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リメイク版FF3・短編集

作者:風亜
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貴女の胸にいだかれて・1

 
前書き
 何故か封印の洞窟後もサラ姫が同行する事になっており、サスーン城出発後間もない話。
イングズ───戦士。ルーネス───シーフ。レフィア───赤魔道師。アルクゥ───白魔道師。
 

 
「イングズ、貴方今から私に対して敬語禁止ね」


「は? 姫様、それはどういう──── 」

「これから私は貴方達の仲間なのよ? 姫や兵士の立場は不要でしょう」

「 し、しかし…… 」

「いいじゃんそれで! じゃあサラ、改めてよろしくなっ!」

「ええ! ……ほらイングズ、今のルーネスみたいに私を呼び捨てにして?」

「せ、せめて姫とは呼ばずともサラ様と──── 」

「それではダメよ、仲間は対等なんだから」

「そうよねぇ、サラの云う通りよ。ねぇアルクゥ?」

「う~ん、僕はせめて"さん付け"にしようかな……?」

「そ、そうだ、アルクゥの云うように"さん付け"で……!」

「だぁめ。……アルくんが私を"さん付け"する分にはいいけど、貴方には特に呼び捨てにして貰いたいの。いつも姫様ヒメさまって────聞き飽きてるのよね」

「ハラ括れよイングズ、呼び捨てにしてやれなきゃおまえ男としてヘタレだぜっ?」

「む、そこまで云われては………ッさ、サラひ─────サラ」

「あぁ……! 貴方に呼び捨てにされるのをどれだけ待ちわびた事か……!!」

「 大げさだわね 」

「ま、まぁこれで僕らの正式な仲間……かな?」

「けどな~、サラに対して敬語抜きで普通に話せるようになるまで時間掛かりそうだな? ────うわっとっとぉ!?」


 そこで何故かルーネスは蹴躓き、前を歩いていたサラが妙な声に気付いて身体ごと振り向いた途端。


─────ばふっっ


ルーネスの顔面が、サラの豊満な胸に埋もれた。


「 きゃああ?!」

「ぷはっ、ごめん、わざとじゃ……へぼっ?!」


 バチィ、っと小気味よい音のビンタをサラから喰らう。


「あちゃ~、何やってるのさルーネス……」

「絶対狙ってやったわね、あいつ………」

 アルクゥは呆れるが、レフィアは顔を引きつらせている。


「ルーネス、貴様そこに直れ。成敗してくれるッ……!!」

 戦士イングズはただならぬ黒いオーラを纏い、二刀の剣を抜き今にもルーネスへ踏み込まんとしている。

「い、イングズ、そこまでしなくてもいいわ。反撃はしたし、わざとじゃない……筈だもの」

 恥じらうように胸を両手で覆い、頬を赤らめているサラ。


「その通りですわざとじゃありませんごめんなさい」

 棒読みではあるが、ルーネスは正座して土下座する。


しかしその時、サラの背後に別のモンスターの気配が。


「 ………え? 」


 サラが振り返った時には一匹のウェアウルフが鋭い爪を持った前足を降り翳し─────

「 サラ!!」

 イングズは颯爽と駆け寄り後ろから彼女の上半身に片腕をまわし抱き込み、もう一方の手の剣で鋭い一撃の元にウェアウルフを倒す。


「 ………無事か、サラ? 」

「え、えぇ、もちろん。貴方のお陰で………でも、貴方の片手が、私の──── 」

「 え?…………ぁ」


「あ゙ーーー! どさくさ紛れにイングズがサラの片乳掴んでるうぅ!! それこそわざとだろおぉっ?!」

「いや、ちがッ、そんなつもりは……!?」

 ルーネスに激しく非難され(羨ましがられ)、イングズはパッと片手を放し、当のサラはルーネスの時より頬を紅く染めて下向き、押し黙っている。


「あ、あれ? ルーネスの時と違ってビンタとかしないね……??」

「まぁイングズは自覚無しにやった訳だし、サラにとっては胸の一つイングズに掴まれてもそんなに問題ないでしょ」

 アルクゥは怪訝そうだが、レフィアはサラの心境を察する。


「姫様ッ、どうか自分に罰なりなんなりと……ッ!」

 がばりと跪くイングズだが、サラは────


「そうね……貴方になら、幾らでも─────」

「 は……?? 」


(あらあら、イングズには幾らでも揉まれていいって事かしら。 でも彼ニブいもんねぇ)

 レフィアはつい、不敵な笑みを浮かべる。


「こ、今回はお咎め無しにしておくわ。その代わり、次はもっと────な、何でもないわよ!? というか、敬語はやめてって云ったでしょう?」

「しょ、承知────いや、判った……」


「ついでにアルクゥも狙っちゃえば? サラにお触り」

「ななっ、何云ってるのさレフィア……!?」


「ちっ、顔面バフっとも良かったけど、両手でむにゅっとも行きたかったな。次、狙うかな……?」

 そんなぼそっとしたルーネスの呟きにレフィアは─────

「あらあんた、今度こそイングズにコロされちゃうわよ? ていうか……サラの代わりに、あたしがやらせて上げましょうか?」

「ちょっ、そこで何を挑発……?!」

 ハラハラするアルクゥだが、ルーネスが発した一言は─────



「掴みどころ無くね?」


「 …………。うっふふふふ、どうやらあんたをヤるのはあたしの役目みたいねぇ」

「すいません失言でしたお許しおぉーー! うぼあァっっ」



「 ………? 何やら背後が騒がしいが──── 」

「気にする事はないわ、先に進んじゃいましょうイングズ」

 不意にサラが両腕をイングズの片腕に絡ませ寄り添ってくる。

「さ、サラ、その………歩きづらいんだが」

「あら、貴方がエスコートしてくれなくてどうするの?」

「そ、れもそうだ、な………??」


 そんな二人の背後では、レフィアから見事なまでに戦闘不能にさせられたルーネスが白魔のアルクゥに同情的に介抱されているのだった。
 
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