットに右手を入れそこから何かを出してきた。見ればそれは一枚のカードであった。優子はそのカードに描かれている絵柄を見て言った。
「タロットですか」
「私の占いはこれです」
 速水はまた彼女に述べたのだった。
「タロットでして」
「そうですか。そしてそれは」
「今は極めて危険です」
 見ればそのカードは塔だった。タロットカードの中で最悪のカードといわれている。バベルの塔のことと言われ破滅を意味する非常に厄介なカードである。
「そして」
「そして?」
「もう一枚ですが」
 言いながらまたカードを出してきた。今度は髑髏が描かれている。大鎌を持ち不吉なものをそこから漂わせているように見えた。
「おわかりですね」
「・・・・・・死ですか」
「このままでは貴女にとって最悪の不幸が訪れます」
「不幸・・・・・・」
「それが運命です」
 速水はここであえて運命という言葉を出したかのようだった。
「貴女を待つこれからの運命です」
「そんな、それじゃあ」
「運命からは逃げられません」
 速水の言葉が厳然たるものになった。
「決して」
「そんな。じゃあ走輔は」
 つい彼の名前を出してしまった。彼のことであるのは最早言うまでもなかった。
「走輔は・・・・・・」
「運命です」
 速水の言葉は厳然なままであった。
「これがです」
「私、そんなの認めません」
 運命と言われてもだった。それは彼女にとっては到底受け入れられないことであった。だからこう言うのも彼女にとっては当然のことだった。
「絶対に」
「絶対にですね」
「お父さんとお母さんもいなくなって」
 泣きそうな顔になっていた。
「それで今度は走輔までなんて。絶対に」
「それが貴女のお考えなのですね」
「そうです」
 優子は泣きそうな顔をしていてもそれでも毅然として言葉を出した。
「絶対に。それは」
「その言葉に偽りはありませんね」
 ここで速水の言葉が変わってきた。
「それで」
「はい、そうです」
 これまでよりも強い言葉であった。
 
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