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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十一話 生粋のトラキチその六

「そうしていましょう」
「そうだね、それじゃあね」
「二回表がはじまるわよ」
「一回ずつ抑えていって」
「その裏の攻めでね」
 どうするかだった、本当に。
「点を取ればいいわね」
「そうだね」
 こうした話をしながら試合を観続けた、イニングは進むけれど。
 どちらも点が入らない、零対零のままだった。
 試合は進み遂に七回になった、ここでだった。
 風船が飛んだ、ジューンさんはそれを観てから言った。
「これがそノ」
「はい、風船です」
 それだとだ、千歳さんがジューンさんに答えた。
「甲子園名物の一つの」
「中々壮観だネ」
「何万もの人が一度にあげますからね」
「一個や二個だとそんなにじゃないけれド」
「何万ですから」
 それだけの数の風船が一度に上げられるからだ。
「凄いんです」
「数はいいよネ」
 こうも言うジューンさんだった。
「一個や二個だけじゃなくてネ」
「これだけあればですね」
「数があれば凄くなるヨ」
 明るい笑顔での言葉だった。
「アメリカでもそうだけれどネ、じゃあ」
「それじゃあ?」
「今度ここに来たらネ」
 甲子園、ここに来た時にというのだ。
「ワタシも風船上げるヨ」
「じゃあ僕もね」
 僕もここでこう言った。
「風船上げるよ」
「うむ、私も忘れてしまっていた」
 留美さんは自分の迂闊さに無念さを感じながら言った。
「やはりだ、甲子園に来たならばだ」
「風船は忘れてはいけないよね」
「一生の失態だ」
 こうまで言うのだった。
「恥として覚えていく」
「そこまでじゃなくていいじゃないの?」
「そう思うあるが」
 ダエさんと水蓮さんがその留美さんに言う。
「次持って来ればいいし」
「それで済むあるよ」
「そんな、一生の不覚とかね」
「いささか大袈裟あるよ」
「私は生粋の阪神ファンなのだ」 
 これが留美さんの言葉だ。
「だからだ、この事態はだ」
「風船を忘れたことが」
「悔やまれるあるか」
「次は忘れはしない」
 何か神様に誓う感じの言葉だった。
「決してな」
「ううん、それじゃあ私達もね」
「次は風船を持って来るある」
「そして空気入れてね」
「上げるあるよ」
「阪神ファンは甲子園に来たら吹かねばならない」
 その風船をというのだ。
「全く、このことは残念だ」
「私もですね」
 留美さんに負けない位の熱狂的阪神ファンつまり虎キチである早百合先輩も残念そうにこう言うのだった。
「風船を忘れてしまいました」
「じゃあ先輩もいつも」
「はい、風船を忘れません」
 それは絶対にというのだ。 
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